ワイが文章をちょっと詳しく評価する![6]

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687嘉一朗 ◆oOLN65ZNXE
第一回ワイスレ杯参加作品:「蜃気楼」

「だからさあ、お願いっ!お願いですお姫様!もう一度やり直したいんです。
うんと言ってください。この通り!」
「三流私大の分際でこの私を口説くなんて……」
ここは池袋のとある交差点。
歩行者用信号が青になったとなるや、四方から押し寄せた人群れの中で、先ほどから
ボロけたチノパンにTシャツという典型的な「三流私大生」の三浦が、
リクルートスーツにばっちりと身を固めた若い娘、春子に赦しを乞うていた。
「あんたみたいな非人間を好きになるやつなんていると思う?まず鏡を御覧なさい。そしてアタマの中も。
煮詰まったシチューみたいにとろとろの脳みその持ち主さんね」
三浦の携帯が鳴った。すかさず通話する三浦。
「なに!?文Tの掲示板に!?マジか! やったー。やったぞー。俺は勝ったぞー」
都学院大学文学部に籍を置きながら、今年の春に受けた東大文科T類(法学部)への合格が決まった瞬間だった。
「あなた★。あたしともう一度……」
「ああ、もう一度……ってなるわけねーだろーがあっ」
三浦は春子にモンゴリアンチョップをいれると、周囲でざわめく通行人をおしのけて、
エリートへの階段をのぼりはじめた。

                                 完