1 :
名無し物書き@推敲中?:
2 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:10:38
[これ以上 何を失えば 心は許されるの?
どれほどの痛みならば もう一度君に逢える
one more time 季節よ 移らないで
one more time ふざけあった時間よ]
ラジオからは今話題のヒット曲、
『One more time, One more chance』が流れている。
僕も、ラジオから流れる曲に合わせて口ずさむ。
「いつでも探しているよ どこかに君の姿を・・・明け方の・・・」
急に、僕の目から涙が込み上げて来た。
この歌を、『僕』が『君』の為に作ったこの歌が、
今、多くの人に感動を与えて勇気を与えているよ・・・
『君』も、何処かでこの歌、聴いててくれるのかな・・・
「この歌を聴く度に蘇る・・・君との、確かに存在した、君との時間が
何処かに探してしまう 君の姿を 存在するはずも無いのに・・・」
3 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:11:45
【白の空間に迷い込んだ僕と君】
4 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:12:05
もう、嫌だ・・・
生きているのが・・・
楽しくない。
嬉しくない。
悲しみしか生まないこの世界にいる意味なんて無い。
5 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:13:12
思えば僕は何曲作っただろうか・・・
オーディションに行っては落とされ、
路上で歌っては嘲笑れ、
『ミュージシャン』を目指してた夢も、情熱も、いつからか消え失せた。
僕は、この世界にさよならをする。
6 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:13:40
それは、真夏の暑い夜だった・・・
今居るここは、星の見えない東京の一番美しい景色が見える場所。
空の光が全て地上に降りてきたんじゃないかと思うほど東京の街は美しい。
愚かな人間たちが築き上げてきたものが、今、ひとつの光となって見える。
7 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 13:23:04
世界が消えればいいと思った、全身死ねばいいと思った。
けど…それを思っている自分が死ねば簡単に解決すると思った。
だから、僕はこの世界にさよならをする。
靴を脱いで、遺書なんて無い…
いや、振り返って見れば、僕には残せる物なんて何にもない…。
8 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:02:09
覚悟を決めた時、ふと脳裏を過ぎる。
走馬灯のように人々の顔が浮かぶほど、僕は人を愛せていたのだろうか?
答えを教えてくれる人は居ない。
答えを知っていなきゃいけない僕自身がわからないんだ。
そんなこと…わかるはずもない。
人生で最後のジャンプは僕に躊躇を与えた。
と、同時にそれを上回る勇気をもくれた。
9 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:02:36
一瞬の無重力の後、重力の手の平はすぐさま僕の足を掴み、
凄まじい勢いで僕を地上へと誘った。
夜の闇が僕の体を包み、目の前を眩しい光の群れが乱れ、飛び交う。
不思議と気持ちは穏やかだった。
僕の体を撫でては消えていく風は、僕の悲しみ、苦しみ、憤りを全て洗い流してくれるように感じ、心地良かった。
「ああ、気持ち・・・いい・・・」
これが僕の、この世界に残した最後の言葉だった。
次第に視界は白くぼやけてきて、そして、真っ白に染まった・・・
10 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:03:17
―僕は 死んだのか?
意識が、僕の体から離れない。
なぜ?
指が動く。痛みはない。冷たい地面の感触。
「(…生きてる…?)」
恐る恐る、目を開けてみる。
白くぼやけた視界の向こうに見えるものが僕の記憶の断片にあるものを思い出させる。
「これは…雪…?」
11 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:03:48
雪…それは、確かに雪だった。
僕の記憶が確かならば、
さっきまで僕が飛び降りた町、僕が生まれ育った町、
『桜木町(さくらぎちょう)』に雪は降っていなかったはず。
それ以前に、終わりかけとはいえ季節は夏だ。
おかしい。
…夢…なのか?
12 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:23:26
本の読みすぎ?
酷評できないわ。
独創的なところが、
見当たらない。
ガンバッテ!
13 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 14:49:21
……終わったのか?
