――昨日の夜。
爪先から愛撫をはじめたアイツは、いつにも増してアタシを焦らした。
何度も昇りつめるアタシを更に追い込んで、それでも服さえ脱ごうとしないアイツ。
とうとう意地をかなぐり捨てたアタシは、もう抵抗しないから手枷を外してくれと懇願した。
そのアタシに、アイツが言ったのだ。
(手枷を外して欲しかったら、早くオレのを挿れて欲しいって、おねだりしてごらん)
冗談じゃない。
怒り心頭に発っしたアタシは、もうメチャクチャに暴れまくった。
もちろんおねだりなんて、するはずもない。
我慢できなくなったアイツの方が根負けして、暴れるアタシを押さえつけカラダを繋げてきた。
それだけで気を失いそうな快楽の中、アイツはまだ諦めずに煽ってくる。
(動いて欲しかったら、今度こそちゃんとおねだりしなくちゃダメだよ)
二度目に根負けしたのは、アイツだったのか、アタシだったのか。
やっと解放されたあと、アタシは気絶するように眠ってしまった。
…という次第を思い出して、アタシは顔をしかめた。
アイツのしたことも頭にくるけど、両方の手首に包帯だなんて、学校でどう説明すればいいのか。
「そのことは反省してます」
なにかいい言い訳はないものかと考えていたら、アイツが言った。
しおらしいアイツに、美琴が釘を刺す。
「道具を使うときは、ちゃんと相手の了解をとってから、だよ」
「はいはい」
素直に答えたアイツの声は、笑っていた。
「……」
いまさらだけど、このふたりはいったいなにを話してるんだ?
ていうか、お兄ちゃんて誰?
そもそもどうして、美琴がここにいるの?
疑問の答えを求めて心もとない視線を上げたアタシに、笑顔を向ける美琴。
優しい眼差しを当て、ほっそりとした指先でアタシの髪を梳きながら、あやすように言った。