●おまえら男ならヒカルの碁のヒカル好きだよな?●

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596失着点
本当に碁会所から歩いてすぐのところに、アパートはあった。
少し古い素っ気のない鉄筋コンクリートの建物。エレベーターもない。
元名人の息子には似つかわしくないようだが、妙にアキラらしかった。
暗くて重い色のドアの向こうにはキッチンとバス、トイレがあり、
6畳の和室、一番奥に同じ広さの洋室。窓際にベッドが見えた。
ヒカルは玄関で立ち止っていた。アキラが奥の部屋で背広の上着を脱いだ。
「どうしたの?上がらないの?」
わざとつっけんどんな言い方をしているようだった。
「あ、ああ。」
キッチンに上がったヒカルは、たいして何もないその部屋のテーブルの上に、
タバコと灰皿が置いてあるのを見て思わず素頓狂な声をあげた。
「た、たば…!塔矢!?」
「別に驚くことでもないだろ。時々寝る前とか…さ。」
そういえば、和谷も独り暮らしを始めてから時々吸っているのは知っていた。
もちろん師匠とかには絶対内緒だったが。
「吸ってみる?タバコの煙って、苦手だったっけ。」
アキラが小馬鹿にしたように笑ったように見えてヒカルはムッとした。
「そのくらい平気だよ。」
箱から1本抜き取ってヒカルが口にするとアキラが
ライターで火を着けてくれた。