14 :
名無し物書き@推敲中? ::2008/02/17(日) 15:02:27
終焉のようです。
ご悔やみ申し上げます。
ご家族の方へご連絡ください。
生前は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると、
思い込みガンバッテましたが、
親の忠告も聞かず絶食絶食で餓死しました。
15 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 15:14:57
>生前は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると、
相談してくれれば。。。
塹壕から跳びだして弾に当たりに行く マヌケ兵士・惨犯 を紹介しましたものを。。。
いや。。。残念です。。。。。。。。
16 :
名無し物書き@推敲中? ::2008/02/17(日) 15:29:31
葬儀は土葬の為、敷地内に放置することにしました。
小説家志望無縁仏書籍第一号墓です。
このような惨事を繰り返さない為にも、
くれぐれも志願者は教訓とすべし。
17 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/17(日) 15:48:48
徴兵検査 丙種合格 輜重輸卒専従兵 元作家志望 三犯 氏
台湾沖戦線で 名誉の戦死 ばんざーぃーーーーい!
ああ堂々の アスペルガー
さらば過疎板よ 栄えあれ
遥かに拝む 直木賞
ジジイに 捧げる この謝罪
18 :
名無し物書き@推敲中? ::2008/02/17(日) 15:57:37
>>17 遂に第二の犠牲者がでました。
小説家志望診断の結果、カキコ症候群にカルテに明記。
その後、痴呆が進み意味不明なカタコト日本語で、
さらにボケが進行します。治療法は見当たらず、
このまま白目を向いて天を仰いでます。
↑漢字が読めない三版
20 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 16:56:52
いや、違う…夢にしてはリアル過ぎる質感…
雪が、思い出すよりも先に、その冷たさを僕の肌に感じさせてくれる。
そう、これは間違いなくリアルだ。
髪の毛に積もった雪を振り払いながら、薄い雪のじゅうたんの上に僕は立ち上がる。
辺りを見渡すとそこには、見知らぬ街、見知らぬ人々。
みんな、僕が倒れていた事なんかには関心が無いようだ。
人々はみな、何処か、魂を抜かれたような…そんな印象を受ける。
機械の様に、淡々と歩いている。
21 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 16:57:24
立ち止まっていると、肌寒さが僕を包む。
当然のように着ている半袖を恨めしく思いながら、とりあえず僕は歩き出す。
― どこに向かえばいい?
22 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 16:59:28
あてのない見知らぬ世界に放り出されて強く感じる。
さっきまで死に向かっていた僕の、肉体的に精神的に、 なんという希薄なことか。
まるでなにをしていいのやら、まったくわからない。
死人に近い僕の思考は、ゾンビのように群集に交じりただ歩くことだけを遂行していた。
この世界からどうやって出ようかなんて、不思議なことにどうでもよかった。
いくつものビルを越え、前にいる人々を雪よけに使いながら、
三つ目に差し掛かった交差点で、気まぐれに僕は角を曲がった。
待ってましたといわんばかりに、雪が僕の体に戯れる。
その状況を少しうとましく思いながら、
人通りの少ない道を目的も無く、また歩き出す。
率直な感想、何もない。
何もないから、何も感じない。何も感じなくていい。
奇妙なこの感覚に、心地良さすら感じる。
何も考えなくていいというのは、なんと楽なことだろう・・・。
23 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:00:16
殺風景から殺風景へと、裏切りなく移りゆく景色の中にデジャヴにも似た、
懐かしい記憶をくすぐる映像が僕の眼に飛び込んできた。
「公園・・・?」
決して広くはないが、子供が駆け回るには十分な広さ。
公園にはジャングルジムに、シーソー、ブランコ、鉄棒があった…
ブランコに目を戻す。
24 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:00:45
かすかに揺れるブランコに、白いワンピースを着た少女が一人、
存在感なさげに、しかし無人の公園にしっかりとした違和感を与えつつ座っていた。
25 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:02:36
…半袖。
この寒空の下、半袖という選択ミスをしていたその少女に僕は妙な親近感を覚えていた。
真っ白い空の下、一人佇むその少女の表情は、
どこか切なく寂しげで、『美しさ』とは違った形容し難い魅力を感じるには十分すぎる程だった。
僕は、気がつけばその少女に見とれていた。
26 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:03:14
肩に掛かるか、掛から無いかの黒い髪。
ブランコの鎖を握る、細く白い手。
ほのかに桃色が彩られた白のスニーカー。素足なのだろうか?
