1000レスで1つの物語を完成させよう 一冊目

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1名無し物書き@推敲中?
《大まかな流れ》
まずは物語の大設定を決めます。
例)『23歳にして引きこもり暦5年の青年が、自分なりの幸せを見つけるまで』等

次に、リレー形式で文章を繋げていきます。なるべく簡潔な文章が好ましいです。

レスが1000になったら物語の終わりです。きれいに終わらせられるよう頑張りましょう!

注1)1000レスで完結させるため新設定の乱立は控えめにお願いします。
注2)基本的なルールとして、前のレスの文章と論理的に繋がるようにお書きください。
尚、場面転換する場合はわかりやすいように明記してください(<場面転換>と書く等)。

スレが終わったらまとめてみようかと思っています。お約束は出来ませんが・・・
2名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 01:41:32
設定は>>1から
『23歳にして引きこもり暦5年の青年、浜田が自分なりの幸せを見つけるまで』
にします。では僕から

―浜田は夢を見ていた。彼は夢の中でかつての親友に出会い、こう問われた。
「お前、性格変わったよなぁ。いつからそんな風になったんだい」
浜田はかつての親友に質問の答えを言った。そこで夢は終わり、浜田は目覚めた―
3名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 02:19:52
 たしかに夢の中で質問に答えたのだが、何と答えたのか、もう思い出せない。
4名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 02:44:07
寝返りをうって再び目をつむってみるが、覚醒してしまった秩序と意識では、
無秩序な夢の続きを探ることはできない。
5名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 02:59:44
浜田はケータイに手をのばす。一件のメール受信履歴が表示されていた。
誰からメールが来るのは、かなり久しぶりだ。
6名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 04:02:57
(訂正)誰かから
7名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 04:15:25
携帯の液晶画面には何か書かれている。
しかしその内容を浜田は理解することができない。
浜田は、文盲だった。
8名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 04:52:39
23才で引きこもり歴が5年というと高校を卒業してすぐに引きこもったと思われがちだが、
あにはからんや、浜田は小学校の低学年から半ば引きこもり状態であった。
週に1回登校すればよい方で、長い時には2、3ヶ月間家の中でファミリーコンピューターばかりをやっていた。
あのぎこちない動きのドット絵の世界が浜田の全てだったといってもいい。
魔界村の真のクリアをたった2日で成し遂げ、1942は全ての面における撃墜率が100%。
むろんドラゴンクエストシリーズの1〜4まではまったく攻略本を頼らぬ自力クリアで、浜田いわく「かんたんすぎる」とのこと。
文盲なのに……恐るべしポテンシャル!
浜田!
9名無し:2010/02/20(土) 10:22:17
 初恋は中学二年の頃だった。もちろん、浜田に声を掛ける勇気などなかった。
 ただ週に一度見かけるだけで、クラスもちがう、名前も知らない女の子。
 浜田は女の子をビアンカと名付けた。
10名無し物書き:2010/02/20(土) 10:49:06
「ねぇ、アンタ見てるとさ、あたし、なんかこう、べちべちしたくなるの、わかる?、わかるでしょ、べちべち」
開口一番。廊下で擦れ違った時、ビアンカがこう自分に言う、そんな予感は見事に的中した。
両耳のピアス。ったく、ませやがって、とは思わない。
ビアンカも俺も、その年で既に高校二年生なのかと他人に見紛われるぐらい、
外見だけ強烈に老け込んでしまっていたのだ。
11名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 11:29:06
それでもビアンカは、まだ十分魅力的だった。
俺はゆっくりと振り返った。豚小屋のような部屋で過ごしてきた五年間が走馬灯のように脳裏をよぎっていった。今日こそ新しい一日が始まるのだ。
「べちべちされたい」
ビアンカの笑顔を期待してそう言った瞬間、頬に激しい衝撃が走った。
12名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 11:49:56
>>1-2訂正です
暦ではなく歴でした。すみません
13名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 12:00:39
思わず俺は廊下にしゃがみこんだ。何十という笑い声が廊下に響き渡った。
肩で息をしながら見上げると、ビアンカが仁王立ちで俺を見下ろしていた。
ふたたびビアンカの手が上がり俺は必死で頭を防御した。
今度の笑い声にはビアンカの声も交ざっていた。
「ふふっ、かわいい」はじめてビアンカが笑った。
14名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 12:32:26
浜田はふと時計に目をやった。時計の針は正午過ぎを示している。
彼は布団のぬくもりによる引力と空腹感の狭間で、痛くもない頬をさすった。
15名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 12:47:24
引力を振り切って上半身を起こすと、全力で頬を殴った。
そうすれば夢が本当になるかのように。
16名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 13:42:23
浜田は悪態をついた。引きこもりの生活をしていれば2度寝はよくあることだが、
その2度両方で、夢に過去の友人達(それもかなり親密だった)が登場したことに驚いた。
17名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 14:20:04
意識がはっきりしてきて出し抜けに思い出す。
もう25なのだ。
夢に出てきた連中は
みな定職につき、もう親になった者もいる。
18名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 19:04:42
「ここにご飯置いておくわね」と、部屋の外で声がした。母だ。
浜田はいつもドアの横のところに食事を置いてもらっている。
「ああ。ヤングマガジンも、買ってきただろうな!?」
「買ってきたわ」涙声でそう答え、母は階段を降りていく。
「くそババアめ……」
働きもせず家の中に引きこもりきりで食事の用意をしてもらい、
そのうえパシりで漫画まで買ってきてもらいながら悪態をつく浜田……。
人間のグズである。
19名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 21:34:14
ドアを開けるとそこにはステンレス製の盆に乗った食事。カレーライスだ。
「うわあああああ!」浜田は絶叫した。「あのくそババア!」
壁に思い切り蹴りを入れる。
盆の横に置かれた漫画を手に取り天井めがけ投げつけた。
それはヤングマガジンではなく別冊ヤングマガジンであった。
「もう許さん……!」浜田の瞳が狂気の色を帯はじめた。
20名無し物書き@推敲中?:2010/02/20(土) 21:55:06
階下からは床の軋みが響いてくる。母親の足音だろう。
漫画を投げつけた音と、この狂気じみた怒声に母親が気づいているのかもしれない。
浜田は母親に対する憤怒の念も消えぬまま、
踵を返してPCデスクへと転がり込む。
21名無し物書き@推敲中?:2010/02/21(日) 00:57:29
「ごはんいらないの?」
再び階段の中程までやって来た母の声。
浜田は答えなかった。これ以上母に関わると、自らの破壊衝動を抑えられなくなると
感じたからだ。
浜田は文盲のため、漫画は絵を見て楽しむ。別冊に浜田の好きな絵は無かった。
同様にPCも使い方は父に教わり、絵画サイトを開いては更新される絵を見て楽しんだ。
音楽鑑賞やゲームもやるが、それほど楽しいとは思えなくなっていた。
浜田はPCの起動画面を見つめながら、引きこもる前の自分を思い浮かべた。
22名無し物書き@推敲中?:2010/02/21(日) 04:16:53
まず幼稚園の頃のことが頭に浮かんだ。

みんな浜田が近くに寄ると嫌がった。鼻をつまんで逃げた。
浜田は強烈な悪臭の持ち主だったのだ。
当時、浜田には友達どころか口をきく者すらいない。先生すら逃げた。
しかし小学校に入ると口をきく者たちができた。
彼らは浜田を「バイ菌」と呼んだ。
「ぼ、僕バイ菌じゃないよ!うわあああん」
イジメに合いはじめたのである。
「お前はバイ菌だよ。やーい、バイ菌、バイ菌」
会話はこれだけだった。
そして小学校も高学年になるとイジメはますます激しくなり、殴る蹴るの暴力も加わって……。

