1 :
名無し物書き@推敲中?:
リレー小説「セキララに揺らめいて 〜ヒアルロン酸殺人事件〜」
第1話
「巡査、鑑識から鑑定結果が届きました」
「ありがとう、もう帰っていいぞ」
書類を受け取ったノリフジは、初めて買ったエロ本であるかのように、その資料を読みふけった。
そしてノリフジは思った。
「今回の事件、さすがに新婚デカの力を借りなければ解決できまい…」
現場に残された証拠は、全てヒアルロン酸が犯人であると示している。
こんな事があるだろうか。いや、あろうはずが無い。
ノリフジは、これまで関わってきた事件を回想した…。
2 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 02:31:10
3 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 03:13:54
第2話
「ノリフジ。警察官はな、心臓が命なんだ。心臓が無くなったら死ぬだろう。そういう事だ」
これが、モルヒネ先輩の口癖だった…。
ここは山梨県南アルプス市西南湖。
安藤家住宅前交番が、ノリフジの勤務する詰め所である。
「ノリフジ。今日の昼飯どうする?」
モルヒネ先輩が、腰まで伸びた髪で三つ編を作りながら聞いてくる。
「自分は給料前で厳しいんで、今日は弁当持ってきたんです」
そう言ってノリフジは、ウエストポーチから丸薬を取り出した。
この時ノリフジは、それから恐ろしい事件に巻き込まれるとは夢にも思っていなかった…。
4 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 03:36:14
ノリフジが手にしていた丸薬がパクリと割れて、なんと、中から、
子供が、飛び出してきたのである。
「やぁ。ぼくは、丸薬から産まれた丸太郎!」
5 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 03:50:39
第3話
「そうか。じゃあ俺は、コンビニでオーロラ丼買ってくるな」
そう言ってモルヒネ先輩は、勢い良く電動アシスト自転車で出かけていった。
オーロラ丼とは、ご飯の上に卵焼き、それにケチャップとマヨネーズを混ぜたソースをかけたものだ。
戦後の日本を支えたサラリーマン達の間で流行になっている、南アルプス市限定販売弁当だ。
「飽きないな、先輩も」
ノリフジは丸薬を飲み込み、昼休みが終わるまでクロスワードを解くことにした。
このクロスワード雑誌は、モルヒネ先輩から貰ったものだ。
先輩が一通り解いた後、消しゴムで答えを消して渡してくれた。
先輩は筆圧が強く、良く見ると跡が残っているから、先輩の答えが丸分かりだ。
「先輩、ここは室伏広治じゃなくて宗方コーチだよ」
ノリフジは、ペンで手のひら中央のツボ「労宮」を押しながら苦笑いした。
その時、詰め所の電話がチリリリリンと鳴った。
ノリフジは受話器を取り、言った。
「はい。こちら安藤家住宅前こうばブフォッ!ンブフフゥ!ゴホン!…交番です」
思いっきりむせたため、丸薬が鼻の方に行ってしまい、ノリフジを恐ろしい痛みが襲う。
「モルヒネは預かった。こいつの命が惜しくなければこのまま電話を切れ。惜しいのなら…」
ガチャン!
