季節は巡る
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:02:23
血は巡る
柔らかな日差しにつられ外へ出れば、冷えた空気が纏いつく。
ああ、冬なんだなぁ。
木の葉が落ち、幹と枝だけの木々。
そんな貴方を松の実。
待ち続けても君は来ない
用水路沿いに歩くと桜の木が一本
そこに君はよくいた。
その姿をみとめながら、笹で作った舟をせせらぎに乗せた。
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:18:35
やがて小雪が舞いモノトーンの世界へ
流れに乗り笹舟に気付いた君
そっと拾い上げ、顔を上げた君が微笑む。
8 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:23:15
キムキム
落ち葉を踏みしめながら歩を進め、僕の手に乗せたね。
二人の空間が訪れる。
「寒いね」君は僕の手に指を絡ませた。
冷たい手だった。
10 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:35:15
南無ー
11 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:37:12
落ち葉まだ
君の手に熱を奪われ冷えていく僕の手。
奪った熱で温もりを取り戻した君。
「温か〜い」
はしゃぐ君の顔は陽に輝いて、綺麗だった。
僕の想いを知らずにどんどん歩いたね。
13 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 10:49:26
そこへ
そこにはベンチがひとつ。並んで座った。
自販機で買った缶コーヒーを二人で飲んだ。
冷気で冷めたコーヒーだけど、僕は心まで温まった。
15 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/31 14:04:17
君は手を繋ぐのが好きだったね。
左手と右手。指をしっかり絡ませ、時折力を入れる。
「こうしてるのとはぐれないでしょ?」
(僕が君を見失うはずもないじゃないか・・・)
16 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/01/31 14:08:24
>一真君へ
おめ、ナカナカ、純情そうでええぞ。
この悦司様に弟子入りせえ。
今度遊んでやるませり 〜★
ほんじゃな。
>>16 ありがとうございます。
堅くなった地面に小さな雑草が花を咲かせていた。
季節を間違えたのか?ひょっこりとそいつだけが風に吹かれていた。
(あっ!)君は無造作にそいつを引っこ抜いた。
「可愛いね」無邪気に手に取り眺めている君。
「どうするの?」気が気じゃない僕が尋ねた。
「家へ持って帰るから」
sage忘れてますよ
よく港へ行ったね。
熱々の肉まんとコーヒーを買ってさ。
薄明かりの中、ふうふう息を吹きかけて頬張る君。
僕が先に食べてしまってじっと見てたら、小さくちぎって口に入れてくれた。
だけど肉のない肉まん。
君は悪戯っ子のような表情で笑っていた。
その笑顔がかわいかったなあ。
岸壁によく外国船籍の貨物船が停泊していた。
ベルトコンベアがコンテナを降ろすのを見たよね。
危ないからって退避するよう注意された事も・・あったね。
僕が頭をもたげると、そっとシートをずらし膝枕してくれた君。
僕は見上げる。君は優しく微笑んでいた。
そこは小さな二人だけの空間。
風の音と打ちつける波を、いつまでも見ていた。
遠くに見える灯台の灯が僕らを時折照らす。
同じ風景。同じ空気を吸っていたあの頃。
開き直りましたか。
僕はいつも君に言っていた「俺について来いよ」と。
僕が行く所にはいつもついて来てた。
立ち止まれば同じように立ち止まり、僕を見ていた。
でも、気がついたよ。
ついて行っていたのは、僕の方だった。
目の前に君がいないことが、こんなに寂しい。
僕は方向を見失ってしまったみたいだ。
君はまだこの町の何処かに住んでいる。
でも僕の前に現れることは、もうない。
手を伸ばせば届くだろう。
だけど手を取ってくれることは二度とない。
温もり、感触を忘れるはしないだろう。
忘れられないのが寂しいんだ。
帰ってこない君と過ごした日々。
思い出となり、過去になってしまったことが、まだつらい。
誰かを見つめて語らい、笑い、元気に過ごしているんだろう?
