1 :
名無し物書き@推敲中?:2009/08/14(金) 19:11:08
小説を書いていくので、宜しければ読んでみて下さい
2 :
とりかえしのつく町 1:2009/08/14(金) 19:12:40
地下鉄終点駅から、更にバスを乗り継いで乗り継いで。市の中心街からは随分外れてしまい、男はため息をついた。
「くそ、この辺りはすっかり田舎だな……」
本条 優48歳。この度、仕事の都合で赴任してきたというごく一般的な企業の歯車。就職してからは常に市の中心街にいた彼にとって、田舎での活動は希望と不安が1:9の割合であったが、なんとか『利瀬戸町』と書いてある標識を見つけ、ひとまずは胸を撫で下ろした。
手に持ったハンカチで汗を拭きつつ、会社とアパートの住所が書いてあるメモに視線を落とすが、どうにも田舎のシステムというものは理解に難い。初めてこの町を訪れた優には右も左も分からぬ状態で、どうやら自力でアパートまで辿り着くのは無理そうだ。
歩き回るのが億劫でタクシーを呼ぼうかとも考えたが、偶然視界の端に交番を捉えたので、とりあえず足を運ぶ事にした。麦茶とか出てくるかもしれないし。
「すいませーん」
優が中に入ると、駐在の警官は「ああ、ちょっと待ってて」と優を椅子に腰掛けさせた。定年の近さを匂わせる頬の皺。
警官の正面には二人の男女が座っていて、何かあったのだろうかと、優は様子を窺った。
「えーじゃあ、あなたはこちらの男性にお尻を触られたと……」
警官は、優がいる事を気にせず話を続けた。
(おいおい、痴漢かよ……。そんなの第三者に聞かせんなって)
田舎のスタンスに驚いた後、優は被害者の女性の顔をチェックしておいた。
「あんたねえ……いい年こいてこんな事しちゃあかんよ。お袋さん悲しむよ?」
頬皺警官の話を聞きながら、男は俯かせた顔を上げようとしない。
優は、静かに事の顛末を見届ける事にした。
「女性の方も随分ショック受けとるようだし……。あんた、自分がした事の重大さ分かっとんの?」
こうなると、年の功か。随分と迫力があるように思える。優はごくりと息を呑んだ。
3 :
とりかえしのつく町 2:2009/08/14(金) 19:13:32
しかし男はゆっくりと顔を上げると、落ち込みつつも淡々とこう言って述べた。
「えと……じゃあ、取り返しつけます」
言葉の意味がスムーズには飲み込めず、優は一瞬呆気にとられた。頬皺警官もさっきまでとは打って変わってあっけらかんとした表情に変わり、
「ああ、取り返しつける?」
と言うと一枚の書類を取り出した。
「えーはい、8月13日10時16分。加害者の起こした痴漢事件は取り返しがついたので、男はあらゆる法律、倫理観、人間関係、社会的活動において、今回の一件についての影響を受けません」
警官は、淡々と書類を読み上げてゆく。
「また、女は今回の一件についてあらゆる法律、倫理観、人間関係、社会的活動において、男を非難する事はできません。友人との間で面白がって今回の一件を話してもいけません。両親や友人に相談してもいけません。ブログ等に書き記してもいけません。
これらを犯した場合、何らかの罪に問われる場合があります」
「はい……」
女も、この措置に納得しているようである。
(な……、何故!?)
優は目を丸くして、目の前の出来事を理解しようと必死に頭を回転させている。
「はい、じゃあ解散!」
パン! 警官が手を叩くと、二人は交番を出て行った。
「……! !?」
優が訳も分からず目を白黒させていると、頬皺警官はにっこりと微笑んだ。
「はい。それじゃ君の用件は?」
4 :
とりかえしのつく町 3:2009/08/14(金) 19:16:20
「え……いや、今のは……」
優は恐る恐る警官に訪ねた。ただそんな優の緊張感とは裏腹に、警官の表情はいやに晴れやかなものだ。
「あ、今のはね――」
言い掛けたところで、何者かが交番の扉を叩いた。優は振り返る。
「駐在さんすいません!!」
赤い斑点のついた白地のTシャツ。20代半ばであろうか、まだ若々しい肌。男は息を切らして駆け込んできた。
(……ん? 赤い斑点?)
