1 :
名無し物書き@推敲中?:2009/10/26(月) 22:46:30
腕試し程度に島崎藤村作の文語定型詩、「初恋」をアレンジした
携帯小説のような作品を書いてみよう。
多少スレチだろうが関係なし、マターリやってこう
荒らし、煽りは厳禁、反応した者も荒らしとみなす!
↓本文
「初恋」 島崎藤村
まだあげ初めし前髪の(*1) 林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に(*2) 人こひ初めしはじめなり
わがこころなきためいきの(*3) その髪の毛にかかるとき(*3)
たのしき恋の盃を(*3) 君が情に酌みしかな(*3)
林檎畑の樹の下に おのづからなる細道は(*4)
誰が踏みかためしかたみぞと 問ひたまふこそこひしけれ
解説
http://poemculture.web.infoseek.co.jp/touson01.html スレ主なりの補足(あくまで個人的な見解)
*1・・・「髪をあげる」というのはその時代、特有のファッション
急に大人の魅力を漂わせた君に主人公がドキッとする場面
*2・・・薄紅から、主人公の恋はまだ熟しきっていない初々しいものである事が分かる。
また、その甘酸っぱい恋の味とも取れる。
*3・・・心なきため息には、色々なとらえ方があって、
主人公が君に告白し、君が応えてくれたという考え方もできる。
*4・・・それだけの月日が積み重なったという事が書かれている。
さっそくサンプルに投下。
お目汚しですが、寛大な処置をお願いいたします。m(__)m
気分的に連ごとにサブタイトルを付けてみました。
それじゃ、開始ー!
3 :
『初恋』:2009/10/26(月) 22:53:30
第1チェイン「始まりの朝」&第2チェイン「薄紅の贈り物」
その日「彼女」に出会ったことは全くの偶然。いや、今思えば必然だったのかもしれない。
まだ朝の薄明かりが差し込む時間、何故か僕は日課という訳でもないのに気分転換にと散歩を始めた。
少し肌寒くなってきた風が心地いい、それを感じているうちに僕は見知らぬ場所へと立っていた。
目の前には林檎畑。等間隔にならんだ木々がケーキのデコレーションのように並んでいた。
これも偶然なのか、その木々の中にちらりと動く人影が見えたのは。
僕は好奇心に負け、その人影のもとへと向かって行った。
そうして近づいて行った時、薄明かりに溶ける「彼女」が見えた。
「きれいな・・・人だな。」
そんな僕の第一印象が思わずつぶやきとなって零れた。僕は彼女に見蕩れてしまった。
その髪を止めている花櫛は、どこにでも売っているよな簡素なものだった。
そんな者でも彼女の美の前では命が息吹いたかのような印象を受ける。
その花櫛と白い肌の対照美に朝日が映りこむ様は幻想的だった。
側で渦巻く木枯しさえ彼女の魅力に取り付かれ、くるくると踊っていた。
4 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:01:53
「あれ?確か同じクラスの人、だったよね?」
気付くと僕の目の前、すぐ側には彼女の顔があった。
僕の顔が真っ赤に染まり、耳がカアアと熱くなる。
「うわあ!?い、いや僕は決して怪しいものでは・・・って同じクラス?」
あまり上手く頭が回らない。こんなきれいな子、僕のクラスなんかにいたっけな?
