647 :
名無し物書き@推敲中?:
フォックスはゆっくりと立ち上がった、目には深い影がおちている、まるで自分は今不機嫌だと言わんばかりの様子
だ。
そしてまたゆっくりと息を吸いゆっくりと吐く、それを何度か繰り返す事によって怒りの気を体の外に出そうとして
いるのだ、だが、どうやら『だめ』らしい。
そしてゆっくりと言葉を発した。
「お前ら、拳を抜いたからには命掛けろよ」
「はぁ?」
その言葉の意味が飲み込めなくて、フォックスを取り囲んでいた連中は頭の中を?マークでいっぱいにした。
だがそんな事にはとらわれず、フォックスのゆっくりとした態度に業を煮やした男達は、我慢しきれなくなり一気に
襲い掛かってきた。
「怖くなってイカれたか?死ねっ」
最初に来た剣持はポケットから銀色の棒を取り出すと、一旦振って長い警棒にした、そいつを振り上げたときフォッ
クスは再び口を開いた。
「それは脅しの道具じゃねぇって言ってんだ」
剣持は警棒を振り下ろした、だが手ごたえがまるでない、なんということだろう、警棒を振り下ろした場所のフォッ
クスが忽然と消えたのだ、剣持にはフォックスの姿が風のように消えたようにしか見えなかった。
だが、次の瞬間剣持は愕然とした、振り下ろした警棒の上に何かが乗っているのだ、人間の足?これは?
剣持は上を見た、だがその物体を見た目は恐怖で瞬間的に凍ってしまった、警棒の上に乗っているのはフォックスで
あった片足で立っている、警棒を握る手に全く重さは感じない、何故だ?フォックスがそこにいる事と重さを感じな
い事が二重の恐怖となって剣持に襲い掛かった、フォックスは胸の前あたりで腕を組んで、手の指は両方人差し指と
648 :
名無し物書き@推敲中?:02/11/27 20:43
親指だけが立っていた、天井を指差しているみたいだ。
剣持は動けなかった、イヤ動けなかったのではない、剣持の体感した時間が通常の何倍もの長さに感じられたからだ
ゆっくりと体感する一瞬の中で剣持はおそろしく鈍間な生き物であったに違いない、フォックスの動きを静観するし
かなかった、フォックスは右足でトンっと軽く飛ぶと、バレリーナの如く体を水平に左に回転させた、左足を外側に
開いている、これはローリングソバットだと気付いた剣持も今はただ左足の踵がこめかみにめり込むのを待っている
しかなかったのだ。
剣持は自分の頭蓋骨がメリメリと内側に向かって破砕されていく痛みをじわじわと感じていた。
「い・て・ぇ・・・」
それはまるで地獄に落ちてゆく様な最低な体感だった、「痛い」の一言ではとても言い表せない、剣持の目から涙が
滲む。
剣持は漸く「ゆっくりの空間」から開放された、が、開放されたと同時に重力という命綱がはずれてフォックスが蹴
った方向へ弾丸のように吹き飛んだ、まるで一流サッカー選手がゴールにいれたシュートの様に。
ドグシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
運悪く飛び込んだゴールは裏口の鉄製ドアの窓の対衝撃ガラスであった、ガラスは豪快に引き千切られ頭は向こう側
に貫通した、ガラスで顔の皮が無残に剥けたであろう、もの凄い量の血がガラス窓の向こうから流れてきた。
フォックスは着地してこう言った。
「雷獣拳法四乃型、烈蹴旋」
「なぁっ!」
後ろで見ていた連中にとってはほんの一瞬の出来事であった。
フォックスはその連中に向かって続ける。
「まだ、終わらないぞ」
そいつ等はわけのわからない我武者羅な恐怖を感じた。