季節は春に限定! 文中に会話文として「どういうことですか」の一文を必ず使用すること!
それ以外の設定は自由とする!
「……という大喜利があるんだ、どう思う?」
先日、中田に取材をして立てたドラマ企画が意外にも通り、山崎はその礼に昼飯をご馳走していた。
経費だろう?と、中田は老舗ホテルの日本料理の店を指定してきた。四十路近くもなると腹も舌も肥えてくる。
桜の花びらが散らされた食前酒に始まり、刺身に鯵の揚げ団子、筍の蒸し物、鰆の木の芽焼きを平らげ、豆ごはんを待っているところで、山崎は切り出した。
「どういうことですかぁ」
中田は残った久保田の冷酒を飲み干し、機嫌良く笑う。
「なんでいちいち相談してくるんだ、しかも大喜利ってなんだそりゃ。構成作家あたりの仕事じゃないのか」
といいながらも中田は考えているらしい。「どういうことですか、と学生にはよく聞かれるがな」と、顎をさすり言う。
「ちゃんと説明しなきゃ、先生」
中田はおよそ三流以下といったところの大学の非常勤講師だ。
「違う、レポートでの話だ」
提出されたレポートは三流大学ならなおのこと、ネズミ算式にコピペが増殖するらしい。
同じコピペ群グループらしきものは、すべて不可だ、と中田は厳しいことをいう。
それで「どういうことですか」と聞いてくるそうだ。特に卒業がかかっている学生は恥も外聞もない。
「仮に最初のオリジナルでもコピーさせちゃ同罪だよなあ、ちょっと可哀想な気もするが」
山崎が豆ごはんを飲み込んで言うと、中田は、にやりと笑う。
ところが、卒業証書は手に入るんだよ、と。
学生に紛れこませている構成員に、百万円出せば本物そっくり、絶対ばれない卒業証書が手に入ると接触させるんだ、と声を潜める。
中田の同族で経営する大学だ。その卒業証書は単位の実体こそ伴わないものの、なにもかもが本物と同じだろう。他から問い合わせがあっても、絶対にばれないに違いない。
酔った、暑いな、と腕まくりした中田の前腕の刺青にも桜が咲いているのが見えた。