揺れるブランコに合わせてわずかに上下している足首…。
しんしんと降る雪の中で幻想を思わせる少女に僕は―。
不意に、もっと近くで少女を見たいという衝動が僕を襲った。
ゆっくりと少女のほうへと歩みを進める。
27 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:09:46
ざっ、ざっ、と公園の砂を踏みしめる音がやけに鮮明に僕の頭の中に入り込んでくる。
気付けば、僕と少女の距離、約三メートル。
28 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:10:14
「・・・・・・」
じっ。
少女が僕を見ていた。
「あ・・・」
わずかな動揺が僕の意識を取り戻す。
少女は僕を見ている。
僕と少女は目が合ったまま。
耐え切れない沈黙に僕は思わず口を開く。
29 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:10:38
「あっ、あのっ…き、君、かっ可愛いね!」
言った瞬間に後悔した。
「(あぁ、もっと他に言葉はあっただろうに…)」
・・・・・・。
季節が通り過ぎたかと思うほどの長い一瞬。
少女は―。
「あはっ」
笑った・・・。
30 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:15:13
少女がこぼした白い歯は、不思議と僕の心を穏やかにした。
「それって、ナンパのつもり?」
大きな瞳で見つめながら少女は僕に問いかける。
少女の言葉に僕は眉を細めた。
「な、なんぱ・・・?ナンパ・・・になっちゃうんだろうね・・・」
ナンパというものを知らずにナンパをしてしまったような僕の態度に、
少女はまた笑った。
31 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:16:01
「変な人。」
「そうだね・・・」
短い会話。
僕の独りよがりな勝手な思い込みかもしれないが、
その小さなやり取りで僕は少女とほんの少しだけ…通じ合えた気がした。
32 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:16:22
「となり、いい?・・・ブランコ。」
僕は少女に希望にも似た問いを投げかけた。
少女は隣のブランコをちらりと見てから、視線を僕に戻して微笑んだ。
「どうぞ。公共のブランコですから。」
公共という言葉に少しだけ違和感を覚えながら、僕はブランコに腰掛ける。
33 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:16:56
少女の横顔を覗いてみた。
僕の視線に気付いて少女はこちらを見た。
その一瞬が、素直にうれしかった。
「ねぇ、名前はなんていうの?」
夢見心地に浸っている最中、少女が僕に尋ねてきた。
「あ・・・僕は・・・君はなんて言うの?」
『僕』は自分の名前を教えた後に、少女の名前を聞きだそうとした。
「・・・くん」
少女は僕の名前に『君』を付けて噛み締めるようにつぶやいた。
34 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:17:29
「よ、呼び捨てで良いよ・・・」
「うん。分かった。」
「き、君は・・・?」
再度、僕は少女に尋ねる。
「私は・・・。」
少女は自分の名前と、その由来まで教えてくれた。
35 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:25:30
「・・・良い名前だね。」
「ありがとう。」
ぎこちない自己紹介は静かに終わりを迎えた。
36 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:26:14
僕は空を見上げる。
不思議だ。
さっきまで死のうとしていたのがまるで嘘だったかのように、今は心が躍っている。
こんな気持ちは、長らく忘れていたものだ。
「ねぇ、・・・」
「ん?」
「死にたいって思ったことある?」
ドクン。
心臓が跳ねた。
37 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:26:37
僕の心を読まれたような錯覚に陥った。
「どうして?」
「ん、なんとなく。」
衝撃的な質問。
だけど、僕はその質問に答えたいと思った。
38 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:26:58
「死にたいと思ったこと・・・あるよ。
さっきまで死のうとしてた、いや、死に向かってた。
死んだと思ったけど、気付いたらこの世界にいたんだ」
「この、世界・・・?」
疑惑の視線を僕に向ける。
「信じられないかもしれないけど、僕はこの世界の人間じゃないんだ・・・」
「ふーん・・・」
正直、おかしいと思われるかもしれないと思った。
けど、彼女の反応は意外にも落ち着いたものだった。
39 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:27:35
「驚かないんだね、変な奴だと思っちゃったかな?」
「ううん?別に。」
「そう・・・ははっ、実際は凄い事になってるんだろうね。
何かの物語みたいだ。」
それから、僕は自身に起こった出来事を話し続けた。
ミュージシャンを目指していたが上手く行かない現実。
気がつけば20代後半になっていたのに不安定な生活。
そして、全てに絶望し、夢を諦め自殺を決意した事・・・
彼女は黙って僕の話を聞いてくれた。
お前、大丈夫か?
