41 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:34:59
「君は、死にたいと思ったこと・・・あるの?」
話のキリが付いたところで僕は彼女に話を振ってみた。
「私は・・・うん・・・ある・・・よ。」
「そっか・・・」
少しの間をおいてみたが、彼女は詳細を話そうとはせず、
僕もそれ以上聞くことはしなかった。
その後はとりとめもなく、僕と彼女はお互いのことを話し始めた。
42 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:35:27
時間が流れ、僕と彼女はベンチで寄り添うように座っていた。
この寒空に似合わない半袖を笑いながら、
僕達はお互いの距離を徐々に縮めていった。
「さ、寒いね・・・」
「うん。」
質問されたことに答えるだけ。
ただそれだけでも僕の心は満ち足りていた。
43 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:35:49
「寒い、ね・・・。」
きゅっ。
「あ・・・!?」
不意に、彼女が僕の手を握って来た。
それは突然のことだった。
僕はその手を握り返した。
心臓のドキドキが、止まらない・・・。
44 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:36:16
僕の手が汗ばんでしまわないかと、気が気でなかった。
改めて見る彼女の手は透き通るように白く、存在しないように思えた。
なんともいえない甘酸っぱさが、僕を包み込むのが分かる。
彼女がはにかんで笑っている。
この一瞬は、きっと僕の中で永遠に輝くだろう。
そう直感が感じさせてくれた。
だが、そこで僕は発見してしまったんだ。
彼女の手首に、リストカットの跡があることを・・・。
45 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:37:00
今日、初めて出会った僕と彼女。
心の傷に触れるより、楽しく話をしていたい。
偽らざる素直な僕の気持ち。
そっと、見てしまった事実を吹っ切るように僕は彼女の手を引いて立ち上がった。
街へと歩き始めた二人の白い息は空に舞い上がっては消えていく。
彼女の手を握る僕の手の力は自然と強くなっていった。
そして、『決意』は、突然僕の胸にやってくる。
46 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:13
「僕、決めたよ!」
僕は叫んだ。
「どうしたの、急に・・・?」
僕の右肩の少し下から、彼女が上目遣いで尋ねてくる。
「僕は・・・作詞をして、思いっきり歌を歌う!!」
僕はそう豪語した。
「なんで・・・?」
彼女はキョトンとした表情でそう尋ねる。
「だって、今日死んでたかもしれないのにこんな世界に迷い込んで、
君と出会って、それだけでもすごいと思うんだ、歌になるよ!
僕は絶対曲を作るよ!よーし、やるぞぉ!」
忘れていた『歌』への熱き思いが蘇った・・・。
47 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:33
僕が突然発した熱量を、彼女はそっと微笑んで見守ってくれた。
「おめでとう、頑張ってね。」
嬉しい激励の言葉。
ただ、彼女の笑顔がわずかながら寂しさをはらんでいたと感じたのは、
僕の気のせいだろうか・・・。
48 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:57
それから僕達は時間を忘れて語り合った。
何故だろう、今日出会ったばかりなのに彼女には何でも話せる。
親にも話せなかった事、いや、話そうとした所で聞いて貰えなかった事も彼女は聞いてくれる。
彼女は以外と強気で『我侭』な部分を持っている事も分かり、
それがなおさら愛しくさせた・・・。
49 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:45:26
基本的に大人しい性格だが、食い違う時には絶対に譲らない芯の強さも持っていた。
僕は気が付けば彼女に魅了されていた。
今日出会った彼女の事が、本気で好きになってしまった・・・。
50 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:45:57
雪は次第に強くなり、僕と彼女は更に身を寄せ合っていた。
だけど、不意に彼女の手が僕の手を離れていった。
彼女は一瞬うつむいて、すぐさま顔を上げて優しく微笑んだ。
「もう、帰らなきゃ・・・」
気付けば辺りは暗くなり始めていた。
「そっか・・・」
名残惜しく僕は下を向き、
自分の手を見つめながらこぶしを開いたり閉じたりしていた。
51 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:50:57
タッ
突然、何かが駆ける音がした、と同時に僕の視界が黒に染まった。
ガツン。
52 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:51:17
「んん・・・!」
遅れた認識が徐々に戻り、視界が標準の世界を取り戻した時、
俺の世界には、ただ彼女の顔があるだけだった。
そして、理解した。
・・・唇が重なり合っている。
53 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:51:38