ノリフジは痛みのあまり、受話器を落としてしまった。
6 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 13:04:50
あげ
7 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 13:41:04
第四話
後日、モルヒネ先輩の遺体が見つかった犯人宅に、ノリフジは訪れていた。
十数人いる警官が一様に踊り狂っている。
その中、モルヒネ先輩の遺体は、まるでトイレに行きたくて仕方ないんだけど、好きな女子がいるから、なんとなく先生に言いづらくて、結局漏らしてしまった瞬間のような顔をして死んでいた。
「くそ、誰がこんな事を……」
「犯人はチョチョチョペンギン三世です。彼は今、行方をくらましていて、依然としてその足取りはつかめていない状況です」
「そうか……先輩、絶対この事件、解決してやるからな……じっちゃんのナニにかけて!」
8 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 15:46:57
第5話
「これは何だ?」
家賃525円、風呂無し、トイレ無し、夢も希望も無しの犯人宅にはおよそ似つかわしくない、高級そうなダイヤル式金庫が目に入った。
「この金庫、開錠してみたか?」ノリフジは金庫に腰を掛ながら聞いてみた。
「試みましたが、ナンバーが分からないとどうしようも無いですね。100人乗っても大丈夫、ただ、象が踏んだら壊れるかもしれないでおなじみの、コクヨ製です」
ノリフジは少し考えた後、言った。
「近隣で象を飼っている人を探せ。捜査協力を依頼して、象を借りてこよう」
「他に目ぼしい物は無いな…」「ノリフジ巡査!」
一人の警官がノリフジに駆け寄る。
「南アルプス市全域で捜索しましたが、象は一匹も見つかりませんでした。ただ、水素爆弾の手配は完了しました。 金庫を爆破してみますか?」
「馬鹿野郎!!江戸時代ならまだしも、この平成の時代に水素爆弾なんか使ってみろ。 騒音で苦情が殺到するぞ!」
待てよ…。ノリフジはあぐらをかいた姿勢のままジャンプし、そのまま立ち上がった。
「そのダイヤルは何桁だ?」ノリフジは尋ねた。
「2桁です。」 「よし。00から99まで、99通り全て試してみよう」
本来は00から99までの場合100通りだが、ノリフジにとってそれは瑣末な問題でしかなかった。
数分後、カチャ。と、金庫の扉が開く音がした。
「まさか99とはな…。一杯食わされた雰囲気だぜ」
金庫の中には、丸められたスーパーの広告が入っていた。広告を開き、裏面を見ると、シャープペンのようなもので、童歌のような文章が書かれていた。
「だ〜るまさん だ〜るまさん
選挙に落選 しちゃったよ
目玉を入れるのは サムタイム
地獄に落ちろ この東京砂漠
鬼さんこちら チャペルベルの鳴るほうへ
後ろの正面 だぁ〜れ
後ろの正面 課長のデスク
あの世で待ってろ この九州男児」
9 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/20(水) 16:42:25
これ小説家されて大ヒットするな
10 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/21(木) 17:14:52
あげ
11 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/22(金) 15:34:01
第6話
その時、ノリフジの体に電撃にも似た何かが走り抜けた。
「こ、これは……ただの落書きに見えるが、実は犯人からの犯行声明に違いない!」
「そ、それは本当ですか、ノリフジさん!」
「ああ、間違いない……ほら、これを見てみろ」
ノリフジはチラシの『表側』を見せた。
「これは、ただのチラシでは……?」
「違う違う、これを良く見てみろ」
そういって、ノリフジはある一点を指差した。そこには。
「な、これは、散らし寿司パックが31円だと!」
「ああ、そうだ。散らし寿司の特売広告が載っているチラシ、しかも三十一円……これは、あの、『散らし寿司31事件を彷彿とさせやしないか?」
そこで警官Aは、驚きの表情でノリフジを見た。
「まさか……もう後三日で時効が成立する、あの事件の犯人がチョチョチョペンギンだと言う事ですか!?」
「わからないさ……でも、その可能性はある」
ノリフジはそこで物思いに耽るように目を瞑ると、
「そう、あの事件にな……闘死郎」
そう、呟きながら思い出していた。十五年前のあの日を
12 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/23(土) 01:45:45
第7話
15年前。後に散らし寿司31事件と呼ばれるこの事件は、白昼のコンビニで起こった。
店内のカメラで撮影された映像から分かった事だが、コンビニに入店した小学生が、
散らし寿司の値段をマジックペンで書き換えるというイタズラをした。少年の名は闘死朗。
480円という表示に斜線を引き、「清算時、パンツが食い込んでいる人は31円に値引きします」と書き入れた。
それを見たチョチョチョペンギン(本名 当時31歳)が、店員に尻を向けズボンを上に引っ張り続けた。
店員は即通報。警官が駆けつけてもズボンから手を離さず、もっと食い込めばいいのか、もっと食い込めばいいのか、
