☆今回の閉鎖危機を小説に☆

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162名無しライター
ある朝、俺は目を覚ました。
いつもと変わらぬ家族との会話、
そしていつもと変わらぬ電話ごしの彼女の声。

焼きたてのトーストを口にくわえ、
慌しい街並みに身をゆだねていく俺。
今日も取引先との商談がある、
遅れるわけにはいかない。
そうして”アタリマエ”の日常が”アタリマエ”に過ぎ去っていく。
先の商談を淡々と、かつ無難にこなし、一息の休憩。
あまり美味くはないインスタント・コーヒーを口に運びながら、
ふとモバイルでインターネットブラウジングをしてみると……

それは、お気に入りに登録してある
とある新聞サイトの片隅にポツンとあった。

”(株)2ch”

その会社のバナーには、昔行きつけだったとあるサイトの”モナー”というキャラが
きれいにリメイクされて描かれていた。

5年前の記憶が甦る。
当時、どちらかといえば引きこもりの類だった俺が
毎日必死になって投稿していたあの掲示板。
煽られながらも、ときには共感できる物事を見つけ、
ときには本気になって議論をしたりした、あの掲示板。
そして、それは俺に勇気をくれた。
その掲示板が閉鎖された日、
俺ははじめてヒッキーの殻をやぶって
自分の言葉で人と話せるようになった。

俺はわくわくしながらそのバナーをクリックする。
失われた5年間を取り戻すかのように。
あの日の自分をもう一度見つけるかのように。

しかし、そこに俺の期待したものは何一つなかった。
わけのわからない専門用語でびっしりのサイトの中には
まるでおまけのようにモナーが壁紙になっているだけだった。
掲示板を覗いてみると、やはり商談関係のレスしかついていない。
懐かしい匂いのする、俺が知っている”2ch”は
そこにはなかった。

携帯電話が鳴った。
また、仕事だ。こんなところでくつろいでいる場合じゃない。
俺はモバイルの電源を落として、
再び”アタリマエ”の生活に戻っていった……。