女の子の香りが僕の鼻腔をくすぐる。
その甘美な感覚を堪能したいと思った。
しかしその手前で、唇と唇はわずかにお互いを引っ張りながら離れていく。
「ん・・・」
立ち尽くす二人。キスというよりは衝突だった。
少し距離を離した彼女の頬には桃色がじんわりと浮かび上がっていた。
情けないことに僕は放心状態で、その場から動けずにいた。
54 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:52:08
「じゃあねっ!」
「あ・・・!」
僕の言葉を待たずに、彼女は人通りの少なくなった大通りの向こうへと走っていった。
彼女の後ろ姿が消える前に、僕はどうしても、確認しておきたいことがあった。
「・・・待ってくれ・・・!!!」
僕は彼女の名前を叫んだ。
55 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:53:08
彼女は離れた位置で止まり、くるりとこちらに振り返った。
「また・・・また、会えるよね!?」
それだけが聞きたかった。
早く答えが聞きたかった。
彼女の唇が動いた。
56 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:59:59
―もう、会えない・・・
57 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:04:55
予想に反して、確かに聞こえた、拒絶の声。
「どうし・・・」
言葉を返そうとした瞬間、僕の周りの空間がぐにゃり、と歪んだ。
「なにっ・・・!?」
僕の体がふわふわと風船のように軽くなり、意識が泥を投げつけられたかのように不鮮明になる。
58 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:05:27
「落ち着いて聞いて・・・」
マーブリングのような世界の向こう側から、彼女が僕に話しかけてくる。
「私も、あなたと・・・同じ・・・」
「(どういう…こと?」
59 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:05:55
「私も嫌なことがあって自殺しようとしていたの。
でも、でも・・・気付いたらこの世界にいた・・・」
「僕と、同じ・・・?」
「そうよ。私はこの世界に暮らし始めて気付いたの。
この世界は、絶望の行き着く先だって・・・」
「(・・・・・・)」
「絶望のこの世界で、あなたは希望を持ってしまった。
そんなあなたの存在は、この世界では不自然な現象なの。
この世界は矛盾を許さない・・・
ほら、もうこの世界はあなたを否定し始めてる・・・」
60 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:06:29
「ちょっと待ってよ!せっかく会えたのに・・・そんなのってないよ!」
「もっと、自然な形で出会えたらよかったのにっ・・・」
「自然だとか不自然だとか、じゃあ僕と君が出会ったこの事実は何だ!?
僕と君が存在してるのに、触れ合ったのにっ!」
「ありがとう・・・楽しかった・・・」
彼女の頬を一筋の涙が伝っていった。
61 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:07:00
「なんで過去形なんだっ!君も、君も僕と一緒に行こうよおっ!!!!」
・・・ブツン。
彼女の答えを聞く前に、僕に繋がる音声が遮断された。
歪んでぐにゃぐにゃになった空間の向こう側で、
最後に彼女の唇が示したもの・・・
62 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:08:55
それは『う』の母音と『い』の母音だった。
『好き』にも見えたし、『無理』にも見えた。
なあ。
君なんでコテハンつけないの?
64 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:16:27
「(突然・・・すぎるよ・・・!!)」
僕にはもう、答えはわからない。
体の感覚がなくなっていく・・・。
僕は、君の事が・・・君の事が・・・
そして僕の意識は・・・オフになった。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
オフになる前にコテハンつけなって。
66 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:17:25
―声が聞こえる。
「大丈夫か・・・?」
「おいっ・・・」
わずかな視界の隙間から、大勢の人が見える。
ぼやけた意識が加速度的に鮮明になるに従い、僕は理解する。
ここは、僕の元いた世界なのだと。
唇をなめると鉄の味がした。
「生きてるぞぉっ!」
ワアアアア。
67 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:18:14
雄たけびにも似た歓声が辺りを包む。
僕は体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。
幸い、怪我はないようだ。
「あの高さから落ちて、よく・・・」
誰かがポツリと言った。
そうだった。
僕は死のうとしていたんだった・・・。
僕の今のこの状態を、陳腐な言葉で表現するならば『奇跡』なのだろう。
『奇跡』・・・今の僕にとっては虚しい現象でしかない・・・。
生きていたのか!