とカセットテープのように繰り返したという。
カメラの映像が決めてとなり、ペンギンは無罪。
しかし、怒った被害者店員の父親(国内大手宝石店社長)が、警察や政治家に裏金を渡し、告訴。
満場一致で有罪となる。罪状はアナル愛護法違反。(懲役30年の実刑)
ペンギンはひまわり刑務所へ搬送される予定であったが、護送車より逃走。行方は掴めていない。
当時、護送車トラブルのため、警官の私物のオープンカーで護送されていた事が明らかとなった。
これが俗にいう「散らし寿司31事件」である。
当時の防衛庁長官、ケビン凱(45)氏はこう語った。
「罪を憎むか、人間を憎むか、それが問題だ」
「オープンカーは正しい判断。誰も台車を出せなかったら、戦車を使用する事になった」
13 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/25(月) 00:22:26
あげ
14 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/25(月) 12:34:56
第8話
ノリフジは暫しの思案の後、また現場を見渡した。
「ペンギン、今度こそ絶対に捕まえてやるからな……この、俺が、必ずな」
「ノリフジさん……」
そこでノリフジは二、三頭を振ると。
「思い出に浸ってる暇はないぞ。すぐにこのチラシを鑑識に回せ。俺の予感が当たっていれば、『アレ』が必ず検出されるはずだ」
「アレ、ですか? ……っ、まさか!」
警官Aはそれこそ、この世のものとも知れぬものを見るような目で、ノリフジを見た。
「ああ、そうだ……なぁ、幸子」
あれは、そう……ある冬の出来事だったんだ。
15 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/26(火) 02:50:22
第9話
あれは、そう。クリスマスを間近に控えた、ある冬の日の事だった。
会社からの帰り道を、ノリフジはほくほく顔で歩いていた。いくつものグラデーションが施された街角を、いくつもの雑多を、いくつものクリスマスソングを背に、ノリフジは歩き続ける。
そうしてたどり着いた先は、人の出入りがまったくとしてない裏路地。まるで溝のような異臭と、そしてゴミを漁る野良犬が、そこをあたかもどこか別の国のようにすら感じさせる。
だが、ノリフジの足はそこで一旦緩み、とある木製のドアの前で止まった。
すぐ横には、「スナック幸子」と書かれた看板が目に付く。
ノリフジは迷うことなく、キィっときしんだ音を出すドアを開けると、すぐさま微笑を向こうに投げかけた。
「どうだい、今日は」
自分でも驚くほどに柔らかい口調。それもそのはず。ノリフジの前には、まるで妖艶を絵に書いたような美女がいるのだ。
「まったくよ……まぁ、明日、明後日に店を畳むほどではないけれどもね」
そう言って、幸子は苦笑した。
そうかい、とノリフジは軽く返すと、は慣れた足取りでカウンターの席に座り、肘をつき、両手を組み合わせながら幸子に語りかける。
「そう言えば、もうすぐだろ。幸子の所の嬢ちゃんの誕生日。今度、ここに呼んだらどうなんだい?」
「ふふ、そういかないでしょ。あの子がくると仕事にならないし、それに……まだ、あのことを気に病んでるようだし」
「あ、ごめん……そう、だったよな」
幸子が暗い顔をするのを見て、俺まで視線を落としてしまう。だが、幸子はそんな空気を悟って、勤めて明るく言う。
「もう、なーにしみったれてるのよ。ほら、今日は私のおごりで飲んでいいからさ」
そう言ってチョコンと頭を傾けながら目を細める幸子を見て、俺は胸の高鳴りを覚えたが、そんな気持ちを隠すようにため息をつくと、
「前言撤回はなしだからな」
そう言って、俺はグラスを差し出した。
そしてこの時の俺は、すぐこの後に起きる惨劇に、まだ気づいていなかったんだ……。
16 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/26(火) 12:56:29
「さむ……」
ノリフジは凍えるほどの寒さに身を震わせた。場所は、この前と同じ、街角。しかし、この前よりも活気付いて見える。
それもそのはず。今日は――
「――クリスマス、か」
空を仰げば、暗い空に、白い雪がちらほらとちらついていた。白い息が、まるで鯉のように上がり、もやとなって消えていく。
ノリフジは気だるげに視線を戻すと、また、あの場所へ向かった。
スナック幸子。その看板が目に付いたときには、既に雪は積もり始め、いままで歩いてきた足取りを見てみれば、そこには深々と靴の後がついていた。
あまりに幻想的な風景。だが、ノリフジはその時にもう、異変に薄々感づいていた。
ノリフジはすぐさまドアの横に身を隠すと、ノブを回転させ、少しずつ中を覗く。
異臭、怪臭、そして血なまぐさい。こっちの世界に身を投じているノリフジからしてみれば、その匂いだけでそれがなんであるか容易に知れた。
「……」
ノリフジは身を低くしつつ、右手をホルスターに手をかけながら、中へと素早く、そしてしなやかに進入した。
真っ暗だ。まるで何も見えない。ただ、異臭だけが濃密に立ち込めている。
ノリフジは額の汗を拭うことなく足を進めると、ふと、視界の隅に揺れる蝋燭の明かりを見つけた。
いつもあんなものはあっただろうか……?
