183 :
「白」「リモコン」「箒」:
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「機械」「漁師」「アイロン」
少年は夢を見た。
鮫を釣った夢を見た。
船に乗って、釣り糸を垂らし、獲物が仕掛けに食いつくのを待った。
糸が海面にさし込む様子を見つめつつ、
背後にいる漁師の老人に、少年は語りかける。
「おれ、あんたが釣ったのより大きなのを狙ってるんだ」
少年は海面に視線を向けていたけれど、
老人がうなずいたのを背中で感じた。
アタリがあった。少年は糸を引いた。引きは強くて、深かった。
釣り糸が指を切り落とすかと思う瞬間を何度も乗り越えて、
タモ(網)で巨大な鮫を救おうとしたとき、少年は目を覚ました。
少年はもう少年ではなかった。タモを持っていたはずの右手を見た。
その右手はしわがれて、まるで船にいっしょに乗っていた老人のもののように思えた。
「サンチャゴ……」
とつぶやいて、まるで機械じかけのロボットのように立ち上がり、アイロンを手にとった。
彼は、仕事を終えたら海に出ようと思った。鮫を釣りに? いや、サンチャゴに会いに。