コテハンつけろよ。
69 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:18:38
当然、彼女はいない。
僕は自分の手を見た。
そこにはまだ、あの温もりが残っていた。
それが、切ないくらい僕の胸を締め上げる。
「うっ…うぁっ…ぐっ…!ひぐぁっ・・・」
だから僕は、嗚咽をもらして泣き始めた。
大丈夫。
コテハンつければ彼女も戻ってくるさ。
71 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:22:09
―数ヵ月後。
冬の訪れ。
僕は曲を作っている。
窓の外には雪が降っている。
僕は外へ飛び出した。
あの時を想わせる雪は、この醜い世界にも降る。
72 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:22:33
雪に君を重ねて、君が舞い降りてくれる気がして僕は天に両手を伸ばした。
手の平に、君を想わせる白い雪が舞い落ちた。
しかし、それはすぐに溶けてなくなった。
僕に、胸の痛みだけを残して―。
73 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:25:35
あの時、僕は物質的な君を求めていた。
けれど、君はいない。
今、君は僕の中で精神的な希望となっている。
僕は何時でも、何処かに君の姿を探してしまう。
君の欠片を、君の姿を、君の笑顔を・・・。
何処かに君がいる筈も無い事は分かってるのに、分かってるのに・・・。
74 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:26:11
絶望に身を任せていれば、ずっと君と一緒にいれたのかもしれない。
けれど、君と出会って感じたことが、僕の希望になってしまった。
今になって、ふと思うんだ・・・。
『君』という存在は本当は存在していなかった、嘘ではないのかと。
75 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:32:45
いや、嘘であってはいけない。嘘なんかではない。
なぜなら創作に必要な想像力のまるで乏しかった僕が、
ここまでこんなにスラスラと、
君という存在、君と過ごした事実を歌にして書き綴っているのだから、
嘘なんかではないんだ…。
76 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:33:07
漠然とした闇に恐怖し、理由なく絶望に身を投げた僕。
それに対して彼女。
まだ僕の脳裏に焼きついている、リストカットの跡・・・。
君の心の傷は計り知れない。
どれ程の痛みだったのか・・・
僕も君と同じ痛みならば、味わえば、もう一度君に会えるのだろうか・・・
77 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:33:32
けど、今でも僕は信じている。
希望…いや、『願い』と言うべきか。
君が寂しくなって、僕を好きになって、
いつの日か君が、僕を追ってこの世界に来てくれるのではないかと…。
78 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:35:43
僕は最近思うんだ、『奇跡』って物がもしも起こるなら、願いがもしも叶うなら、
今すぐ君に見せたいと・・・
希望に満ちた新しい朝が来る事を、
これからの僕は君だけを守り続ける為に頑張る所を、
そして・・・そして・・・
あの時言えなかった『好き』という言葉を君に伝えたい・・・。
79 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:36:10
虚しい幻想に身を任せて、死ぬまで君を待とうと心に決めた僕は、
哀れな男なのかもしれない・・・。
けれど今、僕は君以上に大切なものを見つけ出せないでいる・・・。
もしも命が繰り返すならば 何度も君のもとへ行きたい・・・
欲しいものなど もう何もない。
君のほかに大切なものなど、何も・・・
俺はコテハンを付けてほしいけどな。
81 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:48:06
こうして僕は、ひとつの曲を完成させた。
この歌が、君の元へと、届きますように…。
ーーー One more time,One more chance −−−
コテハンを付けてほしいという俺の望みは届かなかったけどな。
小説はいまいちだが、良スレ。
ハ,,ハ
( ゚ω゚ ) お断りします
/ \
((⊂ ) ノ\つ))
(_⌒ヽ
ヽ ヘ }
ε≡Ξ ノノ `J
85 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/19(火) 19:24:14
86 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/19(火) 19:43:14
____
/ \
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚((●)) ((●))゚o \ 糞Hiだお…
| (__人__)' |
\ `⌒´ /
87 :
名無し物書き@推敲中?:2008/06/01(日) 12:54:00
age
88 :
名無し物書き@推敲中?:2008/06/01(日) 21:10:37
読もうとしたけれども開けなかったね。
89 :
名無し物書き@推敲中?:2008/08/01(金) 19:37:10
れれぶらばらばろーん
90 :
名無し物書き@推敲中?:
この手のスレ、腐る程あるね