じっと彼女の顔を見つめて気が付く。そうだ、いっつも元気に走り回っているあの子だ。
髪型が変わるだけで随分と印象も変わるものだなあ。
普段、クラスの中心になっている彼女に気付かないなんて。
僕はこの時すでに、彼女に夢中になってしまっていた。
その後、もともと気分転換に出かけた僕と話し相手が欲しかったらしい彼女は、
自然な流れで一時のおしゃべりを楽しんだ。
その後どうしたか、よく覚えていない。気付くと家に帰ってきていて、その手に彼女から貰った
まだ熟し切れていない林檎があった。緊張しすぎて彼女の話を聞くどころではなかった。
昼御飯も夕食も全くと言って良いほど、喉を通らなかった。
5 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:02:52
林檎の表面を愛おしく撫でる。ほとんど沸騰しかけの僕が覚えていたことは、彼女から漂ってきた甘酸っぱい爽やかな香り、笑顔、
そして破裂しそうな程の僕の心臓の鼓動の音だった。
「また、会いたいな・・・。」
握り締めた林檎は硬く、みずみずしかった。彼女から貰ったプレゼントは林檎だけじゃなくて、この
気持ちだったのかもしれない。きっとそうに違いない。何度も何度も走馬灯のように彼女の笑顔が頭の中に映っては消えて行く。
今日何度になるか分からないため息を付いてから、僕はベッドの中に潜り込んだ。
彼女と夢の中ですら会えることを望みながら・・・
6 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:04:54
すぐ上の、夢の中ですら、すらが要りません。ミスりました。すいません。
第3チェイン「林檎の味は・・・」
それから1ヶ月か過ぎた。その間も僕は暇があれば毎日、林檎畑へと通った。
学校でとてもじゃないが、恥ずかしくて話かけられない。
毎日会えるわけではなかったけど、それでも会える事を期待して通い続けた。
この心のもやもやが少しでも晴れるようにと。この気持ちが少しでも彼女に伝わるようにと。
一緒にいる間は無理にでも話題を作って、その顔を笑顔で満たそうとした。
でも、このもやもやは深くなるばかりだった・・・一体どうすればいいんだろう。
そんなある日、遂に僕は耐え切れなくなって告白しようと決めた。
「どうやって言おうかな?やっぱりストレートに・・・。でもそれだと普通過ぎるな、少し格好つけて、
いや、それはそれで変な印象与えたらマズイよな・・・ぁぁぁぁあああああああ!もう!!」
ほとんど叫びながらゴロゴロ転がる僕のお相手は強く握りすぎて破裂しかけになった枕だった。
ひたすら考え続け、気付いたらお昼過ぎ、結局学校を休むこととなってしまった。本末転倒。
ダサすぎて笑えやしない。つくづく、自分の情けなさに腹が立つ。
学校が終わったと思われる時間、僕はダッシュで林檎畑へと走っていった。
まだ彼女はきていないみたいだった。僕はゼエゼエ荒れる息を直しながら林檎の樹にもたれかかった。
会ってどうするか、どう告白するかなんて考えていなかった。ただ、行かなきゃ。伝えたい。この気持ちの為すがままに行動しただけだった。
しばらくじっとしていると、辺りは薄暗くなってきた。ひんやりとする風、流石にもう秋の真っ只中。体中が冷えてきた。それと共に朝からずっと煮えていた頭も冷めた。
それとともに、脳内にネガティブブルーな思考が割り込んでくる。
「どうしようかな、もし断られたら。それに嫌われちゃったら、ぼくは・・・
いや、それ以前にここに来るかどうかも分からないのに。一人粋がっちゃって馬鹿みたいだよな、ハァ。」
朝から興奮し続けで疲れていたのだろう。僕の気持ちを暗示するかのように、視界が暗くなっていった・・・
7 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:19:31
「ねえ、大丈夫?ねえ!」
誰かの声が聞こえる、もう朝かな?まだねむいのに。ゆっくり瞼を開けるとそこには僕の待ち望んだ人が、僕を覗き込んでいた。
僕は何故こんなところにいるんだ?数瞬考える。そうだ!考え事をしてたら寝ちゃったんだ!こうしちゃいられない。
僕は火が付いたかのように飛び上がった。
「実は、君に伝えたいことが、ん!」
僕はそこまで言って口を閉ざしてしまった。
彼女がいきなり僕に抱きついてきたからだ。
「よかった。心配したんだよ?こんな所で倒れてたから・・・」
彼女の目には涙が滲み、身体は弱々しく震えている。あたりまえだろう。学校を休んだ
欠席者がこんなところで倒れていては、何かあったのかと心配するのも無理は無い。
自分勝手な気持ちを優先して、彼女に心配をかけてしまった自分。申し訳が立たない。
8 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:24:15
「ごめん。君に会いたくて、それで待ってたんだ。本当にごめん。」
僕は彼女を安心させようと、そっと手を肩に寄せた。
僕の冷え切った体に温もりが流れ込んでくる。彼女はまるで天使のようにさえ思えた。
