「あー、くそおおおお! 良い話が浮かばねえ!」
久しぶりのワイスレ杯だというのに、ぼくは投稿するネタがまったく思い浮かばず朝からいらついていた。
残されたリミットはもう半日もない。
一週間続く凶悪な便秘を打倒するように必死に力んで考えているのだが、まるでアイデアが出てこない。
打つ手なしか……いや、まだやれることはある……そうだ、現場取材だ!
そう思い、地元の塗装の行き届かない道を、歩いたり眺めたりしてインスピレーションを高めることにした。
幸いにも、ぼくは青年といえる年齢だし、暦は秋だし、日差しも強かった。
塗装をしていない道路、というか砂利道をジャリジャリ音を立てて歩くと、足の裏が刺激されて気持ちがよい。
ジャリジャリ、砂利でジャリジャリ。砂利とジャリ。こんなダジャレで面白いことが書けたら苦労はないよなーと考えていると
前から、でかいキャリーバックを運ぶ若い女性が歩いてきて、ぼくの近くで立ち止まって額の汗を手の甲で拭った。
そのキャリーバックは人が入れそうなほど大きい……ん? これはお題どおりではないか!
神からの天啓に違いない! とぼくは思い、思い切って声をかけることにした。
「あ、あ、あのー」
「え!」 女性はびくっと予想以上の驚きを示した。見知らぬ男から急に話かけられた、という事実以上の反応を感じさせた。
すると若い女性は、ぼくが思いもよらぬ発言をした。
「もしかして……あなたもワイスレ杯投稿者ですか?」
は? え? ええええええ! この人もか!
「そ、そうです! そうなんですよ!」ぼくは興奮しつつ答えた。
「わたし、ワイスレ杯のネタを考えるためにお題の女性と同じ行動をしていたんです! うわあ、こんな偶然があるなんて!」
まさか、こんなことになるとは……なんという天文学的確立! ワイスレ杯恐るべし。
「いっしょにがんばりましょう!」「はい!」
こうしてぼくたちは意気投合をし、アイデアを出し合って合作をすることにした。
このありえない、嘘にしか見えない奇跡は、きっと素晴らしい作品となって結実されるに違いない。
ぼくたちはこれまでのスランプが嘘のように湧き出てくる面白いアイデアを出し合っていた。
これから24時までに投稿される、あるレスは必ず1位になるだろう……それがぼくらの作品だ。