ワイが文章をちょっと詳しく評価する![10]

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526樹都
「落としましたよ」
 柔らかい、男の人の声だった。
 私はハンドバッグをぐっと握って振り返った。
「はい?」
 黒い眼鏡をかけたお年寄りだった。杖で地面を指している。
 地面には、黒っぽい血の塊があった。
「それは……私じゃありません!」
「では、私が貰っても?」
「え? はい……」
 老人はヒナを掬いあげるように血の塊を手に取ると、笑って、消えた。
 もうなにもいなくなったお腹が、軽くなる。あれは本当は私の子だった。