僕のものだった君が、僕の知らない誰かのものになっている。
永遠て何だろう。
「ずっと離れない」そう言ってた君が離れて行った。
笑顔で別れたあの日。君が去ったあとずっと涙が止まらなかった。
まだ君は僕の中で生きている。
仕事をし、終われば家へ帰る。
単調な日々だ。
一人で映画を観たよ。
ポップコーンとコーラを飲みながら観た。
面白かった。
けど、ますます寂しくなってしまったよ。
横に君がいないこと、こんなにも思い知らされるなんて。
そっと耳打ちしながらストーリーを予想してみたり、同じシーンで笑い転げ
顔を見合わせていた。
大粒の涙を溢れさせて、瞬きもせずスクリーンを観ていたこともあった。
「泣いてたんだ」
僕が言うと君は怒ったように否定したね。
「泣いてないよ」
でも目には涙で潤んだままだったし、鼻の頭が赤くなってた。
そんな君が健気でいとおしかったの知らないだろう。
あの時観た映画は、君の残像となって僕の記憶に刻まれた。
28 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/02 12:02:58
>一真君
そのまま一人で1000まで走れ。
そうすればきっと何かが見えてくるだろう。
男は常に半旅人であるぞよ ナムナム
29 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/02 12:05:53
>一真君
君は最高だ。
スレタイのバランスが崩れているところに芸術を感じる。
君はピカソなのか? スバラシイ ナムナム
>>29不本意な事にズレてしまいました。
出かけるのが億劫だと、僕の部屋で一日中いた。
買い込んだお菓子を食べ、ジュースを飲みテレビを観た。
僕が耳掃除をせがむと、待ってたとばかりにいつも持ち歩いている
耳掻きを持ち、膝に僕の頭を乗せた。
好奇心旺盛な子供のように、いつまでも掃除していたね。
動きが止まり、ふと君を見上げるとテレビの画面に釘付けになってた。
ドラマのハイライトシーンだった。
君の関心を奪っているテレビに、ちょっぴり嫉妬してしまったよ。
君たちゃ女々しい
待ち合わせをしていた。
9時、改札口で。
僕は仕事が長引き間に合いそうもない。
気が気じゃなくて間際になって電話した。
「もう着いてるよ。いま何処?」
無邪気な声。申し訳なさと切なさが入り混じっていた。
「まだ仕事中なんだ。2時間くらい待ってもらえないかな?」
「うん、どこかで時間潰してるね」
急いで仕事を再開した。
電車に乗ったのは11時を回っていた。
君は待っているだろうか?
喫茶店で2時間以上もいられないだろう。
終電間近の駅は、急ぎ足のサラリーマン、徘徊している少年たちで
ごった返していた。
そこに君はいた。
閉まった珈琲ショップの階段に、ちょこんと座っていた。
33 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/02 18:02:17
>一真君
天才だな・・
遂にこの板にも天才が現れたな。
一真君、同じ天才どうし頑張ろうではないか エッヘン
34 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/02 18:09:33
>一真君
>>30のエッセイは素晴らしいぞ!
俺も女に耳掻きをしてもらうのが好きだな。
しかし、君と違うのは、俺は自分の顔を女の局部に向けて横たわる。
そして、俺はその香りをかぎながら左手で女性のおしりをモミモミしながら眠るんだぞ。
どうだ。凄いか。凄いだろ、俺って! エッヘン
35 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/02 18:13:23
>一真君
俺が伴走してやるから最後まで走り続けるように。
>>34-35 1000まで続けるつもりです。
伴走いただけること、有り難く思います。
絶え間ない人の波を掻き分けながら、君の元へ真っ直ぐ進んだ。
そこだけ寂しそうな気配が漂っていた。
一歩、二歩、三歩・・・君が顔を上げる。
うれしいような、だけど切なさで胸が締め付けられた。
「ごめん。待たせたね。」
これだけしか言えなかった。
「人を見てるのって楽しいね」
君は笑っていた。どれだけ長い時間ここに座っていたの。
38 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/02 21:45:41
僕に気を遣わせまいとしているのか?
ただただ笑顔の君。
「寒いよ!!」
少しだけ怒った口調で口を尖らせたね。
レストランに灯がついていた。
「何か食べようか」
僕はドアノブに手をかけようとした。
少し気が動転していたのかも知れないね。
「コンビニで何か買って行こうよ」
君の提案に従った。
40 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/02 23:58:55
