僕の文章も批判してください。[ファンタジー編]

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410名無しさん@お腹いっぱい。
孤独を知らない孤独な修羅がいた。

矮躯(わいく・小さな体のこと)で卑小で浅黒い肌に、ぎょろりとした目ばかりが白かった。王ヶ峰の下空山が天をつらぬく紅蓮柱(ぐれんばしら)をほとばしらせ、自分自身をも吹き飛ばした大噴火のときに、空は満月、星は一つもない空の下で七竈(ななかまど)の木の股から生まれ落ちた修羅だった。

生まれた次の日には、七十里を越えた山の中で熊の首をもぎ取る修羅の中に孤独はなかった。一騎当千の荒武者が群がりかかってもモノともしない剛力は己が生き抜くために不足はなかったし、己が生き抜くために他者は必要なかった。だから、修羅はさみしいとも思わなかった。積み上げられた荒武者の上で、修羅は欠伸(あくび)をしたものであった。

修羅が里に下りてきたのは、山を包んだ白い雪がやわらかな日差しに照らされ溶けた頃のことだった。それまでに何度か雪を見たことがあったような気がするが、修羅は覚えていなかった。里に下りてきた修羅は、牛を食おうといかにも貧乏そうな家の裏手に回ったとき、一人の娘にかち合った。修羅は顔を見上げて(修羅は娘の胸ほどまでしか背丈がなかった)、己を見下ろす娘を見た。今まで生きてきて、寸毫(すんごう)も揺るがなかった己の心がさざめき立つのを修羅は感じた。娘の顔は美しく、娘の目には温かさがあった。

娘の前から逃げ出した修羅はそれから娘にわからないように、娘のことを知ろうとつとめはじめた。

娘は貧乏で目の見えない哀れな境遇だったが、ものを知らずに獣のように生きてきた修羅に知れたことではなかった。ただ、娘が一人の男と会っているときに嬉しそうにしているのが、修羅にも嬉しかった。

やがて男は娘に会いに来なくなり、娘は泣いて暮らす日が多くなった。修羅は男の匂いを追って男をつけた。辿り着いたのは鉄と鉄が咬み合い、首の飛びあう血腥(ちなまぐさ)い荒れ野だった。修羅が見つけた男は折れた鉄を握ってがっくりと首をうなだれていた。修羅には何となく、男がもう動かないのだ、とわかった。だが、修羅は男を背負って、娘のところまで戻った。娘は、男を待っているのだ、と修羅は思っていた。夜の内に修羅は男を娘の家の前に座らせたが娘は気づかず、夜が明けてから別の男に言われて娘は気づいたらしかった。

三日も経たぬ内に、娘は男と同じ土の中で眠ることになった。

修羅はその土の前で、いまでも毎晩泣いている。
411名無しさん@お腹いっぱい。:2001/05/10(木) 08:55

やばい。こういう話に弱い。何度も読んでしまった。絵が浮かぶ。
横向きの文としては、改行も適当だ。
「孤独」「修羅」という言葉を感覚的に使いすぎという印象もあるけれど
ひたすら文節のリズムがいいので気にならなくなる。
こりゃ、虎の穴に送るべきだ。
一行目がいい。
ひたすらいい。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2001/05/10(木) 11:23
>>410
1に見習って欲しいage
413410:2001/05/10(木) 16:41
>411>412
ありがとうございます。
せっかくなので、虎の穴の方にも送ってみようかと。