今までありがとう(´・ω・`)

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1名無し物書き@推敲中?
ありがとう…
(´;ω;`)ブワッ
2名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 04:27:00
2ゲッツ

なした?
3名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 05:21:30
ん、このスレ
いろんな所に出没中だな
4名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 08:04:36
やだやだやだ〜。*゚(。≫□≪。)゚*.
5名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 08:09:37
記念カキコ
結果的に釣りでも気にしない
6名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 09:20:09
>>1>>3-4
こいつらセットなんだぜ
7名無し物書き@推敲中?:2007/01/15(月) 20:22:27
(´・ω・`)知らんがな
8魑魅魍魎:2007/01/17(水) 19:10:14
兎に角、皆ありがとうですぅ(・∀・)
9名無し物書き@推敲中?:2007/01/18(木) 02:38:28
仕方ない。ここは発展場として再利用するよ。
10名無し物書き@推敲中?:2007/01/18(木) 02:58:01
『晩年』から始まった太宰みたいだな。
11名無し物書き@推敲中?:2007/01/19(金) 00:57:01
「今まで有り難う…」
虫の息で>>1は言った。>>1は俺の腕に抱きかかえられながら力なく笑う。血まみれの彼は
まもなく死ぬだろう。しかし俺は彼の右手をギュッと握り返して叫んだ。
「馬鹿野郎っ!まだ、まだ終わっちゃいねえよっ!」
俺は涙ながら>>1の体を抱きしめた。…こんなところで>>1を失うわけにはゆかない!それが
我々メンバーの思いだった。敵は益々攻勢を強める。大砲の音が響きあう戦場。砲弾が我々
のいる塹壕のそばで炸裂して巻き上げられた土砂がパラパラと降りかかってくる。我々の小隊
は広がりすぎた戦線のなかで何時しか孤立し、援軍も期待出来ないなかで我々は尚も、目指す
シャングリラに向かって進軍を続けていた。
「…こ、これからは、ボク無しでも大丈夫だよ。み、みんなで力を合わせて戦えば、何時はシ
ャングリラに辿り着けるさ…」
>>1は苦しそうに言った。そう言いながら必死に微笑む。俺は何も言えずに>>1を抱きしめた。
両腕で力なく俺を抱き返す>>1。部下の兵達も我々の横で泣く。

…100mほど先の土嚢が吹き飛ぶのが見えた。遂に味方の防御線が破られたのだ。遠くから
機関銃の連射音が響く。低く、かつ遅いリズムの発射音は、我々よりも低回転の機構を持つ敵
の機関銃特有の音だ。その音と共に味方の兵士達の断末魔の叫びが聞こえた。
12名無し物書き@推敲中?:2007/01/19(金) 00:58:01
「…さあ、早くゆけ!こ、こんなところでモタモタするなっ!」
>>1は怒鳴った。俺は彼の必死の形相の前で混乱してしまい、黙って彼を見返すことしか出来
なかった。…彼を、>>1をこんな場所で死なせたくない。いや、>>1自身を何とか助けたい!…
そういう思いが頭の中で渦巻き、俺自身の判断を遅らせた。
>>1はそんな俺の思いを見透かしたように言った。
「…どうせ俺は此処で死ぬさ。だがな、最後くらいカッコつけさせてくれよ。お前らが戦線を
突破して砦を越えるまで、此処で援護射撃してやるよ。…なあに、任せておけって。」
「…し、しかし、>>1…」
尚も戸惑う俺に対し、>>1は怒鳴った。
「さあっ!早くゆけっ!…先任士官が皆死んだいま、お前がこの中隊の指揮官なんだぞっ!」
>>1は俺を突き飛ばした。そしてもう一度俺を見返すと、今までで最高の笑顔で笑った。
「笑えよっ!…俺のために笑ってくれっ!」
俺達は>>1のために笑った。涙を流しながら笑った。そして血涙を振り絞り、部下の兵士達を
率いて塹壕を抜け出した。砦に向かうまで後方から>>1の放つ銃声と迫撃砲の音が響いた。俺
は涙を流しながら、一度も振り返ることなく砦に向かって突進した。
13名無し物書き@推敲中?:2007/01/19(金) 00:58:57
味方の防御線は完全に崩壊した。我々は砦にあった師団本部が壊滅したのを確認すると、もはや
この場に用は無いと判断し、そのまま西部戦線へと連なる西の密林へと分け入った。
敵の左翼守備隊の一部が我々の行動を発見して後方から攻撃してきた。我々は生き残った中隊を
二つに分け、左右で互いにしんがりを務めながら密林の奥へと進んだ。

…いつしか夜になった。集合点であったR−23地点の岩山に集まった味方の兵士の数は半数に
減ってしまっていた。敵の威力偵察を恐れて焚き火も出来ないなかで我々はキズを治療し、缶詰
を開けて腹を満たした。
>>1の死…いま、こうして落ち着くと改めてその事実に打たれた。中隊付きの作戦参謀であった>>1
はエリート士官であるにも関わらず一兵卒に対しても分け隔てなく応対するような男であり、中隊
内の人望も厚かった。明晰な頭脳を持ちながらも、中隊から怪我で離脱してしまった兵士を助ける
ために砲火が飛び交う戦場に単身乗り込んで救出に向かったりもした義の男…。