41 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:34:59
「君は、死にたいと思ったこと・・・あるの?」
話のキリが付いたところで僕は彼女に話を振ってみた。
「私は・・・うん・・・ある・・・よ。」
「そっか・・・」
少しの間をおいてみたが、彼女は詳細を話そうとはせず、
僕もそれ以上聞くことはしなかった。
その後はとりとめもなく、僕と彼女はお互いのことを話し始めた。
42 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:35:27
時間が流れ、僕と彼女はベンチで寄り添うように座っていた。
この寒空に似合わない半袖を笑いながら、
僕達はお互いの距離を徐々に縮めていった。
「さ、寒いね・・・」
「うん。」
質問されたことに答えるだけ。
ただそれだけでも僕の心は満ち足りていた。
43 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:35:49
「寒い、ね・・・。」
きゅっ。
「あ・・・!?」
不意に、彼女が僕の手を握って来た。
それは突然のことだった。
僕はその手を握り返した。
心臓のドキドキが、止まらない・・・。
44 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:36:16
僕の手が汗ばんでしまわないかと、気が気でなかった。
改めて見る彼女の手は透き通るように白く、存在しないように思えた。
なんともいえない甘酸っぱさが、僕を包み込むのが分かる。
彼女がはにかんで笑っている。
この一瞬は、きっと僕の中で永遠に輝くだろう。
そう直感が感じさせてくれた。
だが、そこで僕は発見してしまったんだ。
彼女の手首に、リストカットの跡があることを・・・。
45 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:37:00
今日、初めて出会った僕と彼女。
心の傷に触れるより、楽しく話をしていたい。
偽らざる素直な僕の気持ち。
そっと、見てしまった事実を吹っ切るように僕は彼女の手を引いて立ち上がった。
街へと歩き始めた二人の白い息は空に舞い上がっては消えていく。
彼女の手を握る僕の手の力は自然と強くなっていった。
そして、『決意』は、突然僕の胸にやってくる。
46 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:13
「僕、決めたよ!」
僕は叫んだ。
「どうしたの、急に・・・?」
僕の右肩の少し下から、彼女が上目遣いで尋ねてくる。
「僕は・・・作詞をして、思いっきり歌を歌う!!」
僕はそう豪語した。
「なんで・・・?」
彼女はキョトンとした表情でそう尋ねる。
「だって、今日死んでたかもしれないのにこんな世界に迷い込んで、
君と出会って、それだけでもすごいと思うんだ、歌になるよ!
僕は絶対曲を作るよ!よーし、やるぞぉ!」
忘れていた『歌』への熱き思いが蘇った・・・。
47 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:33
僕が突然発した熱量を、彼女はそっと微笑んで見守ってくれた。
「おめでとう、頑張ってね。」
嬉しい激励の言葉。
ただ、彼女の笑顔がわずかながら寂しさをはらんでいたと感じたのは、
僕の気のせいだろうか・・・。
48 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:44:57
それから僕達は時間を忘れて語り合った。
何故だろう、今日出会ったばかりなのに彼女には何でも話せる。
親にも話せなかった事、いや、話そうとした所で聞いて貰えなかった事も彼女は聞いてくれる。
彼女は以外と強気で『我侭』な部分を持っている事も分かり、
それがなおさら愛しくさせた・・・。
49 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:45:26
基本的に大人しい性格だが、食い違う時には絶対に譲らない芯の強さも持っていた。
僕は気が付けば彼女に魅了されていた。
今日出会った彼女の事が、本気で好きになってしまった・・・。
50 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:45:57
雪は次第に強くなり、僕と彼女は更に身を寄せ合っていた。
だけど、不意に彼女の手が僕の手を離れていった。
彼女は一瞬うつむいて、すぐさま顔を上げて優しく微笑んだ。
「もう、帰らなきゃ・・・」
気付けば辺りは暗くなり始めていた。
「そっか・・・」
名残惜しく僕は下を向き、
自分の手を見つめながらこぶしを開いたり閉じたりしていた。
51 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:50:57
タッ
突然、何かが駆ける音がした、と同時に僕の視界が黒に染まった。
ガツン。
52 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:51:17
「んん・・・!」
遅れた認識が徐々に戻り、視界が標準の世界を取り戻した時、
俺の世界には、ただ彼女の顔があるだけだった。
そして、理解した。
・・・唇が重なり合っている。
53 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:51:38
