ワイが文章をちょっと詳しく評価する![37]

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850第28回参加作品
どうやら眠ってしまっていたらしい。目を開けると、窓からやわらかくてあたたかい春の光が差し込んでいた。
うたかたの夢に酔っていた。僕はなんとなく気分のすぐれない感覚に襲われていて、その原因が何だったのかをできるだけ思い出さないようにしていた。
いつだってそうだ。僕はその場その場を何となく切り抜け、記憶というか、印象というか、深く心に残るような熱い想いなんてものを抱かずに二十歳を通り過ぎてしまった。
うそばっかりの人生。辛辣に言うとそんな感じ。今日も僕は何となく寝て、起きて、何となく心を痛めるふりをしている。
これじゃだめだ! などと言ってもみるが、これもなんてことは無い言葉だけの叱責、叱責という単語。しかも心の中で叫ぶだけの、中身の無い思考。
とりあえず起き上がった。頭が痛い。いや、本当は痛くない。小夜子が行ってしまう前に作ってくれていた手付かずの弁当が僕の心を少しだけ痛めた。
でも僕らには愛は無いはずだ。お互い利用しあうだけ、僕はそう思っている。小夜子はどうだろうか。たぶん同じ思いだからこうなっているんだと思う。
すっかり忘れ去ろうとしていた先程の感覚を、僕は反芻している。気分がすぐれない。手付かずの弁当。そして見る、手形のあざ。車庫のワンボックスカー。
かっとなって殺した。いや僕はかっとなるほど熱い人間ではないはずだ。どういうことですか? 僕は僕に問いかけながら小夜子をおぶって階段を下り、玄関から車庫へ向かった。