こうやって体に収まってみると体感する。彼女の華奢な手足。強く握ると折れてしまうかのようだ。
そして、その柔らかさ。このまま空気に溶けてしまいそうだった。
体中が冷え切った僕。そんな弱々しい体すら温めてあげられないなんて。僕に思いを打ち明ける権利なんてあるのだろうか。
それでも言わなくちゃ。この気持ちだけは伝えなくてはならない。
ぼくは彼女を支える手を強く、彼女を抱きしめた。
「あの、さ・・・。ずっと、言おうと思ってたんだ。好きなんだ、君が。初めて林檎畑であった時から。
君にとっては僕なんかじゃ、不十分かもしれない。それでも好きなんだ。だから、だから付き合ってほしい!」
沈黙の時間が流れた。彼女は突然の事に、唖然としているようだった。
心臓の高鳴りが収まらない。このまま、心臓が破裂してしまいそうだ。耐えようもない不安に押し潰されそうになる。
多分、彼女が答えをだすまで数秒しか経っていなかっただろう。それでも僕は、何時間にも何日にも、永遠にすら感じれた。
やがて、彼女は顔を優しく綻ばすと、力強く首を縦に振ってくれた。
良かった。ほっと息をつく。やっと泣き止んでくれた。
夕日はもう半分以上沈んでいて、ただ二人いるには流石に寒すぎた。
でも、僕らは互いに体をピッタリくっ付けあい、その温もりをわけあった。本当は寒いはずなのに、春のように心はポカポカだった。
この温もりのためなら、僕は全てを賭けれる。そう確信した。一生をかけても彼女の傍にいて、
楽しいことも、辛いことも二人で乗り切って行きたい、と。
やがて、僕らはどちらとも無く、お互いの口を重ねあわした。僕の心を満たす
充実感、彼女の愛情。それら全てを手に取るように感じれた。これこそが僕の生きる意味だ、そういい切れる。
そんなファーストキスだった。
それは甘い甘い、真っ赤に熟れた林檎の味だった。
9 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:25:59
第4チェイン「続いて行く未来」
僕が彼女に告白してから数ヶ月がたった。
季節は随分と暖かくなってきて、新しい生命が息吹いてきた。
今日は休日。今日も僕は二人にとってお馴染みとなった場所へと足を運んだ。
新芽が若々しい林檎畑。彼女の姿は見当たらない。今日は僕が一番乗りかな?後ろを振り返り先程、自分が登ってきた道を眺める。
まだまだ弱めだけど振りそそいでくる太陽が心地いい。ボーとしていると突然何者かに背中を押された。
「「わあっ!」」
二つの声が重なる。勢いのまま斜面を転がり落ちてしまった僕が見たのは、満面の笑みをたたえる花櫛の影だった。
ぼくは機嫌悪そうに唇を尖らせると、その影へ抗議をした。
「危ないなあ。驚かすならもっと場所を考えろよな。冷やっとしたぞ。」
彼女も勢い良く転がっていた僕を見て、計算外だったのか驚いた表情をしていた。
それも束の間、彼女は盛大に笑い始めた。
その顔をみて僕まで笑えて来る。やっぱり僕にとって彼女は天使だ。
「あはは!あははははっ!!」
二人してしばらく笑った後で、少し真剣なムードが流れた。彼女がおもむろに口を開く。
「ねえ?目の前に広がっているこの道、半年前にはなかったよね!誰が作ったと思う。」
10 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:28:36
無論、僕は答えを知っている。それは自分自身なのだから。彼女もそれを知らないはずがない。
しばらく質問を飲み込めなかった僕は、数瞬後、やっと理解した。僕は微笑みながら彼女に手を差し出す。
「う〜ん。誰なんだろう?この道を辿りながら考えてみようよ!」
彼女は満面の、僕が大好きな笑顔で、僕の手を取った。しっかりと、決して離さないようにしっかり握り締める。
ゆっくりゆっくり、歩いて行く。しっかりと大地を踏みしめながら、その手の先にいる人と、その幸せに向かって歩いて行った。
二人がいた場所には、新しい林檎の苗木が空へと伸び始めていた。
小さな小さな苗木。どうなるか分からない未来。もしかしたら枯れてしまうかもしれない。
ただ、その苗木は生命力に満ち溢れ、太陽を掴み取るかの如く枝を広げていた。
また、次の実を実らすために・・・。
11 :
『初恋』:2009/10/26(月) 23:30:51
すいません。
メモ帳で書いてたら、改行をミスりました。
全体的に読みにくくなったと思われますが、最後まで読んでくれた方はありがとうございました。
大人びた髪型にしたばかりの君が、
リンゴの木の枝の間に垣間見えたとき、
髪に挿した可愛らしい髪飾りが、
特に美しく君を彩っていた。
枝から手折ったリンゴの実は、白い
君の細く長い指の手と対照的で、
受け取った僕は、その林檎の実に
僕の恋心を重ねて記憶している。
僕がつい漏らすため息は、君の
美しい髪をゆらす。
君の手で愛情を込めて注がれる、
ささやかな酒宴の飲み物は、僕にまた、
憂鬱ではない、暖かいため息を吐かせる。
林檎畑の居並んだ林檎の樹の下に、
自然と生じた細い道がある。
誰が恋路をたどり、最初にここに来たのかと、
私たちのような、そういうカップルが、
連綿といたのでしょうか?