ノリフジは多少の疑心に駆られつつもそれに近づき、辺りを二度、三度伺うと、蝋燭を手にした。
長さは15センチあまり。太さはパイプぐらい。そんな普通の蝋燭はけれども、紫色をした炎を出していた。
その時。
17 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/26(火) 12:57:09
第11話
「ノリフジ、ね」
暗い部屋の中で声がした。この声には聞き覚えがある。
「幸子、か! 何処だ、何処にいるんだ」
ノリフジは蝋燭の明かりを頼りに辺りを見渡すと……いくつもの倒れる人の群れの中に、彼女の姿があった。
「これ、は……」
「はは……やられちゃったわ……軍服を着た連中がやってきてね……その蝋燭でもってやられたわ」
「この、蝋燭でか?」
「ええ……ナチスドイツの時代に、隠秘の物として隠されていた気化性の毒物……シルマニリオン。連中は、その正体を知ってる私を殺しにきたみたいでね、けほごふっ」
血を、吐いた。
「なら、早く消さねえと!」
そういって息を吹きかけようとするノリフジを、
「ううん……もう既に毒物の部分は過ぎてるから、大丈夫……いまはただの蝋燭でしかないわ」
「そう、なのか……て、早く助けを呼ばなきゃ」
「それも無駄ね……もう、みんな死んでるわ」
「そんな……」
「私がこうして生きながらえてるのも、連中が私にお客さんの死ぬところを見せるがために、遅延剤を飲ませたからよ……無関係な人たちが、お前のせいで死んだんだと思わせるため、げはぁ」
血の塊を、吐いた。白い地面が、赤々と染まる。幸子の白磁の肌が、血塗られていく。
「でも、私も終りね……最期に、一つ、頼んでいいかしら?」
幸子は弱々しい息を吐きながら、にっこりと微笑む。
「あぁ……あぁ」
俺は、見てられなくて……目を瞑るしかなかった。
「ウチの娘……美奈をよろしく頼むわ……あの子も、連中に、狙われてる、はず、だ……か…………」
カタリと、幸子は糸の切れた人形のように力を抜いた。その、死に際の顔はとても安らかで。
「……くぅあっ」
でも、生きてるはずの俺は、酷く泣いてて……。
これが発端だった。全て、この日から始まったんだ。
18 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 21:35:50
神スレの予感
19 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 21:38:44
回送やめてさっさと進もうぜ
第12話
……。
あれから数日後、やはりと言うべきか鑑識の結果、チラシにごくごく微量の毒物が検出された。多分、これで先輩は殺されたんだろう……。
俺はデスクに向かい合っていた体をそこから離すと、椅子に背をもたれ目頭を押さえた。
「ふぅ……とりあえずはこれでオーケーかな」
「なーにやってるの?」
そこで俺は目を開けて、逆さまに映る女性を見上げた。緩やかなウェーブのかかった黒髪。そしてどこか幼さが残るその顔には見覚えがある。
「桜庭……ああ、ちょいとな。例の件についてな、一段落着いてさ」
そう言って俺は今しがた作ったばかりの書類を桜庭に手渡した。
「えーと、なになに……しるまにりおんについて? それに……バックの黒幕ぅ?」
「ああ、そうだ。この間のあの事件には裏があ、って、ちょい待てよ桜庭、最後まで読んでないだろ!」
ぽいっと投げられた書類を俺はあわてて空中で掴むと、足早に去ろうとする桜庭に声をかけたが、当の桜庭は気だるげに振り返ると呆れたような視線と共にため息を深くふかーく吐いて吐いて吐ききった。
「いつまで夢見てるのよ、ノリフジ。そんな夢物語、あるわけないでしょうが」
「だ、だけど現に鑑識じゃあシルマニリオンが」
「シルマニリオン? そんなの出なかったって聞いてるわよ?」
「な、に?」
