もう随分長いこと歩いているような気がした。
歩いても歩いても、同じような景色ばかりが続く。
高層ビルの間を歩く人々。その人々のなかを歩く私。
群集はまるで私には気がつかないようだ。
そんな人々が楽しそうに生活している様子は、
もはや西部劇の白黒映画の一場面のように
荒涼とした風景にしか見えなくなっていた。
「西部劇か……」私は、ふと、
「ああ、ここは本当に砂漠みたいだな」と思った。
するとどうだろう、本当に地面に砂漠が現れ、
ビルも人々も砂漠に呑まれ沈んでいった。
そしてあたりにはビルの残像が、ヒトの残像が、この世界の残像が、
「そこにはそういうものがあった」という感覚だけが寂漠として残った。
私は、私は、まだ生きているのでしょうか?
次のお題
「つり銭」「殺人事件」「浅漬け」