この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条

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414青空銀香 ◆PK7G.7777I
「この石鹸で身体を洗いますとね、あなたの身体にとり憑いている悪い幽霊が成仏するんですよ」
 幽霊とはお前のことだろッ! と思わず突っ込みたくなる風貌の男が言った。
 玄関先で、もう二十分以上話が続いている。気まぐれに、訪問販売の男を家に入れるんじゃなかった。
わたしは後悔していた。しかし、男は、そんなわたしの顔色などお構いなしという様子で、とにかく喋る。
 男は長身だが細身で、まるで針金みたいな身体に、頬のこけた頭がのっかている。銀縁の眼鏡の
奥はうつろで、唇は青い。その石鹸はまず自分が使って見たらいいんじゃないのと、言いたくなるのを
わたしは必死でこらえていた。しかしだんだん、それをこらえる必要性がわからなくなってきた。
男が息つぎするところを間髪入れずに言ってやった。
「まずあなた自身が使ってみることをお勧めしますよ」
 すると男は、
「あぁ、それはよく言われます」
 言われちゃいけないだろう、とわたしは心の中で突っ込んだ。
「その石鹸を使いますとね、売ったわたしのところへ幽霊が、怨念を込めてとり憑いてくるんですよ。
つまりわたし自身が、この石鹸の効果を身をもって証明しているのです」
 この男は、商い上手なのかわからないと思いながら、わたしは一つ買ってやった。

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