「うわあああああ!」と、ここで浜田は現実の世界に戻ってふたたび絶叫した。
頭を抱え込み目が血走っている。明らかにゲシュタルト崩壊を起こした様子だ。
「もうやめた!二度と昔のことは思い出さない!」
ベットに飛び乗って枕をぶん殴った。
23名無し物書き@推敲中?:2010/02/21(日) 06:54:03
その様子をドアの隙間からのぞき込んで母は涙をながした。
「どうして……うちの子だけ……」
24名無し物書き@推敲中?:2010/02/21(日) 12:31:46
「お前が別冊ヤングマガジン買ってくるからだろ!」
浜田はわけの分からない逆ギレをした。
机上の花瓶を凶器に母へ殴りかかっていく。

「ひ、ひぃぃぃ」
彼の母は腰を抜かして失禁した。
25名無し物書き@推敲中?:2010/02/21(日) 22:16:37
その拍子に母のスカートがめくれ生白い太股があらわとなった。
彼の母は四十を少し越えたばかりで杉本彩そっくりである。
たちまち浜田は欲情した。
26名無し物書き@推敲中?:2010/02/22(月) 01:41:09
そして浜田も意外や意外、ウエンツ瑛士にそっくりだった。
母も欲情した
27名無し物書き@推敲中?:2010/02/22(月) 03:05:22
「はっ。俺は何て夢を見ていたのだろう……!」浜田はがばっとベットから半身を起こした。
パジャマは汗でべたつき顔面蒼白である。
「引きこもりも5年になると、さすがにヤバいな。頭がおかしくなり始めたサインかも……」

壁の掛け時計を見ると午前7時。
カーテンの間からさす朝の光がまぶしい。
28名無し物書き@推敲中?:2010/02/22(月) 04:03:21
朝の7時になると近所の女子小学生が登校し始める。
浜田にとって最高のハッピータイムだ。
浜田は激突するような勢いで窓ガラスに顔面をくっつけ、まばたきもせず通りを見下ろす。
鼻息が荒い。
29名無し物書き@推敲中?:2010/02/22(月) 11:32:45
しかしいつもの集団登校の時間を過ぎても、一向に小学生達の姿は見えてこない。
程なくして浜田は、一台のワゴン車が彼の家の斜向かいの駐車場に停められているのを目にした。
「あれは…」
シルバーのワゴン車。浜田の父のものだ。その見慣れた車の存在は、彼の父が家に居ることを示す。
いつもならこの時間、父は仕事に出ている。浜田は今日が月曜の祝日であることを知った。
30名無し物書き@推敲中?:2010/02/22(月) 11:43:54
父親はどうでもいいが、小学生が見れないのは最悪だ。
浜田は体に渦巻く欲情を晴らす為にPCを起動した。
ZIP探しである。

31名無し物書き@推敲中?:2010/02/23(火) 01:30:19
まずはロシアの児童ポルノ掲示板にアクセスしてみた。しかし残念ながら、新しい投稿はなかった。
他にも色々当たってみたが、どれも既出画像ばかりで、悲しいかな、浜田の粗チンはピクリともしない。
そこで浜田は仕方なく、パソコンを離れて本棚に向かった。エロ漫画で一発抜いてやろうと思ったのだ。
しかし、お気に入りの漫画本を手にとった、そのときだった。窓の外が青白い光に包まれ、家がガタゴトと揺れ始めた。
そして次の瞬間、浜田は耳にしたのだった。神の声を――
32名無し物書き@推敲中?:2010/02/24(水) 11:13:40
「浜田・・・私の声を聞きなさい浜田・・・」
それは頭に直接響いてくる声であり、確かに神であると確信出来るような威厳に満ちた声だった。
しかし浜田は無神論者である。
「その幻想をぶち殺す!!」
「浜田よ・・・キャラが違うでしょう・・・」
33名無し物書き@推敲中?:2010/02/24(水) 17:07:07
浜田は急に泣きだしたくなった。
それは迷子になった小さな子供が母親と再会したときに似ていた。
強烈な安らぎが浜田の胸の中に洪水のように流れ込んできたのだ。
「ああ、神よ。申し訳ありません。ひどい口のきき方をして。
私は、その、すごく、混乱していて、このような状況で、このような姿で、
あなたにお会いするのがひどく恥かしかったのです」
「浜田よ。いいのですよ。私はすべてを断罪し、全てを許す存在。
それよりも、私の話を聞いてくれますか。浜田。これは大事なことです」
34名無し物書き@推敲中?:2010/02/24(水) 17:13:21
「いや、それはちょっと……」
「な、なぜですか! 今の流れだったら、はいと言ってくれなければ道理に合わないでしょう」
「だってなんかめんど臭そうだし……」
 浜田は近くにあったセンズリ用のティッシュで涙を拭った。ついでに鼻を噛み、ブッとおならを漏らす。
35名無し物書き@推敲中?:2010/02/24(水) 22:51:34
「待てよ」
浜田ははっとした目つきで顔を上げた。
「あなたの声がいかにもな感じだから、つい神様か何かだと思ってしまったけどさ。あなたが神である証拠が何も無いじゃないか」
浜田がこう言うと、再び威厳に満ちた声が浜田の頭に響いた。
「……私は自分が神であるなどと言った覚えはありません。あなたが勝手に解釈しただけです」
ある意味暴力的なまでの安らぎに意識を持って行かれそうになりながらも、浜田は答える。
「あなたもあなたでそれっぽく答えたじゃないか。神でないなら、あなたは何者なんだい」
36名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 00:18:38
「私ですか? 私はですね……その……あ、あれです、あれ」
「あれじゃわからないよ。はっきり言ってくれ」
「私は……あれです。う、う――」
「まさか宇宙人だなんて言うつもりじゃないよな?」
 一瞬、変な間が開いた。
「や、やだなー。そんなわけないじゃないっすか。ちょ、冗談きついっすよ。ハハッ。ハハハハッ」
「じゃあいったいあなたは何者なんだい。誤魔化してないで正体を言え」
 浜田は強い口調で問い詰めた。と、そのときだった。
37名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 14:38:43
浜田は急に目が見えなくなった。
いや、正確には急に暗闇の中に突き落とされたというのが正しいのかもしれない。
浜田はどこかわからない、ただひたすら暗闇の広がる広大な空間にいた。
それはまるで星のない宇宙に浜田一人が存在しているようであったが、
浜田は確かに体を支えている床、もしくは地面の感触を感じるのだった。
浜田は狼狽しつつ叫ぶように言った。
おい、これは何だ。どうなってるんだ。何も見えない。おい、誰か、さっきのやつ。
さっきのやつはどこにいった。頼む。答えてくれ。そこにいるんだろ。」
38名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 14:54:12
おかしなことが起こっている。
確かに何かを踏みしめている感触はある。でもその感触は頭の上にあるのだ。
気味が悪かったが、その感触以外は何もなかった。
この感触がなくなれば、浜田が存在している証拠は消えうせる。
声は端から闇の中に吸い込まれてしまう。
大声で叫ぼうと息を吸い込んだとき、耳元に吐息がかかった。
39名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 16:39:32
思わず悲鳴を上げそうになったが、浜田はどうにかこらえた。
自分のすぐそばに、何かがいる。それもかなり至近距離に。
その何かの息遣いは荒く、まるで獣のようだった。
浜田は自分の体がこわばっていくのを感じた。
「……?」
突然、獣のような息遣いが消えた。浜田は安堵の溜め息を漏らす。その時だった。
「お前が浜田か」
先程自分の部屋で聞いた、安らぎ溢れる声とはまるで違う、耳をつんざく稲妻のような男の声が浜田の目の前から聞こえた。やはり、かなり近い。
「俺の名はカガリ。お前、ちゃんと風呂入ってるのか?相当におうぜ」
カガリという男は苦々しく言い放った。
40名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 16:47:58
そして、悪戯っぽい笑い声が聞こえた。
浜田ははっとして、再度呼びかけようとしたが先ほどと同じように
声は闇の中に吸い込まれてしまって響かない。
空気ではなく体の内部からの振動で伝わってくるはずの音さえも聞こえなかった。
浜田はそれでもめげずに何度も声をだして、吐息の主に呼びかけようとした。
しかし、結果は何度やっても同じだった。
声を出そうとするたびに、徐々に中身のない宝箱を開けたようなやるせなさが
浜田の心を支配した。
41名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 16:50:46
↑ごめん。40だけど、長いこと考えてたせいで38につなげちゃったみたい。
忘れてくれ。
42名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 18:32:24
「な、なんだおまえは! 何者だ! ここはどこなんだ!」
 浜田は小刻みに震える唇から、やっとの思いで言葉を絞り出した。
「ここはな、お前の心の中だ。そして俺はな、お前の心の中に住む悪魔だよ」
「な、なにバカなことを……」
「ちなみにさっきの声は、お前の心の中に住む掃除のおばちゃんだ」
「そ、掃除のおばちゃん? 悪魔ときたら次は天使じゃないのかっ。それが『お約束』ってもんだろう」
 嘲りを含んだ短い笑いが響いた。
「バカ言うな。お前の心の中に天使なんかいるわけないだろう。とっくの昔に荷物をまとめて出て行ったよ
 あの人はな、お前が生み出す心の汚物を毎日せっせと片付けてくれてるんだよ。有り難く思いな」
43名無し物書き@推敲中?:2010/02/25(木) 20:20:44
「……嘘だろ。」
浜田は唐突に言った。
浜田は連続的に起こる不思議な事象を体験していくうちに、逆に冷静になっていたのだ。
「何がだ。何が嘘なんだ」
悪魔が何食わぬ顔で言った。しかし浜田は続けた。
「掃除のおばちゃんだよ。あの人はやはり神だ」
くはははは。悪魔は気持ちの悪い声で高笑いをした。そして、一気に話した。
「神だと?そんなものこの世界にいるわけないだろ。ましてや、いたとしても
ひきこもりのお前なんかに会いに来るわけがない。それにお前はさきほど、自分で
神の存在を疑ったじゃないか」
浜田は闇の効力が少し弱まった気がした。声がすんなり出るようになっていた。
「そう、疑った。だからだ。だから、お前につけ込まれたんだ」
44名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 01:00:27
「やれやれ。どこまでも愚かな男だ。今さっき声そのものが、神ではありませんと否定したのを忘れたのか?」
「そ、それはつまり……」
「だいたいお前はだな、一貫性がなさすぎる。初めは怒鳴り声を上げて、そのすぐあとに涙を流して許しを乞うたかと思えば、
そのまたすぐあとには話を聞かずにおならをした挙げ句、矢継ぎ早に疑いの言葉を投げ掛ける。
と思ったら今度はまたやっぱりあれは神だったと言い出すのか? いくら何でもころころと態度を変えすぎだろう。
まるで複数の人間に操られてるようだ。何とも哀れな生き物だな、お前は」
「う、うるさいっ!」
 浜田はだんだんと面倒くさくなってきた。そもそもそうやって説教じみたことをされるのが大嫌いだから、長年ニートをやっているのだ。
 悪魔は再び不気味な高笑いを響かせて、言った。
「まあいい。そんなことよりも、どうだ、俺と一緒に、世界をぶち壊してみないか?」