「出てきたのはクロロホルム。それも、先輩が自分で持ってたとも言われてて、ってノリフジ! 最後まで人の話は――」
そんな声を背に、俺は駆け出していた。
「おやっさん、どうなってるんだよ!」
俺は廊下にて、鑑識の親父――藤堂健三郎を捕まえた。白ひげを蓄えた初老の親父で、所内では愛着も込めておやっさんと呼ばれている。
そのおやっさんは今日に限っては、どこか気まずそうにして俺と目を合わせようとしなかった。
「ノリフジ……」
「おやっさん、この前の書類じゃあシルマニリオンが検出されたって――」
「すまない」
「……」
その一言で、俺は理解した。
「もみ消すんですか……」
俺は俯き、拳に力を込める。
「……すまない。本当に……」
もう、何も聞きたくなくて……俺は、脱兎のごとく駆け出した。
なにがあるかなんてわからない……でも、このまま終わらせるなんて、先輩に顔向けも出来ない。
「くそぅ! くそおぉぉっ!」
俺はこの日、警察を辞めることを決意した。
22 :
まとめ:2007/06/28(木) 11:55:31
ここまでのまとめ
・ノリフジ
山梨県南アルプス市西南湖、安藤家住宅前交番に勤務する警官。
敬愛するモルヒネ先輩を殺害した犯人を追う。
現場に残されたナチスドイツ製毒物「シルマニリオン」と、
15年前に起きた「散らし寿司31事件」から、チョチョチョペンギン3世が犯人であると推測。
・モルヒネ先輩
ノリフジの先輩。オーロラ丼を買いに出かけた際に殺害さる。遺体は山梨県内安アパートにて発見。
・チョチョチョペンギン3世
闘死郎によって引き起こされた「散らし寿司31」にて逮捕。罪状はアナル愛護法違反。
護送中のオープンカーより逃走。現在行方不明。
・闘死郎
「散らし寿司31事件」の真犯人。事件当時は小学生。
・幸子
ノリフジのいきつけ「スナック幸子」の美人ママ。娘の美奈を残し、機密隠蔽のためシルマニリオンにて暗殺される。
・桜庭
ノリフジの同僚。現実主義の女性。
・藤堂健三郎
初老の鑑識官。ノリフジと親しい。
なんだこのスレw
>残飯さんがまたホチキスネタで盛り上げてるねw一人チャットwww
ああ
いいんじゃないかな
誰も傷つかないし
おまえの手口はすべて知っている
話題が無いんだろなあ愛情乞食残飯
第二部 世界はただ平和で、けれどもただ残酷に
第一話
あれからどのくらい経ったろうか。
俺はあの日以来、事件の真相を求め、そして影にいる黒幕の正体を求め、東奔西走していた。
だが、全くとしてその足がかりはつかめず、とどめは警察からの発表。
「あれは、自殺です」
そんな何気ない、誰も気にも留めないような一言は、深く、俺の心をえぐった。自分が無力で、やるせない。あんまりにもやるせなさすぎる。
俺はその日、居間でただ泣いて、そして酒をあおり続け、後ろにいた制服姿の美奈に、ただ心配そうに影から見守られていた。
なんかちょっと面白いかも。
第二話
翌朝、俺は居間で美奈と対面しながら朝食を口にしていたが、その場を占める音は朝のニュース番組のみ。
「……」
「……」
美奈ももう既に高校生。だが、美奈は健気に家事を独りでし、そして家のために影ながらバイトもしていた。
俺はそれについては一切触れられず、美奈の優しさをひたすら暴食していた。ひどいのは分かってる。でも、それでも俺は――。
「ご馳走様」
「あ、お粗末さまでしたっ」
ヒマワリのような可愛らしい笑顔を向けてくれる美奈を、俺は、直視できない。もう、一年近くこんな態度しか取れていない……。
俺はすっと立ち上がると、コートを羽織って玄関へと向かった。
「今日は、いつ帰ってこれるの?」
長く艶やかな黒髪を元気よく跳ねさせながら、美奈は俺の後を追いながらそんなことを言ってきた。
その問いに対して俺は、
「夕方には……帰ってくるよ」
嘘しか言えない。
「……っ、えと、ホントにぃ? パパ、そう言って帰ってきてくれたためしがないよー?」