優は違和感を覚えた。それはこんな田舎町には不似合いな程パンクでロックで、そしてその違和感は男が優の傍まで近づいて来た時、解消された。
血。
リアルが持つ雰囲気はあまりに禍々しく、それは傍で見てTシャツのプリントと見間違うような代物では無かった。
(こ、こいつ……)
頬を冷や汗が伝う。そんな優を傍らに、男は口を開いた。
「あ……あの、人を殺してしまったのですが!!」
優は言葉を失った。いや、元々喋ってなどはいなかったが。
(な、なんなんだこの町は……!?)
ちらり。俯きがちの目線から、警官の表情を窺う。好々爺といった雰囲気の頬皺警官ですら、流石に険しい顔をしている。
「そ、それじゃ署に連絡するから、今すぐ現場に――」
警官は受話器を手にし、署の電話番号をダイヤルし始めた。こんな事件、いくらなんでも交番の一駐在じゃどうにもできないのだろう。
5 :
とりかえしのつく町 4:2009/08/14(金) 19:17:12
ところが、男は警官の手を遮ると――
「あ……いえ、取り返しつけて下さい!」
そう言った。
すると警官の表情は途端に晴れやかになり、「ああ、取り返しつけるかい?」と受話器を元に戻した。
「被害者さんの名前は?」
カタカタと、不慣れな手でパソコンをいじりながら聞いた。
「えと……本間 雪子さんです」
いちいち遅いタイピングで、警官は恐らくその名前をパソコンに打ち込んだ。
ただただ呆然とする優と、俯きながら警官の作業を待つ男。その中に、暫くはタイピングの音だけが流れていた。
そして――それが終わったのか、警官は一枚の書類を手に立ち上がった。
「えーはい、8月13日10時32分。規定により、被害者の両親、祖母、兄弟、夫が全て利瀬戸町の生まれであり現住人である為、この殺人事件は取り返しがつきました。男はあらゆる法律、倫理観、人間関係、社会的活動において、今回の一件についての影響を受けません」
「はい」
男は顔を上げ、わりかし晴れ晴れとした表情で答えた。
「ただし。被害者には町外に従兄弟がいるので、彼にはしっかりと謝罪してきて下さい」
「あ……、はい。分かりました」
男は頭を下げ、交番を出て行った。
優は首を180度回し、呆然とその後ろ姿を目に焼き付ける。
「遺体はこちらで処分しておきますから。お疲れ様です」
警官は敬礼し、男の背中はそのうち見えなくなった。
7 :
名無し物書き@推敲中?:2009/08/14(金) 19:20:34
だめだめだな。
8 :
名無し物書き@推敲中?:2009/08/14(金) 19:33:14
2倍ダーシ 三点リーダー
>>6 こんな板があることに、全く気がつかなかった。
それにしても、見事なくらい機能してないな。
でもまあ好き勝手に自作小説をアップするにはいい板なんじゃない
飽きたら落ちて消えるし
11 :
とりかえしのつく町 5:2009/08/14(金) 19:48:24
ルームミラーに制服警官がひとり映っていた。警官は私の車に近付き、運転席の窓から
私に声をかけた。
「突然すみません。免許証をお願いします。この辺で車の盗難が相次いでいまして。この
深夜に何をしておいでですか」
「仕事が暇なのでね。風に当たりたかっただけですよ」
私は免許証を警官に見せた。懐中電灯の光で写真を照らし、警官は頷いた。
「ありがとうございます。物騒ですのでお気をつけて」
警官はゆっくりと歩き、ビルの陰へ姿を消した。
12 :
とりかえしのつく町 6:2009/08/14(金) 19:49:22
私は腕時計を見た。二時十分だった。真夜中のドライブにしては中途半端な時間だった。
私は斜向かいにあるマンションの一室をこの六日間、張っていた。失踪した娘が、近所の
スナックへ男と二人連れで現れたのを突き止め、聞き込みを続けるうちに一カ月前からこ
のマンションの部屋へ出入りするのを見たという手がかりを掴んだ。管理人は住んでいる
のは勤め人だと話した。出張で部屋空ける事が年に数回あるという。
13 :
名無し物書き@推敲中?:2009/08/14(金) 19:53:39
勤め人
ちょっとスレ主さん
創発に移動したんじゃないの?
向こうで単発の評価要望スレは駄目だと注意されてたけど
小説の評価が欲しいのか発表したいのかハッキリしないと
発表なら向こうで評価要望ならしかるべきスレでやって下さいな
>>10 消えねえよあのあの板
出来てから一年近く経つのに未だにスレ限界に達してないものw
雑魚ばっかだし根暗が荒らして楽しむくらいしかなかろうて