45名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 13:36:06
浜田の思考回路はパンク寸前だった。
「世界を?壊す?……どういう意味だ」
カガリは呆れたように答えた。
「わからないやつだな。部屋に引きこもりきりで視野の狭いお前の、そのちっぽけな世界をぶち壊してやると言ってるんだ」
「そんなことが出来るならとっくにやっているさ。それが出来ないから俺は5年間引きこもっているんだ」
暗闇の中でも、カガリが苛立ち始めているのが感じられる。
「だから、それをこの俺が手伝ってやると言ってるんだ。さあ、やるのか、やらないのか。2つに1つだ。悪魔にとっては契約ってものが非常に大事でな。お前が一言『やる』と言えば、俺は無限の力を発揮できる。
…お前にはそれなりの代償を払ってもらうが。なに、引きこもりの生活から抜け出せるなら安いものさ」
カガリが息継ぎをするたび、生ぬるい吐息が浜田の顔にかかる。
46名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 16:13:08
浜田は息苦しさと嫌な汗が全身からふき出るのを感じた。
しかし、それでも浜田は冷静さを保とうとした。
浜田は頭の中で何度もこうつぶやいた。
「悪魔が本当のことを言うはずがない。あいつは俺を騙そうとしているんだ」

47名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 16:34:10
見くびられたものだな。俺が嘘をついてるっていうのかい?」
からかうようなカガリの声が響いた。
「俺の考えを読むのはやめろ!」
 浜田は叫んだ。カガリはおかしくてしかたがないという感じで笑いだした。
「わかってないな。読むまでもない。それどころか、おまえが考える前から俺には
おまえが何を考えるかわかってるんだぜ」
 浜田は何も言えなかった。ふと、おかしなことに気付く。掃除のおばちゃんがいるのなら、
なぜ悪魔を排除してくれないのだろうか。
「彼女は賢明だよ。俺に歯向かったらどうなるかよくわかってるんだな」
 浜田は滲み出る汗を拭った。考えは全て見抜かれている。
48名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 16:36:43
↑カガリ=悪魔ですか?
ちょっとわかりづらいので、御存知のかたは教えてください。
49カガリ=悪魔です。:2010/02/26(金) 16:54:23
「どうだ? 俺と一緒に世界を壊してみる気になったか?」
 ガガリはさも愉快そうに言った。
「そ、その前に、姿を見せろ。じゃないとやっぱり信用できない。この暗闇をどうにかしろ」
「本当にいいのか? 俺の姿を見て、後悔しても知らないぞ」
「いいから早く見せろ!」
「わかったよ。それならば、お望み通り見せてやろう」
 声と同時に、空気が揺れ始めた。風が吹き抜けていくのとは明らかに違う、まるで肌を愛撫するかのような繊細な揺れ方だった。
 次の瞬間、漆黒の闇が突然引き裂かれ、目映いばかりの光が目を覆う。浜田は思わず目をつぶった。
「どうした。目を開けて見てみろ。これが俺の姿だ」
 ガガリの声が鼓膜に触れた。浜田はおそるおそる瞼を開けてみた。すると、そこに立っていたのは――
5049:2010/02/26(金) 16:57:11
あ、ごめん。間違えて「ガガリ」ってしちゃったw カガリだね。訂正します。
51名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 17:06:06
コウモリのような翼と群青色の長い髪を有したほとんど服を着ていない女性の姿だった。
先端の尖った長いしっぽのようなものも見え隠れしている。
まさに絶世の美女とも言えそうな美しい顔には不吉な笑みが貼り付いていた。
52名無し物書き@推敲中?:2010/02/26(金) 22:20:38
「女だ…。女じゃないか!」浜田は抗議するように言った。
「なんだ? 俺が女だったら気に食わんか?」
 真っ白な歯と野太い声が恐ろしく不釣り合いだった。
「だって、見かけはそんなに――綺麗なのに……」
「わかったよ。じゃあ、こんなふうに喋ればいーい?」
 カガリは半裸の上体を前に突き出しながら言った。
53名無し物書き@推敲中?:2010/02/27(土) 02:42:43
 さっきまでとはまったく違う声色だった。耳を柔らかく包み込むようで、とても可愛らしい。
 浜田は一発でノックアウトされた。なぜならその声は、浜田のお気に入りのエロゲーのヒロインの声と同じだったからだ。
「も、もしてかしてお前は声優の――」
「んなわけないでしょ。これはね、浜ちゃんの好みに合わせてあげたの。好きでしょ? こういう声」
 もちろん大好きである。浜ちゃんと呼ばれるのもたまらなく好きである。よく考えてみたら、このカガリのルックスも途轍もなく好きである。
 翼と尻尾。青い髪とモデル系の顔立ち。そして何よりも、たわわなおっぱい。
 さらにそのおっぱいにはもう一つ、浜田を虜にさせる要素があった。なんと右の乳首が、陥没していたのだ!
54名無し物書き@推敲中?:2010/02/27(土) 14:47:43
田はその場に固まったまま何もできなかった。
ただひたすら勃起を防ぐために気持ちを落ちつかせようとするので精いっぱいだった。
浜田は生身の女の裸というものを生まれてから一度も見たことがなかった。
もちろん、ネットでは見たことがあった。画像や動画でヴァギナの構造の細部まで
浜田は知っていた。しかし、画像や動画と生身の女では話がまるで違う。
浜田は自分の中である願望が急激にその存在を大きくしていくのを感じていた。
浜田はもうカガリの美しい肢体から目をそむけようとする努力をしなくなっていた。
すると、カガリが唐突に笑った。そして、美しい声で浜田に言った。
「隠そうとしても無駄よ。さっきも言ったでしょう。
私にはあなたの考えてることが手に取るようにわかるのよ」
55名無し物書き@推敲中?:2010/02/27(土) 15:18:17
「あぁっ!やめだ、やめ!自分でやってて気持ち悪くて仕方がねえ」
カガリは元のカミナリ声に戻った。浜田は残念に思う自分を戒めながら聞いた。
「で、ここはどこなんだ?何で頭の上に床があるんだ」
暗闇の中、カガリだけがぽつんと浮かび上がっている。これほど滑稽な光景を、浜田は見た事がなかった。
「…ここか。ここはな、お前の部屋のナディルだ」
「は?」
「そして掃除のおばちゃんはゼニスにいる」
「ナジ…何だって?」
説明好きの自称悪魔は朗々と喋り続ける。
「ナディルとゼニス。どん底と天辺だ。まあ俺が勝手にそう呼んでいるだけだが」
浜田は次々と出てくる新しい情報に頭がついていけない。浜田は声に出して情報を整理する。
「ここは…上下逆様で…俺の部屋の…ナディル?」
「そうだ。ここはお前の部屋の真下にあり、上下は真逆の世界だ。ゼニスのルールはよく知らん」
56名無し物書き@推敲中?:2010/02/27(土) 15:26:27
>>55です
コピペしたら上の行が消えてしまった・・・
「あぁっ!やめだ、やめ!――
の行の上に

