1 :
DTT:
森鴎外はたいへんな甘党でごはんの上に半分に割った饅頭をのせ、
熱い番茶をかけて食うのが好きだった、という話や、種田山頭火の
「夕立が洗つていつた茄子をもぐ」という句や、椎名誠や花輪和一
を読んだりすると無性に同じものが食いたくなりませんか?
読んだら食いたくなるようなおいしい文章を書いてください。
2 :
DTT:2001/03/22(木) 23:52
あれ、食いつきがわるいな。難しいのだろうか。べつに堅苦しく考えなくても
日常のことで良いと思うんだけどな。そうだな、じゃあ、僕の話をしようか。
ここ数日、夕方の喧噪がよく聞こえるんだよね。職場の窓を開け放しているから
なんだけど、色々な音がないまぜになった、なんだかわからないどよめきが、
これまたなぜだかわからないけど、日が落ちる時に迫って聞こえる感じがする。
よ〜〜く耳を澄ますと、車のクラクションや、コンクリートの上を歩く靴の音、
ネギが飛び出たビニール袋をガサガサさせたり、地下鉄の入り口で立ち話に夢中な女子高生、
子供が母親を呼んでいたり。
そんな夕方になると、「ああ、おなじオレンジ色の空の下、いまごろガスボンベ
を開けたり、油を引いているんだろうなあ」と想像してしまうのが、うちの近所の
駅前に出ているたこ焼き屋。ミニバンを改造した屋台で、毎日どこからともなく
走ってきて、店を構える(らしい)。
季節に関係なく、ずっと店を構え続けているが、今の時期はとりわけたこ焼きの
季節なのだろうか、改札を出ると、かならず誰かがバンの横に立っている。(つづく?)
3 :
DTT:2001/03/23(金) 22:09
財布を握りしめたまま屋台を見つめているあいだに、5人くらい買って行く。早く
買わなければすぐに無くなってしまうものではないが、春風が香ばしい香りを
運び、ちょっと焦る。はやく帰らなくちゃ。
たこ焼き屋の親父はごま油を軽くのばし、香りが立ったところで、無造作にダシ
を流し込み、具を仕込んでいく。タコピン(というそうだ)でクルクルと器用に
っくり返してできあがりだ。「ソースは甘辛両方かけて。マヨネーズは半分だけ」
という面倒くさいリクエストには無愛想に答えてくれる。
結局は買って歩きながら食う羽目になるのだ。じわっと熱い蓋を開けるとゴマの香りと、
ソースの酸っぱいにおい立ちのぼる。ごま油を使うのは親父の工夫だという。
サラダ油で焼くと、冷めたときに油くさくて食えたもんじゃないが、ごま油で
焼くと、冷めてもおいしいんだそうだ。ふ〜ん、でも、熱いときにしか、食べないや。
(つづく)