そんなに食べるの?どんどんかごに入れる君。
お菓子、ジュース、缶コーヒー、サンドイッチ、ケーキ、おむすび・・・
すっかり重くなった袋を提げ、二人で歩いた。
周りは家路を急ぐ車ばかりで、僕たちはその都度ライトに照らされた。
「怒ってない?」
気になっていた事を質問した。
「全然!だって来るってわかってたもの」
満面の笑みに安堵したな。
白い息を吐きながら僕の部屋まで歩いた。
階段を上り3階にある部屋へ到着だ。
手がかじかんで鍵がうまく差し込めない。
もどかしい思いで開けたよ。
ドアを開くと締め切った部屋の匂いが鼻腔をついた。
「あなたの匂いね!」
荷物を玄関に置きブーツを脱ぎ捨て、通い慣れた部屋へ入る君。
ヒーターのスイッチを入れ、僕たちは抱き合ったね。
抱き合わずにいられなかった。
この手の中に君がいて、体温を感じていないと不安だったんだ。
ひとしきり抱擁し合って、やっとコートを脱ぐ。
買ってきた食糧を取り出し、即席の食卓だ。
いつも分け合って食べたね。
食べ物の好みも似ていて、僕が先に食べてしまうとふくれっ面になっていた。
その顔が面白くて笑うと、また怒っていた君。
どれをとっても懐かしい。
ころころ変わる表情が好きだったよ。
「冬の日本海が見たい」
唐突に君が言った。
海を見るのが好きだったね。
すぐ計画を立てた。行き先は萩、津和野だ。
お決まりのコースだけど、行くならここだろう。
急な思い付きでのプランだったけど、大喜びしていたね。
僕もますます楽しみが募るってものだよ。
荷物を少なめにまとめ、新幹線に乗った。
そう、これが初めての旅行だったんだ。
売店でたくさん食べ物を買って、さあ出発だ。
乗り込むや早速お弁当を食べた。
コーヒーを飲み、お菓子を次々に平らげたね。
とにかくよく食べた。
話も途切れる事もなく、笑ってばかりいた。
どんどん変わっていく窓の風景に、感嘆の声をあげていた君。
まるで子供みたいに。
まだ目的地に着いていないんだよ。
小郡で降りたらそこは思ったとおり、冷たい風が吹いていた。
とうとう来たんだな。
売店の売り子の言葉も違う。
旅行者なんだな・・・僕たちは。
君はきょろきょろ辺りを見回している。
チェックインにはまだ時間がある。
「どうする。何か食べようか」
「街を歩いてみたい」
初めての町をあても無く歩いた。
名跡を目指すでもない、散策だったね。
僕らの住む町との違いを見つけては立ち止まり、しばらくその場にいた。
「楽しいの?」
聞いたけど、好奇心溢れるその目が答えだった。
45 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/03 11:52:55
>一真君
>>41-42 ヒータ点ける前に始めなきゃ。
玄関で或いは「外」で。
セックスは野獣のように行うべきだったな・・一真君・・
>>43-44 日本海の海鳥を見ながら一真君は彼女にこう言うべきだったな。
「僕も鳥だよ・・ ひ鳥 だよ」ってな。
走れ!一真君!
>>45 ほとんどフィクションですが、多少脚色してまいります。
47 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/03 16:39:38
>44
新山口(小郡)で降りても、な〜んにもないよ・・・JR山口線に乗り山口か津和野に行くか、
さもなければバスで萩まで行かなくちゃ・・・とアドバイス。
そろそろチェックインの時間だ。
時刻表と路線図を確認しバスに乗った。
あいにく離れた席に座ることになった
バスが苦手な君は緊張した顔で、外ばかり見ていた。
冬枯れの色の無い風景。
乗客は無言で黙ったままだ。
停車回数も少なく、黙々と走るバス。
ホテルの最寄り駅まで、一時間近く走っただろうか。
窮屈な席から開放され、外の空気を思いっきり吸った。
君は後半眠っていたね。
眠りを中断され、少し不機嫌そうに降りてきた。
ここも人が少ない。まだホテルは見えない。
バス停近くに客待ちのタクシーを見つけ、乗り込んだ。
観光客に慣れているのだろう。
運転手は人懐っこく話しかけてくる。
その言葉が優しく、今回の小旅行が楽しくなると確信した。
タクシーはホテルの正面玄関に横付けされた。
僕たちの今夜の宿だ。
部屋に通され、しばらくすると仲居がお茶を淹れ一通り説明を
して行った。
僕たちはかしこまって聞き、頷いた。
仲居がドアを閉めた音を確認し、お互い顔を見合わせた。
自然に寄り添い、抱き合いキスをした。
ここまでの4時間あまりで、僕は昂ぶっていた。
もつれ合い首筋に唇を這わせ、胸を強く掴んだ。
君の声が切ない吐息に変わるのがわかった。
僕の背中に回した手に力が加わったのを認め、僕は荒々しく
胸に手を入れた。
なんだか、とてもロマンチストですね・・・一真くん。
「みなみこうせつ」あたりの世界ですね。
これからの展開や如何に〜?!