浜田は自制の念を振り切り、右の乳房に手を伸ばそうとした。しかし、そこで今度はカガリの方が自分を抑えきれなくなった。

という文の追加お願いします。
57名無し物書き@推敲中?:2010/02/27(土) 19:49:19
そのときだった。カガリの体ががくっと大きく揺れた。
すると急に、カガリは慌てた様に浜田に問いただした。
「私は今、何をしていたんだ。おい、言うんだ」
浜田はカガリの余りの形相に今さっきカガリの口から聞いた内容を伝えた。
するとカガリはあからさまに怒りの態度を全身から発し、大声で叫んだ。
「私に干渉して、間接的に世界のことわりを伝えようとしやがったな。だが、こいつは
渡さんぞ。こいつの導き手になるのは私だ。お前らには渡さんぞ」
その声は凄まじく、空間全体が揺れているような錯覚さえ起こさせた。
58名無し物書き@推敲中?:2010/03/01(月) 12:58:39
「……もういい。お前を一度部屋に帰してやる」
カガリが吐き捨てるように言い放った言葉を聞いて、浜田は心底ほっとした。もうこれ以上「自分の頭の上に立っている」感覚に耐えられなくなっていたからだ。
「目をつむって、30秒数えろ。その間に目を開けてはいけない。絶対にだ」
浜田は大人しく従うことにした。ナディルの世界では、自分は陸に揚げられた魚と同じ。自分を生かすも殺すもカガリ次第である事を感じていた。
「そうだ。絶対に目を開けるなよ…」
1秒、2秒と浜田は頭の中で数えていく。しかし、なかなか変化は訪れない。
浜田が20秒ほど数えたところで、カガリが思い出したように言った。
「そうだ。お前が来たことで、均衡が破られちまった。お前の部屋にも、何か変化が起こっているかもな」
カガリが言い終わらないうちに、浜田は逆上がりに失敗して落ちるときのようなぐるりと回転する感覚に襲われ、思わずしりもちをついた。
床が「ちゃんと」下にあることを確認し、浜田は恐る恐る目を開いた。
59名無し物書き@推敲中?:2010/03/01(月) 13:02:00
>>58訂正です。
揚げる→上げる
60名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 09:59:22
浜田の顔には安堵と喜びの表情が浮かんだ。
そこは見慣れた自分の部屋だった。
しかし、浜田がベッドの方に振り返った時だった。一瞬、浜田は全身が固まった。
そして、下品な高笑いが聞こえた。浜田の中で希望や元気といったものが、急激に
しぼんでいくのがわかった。ベッドの上にはカガリが腰かけていたのだ。
「なんでいるんだ」浜田は抗議するようにカガリに尋ねた。
「いちゃ悪いのかい?言ったろう。おまえの導き手になるのは私だと。おまえはもう、
私からは逃げられないんだよ。それを教えるためにこうして面倒なことをしてやったのさ」
カガリは意地悪そうな頬笑みながら浜田に言った。
浜田はひどく馬鹿にされた気分だった。そして、カガリに向ってあからさまに悪態をついた。
ふと浜田は押し入れの中にバットが入っていることを思い出した。
押し入れは浜田のすぐ右にあって、浜田の方がカガリより近い位置に立っていた。
浜田は考えた。バットが入っているのはたぶん下の段だ。
急いで開けて振り返れば、カガリが身構える前にバットを持ってカガリと向き合えるだろう。
浜田は意を決して、押し入れを乱暴に開けるとガサゴソ中を探った。
すると、手に硬いものが当たった。あった。浜田はそれをつかむと素早くひっぱりだし、
カガリの方に向き直った。
カガリは表情を崩さなかった。意地悪そうな頬笑みを保ちながら、浜田に言った。
「ほう、それをどうするつもりだい」
浜田は大声をあげながらバットを振り上げて、カガリに突進した。
「あああああああああああああああああ」
61名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 13:07:21
浜田の攻撃をカガリは避けなかった。
バットがカガリの脳天をとらえる。ぐしゃっ!

あまりにも見事に脳天を直撃したためカガリの頭部は両肩の間にめり込んでしまった。

しかし、まるでこたえていない様子だ。出血すらしていない。
「くっくっくっ」と、カガリの笑い声が聞こえてくる。

「う、うわああああああ」浜田は続けざまにバットを何度も何度もカガリめがけ降り下ろした。
62名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 14:36:38
するとカガリの体から濃い青い煙が立ち上り始めた。
煙は徐々にその量を増して、やがてカガリの体はそっくりそのまま煙になってしまった。
そして、その濃い青い煙はまるで生き物のように浜田の体にまとわりついた。
浜田は煙に向かってやたらめったらバッドを振り回したが、当然のごとく手ごたえがない。
そのうち浜田はバットを振るのに疲れて、息が上がり、動きが鈍くなっていった。
それを見計らったかのように煙は浜田の体を押さえつけた。煙に巻かれた浜田は
身動き一つできなくなってしまったのだ。
浜田は叫んだ。
「くそ、この、離せ!」
煙の中からバカにしたような笑い声がした。そして、次の瞬間には煙が浜田の
口の周りと首筋に蛇のようにまとわりついた。
浜田は息ができなかった。
「ふぐぅ。苦しい…。助…けて。」
煙の中からはそんな浜田の苦しむ姿を楽しんでいるかのような笑い声が聞こえてくる。
そして、浜田はカガリの笑い声だけが響く濃い青い煙の中で、ついに気を失ってしまったのだった。
63名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 14:58:56
元の人型の姿に戻っていくカガリが、意識を失った浜田に呟く。
「まさか地上に上がって来れるとは思わなかった。お前が偶然にもナディルに落ちてくれたお陰だよ。さて…」
カガリはベッドから立ち上がると、ドアの方に目をやった。
「こっちはどうかな。試してみる価値はある。…おっと、やはり地上は勝手が違うな…」
カガリは慣れない足取りで扉の前に移動し、取っ手に手を掛けた。
バチィッ!
物凄い音がして、カガリの体は扉と反対方向へ弾かれた。
「やはり“観測者”からは逃れられんか…」
カガリは忌々しげに気絶している浜田を睨みつけた。
64名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 15:32:55
浜田は夢を見ていた。夢の中で浜田は姉の葉月といっしょに遊んでいた。
葉月は元気で活発な姉だった。浜田はいつも葉月の後ろにくっついて行動した。
葉月はそんな浜田をいつも面倒見よく接してくれた。
例えば、自分が食べずに残しておいたモナカのアイスをもうすでに昨日、自分のものを食べてしまった浜田が
自分も欲しいと泣くと葉月は
「はいこれあげる」
と言って半分に割り浜田に手渡した。
(場面が変わる)
葉月が小学2年生のとき、浜田が幼稚園の年長のときだった。
父親と母親が目を真っ赤にして泣いていた。浜田が
「どうして泣いているの?」
と聞いても、父親も母親も泣きながら浜田の頭をなでるだけで、何も言わなかった。
午後の日差しが異様に明るかったのを覚えてる。
その日以来、浜田は葉月に会うことができなくなった。
(場面が変わる)
ふと気付くと、浜田は大人の葉月と向かい合っていた。葉月は手足のすらりとした
豊かな胸のふくらみを有した美しい女性に成長していて、髪も伸びていた。
浜田は「はーちゃん」と昔の呼び方で葉月に呼びかけた。
すると、葉月は浜田に微笑んだ。その顔は不思議とカガリにそっくりだった……。
65名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 16:37:43
浜田が夢を見ている頃、カガリも夢を見ていた。
いつの間にか寝てしまったのである。

