この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十ニヶ条

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373お題「花 日差し 帽子」
 後輩が花屋で薔薇を買っていた。
 誰にあげるの、なんて聞くまでもない。
 この間、つきあい始めたばかりの彼氏と旅行に行ったと、私にお土産をくれた。
 小さな博多人形。後でこっそり、ほほえむ顔を爪ではじいたら、じんと指先がしびれた。
 彼氏とうまくいってない私の気持ちに似た痛み。
 幸せそうなあの子がうらやましい。
 いたずら心を起こし「お疲れさま」と声をかけると、照れた顔で店から出てきた。
「お疲れ様です、先輩」
「きれいな花。彼氏にあげるの?」
「えへっ。ほかの人には言わないでくださいよ。あっちにいるのが彼氏です」
 後輩の視線の先には、日差しを避けるように深く帽子をかぶった男性がいた。
「今日から、彼氏と一緒に暮らすことにしたんです」
「良かったじゃない」
 後輩は目を輝かせてうなずき、彼氏に向かって手を振った。彼は突っ立ったまま。
「もう、いつもすぐ気づいてくれるのに」
 後輩が駆けていって帽子を取る。と、私の彼氏の顔が現れた。


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