52 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/05 13:46:32
>一真君
こういう文章は書ける時に書いとけ。
年喰って人生の迷路に入った時、一真君のような想い出はエネルギーに変る。
今、思うと、若い頃の恋愛というものは、時に数億光年の遠さを感じさせる。
俺なんか、もう、完全にモノクロの世界に突入している。
昔の彼女の胸の形さえもう忘れてしまった。
>>52 悦司さん。忘却の彼方にならないよう、此処へ記していきます。
先ほどまでの明るい声が切ない吐息へと変わっているのがわかった。
君も僕を求めていた。
時間が僕らを昂ぶらせたのだろう。
ここへ辿りつくまでの時間は、君に触れ一つになる為の序章でしか
なかったんだ。
冷たい手で君の胸にそっと触れた。
君の体温が指先から全身に注ぎ込まれた気がした。
小ぶりな胸は硬く尖っていた。
唇でそっと咬むと、かすれた声を出し胸を突き上げるように身悶えた。
君の閉じた目は、切なく僕を求めていたね。
言葉は要らない。
激しく荒々しく服をはがした。
僕は攻める。君は応える。
静かな部屋が、君の吐息を何倍にもいやらしく感じさせた。
窓から風景が見えている。明るい。君がよく見える。
何度も抱いた体だ。
どうすれば気持ちいいか知っているよ。
だけど行き着くゴールは未知数だ。
果てしない可能性を秘めた君の体を、離しはしない。
離したくない。
まだ見ぬ限界を知りたい。見せてくれ。
君を抱くたび、僕も知らない自分の発見がある。
君の体を起こし、向き合うと笑顔だった。
「なんで笑っているの」
「気持ちがいいから」
楽しそうに言ったね。
僕らにとってのコミュニケーションでもあったね。
とっても重要なことだった。
56 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/06 00:26:29
>一真君
いいねぇ・・
青春時代の恋愛は・・
羨ましいよ。
>小ぶりな胸は硬く尖っていた。
俺が書くなら「乳首がビンビンに勃起っとった」みたいな表現になるし・・
>僕は攻める。
なんて、絶対、俺なら「後ろから攻める」みたいに書いてしまうし・・
>何度も抱いた体だ。
どうすれば気持ちいいか知っているよ。
「何度もいてこましたった身体じゃ!今夜もひーひー言わしたる!!けけけ」
>「なんで笑っているの」
「気持ちがいいから」
「笑とるんか泣いとるんかわからん顔しやがって!ええか!ええか!気持ちええのんか!?」
「逝ったか?」
「(昇天)」
「けけけ」
と、なる。
食事が運ばれてきた。
いくつもの小鉢が慣れた手つきで、どんどんテーブルの上を華やかに
彩ってゆく。
鍋は見る見る湯気を立て、食欲を促す香りが充満した。
お酒が飲めない僕らも、生ビールを冷えたグラスに注ぎ「乾パーイ!」と
グラスをあわせ乾いた喉に流し込んだ。
旅はこうでなくちゃね。
地元の食材をふんだんに使った料理に、目移りしながらどんどん箸は
進んで行ったね。
凝ったお菓子のように綺麗な細工の料理を指し、「これ何?」と尋ね
恐る恐る口に入れると「美味しい!」と連発していたね。
鍋の熱気と、飲みなれないビールで君は顔を紅潮させ、見る間に全部
食べ尽くした。
美味しいものは、やっぱり二人で食べるに限るね。
僕も浴衣の帯が窮屈になり横になった。
君もこれ以上ないくらい楽しそうに、僕にじゃれ付いてきたね。
また仲居が片付けに入ってきた。
部屋で食べるのは何と言っても、くつろげるし会話も弾む。
こういう気遣いがちょっと煩わしく思ってしまった僕は、おかしいだろうか。
誰にも邪魔されずに居たいんだ。
折角二人っきりになれたのだから。
夜は短い。
「温泉に入ろう」二人で入れないのは残念だけど、時間を決めて
待ち合わせした。
僕の方は誰もおらず貸しきりだ。
仕切りの上方が開いているのを見つけ、そっと名前を呼んでみた。
「こっちは一人だよ。君は?」
「私もひとりだよ!」
浴場内に君の声が響いた。
まるで混浴しているような気分だった。
ラッキーとしか言いようが無い。
誰も入って来ませんように・・・祈ったよ。
顔は見えないけど、壁越しに話すのもいいな。
君が体を洗う音が聞こえてきた。なんだかどきどきしたよ。
何度も抱いた体が思い出された。
「先に出るよ」声をかけ、浴衣を着てソファーに座って待った。
時間は決めていたのに、君は15分は遅れて来ただろうか。
女湯の暖簾ばかり見ていた。
やっとでて来た君は気持ち良さそうに、頬がピンク色に染まっていた。
メイクを落とした顔は、ますますあどけなく見えた。
「どう?」「ほら、肌がすべすべ!」
よかった。僕も楽しかったよ。
冷たいジュースをしこたま買い込んで、これからが第二弾だ。
ジュースを二人で何本も飲み干し、寝転がってテレビを観たり
話は尽きなかった。
畳の上に敷かれた二組の布団が、ちょっと照れくさかった。
僕は左利き。だからいつも君が右で僕が左。
また君が欲しくて何度も抱き合ったね。
いつも僕が先に目覚める。
君は物音にも動じず、すやすやと寝息を立てていた。
しばらく見つめていた。
無防備な顔だ。
放っておいたらいつまでも寝ていそうで、後ろから滑り込んで
足を絡ませ体を抱きしめた。
眠そうにきみが目を覚ました。
今日は忙しいよ。
日本海を見に行かなきゃね。
外は雪が降っていた。風は強く一気に体が寒さですくんだ。
日本海はすぐそこだ。
だけど真正面から吹き付けてくる風は容赦なく、僕らの歩みの
邪魔をする。
指先の感覚はなくなり、耳が途切れそうな寒さだ。
僕らの町では感じたことの無い強風。カイロ代わりに買った
缶コーヒーも見る見る冷めていった。
「寒いっ!」それしか言葉が出なかったね。
「あっ!見えてるよ」
荒くれた波が見えてきた。
少しでも風から身を守るため下を向いていた君が歓声を上げた。
「早く!!」急かすように声をかけ、どんどん君が先を歩いたね。
そこは雲が低く垂れ込め、朝とは思えない暗い色をしていた。
黒く突き出した岩に荒い波が打ちつけている。
水も暗い色だけど、高い波が砕け白く変わる。
まるで生き物のようだ。呑み込まれそうだよ。
君は近くのコンクリートに手を掛け、身じろぎもせず見つめている。
「すごーい」
それだけ言ってまだ動こうとしない。
何が君をそんなに惹き付けているのか?