カガリには弟がいた。生意気だけど、気の弱いところがある弟だった。

いつも姉である自分の後を追いかけてくる甘えん坊でもあった。
ケンカをしたあとも決して姉の自分から離れることはなかった。

ケンカの理由の大半は母が用意してくれたアイスモナカの取り合いだった。
なぜか母は二人の子供に対してアイスモナカをひとつしか与えなかったのだ。
ケンカになるわけである。

けっきょくは二等分して食べることに落ち着いていたのだが……。
66名無し物書き@推敲中?:2010/03/03(水) 17:14:47
「…おっと寝ちまったか。おい、起きろ」
カガリのカミナリ声が響いた。浜田は目を覚ましたものの、まだぼんやりとした意識の中でカガリに言った。
「まさか、はーちゃん…なのか?」
カガリは頭を掻いた。カガリの仕草からは女らしさなど微塵も感じられない。
「やれやれ。お前にはどうやら、一から説明してやる必要があるらしい。いいか?ナディルというのは、お前の部屋の真下にあると説明しただろ」
「ああ」浜田の意識が段々はっきりとしてきた。夢のせいか、カガリへの恐れは不思議と無くなっていた。
「実はナディルはかなり広い。この地球の内側にある地球と考えればいい。だが、ナディルには俺のような生物はほとんどいない。ナディルに生物が生まれるには条件があってな。地球上の生物が一定の場所から動かずに5年以上生きること。それが条件だ。
俺達は自分を生んだ奴の真下でしか生きられない。そして俺達の姿は、“観測者”であるお前らの願望によって形作られる」
「つまりこういう事か。俺みたいに5年以上同じ場所から動かない人は、ナディルにお前みたいな自分の願望で出来た生物を生み出す。で、“観測者”になる。…観測者って何だ?」
「観測者は、自らが生み出したナディルの住人とのみリンクすることが出来る。だが、どちらかがどちらかの世界に行くことは通常無い。何故かお前が落ちてきて、行き来が出来るようになったようだが」
「…リンク?」
「何らかの手段で情報を共有できるのさ。殆どの場合はPCを使う」
そう言ってカガリはPCの方を見た。PCの電源は浜田がナディルに落ちる前に起動していた為、付けっぱなしになっていた。そこに映っていたものを見るやいなや、カガリが驚きの声を上げた―
67名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 06:12:55
そこには文字が書かれてあった。ミミズののたくったような、奇妙な文字だ。
浜田は文盲でありながら、なぜかそれを文字だと理解することができた。意味も分かる。
ふつうの人間ならそれが文字であることすら認識できなかったに違いない。
カガリは言う。「わたしたちの世界の言語だ。最後まで読むがいい」
浜田は促され、文章を目で追っていく。
浜田の顔に、驚愕の表情が浮かんでくる。
68名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 09:27:41
そこにはこう書いてあった。
お前が見たものは果たして夢だろうか。
お前は確かめなくてはならない。
お前の人生をかけて、お前は全てを知ろうとしなければならない。
お前は自分で世界を狭くした。
お前は世界の広さを知らなければならない。
お前は扉を開けなければならない。
扉を開けるには導き手と交わらなければならない。
導き手はそれを断れない。
69名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 10:58:50
「これは、どういうことなんだ?」浜田はカガリに視線を戻す。
カガリは浜田の右腕をむんずと握りしめた。
「さあ、世界の広さを知りに行こう!」そのまま浜田を引きずって部屋の外に出る。

