吉原のティアラって風俗店使ったことある?

このエントリーをはてなブックマークに追加
248名無しさん@お腹いっぱい。
「――それでね、矢澤さんに逢ったあとにね、アタシが本当に好きなのは葉ちゃんだって、はっきりわかったでしょ。だからお兄ちゃんに、アタシの正直な気持ちを話したの。そうしたらお兄ちゃんも、葉ちゃんとの契約のこと、打ち明けてくれたんだよ」

 契約のことを知っている、とはっきり告げられたことで、アタシはどこかホッとしていた。
 もう隠す必要はないのだ。
 アタシがずっと美琴を裏切っていたこと、その理由も、全部。

「…でも、それとセンパイがお兄ちゃんなのと、どういう関係があるのよ?」
 今度疑問に答えたのは、アイツだった。

「葉月ちゃんには話したことなかったけど、オレも、何年か前に妹を亡くしててね」
「……」
「だから、毬野センパイにはアタシのお兄ちゃんになってもらって、アタシは毬野センパイの妹になることにしたの。それだと、ちょうどいいでしょ?」

 ちょうどいいって…、なんだそりゃ。
 脱力したアタシは、ぐったりとソファにカラダを預けた。
 まだ血の気の足りていない頭で、なんとか状況を把握しようと努める。

 結局、美琴がアイツを好きだったのは、亡くなった二番目のお兄さんとアイツを重ね合わせていたから、ということになるワケか。
 兄を亡くした妹と、妹を亡くした兄と。
 そのふたりが欠けたものを補い合おうとするのは、一応、理屈としてはわからなくもない。

 でもそれってつまり、アイツが美琴にフラれたってことじゃないの?
 だって美琴が本当に好きなのは、アタシなんだから。

 もう一度カラダを起こしたアタシは、向かい側に座っているアイツを見た。
 視線に気づいたアイツが、紅茶のカップを戻したソーサーをテーブルに置く。
 アタシは真っ直ぐに疑問をぶつけた。

「センパイは、それでいいんですか?」
「オレにとっては最初から、美琴は妹みたいなものだったからね」
「代わりだったってこと?」

「いや、どっちかっていうと、美琴の方が本当の妹みたいかな」
「……」
 負け惜しみ、という感じはしなかった。

 確かに思い返してみれば、アイツの美琴に対する態度は、王子様な恋人というよりは、王子様なお兄さんという方がしっくりくるものだった、ような気もする。
 契約を結んでアタシと関係を持っておきながら、大切な美琴に対してまるで罪悪感を持っていない