僕も同じようにずっと波を見ていた。
静かな海しか知らないと、君が言っていたのを思い出した。
どれくらい見ていただろう。
「次、行こうか」
やっと君は僕に顔を向けた。
こんなに寒いのに、君は満ち足りた顔をしていた。
「ずっと見ていたね」僕が聞くと、海を見るのが好きと答えた。
落ち着くから・・そう言ったね。
僕は聞かなかったけど、何か君の知らない面があるって感じた。
萩焼を見るのが、次のコースだ。
観光地として有名な町なのに、驚くほど人が少ない。
こんな時期に来る僕達が珍しいのだろう。想像してみた。
今度は追い風が猛烈な強さで僕らを押した。
痩せてる君が風に押され、可笑しな歩き方になっているのに気付いた。
自分のペースで歩けなくて、今にも飛ばされそうなので笑ってしまったよ。
今でも覚えているよ。
商店街のような所まで出た。
ここも人気が無い。
軒を連ねている店も人影は少ない。
擦れ違う地元の人たちは、防寒着を着込み足早に通り過ぎて行く。
なかなか見つからない。少し焦った。
しかし彼女は店のウィンドウを除きこんだりして、退屈はして
いないようだ。
あまりに寒いと、会話も少なくなるんだなと思った。
商店街の先に萩焼の看板を見つけた。
三店ほどあった。
どこに入ろうか迷っていたら、「ストーブがあるよ」と言う
店主の声につられそこへ入った。
「まぁ暖まりなさい」と言う言葉に甘え、しばらく暖を取った。
目はところせましと置かれた萩焼に釘付けだ。
そっと手に取りくるりと回しながら、艶や色、手触りを確かめた。
値段も様々だ。ひとつひとつ微妙に違っていて見ていて飽きない。
店内を何度も行き来し、深い味わいのある、それでいて手にしっくり
なじむ夫婦茶碗を見つけた。
僕の気持ちは決まった。「これを買おう」と。
もちろん君と僕のだ。
しっかりした木の箱に収められ、大きいのと小ぶりなのが二つ並んでいた。
「これで美味しいお茶を飲もうね」
君は少し恥ずかしそうだったけど、大喜びしてくれたね。
そいつは僕の部屋の、小さな食器棚に今もある。
湯呑みは今も仲良く並んでいる。
何も変わっていない。君が居ないことを除いては・・
山陰の旅はあっという間に終わった。
だけどたくさんの想い出ができた。
君の笑顔、会話の全てだ。
今度は2泊3日にしようと、帰りの車内は次のプランで盛り上がった。
それほどに楽しかったんだ。
いつどこがいいかと次々と提案してくる君に、僕はもっと楽しい旅に
したくて頭はいっぱいだった。
君の笑顔が見たい。
これからもっとたくさん二人の記念写真を増やして行きたい。
ずっと二人・・・一緒だね。
68 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/02/08 04:09:00
lVVVVl
|____| ワッハッハー
∩ ・∀・))
./::〉____ノ
/:::ノ_ノ__ノ
~~し´(_)
69 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/08 08:29:51
一真さん、いつも楽しみにしています。
今度は長門市の青海島の遊覧船に乗られることをお薦め致しますわ。
ただし、春から秋の海ね・・・冬場は寒さと荒波で営業していないはずです。
日本海の雄大な風景・・・「海上アルプス」を海からご覧なさいませ。
金子美すずの故郷で、記念館もありますし。
その後でまた温泉もいいですし、翌日に秋芳洞あたりまで行かれたら最高ですよ。
・・・と、またまたおせっかいな観光アドバイス。
お節介な事言わないから、また続きを聞かせて・・・一真さん〜!!