いつもなら、何も言わずに見送りをしてくれる美奈が、今日に限っては引き下がらなかった。とは言っても、この一言を出すためにどれだけの勇気を必要としたかは、ぎこちないその声色で十二分に悟れた。だが、
「今日は、本当だよ」
「……うん、わかった……パパの大好きな、カレーを作って待ってるからね」
そんな、ひどい嘘しかつけないんだ……。
第三話
俺はいつものように、居蛇利町をうろついていた。
居蛇利町は、都内でもある意味有数の歓楽街で、パチンコ屋や風俗店は元よりカジノまであり、しかもいわゆる『ヤクザ』な軒もいくつか目立つ。
だからこそ、こんな場所だからこそ、俺の求める情報がいくつか手に入る。
そしてそこで俺が最も出入り、もとい贔屓にさせてもらってるのが、裏路地に時たま現れる情報屋。
前金に10万、そして情報を聞いて20万。あまり安いとは言い難い金額だが、今の俺にはどうしても必要な情報だった。
「えっへっへ、毎度どうも」
手をこすり合わせながら姿を見せた男は、下卑た笑いを顔に貼り付けたまま、溝鼠のような臭い息を吐き散らしている。
だが、これも実際は表の顔でしかないんだろうがな。
「挨拶はどうだっていい。約束の物は手に入ったんだろうな」
くつくつと男は喉で笑い声を上げながら、右手で輪を作る。
「それはもう、最高の情報を仕入れてきました。つきましてはぁ、先に情報料として20万、いただきたいのですが?」
「……」
俺は懐から出した20万を男に差し出す。
「えへっへ、どうも、それでは勘定します…………はい、確かにきっちり20万の様子で」
そこで、男は
「しかしながら、嗚呼残念だ」
空を見上げ、
「残念?」
「ええ」
そして狂ったような形をした瞳を俺に向けた。
「あなたはその情報を聞くことなく、ここで死ぬのですから、くけへへへ!」
そう言った瞬間、男はポケットから出したナイフを俺に向けて、駆け出した。
29 :
名無し物書き@推敲中?:2007/07/09(月) 18:16:00
あげます
30 :
名無し物書き@推敲中?:2007/07/22(日) 03:01:14
あげ
>そして狂ったような形をした瞳を俺に向けた。
残飯の瞳は 「狂ったような形」 をしているそうだ
早い。
男の素早さは、まるで獣じみていた。
「シネェェエ!!」
強く握られたナイフ。それが、俺の眼前に繰り出され――
「でも、動きに無駄がある」
刹那、俺は月の光を映すナイフを軽くいなし、男の肘を掴むと、そのまま間接を極めてやった。
「う、あああああぁぁぁ」
男は呻き声を上げると、腕を押さえたまま地面に落ちた。
「それで、なんの腹積もりがあって俺を襲ったんだ?」
俺は膝を曲げ、男の薄くなった髪を掴むと、ブチブチという音を立たせながら持ち上げた。
男はただ口を痙攣させたようにパクパクさせながら、涙をうっすらと溜めていた。
「ち、ちげえんだ! どっかの誰かが、俺とあんたの間を知ったみたいで……ホント、すまねぇ……でも」
「誰だ?」
男の無駄口を聞きたくなくて、俺は簡潔に、そして無表情にそう口を開いた。
「あ……ああ、あ、あいつは、あいつらは、薔薇十字団……」
「薔薇十字……?」
聞いたことがあった。ドイツのヒトラーの独裁政権時に、そういった隠秘を学ぶ集団がいたことを。だが、それも昔の事。
しかも、そいつらは一様にして趣味の域を脱しないような、いわばカルト集団めいたところがあったと聞いている。それが、何故、いきなり……しかも、日本で。
そんな思考に俺が思いを巡らせていたとき、
「……あ、う、ああああああああああああああああああああ!!!」
男は突然発狂すると、パタリと首を落とした。
「ど、どうした? おい、おま……」
その顔色には、見覚えがあった。
「……シルマニリオン」
俺は浅い息を一度吐くと、男の骸の一部となった首を、静かに地面へ置き、立ち上がり、空を見上げた。
