自作小説を書いて見るスレ

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193ふみあ
 校門ではすでに母が待っていた。どうやら泊まっていたホテルからこちらに直行してきたらしい。気のせいかいつもよりめかしこんでいるような感じがする。
 母に葛城さんと春日さんを紹介しようとしたが、またしても葵姉ちゃんに先を越されてしまった。
「おはようございます。智代伯母さま。」
「おはよう葵ちゃん。えーと、そちらの方は?」
「こちらは私の先輩で3年生の葛城 紫苑さん。こっちが私の同級生の春日 雪乃さん。紫苑お姉さま雪乃さん、こちらの方が、私の母の妹に当たる人で薫ちゃんのお母様でもある、伯母の智代さんです。」
「はじめまして、薫の母です。いつも姪がお世話になっています。」
「はじめまして、葛城 紫苑と申します。こちらこそいつも葵さんには助けていただいています。」
「はじめまして、春日 雪乃です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、今年は姪と共にムス…メともどもよろしくお願いいたします。」
今絶対息子と言いそうになったな。間違いない。
194ふみあ:2009/06/19(金) 13:28:31
「母さん、葵姉ちゃん達が案内がてら会場まで一緒に行こうと言ってくれているんやけど、かまわんよね?」と母だけに聞こえるように言うと、
「かまへんよ、むしろ良かったやないの。あんた会場の場所分かっているの?」
「なんとなくは。」
「なんとなくじゃあかんやないの。絶対に一緒に行ってもらった方がいわよ。」
「じゃ決定ということで。葛城先輩、母もかまわないそうなので、講堂まで連れて行ってもらいませんか。」と母に同意を取ってから改めてお願いする。
 結局、校門から講堂まで交差点ごとに案内表示やスタッフの人がいてそれほど迷う危険性は少なそうだったが、目の前に現れた建物は度肝を抜くものだった。
 講堂というと普通は体育館のことを表す言葉だと思うのだが、案内されたのは想像していたものとは全く違う、一言でいえば小規模の会議場やコンサートホールのような建物だった。
195ふみあ:2009/06/19(金) 13:29:47
 中の方もエントランスを通り階段を上がるとホールがあり、入ると、一番奥にステージのような演壇があり、それを扇形に囲むように階段状に座席が並んでいて、後ろの方にご親切に2階席までついている。まさに文字どうり講堂だった。
 思わず「すごい。」といってしまった。
「そんなにすごいかい。」と春日さんが訊ねてきた。
「確かに他よりはしょぼいかも知れませんが、学校、それも高等学校にこんな建物があるなんてすごいです。」
「そんなにすごいかな。」
「すごいですよ。僕なんか講堂と聞いて体育館だと思い込んでいたんですから。それにしょぼいといっても、規模が小さいというだけで機能としてはその辺の会議場やコンサートホールよりも上を行っているんじゃないですか? たぶん。」
「さあね、わたしは詳しくないからよくはわからないが、そこまですごくはないだろう?」
「すごいですよ。というより珍しいです。」
「珍しい? 普通にあるものだと思うが。」
「そんなことないですよ、普通の学校にこういう建物はありませんし。」
「だけど、私は講堂というものはどこの学校にもあるときいたけどな。」
「そりゃ、確かにいますけど、普通の学校で講堂といったら体育館のことを指すんです。」
「そうなのかい。」
「大抵体育館の奥にステージを設置するものですから、大抵の屋内行事や演説は体育館で行われることが多いので、体育館のことを講堂と呼ぶ習慣があるんです。」
「ああ、だからさっき君は会場が体育館だと思い込んでいたと言ったんだね。」
「ええ。」
196ふみあ:2009/06/19(金) 13:31:03
 建物の中に入るとすでに入場の案内を始めていた。
「ではみなさん、また後で。」と3人に一時の別れを告げた後、母を促して会場となるホールに入った。

2-6終わり、2-7に続きます。