71 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/10 12:48:33
( ・∀・ ) ス
(・∀・ ) パ
(∀・ ) イ
(・ ) ラ
( ) ル
( ・) ネ
( ・∀) ニ
( ・∀・) チ
( ・∀・ ) リ
(・∀・ ) |
(∀・ ) ン
(・ )
( )
( ・)
( ・∀)
( ・∀・)
( ・∀・ )
(・∀・ )
(∀・ )
72 :
ひみつの検疫さん:2024/11/14(木) 08:59:21 ID:MarkedRes
汚染を除去しました。
一真さ〜〜〜〜〜ん!!
74 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/12 11:55:12
悦王さんなら、続きどう書きます?
>>69 ご案内ありがとうございます。いつか足を伸ばしてみます。
カラオケばっかり行っていた時があったね。
君といつも行ってたカラオケ店がは、携帯ショップに変わっていたよ。
デートといえば二人声をそろえて「カラオケ」
ドリンクと料理をオーダーしたら準備完了でスタートだ。
僕らのカラオケ大会だ。
席についたら選曲だ。ルールなど無い。
リモコンを手に取りどんどん入力して行く。
僕が3曲連続で歌うと、君は4曲歌う。競争だ。
楽しい競争だ。
君は少し音痴で調子がはずれることもよくあったね。
からかったら一瞬ふくれっ面を見せていた。
選曲にも凝った。
酒の席じゃないから遠慮はいらない。
僕は布袋のラストシーン、ミスチルの名もなき詩を何度も歌った。
君は悲しい歌ばかり歌っていたかと思うと、元気にアップテンポの歌を
歌ったりしていた。
君が好んで歌う曲は僕の好みとは違っていた。
ジャンルも違っていた。
なのにその歌詞を覚えてしまっているのに気が付いたよ。
あれは君のメッセージだったのか?
今頃わかるなんて僕はどうかしている。
君はこうなることがわかっていたのか。
メッセージがこんなにも僕の胸深く刻み込まれているなんて。
レンタルショップで探して自分で編集した。
運転中にいつも聞いているよ。
いや聞きたくなったら運転しているんだ、僕は。
一真さん、おひさしぶりです。
岩国の錦帯橋も風情があっていいですよ。
引き続き楽しみにしてますので・・・
一真さ〜ん!待っていますよ〜!!
君と別れ、君を忘れようとした。
時間が君を忘れさせてくれると思っていた。
現にそうだ。
会社に行き仕事をこなし、同僚と趣味の話しに高じ笑っている。
だけどどうだ。
雑踏で君の名前を耳にし振り返ってしまう。
よく口ずさんでいた歌に君の顔を思い浮かべてしまう。
一緒に行った街をテレビで見かけ、過去に引き戻されてしまっている。
僕は忘れようとしているのか。忘れたくないのだろうか。
わからないんだ。
一つだけわかったのは、君がこんなにも僕に沁みついているってことだ。
僕はあえて君との思い出に耽ってみる。
寒がりでいつも冷たかった指先。
触り心地の良かった柔らかな肌。
俯いた顔は幼い少女のような輪郭をしていたね。
時々気難しそうに見えた、君の目。
僕が冗談で別れ話をしたことがあったの、覚えているだろうか。
軽い気持ちで言ったんだ。
君の瞼にはこぼれそうなほどの涙が盛り上がっていた。
瞬きをしたら今にも溢れそうだった。
本気にしてしまった君はしばらくしゃくりながら泣いていたね。
こんな冗談は二度と言わないと、心に誓ったんだ。
強がりで強情なのに、一旦泣き出すと止まらなかったね。
いつもの笑顔のうらには、僕の知らなかった哀しみが詰まっていたんだ。
僕の前では素直にありのままを出せばいい。
泣き止んだあと、腫れた目で照れくさそうに笑っていたね。
怒ったかと思えば、泣いてみたり・・・。
何もかもが懐かしい。
愛していた。今も愛しているよ。
君の名前を呼んでみた。
久しぶりだよ。
いつも呼んでいた名前なのに、なんて懐かしい響きなんだろう。
呼べばいつも返事が返ってきていた。
でももう君の返事がないことがこんなに寂しいなんてね。
君も僕を思い出すことがあるのだろうか。
決して薄っぺらな付き合いじゃなかったのに、自信を失っている
僕を君はどう思うだろうか。
何度も何度も呼んでみた。
どうしてしまったんだ。
涙が止まらないよ。何で今になってこんなに涙が出るんだよ!
