俺が20歳の頃の話。
当時のバイト先のスーパーに、販促のマネキンとして派遣されてきた
1つ下の女の子に一目惚れした。
3日間くらい来てたのかな。
その間、できる限り話しかけるようにして、少しづついい感じになっていって。
そして彼女の派遣の最後の日、思いきって「一緒に遊びに行こうよ」と
誘ってみた。
「えー、どうしようかなぁ」
などと焦らされつつも、何とか約束を取り付ける事に成功。
その頃は俺にとってまだ不案内だった横浜の山下〜山手あたりを
彼女に案内してもらいながらのデート。
真夏ですごく暑かったけど、彼女はニコニコしながら山下公園から
外人墓地、港の見える丘公園と連れていってくれた。
途中の坂を登る時・・・山の中の細い道を登っていった・・・の
蝉の鳴き声と、途中にあった小さな売店のラジオから流れてくる
高校野球中継が夏真っ盛りである事を教えてくれた。
そして先をどんどん歩いて行き、早く登れと急かす笑顔の彼女
その情景は今もはっきりと思い出せるほど鮮明に記憶に残ってる。
その後も何度かデートしたっけ。
元町でウインドウショッピングしたり、湘南にドライブに行ったり。
しかし、会う回数は重ねても、彼女の心はまだこっちを向いてないような
気がしてた・・・
何がどうだから、というわけではないのだけれど何となく、でも確か
だとも思ってた。
俺はいつも一生懸命彼女を楽しませようとしていたし、彼女はいつも楽しそうだった。
それなのに俺と彼女の間には越えられない何かが確かにあった。
「俺の事、好き?」
ついに我慢できなくなって聞いちゃった。
あれはどこ行った帰りだったかな。
彼女を駅まで送る途中に歩きながら、聞いた。
「うーん、君も結構いい線いってると思うよ。でも他の子を探した方が
いいかもね。」
そう告げられた。
ああ、振られたんだな・・・と思うしかなかった。
恋の痛手を癒すのは新しい恋とばかりに、振られて1ヶ月後には
違う子と付き合ってた。
すごくいい子だったな。
俺の事をすごく好きでいてくれて、それが心の傷を塞いでくれた。
そして・・・またしばらく経った頃、振られた彼女から連絡が来た。
一緒に遊びに行こうという。
まあ、友人として誘ってくれてるのかなと思い、でも今の彼女には
多少の罪悪感を感じつつ、結局会う事に。
久し振りに会った彼女は変わらぬ笑顔だった。
でも、以前と違う部分もあった。
小物を売ってる店をブラブラしてる時
「あ、このカップ可愛い!これペアで買って、○○(俺の名前)の部屋に
置いとこうよ。」
以前彼女との間に感じてた「何か」が無くなっていた。
なぜ今になって・・・
その帰り道の事。
「実は俺、彼女がいるんだ。△△(彼女の名前)も早くいい人見つけろよ。」
前回彼女に言われた言葉をそのまま返す事になった。
すると彼女は
「やっと・・・やっと先生の事忘れられたのに・・・やっと○○の事だけを
好きになれたのに・・・」
そう言って、俯きながら泣き出した。
そういえば、彼女は高校時代の恩師の影響で教職を目指していると言ってたっけ。
きっとその教師の事だったんだろうな。
でも俺は彼女に「ごめんな」とだけしか言えなかった。
こうして、最後までタイミングの合わなかった恋は終わった。