――月が、笑っている。
どこかで、あいつらも笑っているんだろうか。人を殺し、笑い、蔑む。
「ぜってぇ、てめえらだけは許さねぇ……薔薇十字団」
俺は強く、拳を握った。
33 :
名無し物書き@推敲中?:2007/08/06(月) 00:04:43
ひどく底冷えする日だったが、俺の心はもっと冷え切っていた。
だから、家に着いた時も、暖かさなんて微塵も感じられなくて、俺はただ無言で玄関を跨いでいった。
「あ、おかえりー」
美奈がトタトタとやってきた。
「……ただいま」
「もう、今日は夕方には帰ってくるって言ってたのに、12時過ぎだよ、今。まったくー。でも、ご飯は作ってあるから一緒に――」
「悪い。父さんはちょっと用事があってな……あとで食べるよ」
「え、あ」
それだけ言うと、俺はさっさと自室のある二階へと続く階段を上がっていった。
「パパ……」
寂しげにポツリと呟く少女は、何も電気の点いていない居間の中へと足を擦るようにして入ると、
椅子の上に座り、なだれるようにして机の上に臥した。
「もう……こんなのヤダよ……昔のパパに、戻って欲しいよ」
そうして少女は瞳を閉じて、枯れることの無い涙を机に染み込ませた。
とある情報を俺は見つけた。その内容は、薔薇十字団の団員がここ、山梨県南アルプス市西南湖の近くにある居住区に身を潜めているという噂だった。
「偶然にしちゃあ、出来すぎた話だな……」
俺はパソコンの液晶を睨み付けながら煙草を吹かすと、フッと紫煙を吐いた後に手元の灰皿へと煙草を押しつぶした。
そのまま椅子に背をもたれさせる。
「……」
目の前には天井。豆電球のみが点された部屋の中で、天井の染みが何かとダブって見えた。
――自らが吐いた血を、白磁の頬に、そして今にも壊れそうに線が細かった喉へと流していたあいつの姿。それが、また、とある少女とダブった。
「――」
なんてことはない、直感。いや、思いつき。
俺は開け放たれたままのドアの向こうへと目をやった後に腰を上げて、そのまま歩き始めた。
暗い、暗い廊下。時刻は既に深夜三時過ぎ。そんなはずはない。けれど、どこか押されるように前へ前へと進む足。
俺はいつもよりもずっと長く感じる階段を、そして一階の廊下を歩いていき、そこへと辿り着いた。
……居間。
最近、美奈がここで眠っているのには気がついていた。そして、なんでここで眠っているのかにも……。
けれど俺には、血に塗れた両手を美奈に見せる勇気はなくて、だから、美奈とは極力距離を置くように心がけていた。
「美奈、いるか……?」
明かりの何もついていない居間の中へと声をかける。返事はない。
「美奈、いたら、返事を――」
そのとき、俺の動きは止まり、その一瞬の後、駆け出していた。
全開の窓から吹く風が、時折カーテンを揺らす居間をそのままにして……。
36 :
名無し物書き@推敲中?:2007/08/21(火) 01:29:24
ああげ
37 :
名無し物書き@推敲中?:2007/08/29(水) 01:23:12
何で伸びないんだ?
エロが足りないんじゃないの
いや、
>>14から全部俺しか書いてないからだろ。他に誰か書きなよ。
39 :
名無し物書き@推敲中?:2007/10/21(日) 01:26:21
げ
40 :
名無し物書き@推敲中?:2008/03/31(月) 20:19:04
41 :
名無し物書き@推敲中?:2008/05/09(金) 11:49:56
神スレあげ
42 :
名無し物書き@推敲中?:2008/06/01(日) 18:05:01
さげ
43 :
名無し物書き@推敲中?:2008/07/25(金) 23:07:38
あげ
47 :
名無し物書き@推敲中?:2009/01/11(日) 01:42:06
test
tes
tes
54 :
名無し物書き@推敲中?:
続かなかったみたいだね。