僕は悲しいのだろうか。
離さなければよかったのか。
雨の日は僕の部屋で過ごしたね。
君が来る日は、散らかった部屋を掃除したものだよ。
君の好きな音楽とビデオを用意した。
狭い部屋だけど、二人並んで座れるようにスペースを作った。
新しいヒーターを買ったときの、うれしそうな顔を覚えているよ。
熱いのにヒーターのまん前に陣取り丸くなっていたね。
猫のようで笑い転げたよね。
僕一人で使うのは寂しいものだよ。
冬になりこれを出すたびに切なくなる。
ずっとこんな気持ちになるのだろうか。
今朝はトーストを焼いてコーヒーを飲んだ。
焼きたてのトーストを、皿代わりのいらなくなったカレンダーに
載せてマーガリンを塗って二人でほおばったね。
いつもコーヒーはインスタント。
僕は薄めが好きで、君は濃い目で砂糖もたっぷり入れていたね。
君と一緒に使ったマグカップをまだ使っているよ。
もったいないからと言い聞かせ、本当は捨てたくないんだ。
少しずつ揃えた歯ブラシ、部屋着に化粧品。
まだ君に包まれていたいんだ。
過去になってしまうのがこわいのかな。
とっくに終わっているのにね。
今着ているシャツも君が選んでくれたものだ。
何気なく袖を通したけど、これが日常なんだよ。
女々しいと思うだろうか。
自分でもこんなふうに思うとはわからなかったんだよ。
こんなになるまでは。
ちょっと横になろう。
まどろみながら君と夢でもいいから会いたいよ。
抱き枕のように君に抱きついていただろう?
今はクッションを抱いて眠る毎日さ。
僕がせがんだら手縫いのクッションをくれたんだ。
生地を選び、折角だからと塗ってくれたクッションだよ。
不器用な君の大作だね。あの時は感激したなあ。
僕の匂いしかしなくなったけど、今も大切にしているよ。
一真さん、一気に読ませて頂いております。
こんなにも一真さんは一人の女性を愛し抜いているのですね・・・。
まだまだ、読ませてくださいね。
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/19 23:43:26
君は今起きているかい。
土曜の夜はよく映画を観に行ったね。
ラブストーリーが好きな君と、SFマニアの僕だったから、チケットを
買うまでにどれだけの時間をかけたことか。
大抵僕が折れてラブストーリーを観る羽目になって、僕は息抜きに
トイレへよく行ったものだよ。
洋画劇場で君と観た映画が流れていた。
気乗りしなかった作品だけど、びっくりした。
すごく覚えているんだ。このシーンは君が居眠りをしていた。
ここでは微動だにせず画面を見つめていた..とかね。
あちこちの映画館へ行ったものだけど、どこで観たか覚えているんだよ。
とっくに忘れていたと思っていたのに。
走馬灯のように脳裏をかけ巡る日々。
様々なシーン。
僕が写真嫌いだから、あまり写真は残っていない。
そのことによく不満を言っていたね、君。
だけど僕の記憶にこんなにしっかりと刻み込まれているよ。
映像が動画のように残っているよ。
君に伝えたいけど、僕には術がないんだ。
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/25 13:31:57
なんで四季なのか?
煮詰まっています
93 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/26 09:03:43
一真さん、頑張って〜!!
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/26 09:16:32
「僕」と「君」なんかでたわごと言ってんじゃねえ!
そこが嘘の始まりだってまず気付けっ。
95 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/02/26 12:53:07
>>94 ひどいこというの、止めて下さい!!
私は一真さんのお話を楽しみにしているんですから〜!!
96 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/03/01 15:23:15
>一真君へ
恋愛とは不思議な二人だけの世界です。
二人だけがこの世で特別な存在だと感じる、ある意味、素敵な空間です。
けどね、昨日まで大好きだった恋人を、ここで言えば想い出を、
ふれるのも考えるのもおぞましくなる時期を本当は作った方がいいんです。
これは悪い意味ではなくて、
新しい本物の愛をさがす時には、男は、全部ぶっ潰してから物事を始めるのです。
昔の恋愛を美化して話す輩が多い今世。
想い出の切捨て作業も少しはした方がいい。
振り向くな
振り向くな
後ろには夢がない
97 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/03/01 15:30:58
>>96 捨てた女の黒髪でがんじがらめの俺にそう言うか、悦司よー。
98 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :05/03/01 15:37:17
>>97 捨てた、おめ、が、悪い。(笑)
男なら、捨てられてやれ。そっちの方がカッコええぞ。
ここ、一真君のスレなので、これで失礼致す。
99 :
名無しさん@お腹いっぱい。:05/03/05 17:17:11
一真さ〜〜〜ん!素敵なお話、また書いて〜〜!