女の子の香りが僕の鼻腔をくすぐる。
その甘美な感覚を堪能したいと思った。
しかしその手前で、唇と唇はわずかにお互いを引っ張りながら離れていく。
「ん・・・」
立ち尽くす二人。キスというよりは衝突だった。
少し距離を離した彼女の頬には桃色がじんわりと浮かび上がっていた。
情けないことに僕は放心状態で、その場から動けずにいた。
54 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:52:08
「じゃあねっ!」
「あ・・・!」
僕の言葉を待たずに、彼女は人通りの少なくなった大通りの向こうへと走っていった。
彼女の後ろ姿が消える前に、僕はどうしても、確認しておきたいことがあった。
「・・・待ってくれ・・・!!!」
僕は彼女の名前を叫んだ。
55 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:53:08
彼女は離れた位置で止まり、くるりとこちらに振り返った。
「また・・・また、会えるよね!?」
それだけが聞きたかった。
早く答えが聞きたかった。
彼女の唇が動いた。
56 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 17:59:59
―もう、会えない・・・
57 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:04:55
予想に反して、確かに聞こえた、拒絶の声。
「どうし・・・」
言葉を返そうとした瞬間、僕の周りの空間がぐにゃり、と歪んだ。
「なにっ・・・!?」
僕の体がふわふわと風船のように軽くなり、意識が泥を投げつけられたかのように不鮮明になる。
58 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:05:27
「落ち着いて聞いて・・・」
マーブリングのような世界の向こう側から、彼女が僕に話しかけてくる。
「私も、あなたと・・・同じ・・・」
「(どういう…こと?」
59 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:05:55
「私も嫌なことがあって自殺しようとしていたの。
でも、でも・・・気付いたらこの世界にいた・・・」
「僕と、同じ・・・?」
「そうよ。私はこの世界に暮らし始めて気付いたの。
この世界は、絶望の行き着く先だって・・・」
「(・・・・・・)」
「絶望のこの世界で、あなたは希望を持ってしまった。
そんなあなたの存在は、この世界では不自然な現象なの。
この世界は矛盾を許さない・・・
ほら、もうこの世界はあなたを否定し始めてる・・・」
60 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:06:29
「ちょっと待ってよ!せっかく会えたのに・・・そんなのってないよ!」
「もっと、自然な形で出会えたらよかったのにっ・・・」
「自然だとか不自然だとか、じゃあ僕と君が出会ったこの事実は何だ!?
僕と君が存在してるのに、触れ合ったのにっ!」
「ありがとう・・・楽しかった・・・」
彼女の頬を一筋の涙が伝っていった。
61 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:07:00
「なんで過去形なんだっ!君も、君も僕と一緒に行こうよおっ!!!!」
・・・ブツン。
彼女の答えを聞く前に、僕に繋がる音声が遮断された。
歪んでぐにゃぐにゃになった空間の向こう側で、
最後に彼女の唇が示したもの・・・
62 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:08:55
それは『う』の母音と『い』の母音だった。
『好き』にも見えたし、『無理』にも見えた。
なあ。
君なんでコテハンつけないの?
64 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:16:27
「(突然・・・すぎるよ・・・!!)」
僕にはもう、答えはわからない。
体の感覚がなくなっていく・・・。
僕は、君の事が・・・君の事が・・・
そして僕の意識は・・・オフになった。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
オフになる前にコテハンつけなって。
66 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:17:25
―声が聞こえる。
「大丈夫か・・・?」
「おいっ・・・」
わずかな視界の隙間から、大勢の人が見える。
ぼやけた意識が加速度的に鮮明になるに従い、僕は理解する。
ここは、僕の元いた世界なのだと。
唇をなめると鉄の味がした。
「生きてるぞぉっ!」
ワアアアア。
67 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:18:14
雄たけびにも似た歓声が辺りを包む。
僕は体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。
幸い、怪我はないようだ。
「あの高さから落ちて、よく・・・」
誰かがポツリと言った。
そうだった。
僕は死のうとしていたんだった・・・。
僕の今のこの状態を、陳腐な言葉で表現するならば『奇跡』なのだろう。
『奇跡』・・・今の僕にとっては虚しい現象でしかない・・・。
生きていたのか!
