ワイが文章をちょっと詳しく評価する![29]

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673第二十四回ワイスレ杯参加作品
避暑地の林道に不釣合いなそのノイズは、今日も鳴りつづいている。
ラジオのチューニングが狂ったようなこの音が、いつから聞こえだしたかはもう忘れた。
耳鼻科へいって検査をしたこともあるが、耳自体には異常はないそうだ。
ただの幻聴、精神科へいけ。医者は暗にそういっていた。
ずいぶんと悩まされたものだが、もうその悩みは終わる。
日差しは少しきついが、雲ひとつ無い秋空だった。
俺は、道の脇に設置された汚いベンチに座り、木々の隙間からのぞく太陽に目をやる。
死ぬにはちょうどいい陽気だと思う。
人生の最後の日にきれいな太陽が見れた。
喜びという感情が湧いてくるわけではない。
ただ、太陽ってあたたかくまぶしいんだなと改めて思った。
その太陽も、自分の人生を照らすものではなかったのが残念だ。
自分が頭を打ち抜いて死ぬ瞬間のイメージが浮かぶ。
俺はどんな顔をして生を終えるのだろう?
ふと、ノイズに別の異音が混じる。
そちらに目をやると、白いワンピースを着た若い女がキャリーバッグを引いてこちらの方に歩いてきていた。
世界一周旅行にでも出かけるようなでかいバッグだ。
だが、その女はそんなことをする活動的な人間には見えない。
なぜあんなキャリーバッグを引いているのだろう?
まあ、どうでもいい。とりあえず、バッグを引く音がノイズと不協和になり耳障りだった。
「静かにしてくれ」無意識に思考が口からでた。
女は立ち止まり、俺に視線を向けきょとんとした表情を浮かべた後、額の汗を手の甲で拭った。
「いや、なんでもない」
俺がそういうと、また女は音を立ててバッグを引きずっていく。
ああ、なんて耐え難い不協和音、ほんと耐え難い、耐え難い……耐えられない。
女は地面に倒れた。
俺は倒れた女に、何度も拳銃のトリガーをひく。
女の全身が白いワンピースごと紅い液体でびしょびしょになった。
「ごめんな、ひどいことをした」
俺は自分が生きる価値のない人間であることを心から理解する。
でも俺は悪くない、このうるさいノイズが悪いんだ。
そうだろう?