183 :
ふみあ:
2-4食堂にて その2
>>薫
「ではこちらの席にどうぞ。」
「ありがとう。」
とりあえず、4人掛けのうちあいている入口に一番近い席に座る。
「すみません。遅くなりました。」
「こちらこそ、悪いね。先に頂いているよ。」
遅くなった詫びをすると、真正面の春日さんが返事をしてくれた。僕の右側に葛城さん、左隣に葵姉ちゃんが座っている。
見ると三人とも和食を食べているらしい。
「あれ、皆さん和食なんですね。」
「そうだよ〜。」
「日本人なら、朝は御飯と味噌汁だろう。」
「あら、薫さんは和食ではないのですか?」
「僕はフレンチにしました。」
「ああ、そうなんですか。」
「クーちゃんも和食ならみんなそろったのに。」
「僕、昨日の朝食がおもいっきり和食やったから、たまには別のものがいいかなと思って。」
「ふうん。まあいいわ。でも和食も食べてみてね。」
「考えとくよ。」
184 :
ふみあ:2009/06/17(水) 04:30:53
そこに突然春日さんが会話に割り込んできた。
「ところで薫君。」
「何でしょうか?」
「君は自分のことを呼称するとき『僕』っていう一人称を使うんだな。」
「それがどうかしましたか。」
「僕っていう一人称は普通男の子が使うものだと思うんだが。」
おそらく彼女はこの時婉曲に僕のことを、女の子、いや淑女らしくないと注意したかったのだろう。だが僕から見れば、一人称こそ『わたし』であるものの、彼女の言葉遣いも相当ボーイッシュに感じる。
それに『僕』という呼称は今の僕に出来る数少ない現況における抵抗手段の一つ、ないしアイデンティティの一つである。簡単に譲るわけにはいかない。
185 :
ふみあ:2009/06/17(水) 04:31:33
「でも、最近は僕みたいに自分のことを『僕』っていう女の子結構いますよ。」
主に二次元にな。ちなみにこういうのを萌えの世界では「僕っ娘」というらしい。
「そうなのかい?」
「そうですよ。」
ていうかあんたのその宝○の男役のような話し方はどうなのさ。
「ふーん、まあいいや。だけど自分のことを「僕」と呼ぶことはここではあまり感心されないだろうね。」
「ここではというと?」
「君も知っているようにここはお嬢様学校として世間に知られ、一流の淑女を要請するための情操教育をおこなっている。」
「らしいですね。よくは知りませんが。」
「当然その分生徒にはそれ相応に振る舞うことを要求される。」
「でしょうね。」
「ここでいう淑女の振る舞いには主に3つの種類があるんだがわかるかい?」
186 :
ふみあ:2009/06/17(水) 04:32:13
いきなり振るか?
「3つというと、行動、服装、喋り方でしょうか?」
「まあ、大体あっているけど、正確には立ち居振る舞い、話し方、知識教養だったかな。」
かなって…、大丈夫かこの人。
「その『話し方』に引っ掛かるということですか。」
「そういうことになる可能性があるということだよ。」
「はあ。」
「君も『僕』っていう一人称が淑女に相応しいとはよもや思わないだろう。」
「そう言われればそうですが。」
「ん?」
「春日先輩のしゃべり方も男性、いえ男役のようなしゃべり方ですよね?」
「君もそう思うのかい。」
「失礼しました。」
「何故謝るんだい。」
「先輩がそこまでお気になされているとは知らなかったし、後輩として出過ぎたマネをしたと思いましたので。」
「律儀というか、やっぱり君相当変わっているねえ。」
「そうでしょうか。」
「そうだよ。で、私の話し方のどこが男ぽかったのかな?」
「そうですね。全体的な雰囲気というのでしょうか、強いて具体的にいえば、文尾を『だろう』とか『だ』で切ったり、僕のことを薫君と呼んだりするところですね。」