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第二十五回ワイスレ杯参加作品:
バベルの増長
「畏れを忘れた者達よ。今こそ神の裁きを受けろ!」
そう叫んで俺が天上から放った稲妻が、『塔』の天辺にピシャリ命中した。
途端、ガラガラと瓦解、崩れ落ちて行く被造物たちの巨塔。と同時に、
「神よ! 許し給え!」
俺に懇願する奴らの声が、幾千もの言語に千切れて地上に拡散して行った。天罰覿面。
最近の被造物どもの増長ぶりは目に余るものがあったが、塔を砕き奴らの言葉を乱してしまえば、もう俺の階梯まで登って来ようなどという不遜な考えは抱くまい。俺への『供物』が豪勢になるのは結構な事だが、それ以上の勝手をされては俺の管理能力が問われるのだ。
久々の大仕事だった。執行の成果を『上』へのレポートに纏めた俺は、流石に疲れて報告用多次元インターフェースの前でついウトウトと寝入ってしまった。
だが、それが大きな間違いだった。
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「どわー!」
午睡から目を覚まして地上を見遣った俺は、思わず悲鳴を上げた。
ほんの数世紀目を離していただけなのに、被造物どもが大変な数に増えている!
おまけに性懲りもなく再建された奴らの『塔』が、物凄い勢いで『こっち』に、俺の居る階梯向かって積み上がってきているのだ。
「いかん!」
慌てて奴らに雷を落とし、洪水を喰らわせ、幾つも隕石を落としてみたのだが、雷は避雷針に逸れ、大水は放水路に吸われ、隕石はミサイルで撃ち落とされる。
俺の力が通用しない? 塔がビクともしない!
「畏れを忘れた者達よ。今こそ神を敬い奉れ!」
万策尽きて、やむなく奴らの内なる良心に訴えるも、
「我不知道的意思!」
「Вынезнаетезначение!」
「何言ってっか解かんねーよ!」
ダメだ。もう俺の言葉も通じない!
そうこうしている内に、ズドン! 遂に塔の天辺が雲の玉座を貫いて、見上げる俺をはるか遠目に更なる天上に伸びて行く。
まずい! 次の階梯に進まれて上の連中にこれがバレたら、降格どころじゃ済まないぞ。
何とか奴らの増長を止めないと! 俺は涙目で塔に飛び付くと、全身全霊を込めて壁に楔を穿ち始めた。