七年ぶりの部室は見慣れない物や配置が変わっていたりはしたが、名残はそこそこあった。壁や机の落書き、棚にはコンテスト入賞の賞状やらが飾られている。そもそもここがまだ放送部の部室として使われていることが少し嬉しかった。
「瀬戸君」
驚いて振り返る。だがそこには誰もいなかった。
「泉…」
泉は部員のなかでは目立たないほうだったが、僕は彼女に密かな想いを抱いていた。でも結局最後まで気持ち伝えることは出来なかった。僕の意気地の無さと、彼女を奪った事故のせいで。
雑誌やコンビニの袋などで散らかった机のうえに放送用のスタンドマイクがあった。スイッチを押す。繋がってないので意味はないが、なんとなく。向かいあい、喋ってみる。
「チェック、チェック、聞こえてますか? そっちはどうですか? 僕は…まあ相変わらずです。チェック、チェック、届いてますか? 伝えたいことがあるんです…」
スイッチを切った。繋がってないので意味はないが。
埃をかぶり、やがて色褪せていく記憶。ただ棚に飾られた写真の二人だけは何も知らずにいつまでも笑顔のままだ。