150 :
ふみあ:
第一章 悲劇の始まり
1-1曾祖母の葬式にて
>>薫
事の始まりは、足を悪くして長年寝たきりだった曾祖母がこの2月にとうとう天に召されたところまでさかのぼる。
僕の曾祖母は先の戦争のころからずっと曾祖父と共にうちの会社を支えてきた上に、3男2女を育て上げ、挙句、様々な慈善事業をし、
この学校の先代の理事長を務めていたこともあったらしい。
とにかく人望に厚かった人なので、葬式のときには親戚以外にも沢山の弔問客が訪れて、
遠くは外国から遥々知らせを聞いて駆けつけたという人もいたくらいだ。
僕自身曾祖父や曾祖母といえる人が彼女しかいなかったこともあり、曾祖母を慕っていた。
そんなおばあさんの葬式が一通り終了し、涙もさすがに枯れて、気分も落ち着き悲しみから立ち直り始めたころ、
親族会議で曾祖母の遺産相続の分配について話すことになった。尤も、すでに曾祖母は正式な遺言書を顧問弁護士を通じて作成したので、
特に話し合うこともなく遺言書のとうりに進められ、家財や土地は後を継いだ祖父に、その他の金品は兄弟で平等に分け、
相続税の手続きの手順も決め、曾祖母の形見なども孫・曾孫に一通りいきわたった後、弁護士の手塚さんが身の毛もよだつような遺言状の一節を読み上げた。
「…え〜、なお、綾小路 智代および浩彬が嫡子、薫は「聖リリカル女学院高等部」へ編入し、卒業す…」
ん?ちょっと待て。手塚さんやいま変なこと言わなかったか?
151 :
ふみあ:2009/05/31(日) 01:20:09
続き
そう思って「ちょっと待ってください!」手塚さんを静止すると。
手塚「何か?」
僕「何かって。何かやないでしょう。僕男ですよ。
なんで女子校に通わんといけないんですか?」
手塚「何故って、故人の遺志ですし。」
どうも手塚さんは仕事を済ませて早く帰りたかったらしい。訝しい目で、いかにも面倒
くさそうにこう答えたが、こっちはそうも言っていられない。書面一つで人生狂わされて
たまるか。だけどこちらの事情を知ってか知らずか非情にも手塚さんは話を進めていく。
「故人の遺志を尊重して、そこは薫さんも従ってもらいませんと…」
「そりゃ、曾祖母の遺志は尊重したいし、できれば従いたいですよ。そやけど…」
無理だろ、ぶっちゃけ。
152 :
ふみあ:2009/05/31(日) 01:21:03
さらに続き
不毛だ、話が平行線をたどっている。手塚さんによれば遺言書は法的に有効なものであ
り、すでに手続きを済ませているとのこと。要は今更変更など効かないというのだ。
悲嘆にくれている僕に更に祖父が追い打ちをかけた。
「あのなあ薫。」
「何?おじいちゃん。」
「ずっと黙っていたんだが…、曾おばあちゃん、実はずっとお前のことを女の子やと思い
込んでいたんじゃ。」
「…はい?」
「だからお前のことをずっと女の子やと勘違いしていたんじゃ。」
「いやいや、おじいちゃん。小さい頃ならいざ知らず、この遺言書を曾おばあさんが書い
たの、確かこの間のはずやで?あり得へんでしょう?」
しかし、祖父は沈黙した。無言の同意だった。
「まさか、今の今まで曾おばあちゃん僕のこと女の子やと思い込んでいたんか?!」
そう僕が叫んだ瞬間、僕以外のその場にいた全員が頷いた。
とりあえず1-1終わり
1-2に続くよ