100
101 :
一真:2005/03/27(日) 03:34:19
再開を前にして、再現フィルムの早送りのように駆け巡る情景。
哀しい哉、途切れた記憶。脳裏をよぎる感情。フラッシュバック。
102 :
一真:2005/03/27(日) 04:14:58
春の息吹きを感じる黄緑色を帯びた木の芽。
道路脇から顔を覗かせた、小さな雑草の匂いに惹かれ車で郊外へ走り出した。
高層ビルの連なる街を背に、僕はハンドルを握り続けた。
一時間近く走っただろうか。
次第に家並みもまばらになり、視界が開けたように視野が広がっていく。
道の幅はどんどん狭まり、行き交う車も滅多にない。
103 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/03/28(月) 16:45:02
一真さん。。お久しぶりです・・・また素晴らしい物語お願いします。
test
105 :
一真:2005/04/05(火) 15:35:52
街は活気に満ち溢れ、希望に胸を膨らませた学生の邪気の無い笑顔。
おろしたてのスーツ。
ほんのり頬を染めた木々の芽。
雲ひとつ無い晴れわたる青空。
コートを一枚脱ぎ捨て、軽い足取りで走り出す春。
僕も歩んでいる。なのに皆が僕を通り過ぎ追い越してゆく。
繋いでいた手をすっと離され、伸ばした手のやり場がない。
106 :
一真:2005/04/05(火) 15:54:40
君は僕の目の前で僕じゃない人と無邪気に戯れ、僕の気持ちを揺さぶる。
知らないだろう?こんな気持ち。
何を求めているのか。誰を求めているのか。
離れていってしまうのだろうか。
たった一言でこれほどに一喜一憂しているなんて、バカだな、僕も。
107 :
一真:2005/04/05(火) 16:04:35
近頃君が夢に出てくるんだ。
夢で君がそっと小さな声でつぶやきかけてくる。
僕は確かな幸福を感じ、口元がほころぶ。
だけどそれは夢でしかない。夢は儚い。
108 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :2005/04/09(土) 12:52:09
>一馬君
どうした?天才?ずっとロムってるぞ。
頑張れ!
109 :
一真:2005/04/09(土) 17:30:02
110 :
紺野:2005/04/10(日) 21:26:38
一真さ〜〜ん♪ 頑張ってくださいね〜♪
私もいつも気にしていますので・・・。
111 :
悦王 ◆hzzwZZRBhk :2005/04/12(火) 12:41:29
>一真君(
>>108HN間違ってたね)
どう?構想練れたかい?
彼女の春の顔、夏の顔、秋の顔、冬の顔・・
それぞれどう移り変わっていったんだろうね。
その時の君の心境は?
スレタイ同様シーズンを感じさせて下さい。
期待age
112 :
ひみつの検疫さん:2024/11/14(木) 08:59:21 ID:MarkedRes
汚染を除去しました。
113 :
一真:2005/04/16(土) 02:32:49
最近は定時に仕事を終えるようにしている。
出勤の時にはまるで目に入らない風景が、僕の目に飛び込んでくる。
会社と部屋の往復だけで、部屋でゴロゴロしてばかりいた僕。
散策しようと言い出したのは君だったね。
住み慣れない町に嫌気がさしていた僕だったけど、渋々重い腰を上げた。
まず通勤路とは逆の方向へ行くことになった。
丸い雲がひとつ浮かんでいるだけの空が、やけに眩しく感じられた。
114 :
一真:2005/04/16(土) 02:48:07
僕はこの街に確かに住んでいる。
なのに知らなかったことが、こんなにあったなんて驚きだ。
知らなくても支障はない。
だけど僕は、小さな頃自転車で走り回り、秘密基地を確保したときのような
興奮を覚えた。
古い駄菓子屋、年老いた婦人が居眠りをしているタバコ屋。
君もこんなふうにこの町を歩くのは初めてだね。
昔ながらの家が建ち並んでいるというのに、人影はまばらだ。
君が何か話しかけてくる。曖昧に相槌を打つ僕だったけど、君も目を輝かせ
どうってことのない風景に感嘆の声をあげていたね。
115 :
一真:2005/04/16(土) 03:05:25
いつの間にか大きな道路に出ていたね。
空港を示す標識が見えている。かなり歩いたのだろう。
粉塵を撒き散らしながら、大きなトラックが何台も走り抜けて行く。
あんなにスピードを出して、どこへ向かっているのだろう。
その速さとは別の空間に僕たちはいたね。時がゆっくり流れる。
建設が頓挫したのか、途切れたままの道路。
空室の札がかかったビルの、すすけた窓ガラス。
君はそれらを指し示して僕に同意を求めてきたね。
僕だって見ればわかるよ。そんな当たり前の事を無邪気に話す君。
116 :
一真:2005/04/16(土) 03:20:33
川があった。
君が立ち止まったから僕ものぞきこんで見た。
黄土色をした水は、流れすらわからないほど澱んでいた。
釣りが趣味の僕には、何の興味も湧かなかった。
僕はじっと水面を見つめる君に目を移した。
すると君は「こんな水の中なのに、草が生えてる」と言って動こうとしない。
だから雑草って言うんだろ。僕は半分あきれて君の様子を眺めていた。
何てことないものに興味を持つのは、いつものことだ。
そう思ったら、無性に愛しく思えたものだよ。
117 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
一真さん、こんにちは。
再開して下さって嬉しいです。
これからも期待していますので、頑張ってくださいね。