見慣れた天井。ワンルームマンションで一人目覚めるとクリスマス・イヴの朝だった。
本日、彼氏はいるけど予定は無い。「なんだそりゃあああああ」私はベッドの上で掛布団を跳ね飛ばして悶絶した。いつものように二度寝を楽しむ余裕は無い。
原因は私にある。特別な日に私に隣にいてほしい、そうアイツから言って欲しかった。だから、あえて私から話を振らなかった結果がこれだ。
アイツから言って欲しいと意地を張ってしまった。普段のアイツのガキっぽさからすると、クリスマスを『ケーキを食べる日』くらいに認識している可能性もあったのに。
「今からでも……」電話をして一緒に過ごしたいと言うべきだろうか。でも、アイツにもう予定が入ってしまっているのが怖い。そんな応えが返ってきたら一層惨めな思いをするだろう。
枕元の携帯電話に伸ばしかけた手が力なくマットレスに墜落した。
私が突っ伏した軽い音とインターフォンが鳴るのは同時だった。対応する気になれなかったのだけど、しつこつ、ゆっくりとした感覚で鳴り続ける。
「こんな時間になんなの」身繕いをする気にもなれず、愚痴を一つ零してショールを引っかけ玄関先に向かい「どちら様ですか」と誰何した。フローリングから這い上がる冷気に身震いをしながら。
「俺だよ」反射的にロックを解除して玄関を開け放っていた。
「メリークリスマス。プレゼントがあるんだ」
鼻の頭を真っ赤にした悪戯っぽい笑顔のアイツが私の手を引く。寝間着のまま、辛うじてブーツをひっかけた格好で部屋から連れ出された。「どうだ、なかなかの傑作だ」と、アパートの庭に作り上げたカマクラの前に。
唖然とすることしかできない私に、アイツは言う。
「今はこんなのしかあげられない。でも、いつかもっと立派なのをプレゼントしてやるよ」
その意味が理解できるまでには時間がかかった。
「庭付きの二階建て?」とアイツの腕を掻き抱いて訊くと「善処します」とアイツは困ったように空いた手で頬をかいた。それでやっとアイツが私に何を求めているのかに至れたのだ。今日一日を一緒に過ごすどころではない。
私は照れた。寒さを忘れてしまう程に。狼狽もしていたからか、
「……子供部屋は二つは欲しい、かも」
と呟いてしまい、お互い真っ赤になってしまった。