彼女が僕に聞く。そんな無邪気な彼女が、
僕はたまらなくいとおしい。
13 :
名無し物書き@推敲中?:2009/10/27(火) 13:23:11
<すごく頭の悪いケータイ小説風>
髪型変えたんだぁ
チョー大人っぽくなったっつうか
リンゴくれてサンキュ
これって恋かも♪
え? 付き合ってくれんの?
マジパねぇくらい嬉しっス
どんだけこの木の下歩いたっけね
……だめだ。センスねえorz
「ふっざけんじゃねえぞ!!」
教室にケイコの声が響く。
女子にまたいじめられている。
ケイコは、その×が多いテスト用紙を
みんなに頭の上でもてあそばれている。
ケイコはランドセルから定規をぬきだすと、
「ぶっころす!!」
と女子にきりこんでいく。
「卑怯、卑怯、卑怯ケイコー!」
俺の堪忍袋は切れた。
「おい!バカ」
ケイコをはがいじめして止める。
「お前らガキか」
女子たちはちょっと気押される。
俺にはどうでもいいことだが、俺は女子に
人気があるらしい。
ケイコは、泣きながら自分のテスト用紙を
はいつくばって拾った。
-----------------------------------------------
中学2年のとき、ケイコは族に入った。
青白い顔を化粧で飾り、赤く髪をそめた。
俺は、ケイコはどうなってしまうんだろうと
思った。
ケイコは高校には行かなかった。俺らが学校に
いっている時間帯、食堂でバイトしてた。
部活のサッカーの帰り、食堂に行ったらケイコが
メニューをとりに来た。
手首に根性焼きがいくつもはいってた。
飯がまずくなった。
-----------------------------------------------
学に入ってから、地元の同級会に行った。
ケイコが来ていた、びっくりした。
雰囲気が変わっていた。
髪も黒くなり、健康的になった。
まあ、そこそこきれいになっていた。
いい男(ヤツ)と、付き合うようになったのかと
思った。さびしかった。理由はわかんねえ。
二次会で、ケイコが俺のとなりにすわった。
手首のヤケドはリストバンドでかくしていた。
いろいろ、ずっと昔の、子供のころの話をした。
俺、そういや初恋って誰だったけ?
-----------------------------------------------
俺とケイコは同じ町内なので、帰りは同じ
タクシーに乗って帰った
「あ、ここでいいです」
ケイコは自分ちのずいぶん手前でタクシーを停めた。
ふたりで、児童公園の前を歩いていく。
「ワタシ…んー、ワタシ、昔からユウヤのこと好きだった
んだよ」俺を好きだった…?
「俺は…俺は…」
俺の初恋は誰だったかな。
思い出した。俺は体が弱かったから、一年しか幼稚園には
行ってねえ。いじめられたよな。そうだった。
いつも、体はちっこいけど、気が強い女の子が助けてくれた。
助けてくれた……
「ワタシね…きっとこの道を歩くんだって…
好きなヒトと…歩くんだって…」
「ずっと、ずっと前から決めていたんだ、ずっと、ずっとね」
ケイコの瞳はあふれたなみだでゆれていた。
ああ、俺は、バカだな。やっと思い出した。
ケイコは、あのころ、体がちっこくて、気が強くて、
そして今、抱きしめたケイコは、やわらかくて、あたたかくて、
きれいな、においがした。
おしまい
17 :
名無し物書き@推敲中?:2009/10/27(火) 18:02:12
まだあげ初めし前髪の 蜜柑のもとに見えしとき
「初恋」をオレンジしてみるスレ
……って蜜柑ってオレンジじゃねえしorz