階段の下のところには不安気な表情を浮かべた父と母。

浜田は、悟った。
「あ、テメェ本当は施設の人間だな!前にも何人かきたことがある!引きこもり問題を請け負う施設の奴らが!」
カガリは無言で慈悲に満ちた瞳を向けてきた。
浜田は、パニクった。「うわああああああ。ひぎぃぃぃ。外こわいよおおお!ぎゃああああっ」
70名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 11:59:44
「そんなわけねえだろう」
カガリは馬鹿にしたように言った。
気づくとそこは砂漠だった。
浜田とカガリはどこまでも広がる広大な砂漠にぽつんと立っていた。
素足が懐かしい砂の感触を捉えた。
カガリは無言で歩いた。
浜田は一度だけカガリに「ここはどこなんだ」と尋ねたがカガリは答えなかった。
浜田はこのままカガリから逃げ出してしまおうかとも思ったが、この見渡す限り砂しかない
場所で一人になることが賢明な判断ではないことに気づいて、その考えを実行しなかった。
さらさらとした砂がときおり浜田の足を捕り、歩きにくかった。
急に風が強くなり、砂嵐が辺りを包んだ。視界もきかず、耳も風の音しか聞こえなかった。
浜田は死の恐怖を感じた。砂に埋もれて、ミイラになった自分の姿を想像したのだ。
すると、前方に一件のイスラム教のモスクのような建物がかすかに見えた。
カガリもそれに気づいたらしく、急いでそこへ向かおうとしている。浜田もそれに続いた。
71名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 12:29:41
カガリはどんどん先へと行ってしまう。差はひらくいっぽうだ。
浜田は引きこもりで日常的にロクな運動はしておらず、そのくせ食欲旺盛で食っては寝ての不摂生の極み、体重は100キロもあった。
豚の化身のような姿で「ハァハィ」いいながら今にも倒れる寸前。顔面は蒼白である。
蜃気楼のかなたにカガリが消えるのを認めた瞬間、浜田は死を確信した。
72名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 13:22:47
死ぬ。そう思った瞬間、浜田の脳裡にギネス記録となっている五百キロの男の顔が思い浮かんだ。
家の壁をぶち壊し、フォークリフトでベッドごと病院に運ばれるテレビ映像を笑いながら見た記憶があった。
男が何か、得意になって話している。悔しいが、英語はわからない。
ただ、すもーぶすもーぶと喧しかった。
浜田はだんだん腹がたってきて、すもーぶじゃないと怒りに震えながら男を睨むと、男は微笑んでいた。
もしかしてこれはスモールなのだろうか。まだまだ小さいと勇気づけてくれているのかもしれない。
ようやくそれに気付いて穏やかに眺め始めると、男が急に忿怒の表情を浮かべ、激しく頬を打った。
73名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 13:45:13
「起きろ!」
目を開けると、カガリの姿が目の前にあった。そして、浜田はもう一発ビンタをくらった。
カガリはさらにもう一発ビンタをくらわそうと手を振り上げた。
「もう起きてるよ」浜田は叫ぶように言った。
「なんだ。そうか」カガリは残念そうに言った。
浜田はカガリが明らかにわざと余計にビンタをしやがったんだと思った。
そこはどうやらモスクのような建物の中だった。
そこにはキングサイズよりさらに大きなベッドが一つだけあるだけで、他には何もなかった。
「あの言葉を読んだだろう」カガリが唐突に言った。
「あのPCに映っていた言葉か。あの、世界のことを知らなければならないとか……」
「ああそうだよ。だが、おれの言いたいの部分はそこじゃねえ。おれが言いたいのは、
とりあえずここから抜け出すにはお前とセックスしなければならないってことだよ」
「……?おれをここへ連れてきたのはお前じゃないのか?」
「当たり前だろ!誰がこんなところにお前見たクズと来たがるかよ!」
74名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 13:49:17
↑最後の行、「お前みたいな」です。
タイプミスごめんなさい。(´・ω・`)
75名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 17:13:48
クズと面罵されて浜田はたちまち鬱病を発症してしまった。
浜田は今までさんざん甘やかされて育ってきたのである。精神的な免疫力は、皆無だ。
「も、もう僕はダメだ……。もうダメだ……。もうダメだ……」
血の気のひいた真っ青な顔で床の一点を見つめながらぶつぶつ呟く。
わずか数分のうちに頬はげっそりとこけ、あばら骨が浮かんできた。
口から血を吐いた。
もはやSEXどころではない。
どえらいことになってしまった。
76名無し物書き@推敲中?:2010/03/04(木) 20:18:57
「まったくめんどくせぇな」
そう言うとカガリは自分の唇を噛み、血を出させた。そしてそれを自らの口に含むと唾液と一緒に
浜田の口内へ注入した。すると浜田は徐々に健康的な引きしまった体を取り戻したのだった。
それを見届けるとカガリはその艶めかしい肉体を解き放った。
瞬間的にその部屋に性のオーラが芳香のように広がった。
そして、浜田に言った。「じゃあ、さっさと済ませてしまいましょうよ」
カガリの声があの甘ったるい声に戻っていた。
それだけはない、仕草や表情までもが女性的なそれに変わっていた。
「やるからには私も楽しみたいの。ちょっと、じっとしててね」
そう言うと、カガリは抵抗する浜田の服を脱がせ裸にした後で、甘い匂いのするピンク色の息を浜田に吹きかけた。
すると浜田は一瞬のうちに、子供の姿に変わってしまった。小学校3、4年生ぐらいだろうか。
身長130〜140cmの間ぐらい、その体は胸板の薄く贅肉のないほっそりとした体だった。
「もう少し、サービスしてあげる」カガリは嫌らしい笑みとともそう言うと浜田のペニスをデコピンの要領で
指で弾いた。すると、浜田のペニスがまだ勃起もしていないのに外国の芋虫のように巨大化した。
「おちんちん大きくなっていい気分でしょう。男はみんなそれを気にするものね」
子供の姿になった浜田は体を隠そうと必死になったが、実はカガリのその美しい肢体が気になって仕方がなかった。
カガリが言った。
「準備OKね。子供の姿にしたのは私の趣味だから気にしないで。私、このぐらいの子供を犯すのが最高に感じるのよ」
そういうとカガリは浜田をベッドの上にくみしいて浜田の口を長い舌で蹂躙し始めたのだった。
77名無し物書き@推敲中?:2010/03/05(金) 08:17:49
そういえば、と、浜田の記憶がよみがえる。
なぜ自分は引きこもりになどなったのか……。
たしか小学校の三年生までは明るく社交的で友達もたくさんいた。
あの頃はまさか自分が引きこもりになるとは、夢想だにしていなかった。
小学校の四年生からだ。心を閉ざし、暗い日々を送るようになったのは……。
いつも一人でいる子供、けして笑わない子供、周りの大人たちは浜田をそう呼ぶようになっていた。
以前の友達もみんな自分を変な目で見るようになっていたのを浜田は思い出す。
「どうしたの……。浜ちゃん……」とくに親しかった友達にはそう訊かれた。親友だった。
とつぜん浜田が変わってしまったことを心配したに違いない。
しかし、浜田は何も答えなかった。
親友との記憶はこれ以降は途切れてしまう。浜田から離れていってしまったのだ。

つっと、浜田の頬を涙がつたった。カガリに抱かれながら。
――カガリの女性化した顔。それが思い出の何かと重なる。
深層意識下に封印してあった記憶。忌まわしき、記憶。
それは母の顔に他ならない。


小学校三年生の自分を無理矢理に犯す、母の顔に……!!
78名無し物書き@推敲中?:2010/03/05(金) 09:30:21
浜田はそういう妄想をしてわざと気分を害し、カガリとのセックスに最後の抵抗を見せた。
しかし、やはり浜田の中ではあのとき夢で見た姉の葉月の面影を消し去ることはできなかった。
カガリは童貞の浜田に容赦しなかった。カガリはその豊満な胸とむっちりした太ももを有した
柔らかな肢体を浜田にぴったりとくっつけて、濃厚なキスで浜田を一時トリップさせると、よだれを垂らし、
宙を見つめる浜田の薄い胸板に心細そうについた乳首の周辺をじらすように愛撫した。そしてその後で、
触られたくてたまらなくなった乳首をねっとりと舌で虐め、さらに甘噛みして、指でコリコリとつねくった。
そうしてる間にも浜田はペニスは大きさと硬さを増していった。そのペニスをカガリは肉付きのいい張りのある
尻の下敷きにして、愛液でベチャベチャにしながら、艶めかしく腰を動かし、擦り上げていく。子供の姿になった浜田は
そのねっとりしたカガリの責めにただ泣きそうな表情であえぎ声を上げながら、生まれて初めての快楽に身を任せるしかなかった。
浜田は洪水のようにやってくる快楽に早くも我慢が出来なくなっていた。浜田は自分の中から射精の兆しが下半身の奥深くからこみ上がってくるの
感じた。しかし、カガリはそれを見逃さなかった。そして、頬を染め、意地悪そうな顔で言った。浜田はそのような女の顔を見るのも
初めてだった。「ふふふ。まだ、ダメよ。童貞坊や。まだいじめ足りないわ」そういうとカガリは長いしっぽで浜田の巨大なペニスの根元
を縛ってしまった。そしてそのしっぽの先は浜田のアナルをつつき始めた。
79名無し物書き@推敲中?:2010/03/06(土) 00:18:45
コツコツ、コツコツ、……。
浜田は変な音だと思った。艶めかしくもない、乾いた音だった。
いたぞー、と、外からの大声に、カガリがこうしちゃいられないと呟きながら、慌てて釦をはめていた。
追われていても何とかしてやると、浜田は余裕な気持ちで裸のまま横たわり、ワイングラス片手に微笑んでいた。
火事だー!
また外から声が聞こえた。今度は驚いて窓を見る。登ってきた消防士の目が、驚いたまま股間を凝視していた。
カガリが気の抜けた消防士に抱きついて窓から出る様子を見終えると、焦げ臭く感じた。
助けてください!
叫ぼうと思ったが、こんな二番煎じな台詞は使っちゃまずいと、浜田は躊躇っていた。
80名無し物書き@推敲中?:2010/03/06(土) 09:36:39
ためらっている間にも火はどんどん燃え広がっていく。
熱い。暑い。熱い。暑い。浜田はクーラーをかけようとサイドテーブル上からリモコンを手に取った。
ピッ。――無反応。
どうやら壊れてしまったらしい。
「まぁ、いいか」浜田はのんきにも燃えさかる部屋の中、ベットへごろりと横になった。
豪胆なわけでも、自殺願望があるわけでもない。

浜田には「自分だけは大丈夫」という、あの犯罪者などにみられる無根拠かつ盲目的自信があった。「悪いことをしても自分だけは捕まらない」
「飛行機が落ちても自分だけは助かる」
さしづめ浜田にとってこの状況は「まさか自分が焼け死んだりなどするものか。大丈夫」といったところなのだろう。

