あなたの小説、小5が批評します

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「世界を切り裂く」

 映画館で働くことが決まりバスで駅まで帰った。
緊張の後の倦怠感が瞼と二の腕から広がりやがて全身を覆う前に
俺は耳にイアフォンを宛がいプレイヤーの電源をオンにする。
聴きなれたベースラインが脳内を縦走する。
やがてバスが到着し四人程の女子高生に続いて乗り込んだ。
Nothingのスペルについての議論を千切るように
ディストーションのかかったギターが散る。
世界が切り裂かれていくイメージを最大限の破壊衝動を乗せて思い描く。
途中のバス停で老婆が降り再び出発し出した車内で俺は
小銭が無いことに気付き百円玉を握って両替機へ歩んだ。
百円玉を運転席左横の両替機へ入れる。五十円が一枚と十円玉が五枚
小銭独特の金色の音を鳴らして落ちてくる。
座席に戻ろうとするとバスが道路の隅に止まり
俺は急のブレーキに前のめりになる。運転手が此方を見ている。
歳は五十程だろうか。暑い皺のある皮膚に油が載っている。
粘っこい厭な顔付きだ。獲物を追う魔獣のようなドラムのフィルインが来る。
運転手が工場で汚物処理をする係員のような目で俺を見ながら言う。
貴方何してるかわかってんの車内放送聴いてないでしょねえ貴方聴いてんの。
悲鳴に近いヴォーカルの甲高い叫びが両耳から脳を一斉に突付き始める。
ねえたいへんなことになるんですよわかってんの私が言ってること
わかってんの貴方何してんの。悲鳴が途切れる。
はいすみません申し訳ないですはいわかりました気をつけます
はいわかってます申し訳ないはい。俺は座席に戻る。
後ろの女子高生が蔑みに近い囁きを交わす。
俺は再びギターの歪みとピアノの連なりで世界を切り裂くイメージを思い描く。
できるだけ強く思い描く。
809お願いします このレスも:2007/08/21(火) 20:14:50
 駅に着いた。列車の発車予定時刻まで後四分。
走れば間に合う。走らなければ一時間以上待つことになる。
走るか。走らないか。走るか。走らないか。走るか。走らないか。
走るか。走らないか。俺は走っている。
跳躍するベース音に乗って俺は走っている。
 満員に近い列車に乗り込む。
髪の薄い会社帰りの男性と黒い携帯電話見つめながら左手の親指で
文字盤を打つ男子高生に声をかけ席を空けて貰う。
そこに座りんだ途端に両耳のイアフォンが抑えていた倦怠感が
一気に繁殖し出し俺は瞼を閉じて開け閉じ開けられず閉じてしまう。
両手にアルバイトに必要な書類の入った灰色の紙封筒を握らせたまま俺は
意識を列車の揺れに委ねる。
 降車する駅に着いた。駅員に定期を見せホームを出る。
車のヘッドライトの白と街灯のオレンジと信号機の赤が滲み
バターのような生暖かいぬめりになって視界を円形状に滑っている。
耳で鳴るオーヴァードライヴの効いたエレキギターが細く尖った線で
視界に表れナイフのようにしてバターだらけの夜景を切り刻む。
俺は叫ぶ。ファック。