ワイが文章をちょっと詳しく評価する![29]

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496第二十四回ワイスレ杯参加作品
 健之が車で出かける目的は女を拾う事だった。
 しかし、日中に獲物はおらず、街中はとうに過ぎ去った。山道へと入る手前、舗装されていない道を横切ろうとした時、キャリーバッグをひいた長い黒髪の若い女が歩いていた。整った顔立ちをした美しい女だ。
 クラクションを鳴らして呼び止めた。女は突然の出来事に驚いた顔をする。
「ねえ、何してるの?」健之が自慢の爽やかな笑みをたたえて、声をかけた。
 女は少し訝しんだ顔をしていたが、その台詞に事情を汲んだのか、上品な笑みを浮かべた。

 健之は女を乗せると、車を山道へ走らせた。女が山の中がいいと望んだのだ。どうやら、車の中ではなく野外で事に及ぶらしい。綺麗だが、変わった女だ。
「キャリーバッグには何も入っていないの?」車の後部座席に乗せたキャリーバッグは重そうな見た目と違い、軽々と持ち上がった。
「必要最小限のものだけ。現地調達ってこと。あのバッグに入ってるものと言えば、シタイだけかしら」女はそう言っておかしそうに口元に手を当てて笑った。
「へえ……? 死体?」健之が意味がつかめず、繰り返した。
「驚いた? 男の『したい』っていう気持ちが入ってるってことよ」なるほど。必要最小限。現地調達。したい。……現地で男に春を売った金が入っているという訳か。危ない冗談だ。
 
 車を山の中腹で止めると、健之と女は山の中へと入っていった。女が先に進んでいく。形の良い尻がリズムを打って揺れる。
「ここらへんでいいかしら」女が周囲を窺う。
 女が白い指を自分の口元に持っていった。「あなたのを舐めさせて」
 スケベな女だ。健之が息遣い荒く股間から自分のモノを取り出した。すぐに女は下品に頬張る。健之が意識を股間に集中しようと目をつむった時だった。ぶちん、というひどく嫌な音がした。ぽとりぽとりと血が滴る。腹部の筋肉がひきつり、何度も波打つ。
 女が何かをほおばったまま満足げに目を細め、二歩三歩と後ろへ下がる。健之が自然と股間に手をやった。しかし、そこにあるべきものが、無い。その時になってようやく、ざああっと股間から血が噴き出した。
 健之が声にならぬ叫びを上げ、地面へと倒れ込んだ。女が口を醜く開け、健之のペニスを血とともに吐き出した。
「嬉しいわ。また、キャリーバッグにシタイが増える……」女は目を爛々と輝かせて笑うのだった。