陽光のなかの宝
きょうはおまつり、めでたいひ。
子供たちが歌いながら先を争って虫を捕る。
むくむくとした手で虫を掴み、虫かごに入れていく。
見渡せば、銀色の敷浪草が弧を描く波の間に、
子供たちが見え隠れしている。
捕まえた稲子が跳んで逃げたと、はしゃぐ声があがる。
暖かな炎のように黄色と朱色に色づき始めた桜がちろちろと葉を揺らす。
実りの季節を迎えるのは良いものだ。
実りに感謝し無事に収穫できるよう、田畑に魔よけの薄を刺す。
そして田畑近くでささやかに飲食をするだけの、祭とも言えないような
集まりだが、収穫に忙しくなる前のひととき、空の下に寄り集まるのは
大人にも楽しみで、そろそろという時期にはいつ集まろうかという
話ばかりになる。
収穫のめどが立ち、大人達が安堵した様子は子供にも伝わるのだろう。
皆、穏やかに笑っている。
びょう、と強い風が吹いて田が金色に波打つ。
子供がきゃあきゃあと叫んで転がる虫かごを追いかけ、
虫とりに飽いて薄の穂を振り回して追いかけっこをしていた子供が
風をうけて手の中の暴れる薄に歓声をあげる。
風が吹けばさすがに少しひんやりする。
隣に立つ妻を気にすると、妻はそっと手を伸ばして手を繋いできた。
温かい手をぐっと握りかえす。温かい体温が伝わるように。
妻の腹にも実りの季節がやってきた。
来年はまだ難しいが再来年にはあの中に混ざって遊ぶだろう。
妻を見ると柔らかく微笑んで子供たちを見ている。
その頬はまろくつやつやとして、やはり光っていた。