153 :
ふみあ:
1-2曾祖母
>>薫
僕は小さい頃からチビで、臆病で、女々しい印象の為に、よく女の子に間違われてきた。
中学の時、中高一貫の男子校に通っていたが、女装企画で無理やり女装させられた時も、何人かに、
女に生まれたらよかったのにとか冗談で付き合ってくれとは言われたけど、まさか14年間、いやほぼ15年も
曾祖母がそんな思い違いをしているとは思わなかった。
いや、待てよ。よく考えたら、思い当たることがないわけではないぞ。僕は少し昔のことを思い出していた。
松江の祖父母の家に家族で帰省して、ついでに曾祖母へ挨拶に出向くたびに、曾祖母は僕にこう言っていた。
「全く薫や、いつ見てもおまえは男っぽいねえ。」
「え、本当? 曾おばあちゃん。」
普段、女々しいとか、女っぽいとか、男らしくしなさいとか言われている身の上としては、この意見は中々貴重で嬉しかった。しかし曾祖母は…
「何喜んでるんやこの子は、もっとしとやかにせんといけへんよ。」
「?」
何故男がしとやかにしなければいけないのか、当時から疑問には思っていたが、男はあま
りやんちゃするより、落ち着いている方がいいのかと勝手に自己完結していた。
その後も曾祖母は嫁がなんたらとか何か言っていたが、なにぶん年のせいもあってよく聞こえなかったし、
特に重要だとも思えなかった。今ならわかる、あれは嫁の来手がないと言ったのではなく、
嫁の行き先がないと言ったのだと。
続くよ
154 :
ふみあ:2009/05/31(日) 14:01:31
そんなことを思い出しながら、僕はその場にいた全員に問いかけていた。
「みんな…、知ってたん?」
その瞬間全員がまた、「うん!」と答えた。元気よく答えるな!!
「誰も訂正する気あらへんかったの?」と訊くと、その場にいた全員が口々に、
「だって、ばあさん頑固やったからなあ。」「自分の間違いは絶対に認めん人やったしねえ。」
「それに放っておいた方がおもろかったからなあ。」「あ、それ言えてる。www」
こ…こいつら。思わず叫んでしまう。
「笑いごとやあらへんよ。どないすんねん遺言状。マジで女子校に通えっていうの?」
「まあ、それも一興とちゃうか?」「薫ちゃんの女装かわいいもん。」
僕「いつみたねん! んなもん。↑」
「去年薫ちゃんの学校でやってた文化祭。」
「来てたのかよ!」
「それに薫ちゃん、あんた女装趣味があるやろ?」「え! マジで?」
僕「いや、それは…」
「なら問題ないんちゃう? ばれなきゃいいんだし。」
「そういう問題じゃないでしょ!」「お婆ちゃんの思い、反故にする気?!」
「そんな…」
気のせいか皆の期待に満ちた眼差しが僕に注がれる。どう考えても断れそうな雰囲気ではない。僕はとうとう断念した。
「わかった。行きますよ。行きゃいいんでしょ。」
「よう言うた。それでこそ漢や。」「がんばってね。薫ちゃん。」
この時、実行はしなかったものの、親戚を一人一発ずつ殴ってやろうかと本気で思った。
かくして僕の東京行きは決定した。
155 :
ふみあ:2009/05/31(日) 14:02:41
1-2終わり1-3に続くよ