吉原のティアラって風俗店使ったことある?

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247名無しさん@お腹いっぱい。
美琴の大切な話とやらは、なかなか要点に辿り着かなかった。
 アタシを避けてあちこちに視線を逸らしながら、ぽつぽつと言葉を繋ぐ。
 その頬が桜色に染まって見えるのは、最後通牒を怖れるあまりの、アタシの錯覚なんだろうか。

 とはいえ、美琴の様子はやっぱりどう見ても、恋人と親友に裏切られていたことを知った女のコ、のあるべき姿からは、遠くかけ離れていると言わざるを得なかった。
 ワケがわからず混乱していると、テーブルの向こう側で、アイツがくすりと笑うのが聞こえる。

 アタシが笑われたのかと思ったけど、美琴もむっとした顔になった。
 でも、それで覚悟が決まったらしい。
 深呼吸した美琴は、アタシとまっすぐに目を合わせた。

 ――そして。

「アタシ、葉ちゃんが好きなのっ」

 叫んだ美琴は、顔を真っ赤にしている。
 その可愛らしさに見惚れながらも、アタシは戸惑いを口にした。

「…それは、アタシだって、美琴のことは大好きだけど」
「ちーがーうーのーっ。そーじゃなくてー」
「?」
「アタシの好きは、お兄ちゃんみたいに、葉ちゃんとエッチなこともしたいって、そーゆー好きなのっ」

 ……。

 真っ白な頭の中に最初に浮かんだのは、やっぱりな、という納得だった。
 やっぱり美琴は、アイツとアタシの関係を知ってるんだ。
 さっきふたりが交わしていた会話。
 両方の手首に巻かれた包帯の意味も、美琴は知っているようだった。

 じゃあ、契約のことは?
 アタシが裏切っていたことの意味を、美琴は知ってるの?
 いつからアイツと関係を持っていたかも?

 次々と湧いてくる疑問のあとに、やっと、美琴の告白の意味が腑に落ちた。

(葉ちゃんがいてくれるだけで、アタシはしあわせなんだから)

「美琴…」
 涙声で呼んだアタシの頬に、美琴の掌が触れる。
 溢れかけた涙を指先に移しながら、やわらかく微笑んだ。

「星凛祭のとき、お兄ちゃんに、葉ちゃんの恋人のフリしてもらったでしょ」
「…うん」
「そのときにね、気がついたの」
「……」

「アタシ、矢澤さんに嫉妬してた。まだ葉ちゃんを傷つけられる矢澤さんが憎くて堪らなかった。矢澤さんだけじゃない、
自分でお願いしたのに、本当の恋人みたいに葉ちゃんに触るお兄ちゃんにも、嫉妬してた。それで気がついたの。
アタシが本当に好きなのは、葉ちゃんなんだって。葉ちゃんのこと好きなのは、友達としてじゃなかったんだって」

 ――伝わってきた美琴の想いに、胸がつまった。
 応えられるかどうかなんて関係ない。
 ただ、自分が想う以上に想われているのだという幸せに、満たされる。
 けれど、その幸福感に水をさす疑問を、アタシはどうしても、口にしないではいられなかった。

「あの、さっきから気になってるんだけど、その、お兄ちゃんて…」
「毬野センパイのことだよ」
 ねー? と同意を求められたアイツが、にっこりと頷く。