コテハンつけろよ。
69 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:18:38
当然、彼女はいない。
僕は自分の手を見た。
そこにはまだ、あの温もりが残っていた。
それが、切ないくらい僕の胸を締め上げる。
「うっ…うぁっ…ぐっ…!ひぐぁっ・・・」
だから僕は、嗚咽をもらして泣き始めた。
大丈夫。
コテハンつければ彼女も戻ってくるさ。
71 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:22:09
―数ヵ月後。
冬の訪れ。
僕は曲を作っている。
窓の外には雪が降っている。
僕は外へ飛び出した。
あの時を想わせる雪は、この醜い世界にも降る。
72 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:22:33
雪に君を重ねて、君が舞い降りてくれる気がして僕は天に両手を伸ばした。
手の平に、君を想わせる白い雪が舞い落ちた。
しかし、それはすぐに溶けてなくなった。
僕に、胸の痛みだけを残して―。
73 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:25:35
あの時、僕は物質的な君を求めていた。
けれど、君はいない。
今、君は僕の中で精神的な希望となっている。
僕は何時でも、何処かに君の姿を探してしまう。
君の欠片を、君の姿を、君の笑顔を・・・。
何処かに君がいる筈も無い事は分かってるのに、分かってるのに・・・。
74 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:26:11
絶望に身を任せていれば、ずっと君と一緒にいれたのかもしれない。
けれど、君と出会って感じたことが、僕の希望になってしまった。
今になって、ふと思うんだ・・・。
『君』という存在は本当は存在していなかった、嘘ではないのかと。
75 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:32:45
いや、嘘であってはいけない。嘘なんかではない。
なぜなら創作に必要な想像力のまるで乏しかった僕が、
ここまでこんなにスラスラと、
君という存在、君と過ごした事実を歌にして書き綴っているのだから、
嘘なんかではないんだ…。
76 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:33:07
漠然とした闇に恐怖し、理由なく絶望に身を投げた僕。
それに対して彼女。
まだ僕の脳裏に焼きついている、リストカットの跡・・・。
君の心の傷は計り知れない。
どれ程の痛みだったのか・・・
僕も君と同じ痛みならば、味わえば、もう一度君に会えるのだろうか・・・
77 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:33:32
けど、今でも僕は信じている。
希望…いや、『願い』と言うべきか。
君が寂しくなって、僕を好きになって、
いつの日か君が、僕を追ってこの世界に来てくれるのではないかと…。
78 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:35:43
僕は最近思うんだ、『奇跡』って物がもしも起こるなら、願いがもしも叶うなら、
今すぐ君に見せたいと・・・
希望に満ちた新しい朝が来る事を、
これからの僕は君だけを守り続ける為に頑張る所を、
そして・・・そして・・・
あの時言えなかった『好き』という言葉を君に伝えたい・・・。
79 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:36:10
虚しい幻想に身を任せて、死ぬまで君を待とうと心に決めた僕は、
哀れな男なのかもしれない・・・。
けれど今、僕は君以上に大切なものを見つけ出せないでいる・・・。
もしも命が繰り返すならば 何度も君のもとへ行きたい・・・
欲しいものなど もう何もない。
君のほかに大切なものなど、何も・・・
俺はコテハンを付けてほしいけどな。
81 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/18(月) 18:48:06
こうして僕は、ひとつの曲を完成させた。
この歌が、君の元へと、届きますように…。
ーーー One more time,One more chance −−−
コテハンを付けてほしいという俺の望みは届かなかったけどな。
小説はいまいちだが、良スレ。
ハ,,ハ
( ゚ω゚ ) お断りします
/ \
((⊂ ) ノ\つ))
(_⌒ヽ
ヽ ヘ }
ε≡Ξ ノノ `J
85 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/19(火) 19:24:14
86 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/19(火) 19:43:14
____
/ \
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚((●)) ((●))゚o \ 糞Hiだお…
| (__人__)' |
\ `⌒´ /
87 :
名無し物書き@推敲中?:2008/06/01(日) 12:54:00
age
88 :
名無し物書き@推敲中?:2008/06/01(日) 21:10:37
読もうとしたけれども開けなかったね。
89 :
名無し物書き@推敲中?:2008/08/01(金) 19:37:10
れれぶらばらばろーん
90 :
名無し物書き@推敲中?:
この手のスレ、腐る程あるね