・「平成のマザー・テレサ」と呼ばれていた34歳(当時)の女医が、2年前に大阪市内を流れる
木津川で遺体となって発見された。警察は自殺とみていたが、数々の不可解なナゾが
浮上している。番組リポーターの岸本哲也がそのナゾを追った。
職を失い路上で暮らす人が増える大阪西成区あいりん地区。女医は給料の大半を路上で
暮らす人たちへの寝袋や治療費に使っていた。
女医の遺体が木津川で発見されたのは2009年11月16日。警察の見立ては溺死で、自殺と
みていた。しかし、遺族は女医の首に残されていたアザや頭のコブに強い疑問を持った。
警察は首のアザや頭のコブは遺体を引き揚げるときにできた傷と説明していたが、アザや
コブは生体反応がある時にしかできない。遺族の追及に警察も「誤りでした」と連絡してきたという。
「怒りが抑えきれなくなった。自殺ではなく事件に巻き込まれたんだ」(女医の兄)、「自殺する
ような人ではない」(元患者)。
これを契機に遺族による真相解明の闘いが始まった。遺族や知人が情報を持ち寄って何度も
会合を開いた結果、数々の不可解なナゾが浮上してきた。
「何かが隠されているのではないか」と2年経ったいまも女医が一人暮らしをしていたアパートは
借りたままにしてある。警察は本棚にある書籍からテレビの裏側までくまなく指紋の採取を試みたが、
一つも見つからなかった。また、部屋にはなぜかどこにもホコリがなかったという。指紋を拭き
取ったからだろうか。
女医が最後に目撃されたのは遺体が見つかった3日前の13日午後10時ごろ。勤め先の診療所で
残業している姿が目撃されている。警報システムの記録によると、女医が診療所を出たのは
14日午前4時15分。そこで姿が消えた。
不思議なのは、この夜は雨が本降りで、雨を避けるためにも通勤路のアーケードを通って
帰宅するはずなのに、8か所の防犯カメラに女医の姿は映ってなかった。通勤に使っている
自転車も、自宅や診療所から離れた団地に捨てられていて、自転車にも指紋はなかった。
遺族や女医を知る知人で自殺説を信じる人はいない。女医の父親も「あれだけ地区のために
一生懸命頑張ってきたのに…。絶対に真相を解明する」と悔しさをにじませる。ところが、
これに真相究明に異を唱える人が現れた。女医と交際していた60歳代の男性だ。
「誰かが犯人にされるのであれば、明らかにされない方がいい。明らかにされることによって
何が得られるのか…」
遺体が発見された翌日、女医が出した11月14日消印のハガキがこの男性宅に届いた。
文面は「出会えたことを心から感謝しています。釜(釜ヶ崎のことか)のおじさん達のために
元気で長生きして下さい」だった。(以上)