一酸化炭素で頭がぼうっとしていくことすら浜田にとっては心地よい。
81名無し物書き@推敲中?:2010/03/06(土) 12:06:56
あまりの快感に浜田は夢を見ていた。それこそ身を焼かれるようなカガリとのセックスに
童貞の浜田は耐えられなかったのだ。すでに射精感を我慢するのが限界になっていたので、
脳が自ら意識をシャットアウトしたのかもしれなかった。
しかし、カガリは子供の姿の浜田が意識を失っていることに気づいても尚、無慈悲に腰を振り続けた。
しかし、冷や汗をかいて、呼吸を荒くし、あえぎ声をほとんど上げなくなった浜田を見て、
「これ以上やると死んでしまうか」と呟くと、ようやく浜田のペニスを縛っていたしっぽをほどいた。
すると程なくして、行き場をなくしていた浜田の欲望が火山の噴火のようにわき上がり、カガリの膣内に
大量に流れ込んだ。浜田の体は自然と腰が跳ね上がっていた。
そしてカガリも長い官能的な奇声をあげて、浜田に覆いかぶさるように倒れこんだ。カガリはどうやら浜田の
ペニスを思ったより大きくしすぎたらしかった。
それから何秒かしてカガリは妙な揺れを感じた。射精を合図にして、
空間が渦を巻いて歪んでいくのがわかった。
どうやら、カガリと浜田は扉を開けることができたらしい。
カガリはようやくこの砂しかない世界を出られることに安堵の気持ちを抱いた。
そして心の中でこう呟いた。
「次はどこへ連れて行こうって言うんだい?」
82名無し物書き@推敲中?:2010/03/06(土) 15:46:54
ナディルという不気味な場所、砂漠、神経が焼けつくほどのセックス。目まぐるしく変化する環境や感覚に、浜田は付いて行くのがやっとだった。
浜田はそうした怒濤(どとう)の中で、自分自身が確実に変わりつつある事にまだ気付かずにいた。
「確かに、俺が思っているよりずっと世界は広いのかもしれない」
浜田は砂漠の世界の砂塵に覆われた空が、渦の向こうに飲み込まれる様を見上げながら呟いた。
空は完全に無くなり、後には見慣れた木造の天井が現れた。浜田たちは、再び浜田の部屋へ戻って来た。
83名無し物書き@推敲中?:2010/03/07(日) 02:52:59
部屋へ戻ってきたなり浜田はカガリの尻を凝視した。
あのSEXで男の味を覚えたのである。

「はぁはぁはぁ。カガリ」抱きついていく。
「はぁはぁはぁ。浜田」カガリもそれに応える。
唇を重ね、毛脛を絡ませ合い、勃起したチンコとチンコを擦りつける。

恍惚郷へと昇って行く二人。
ーーはた目には、地獄絵図!


引きこもりの男色家となった浜田の運命や、いかに!!
84名無し物書き@推敲中?:2010/03/07(日) 18:29:55
この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りいたしました。

引き続きお楽しみください。
85名無し物書き@推敲中?:2010/03/07(日) 20:15:07

ここで突然 1000レスで1つの物語を完成させよう 一冊目 という2ちゃんねるの
スレを開いて見ている人たちの頭の中に謎の声が響いた。
「物語を紡ぐものよ。カガリは群青色の長い髪にコウモリのような翼、先のとがったしっぽを持った
巨乳の美しい女だ。浜田はカガリにどこか小さな頃死別した姉の面影を感じている。そして彼女は悪魔でもある。
不思議な魔法のようなものも使える。とにかく前の文章をよく読むのじゃ」
それだけ言うと謎の声は消えた。
86名無し物書き@推敲中?:2010/03/07(日) 20:25:14
「はっ。なんで俺はカガリを男性と勘違いしたのだろう……」
そう呟くやいなや浜田は二階の窓から身を投げた。
87名無し物書き@推敲中?:2010/03/08(月) 11:38:52
落ちたのは一階のゴミ置き場だった。
酸っぱいにおいに包まれ、べたべたしたものが顔に纏わり付いた。
オーライ、オーライ、……。
聞き覚えのある声が、だんだん近付いてきた。
ストーップ!
浜田は確信した。謎の声はこの人に違いない!
88名無し物書き@推敲中?:2010/03/09(火) 12:21:14
ゴミ袋の中から頭を出し、浜田は呼びかけた。
「おいこらぁ。謎の声のおっさん!」
謎の声のおっさんは目を見開いて、「言うな。子供の夢を壊したらどうするのじゃ!」と声を荒げた。
そしておっさんは淡々とした表情で収集車にゴミ袋を投げ込み始めた。
89名無し物書き@推敲中?:2010/03/09(火) 13:26:22
ゴミを全て積み込んで、おっさんは運転席に乗り込もうとした。
「乗せてください」
浜田は唐突に叫んだ。
「ああ?なんだって?」
「乗せてください」
浜田はもう一度、言った。
「坊主。もうお前はカガリと交わってしまったんじゃ。この車におまえを
乗せていくわけにはいかいんじゃよ。それにじゃ、おまえにとってはもはや
カガリと一緒に道を進んだ方がいいという気もしてきておる」
「そんな・・・・あなたは神様なのではないのですか?」浜田はすがる世ように言った。
「さあな。それはどうだかわからんな。ただ神様だっていろいろなことを考えるものじゃよ」
そういうとおっさんは運転席に乗り込みドアをバタンと閉めると、走り去ってしまった。
車は急激に見えなくなっていった。
その一連の光景をカガリはニ階の窓から全て見ていたが、そのことに浜田は気づいていなかった。
90名無し物書き@推敲中?:2010/03/09(火) 22:34:33
びゅう、と風が吹くような音がした。カガリが2階の部屋の窓から煙の姿になって降りて来たのだ。
カガリは驚きの表情を浮かべながら言った。
「お前…気付いているのか?お前は今、自分から部屋を飛び出したんだ」
91名無し物書き@推敲中?:2010/03/15(月) 01:00:26
浜田はありったけの力を込めて屁をこいた。
激しいサウンドが、その煙と混じり合い、化学反応を引き起こした。
ちょっとパンツに実が付いた気がしていた。
しまったな、やっちまったかと、恐る恐る辺りを見渡し、できる限り気を落ち着かせようとして浜田は持ってた葉巻に火をつけた。
92名無し物書き@推敲中?:2010/03/17(水) 15:16:17
「きゃあああっ!」
浜田は驚きのあまり葉巻を取り落とした。恐らく、近所に住む中年女性が悲鳴を上げたのだろう。
「まずい」
外に出た感動を味わう暇も無く、浜田はカガリを体でかばって周囲の視線から隠そうとした。
女性が悲鳴を上げるのも無理はない。人型のカガリはほとんど裸なうえに、人間と呼ぶには不自然なパーツが多過ぎる。
そんな謎の生物と一緒に居るところを見られてしまった―。浜田は考えなしに外へ飛び出したことを強く後悔した。
「何だ、うるせえな」
カガリはそんな浜田の思いなど欠片ほども理解せず、ずかずかと女性の方へ歩み寄っていく。
「お、おい!やめろ!」
浜田の必死の叫びもむなしく、カガリは煙となって女性に覆い被さった。女性はすぐに気絶してしまった。
「このバカ!大騒ぎになるぞ!」
「お前もうるせえ」
そう言うとカガリは浜田も女性と同じ目に遭わせた。浜田もたちまち気を失った。
93名無し物書き@推敲中?:2010/03/18(木) 00:11:09
死んだババアとジジイが手招きしている。
浜田は駆け寄ろうとしたが、目の前には川が流れている。これはもしかして三途の川か、と思ったが迷わなかった。
あらよっと!
ルールを無視してひとっ飛び。飛び越えると、すかさず棍棒を持った鬼に取り囲まれた。
得意顔で賄賂を贈ろうとしたがポケットに財布はなくて、携帯がでてきた。
助けを呼ぶつもりで登録してる番号をみるが、友人の名前はなかった。虚しくなる。
「誰を呼ぶつもりだ!」
赤鬼が顔を近づけて叫んだ。浜田の指先は怖さに震えてしまい、よく利用しているデリヘルに電話をかけてしまった。
94長いので2回に分けます:2010/03/18(木) 14:28:57
RRR…
しかし、いつまで経っても電話が繋がらない。そのうちに浜田は、自分が目を覚ましていることに気が付いた。
RRR…
浜田が夢から覚めた後も、電話の呼び出し音が鳴り続けている。どうやら現実で家の電話が鳴っているようだ。浜田は自分の部屋のベッドに横たわっていた。
もしかしたら、全て夢だったのかもしれない―
恐る恐る浜田は自分の部屋を見渡した。すぐにドアのそばに座っているカガリを見つけた。浜田は落胆の色を隠そうとしなかった。
「おう、起きたか」
「『起きたか』じゃないよ。お前に気絶させられたんじゃないか。…ところであの後どうなったんだ?」
家の電話がひっきりなしに鳴り続けている。浜田は嫌な予感を抱かずにはいられなかった。
電話が鳴り止み、またすぐに鳴る。そのうちにドタドタと母が階段を駆け上がってきた。尋常ではない様子だ。
「ちょっと、家の前が凄い事になってるわよ!知り合いの方から電話も鳴りっぱなし…うちの家がニュースに出てるとかって…それでテレビを見てみたら、あんたが映ってるじゃないの!」
95長いので2回に分けます:2010/03/18(木) 14:29:48
浜田の嫌な予感は的中した。浜田は飛びつくように窓を覗き込んだ。窓の外には、浜田が映画でしか見たことのない光景が広がっていた。
空には無数のヘリコプターが旋回し、家の門の前には盾を構えた機動隊が待機している。更にその後ろにはパトカー、マスコミ、騒ぎを聞きつけた野次馬が群れを成している。
次に浜田はテレビの電源を入れた。そこには気絶した自分を小脇に抱え、この部屋の窓に入っていくカガリの姿が映し出されていた。浜田は再び気を失いそうになったがどうにか持ち直し、カガリの方を見た。
カガリは慌てふためく浜田の様子を楽しげに眺めているようだった。口元には笑みが浮かんでいる。
「あの後、何があった」
浜田はもう一度同じ質問をした。カガリが面倒臭そうに答える。
「オバサンを気絶させ、お前を気絶させ、そしたら今度は近所の奴らが出てきやがってよ。警察だの、救急車だのと叫ぶもんだから、つい、イラっときてな。みんな気絶させてやった。
そうしたら今度は、通報を受けた交番のお巡りがやって来た。そいつも署までご同行がどうのとかうるせえからよ。気絶させてやった。で、その次に…」
「もういい!もう沢山だ!」
「なんだよ、人が親切に説明してやってるのに。そんな大変なことなのか?」
浜田は何も言う気力が起こらなくなった。
96名無し物書き@推敲中?:2010/08/20(金) 17:12:48
浜田はテレビを消して歯を磨くことにした。
97名無し物書き@推敲中?:2010/08/31(火) 21:09:52
しかし歯磨き粉が見当たらない。
「面倒だな」
浜田はマッチでパイプに火を着けて軽く煙を吐いた。
そして焦げ茶のトレンチコートを羽織り紅いベレー帽をかぶり、パイプをくわえたまま部屋を出た。
そう、行き先は近所のふぁみまだ。
押し寄せる警官たちとマスコミ連中を華麗にすり抜ける浜田は懐のTカードをコートの上から確認した。
98名無し物書き@推敲中?:2010/09/07(火) 14:09:31
しかし当然の如くTカードは期限切れであった。浜田は踵を返し家に戻ろうとしたが、そこで機動隊に発見されてしまった。
「何だあいつは?もう引きこもりでも何でもねえじゃねえか。一度外に出たってだけであんなに変わるもんかね」
カガリは身柄を確保される浜田を追うでもなく、独りごちた。その表情はいくらか曇りがちになっていた。
「…嫌な予感がする」
カガリは黄砂のせいかやけにどんよりとした空を見上げ、言った。

