ワイが文章をちょっと詳しく評価する![29]

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674第二十四回ワイスレ杯参加作品
車輪がコンクリートからはみだした雑草に引っかかるのを
引きちぎりながら強引にここまで来たが、限界が来たらしい。
図体だけはでかいキャリー(偽名)は無用の長物と化した。
こんなこともあろうかと精神を、はやぶさ並に備える私は、
風呂敷をテレテレッテレーと取出して包む。…重い。
風は爽やかに吹き、乾いた大気は秋の気配を含むが、早くも私の背中は汗に湿り始めている。
額に汗がにじむ。現代人らしさを保つ眉が消える恐れが発生。
乙女にあるまじき行為ではあるが、仕方ない。手で汗をぬぐい、そのままズボンの尻部分でごしごしする。
もう一度荷物を下ろして、靴紐を結び直すことにした。
うっかりこけでもしたら、首の骨を折る大参事になりかねない。ふざけていると死ぬ。
そこに、上から声がかかった。「ふざけてるのか?」
この声はサークル仲間の腐れ縁のあいつだ。
そっちこそ、ふざけとったらあかんで、やろ。
「真面目に遠い実家から大荷物を運ぼうとしてるやん」と
顔をあげてにらみつける。
「その唐草模様はどう考えても泥棒だけどなあ…」
コイツがサークルのまとめ役になってから、どうにも腹がたつ。
一人暮らし先が大学から近いから、サークル棟の主になってるだけなのに。
「秘策があるから大儲け間違いなし、というからどんなかと思ったら鉄板…。レンタルできるし、だいたいさあ…」
なんやねん、その言い方。
「この穴の大きさ、特注やもん。慣れてる方がいいやんか!」
構内では辺境の地にあるサークル棟も、学祭準備の今は人が多い。
ここで言い争ってもこいつは逃げる…と思っていたら、
「はああ、慣れるって、お前が作るとゴミみたいになるやんか」
つられて大阪弁で話しよった。
「そうやで、秘策はアンタがつくるたこ焼きやもん、めっちゃおいしかったやん。」
ちがう、そういうのを言いたいんじゃない。
「なんで大阪弁で話せへんの?大阪嫌いになったん?…私のこともなかったことにしたいん?」
沈黙が流れる。どうしたらいいんだ、この空気…
「そんなこと思ってたんか。大阪弁にビビる奴も多いから、サークルではまとめ役として避けてたんや。
最近、機嫌が悪かったん、それか」…ちょろい。
奴の絶品たこ焼きを作ってくれることになり、大儲け間違いなし。満足である