743 :
名無し物書き@推敲中?:
カーテンに閉ざされた薄暗い部屋に様々な音が蠢いていた。ぎこちなくキーボードをタ
イプする音、肉と肉とがぶつかり合う音、その結合部から溢れる淫らな音、ベッドのスプ
リングが軋む音。それぞれ勝手に暴れ、行き場を無くし壁に反響する。生々しい響きだっ
た。ダブルサイズのベッドの上でノートパソコンに向かう細く小柄な女は尻だけを突き出
し、ふくよかで背の低い男に背後から攻め立てられていた。淫液と汗が飛び散り、シーツ
に等身大の陰をを作る。女はぎりぎりのところで耐えていた。快感と振動に覚束ない手元
を何とか動かし、一文字ずつタイプしていく。
「んっ、うっ、ふっ……」
「おいおい、ちゃんと打てよ、馬鹿にされちゃうぜ」
「あっ、だってっ……んんっ!」
男が下卑た笑みを浮かべ、まるで女の躰を貫こうとするように、打ちつける腰に力を込
める。
「うあっ! あっあっあっ! もっもうっ、ダメッ!」
快楽は思考までをも支配し、女はだらしなく涎を垂らしながら喘ぐのみだった。全てが
霧散し消えていくその最中で、女はどうにか送信をクリックしていた。
二人の声が高く同調し、上り詰めていく。男は迷わず女の奥深くへと欲望の限りを吐き
出す。女は最早、その瞳に何も映してはいなかった。
静かに光るパソコンのディスプレイに女の打ったレスが表示されている。
『離すのと活字tぽでは、同じ内容でも印象が変わるよね』
(了)