≪場面転換≫

とある病院の一室に、20年もの間1人の患者が入院していた。
青年の名は葦原(アシハラ)。彼は生まれた時からこの病院で過ごしてきた。
彼は自分の両親の顔を覚えていない。
彼の母は、彼を生んだ直後に亡くなった。
彼の父は彼が生まれる時ですら、この病院に姿を現さなかった。
しかし病院に20年間入院する程の費用は、この父親が出している事を葦原は聞かされていた。
つまりそれ相応の高額所得者である事は葦原にも想像出来、息子の前に一切姿を現さないことからも父親が抱える事情の複雑さを窺わせた。
葦原にとっては、この病室が世界のすべてだった。テレビやパソコン(これも彼の父親が彼に買い与え、通信費なども負担している)が映し出す
ニュースや風景も、彼にとっては全く興味の対象になりえなかった。
葦原にとってのすべての幸せは、この病室の中にあった。それは毎日の食事であり、排泄であり、睡眠であった。
彼は退屈など感じたためしがなかった。病室の日常で起きる以外の事を実感した事が無いからだ。
(コンコン)
病室のドアをノックする音。朝食の時間だ。彼はいつもと同じように声でノックに応じた。
「どうぞ」
彼の声は少年のような高音と、色気のある男性の声が見事に調和している。
ドアが開き、「外」から看護師が食事を運んでくる。これもいつもの事だ。いつもと同じ看護師がマスク越しに話しかけてくる。
「ユータ君、ハタチのお誕生日おめでとう。今日は3食ともユータ君の大好物よ」
葦原は非常に端正な顔立ちをした青年だった。当然女性の看護師達からも人気があったが、彼の所へ食事を運びにやってくるのは決まってこの看護師だった。
「ありがとう、ハマダさん」
99名無し物書き@推敲中?
朝食を平らげ、ハマダという女性看護師が膳を下げて立ち去ると、葦原は自分専用の病室を隅から隅まで見渡した。
そうやって部屋に少しでも変化があるのを見つけると、それがどんなに些細な変化であっても彼は有頂天になる。彼にとっては大きな娯楽の一つ、「間違い探し」だ。
この大発見を昼食の時間に必ずハマダさんに話そう、とうきうきしながら葦原はパソコンのスイッチを入れた。
その時だった。
パソコンの画面の中からずるり、と何かが伸びてきた。
それはナメクジの触手か何かの様で、絶えずうねうねと動き回っている。
触手は天井に向かって伸び、更にその先端部分は枝分かれを繰り返し、遂には葦原の病室の隅々にまで行き渡る程に増殖した。
葦原はその得体の知れない何かの様子を食い入るように凝視していた。触手はなぜか葦原には触れようとせず、ただ病室の壁面を這い回るように動いた。
やがて何かを確かめ終わったかのように触手は再び一本に戻り、パソコンの画面の中へと消えていった。
そして次の瞬間、葦原がパソコンやテレビですら見た事もない「もの」が葦原の眼前に現れた。
それは二足歩行の生物のようだった。龍のようなウロコに覆われた体は何色もの色が混ざり合い、常に変化し掴みどころがない。
脚は筋肉がむき出しになったように発達し、頭部から背骨にかけて巨大なトゲが規則正しく並んで突き出していた。
顔つきは精悍な鷹を思わせるが、その眼は蛇のような冷徹さを感じさせる。
常人であれば卒倒してしまうほどの異形の生物であったが、葦原は子供のように純粋な瞳でその怪物の眼を見つめ返した。
葦原の頭の中で、キーンという金切り音とともに声が響いた。
「…流石は我が観測者。器が違う…」
驚いたことにその怪物は葦原の傍らに跪いた。
「我が名はバジラ…あなた様の望みを叶える者。さあ、御命令を…」