…彼の意思を継ぎ、我々は何としてもシャングリラに辿り着かなければならない!
俺は泣きながらそう誓った。見上げると夜空には上弦の三日月が煌々と青白い光を放っていた。
14名無し物書き@推敲中?:2007/01/19(金) 20:10:14
(´・ω・`)
15名無し物書き@推敲中?:2007/01/20(土) 02:46:34
「いままで有り難う…」
>>1は涙ながらにそう言った。俺は彼の病室のベッドの脇で立ち竦んでしまった。長い闘病生活で
すっかりやつれた顔は既には力ない笑顔が浮かぶ。俺はその笑顔に答えようとしたが、何度微笑も
うとも顔は強張ったままだった。手にした10万円の札をギュっと握り締めたまま彼の横たわる
ベッドの脇で動けなかった。
「…キミがしてくれたことは感謝してるよ。感謝しきれないほどだよ…。でも、そんなに無理を
しなくても良いんだよ。もう、ボクは長くない…」
「なっ!何を言ってるんだよ>>1!俺とお前の仲じゃないか!確かに手術は難しいって医者も言
ってるよ!でも…でも生きる望みがあるのなら最後まで諦めちゃ駄目だっ!」
俺は叫んだ。病室の他の入院患者たちが驚いてこちらを見る。俺は少し冷静になろうと大きく
深呼吸した。そしてもう一度>>1に言った。
「手術費用のことなんて気にするなよ。直ってから返せばいいんだからな!今は、今だけは、
お前は自分のことだけ考えていればいいんだよ!」
「だけどな…ボクが手術したところで完治できるとはかぎらないんだよ。…それに手術自体の
成功率が低くて死ぬ可能性だってある。…ボクはね、今までの人生に不満は無いんだよ。この
まま死んだとしても後悔はしない。そりゃ、死ぬのは怖いさ。でも、人間はいつか必ず死ぬん
だよ、遅かれ早かれ」
>>1は言った。どこか達観しているような静かな表情で。しかし、俺はどうしても納得できな
かった。元気だったころは、誰よりも勇敢にチャレンジしてきた>>1なのだ。そんな>>1の姿を
みて俺達は励まされ、勇気付けられてきたのだ。そんな>>1が諦めて弱音を吐いている姿なんて
見たくはなかった。
16名無し物書き@推敲中?:2007/01/20(土) 02:47:07
「…お前はいいさ。それでもいいさ、勝手に死にたければ死ねばいいよ。だけど…だけど>>1
久美ちゃんはどうなる!お前が死んだら久美ちゃんはどうなるんだよっ!…残された者のため
に最後まで戦えよっ!お前はそんな男だったのか!」
俺の言葉に>>1は少し動揺した。目線を逸らして窓の外を見つめる。少し肩を落とした>>1は、
そのまま俯いて言った。
「久美は…久美は強い女だよ。俺だって久美と別れるのは辛いさ。だけど久美なら、それくらい
のことを乗り越えてゆけるはずさ…」
「…馬鹿、馬鹿野郎…>>1、お前は身勝手だよ…」
そして俺達二人は無言になった。掛けるべき言葉も見つからず気まずい空気が流れた。

病室の扉が開いた。せわしく入ってきたのは久美だった。
「ゴメンね遅くなって。お店が忙しくて中々上がれなかったの。…あら、いらっしゃ
ってたの?」
久美は俺に気付くと、軽く会釈した。俺は笑顔を作りそれに答えた。>>1も久美の方を
見て力なく微笑んだ。そして
「…忙しかったらそんな無理に来なくても大丈夫だって。今日明日死ぬわけじゃない
んだし…」
>>1の言葉に久美は軽く笑顔で返すと急須に緑茶の葉を入れてポットの湯を注いだ。さ
らに花瓶を手にすると病室のわきにある洗面所にゆき、水を交換して小枝を差した。
…紅梅の小枝だった。少し綻びかけた花びらから僅かに香が漂う。…まもなく冬が終
わるんだな…と俺は思った。春が再び訪れる。しかし、それまで>>1は生きていられる
だろうか?来年も>>1は再び春の訪れを迎えることが出来るのだろうか…
17名無し物書き@推敲中?:2007/01/20(土) 02:49:05
「…それじゃ、俺はそろそろ帰るよ…」
俺はゆっくりと席を立った。
「えっ、もっとゆっくりしてらっしゃっていいんですよ。」
久美が湯のみ茶碗をトレイに並べながら言う。
「…いや、また近いうちにきますから。>>1、またな!ちゃんと考えておけよ」
俺はそういってドアに向かった。ふと振り返ると、>>1は力なく右手を挙げ、微笑み返した。
俺は少し困り、学生時代からの癖で軽く敬礼するように右手を額にあてると>>1はさらに笑
った。

…深夜3時ごろに突然、けたたましく電話の呼び鈴が鳴った。書類のチェックをしながら
デスク突っ伏して寝こんだ俺は慌てて受話器を取った。電話口から悲鳴に近い声がした。
久美だった。
「あのっ!>>1がっ!深夜になって容態が急に!」
私は一瞬で目が覚めた。そして>>1の身に何かが起こったと直ぐに理解できた。
「久美ちゃん落ち着いて!どうしたんだっ!落ち着いて詳しく話してくれ!一体…」
「今、今>>1は手術室に…手術室で緊急オペで…ああっ!」
久美は嗚咽していた。俺はとにかく病院に向かう旨を久美に言って電話を切り、急いで
身支度をした。
「…どうしたの?」
寝室の扉を開けて妻が入ってきた。俺は>>1の容態が急変したらしい事を簡単に説明した。
そして娘の香織を起こさないように注意しながら車庫に向かった。

殆ど車影のない深夜の環八を法定速度の2倍で突っ走った。街灯が視界の中で次から次へ
と流れる。俺はいつしか涙を流していた。高校で知り合って以来20年近く、ずっと無二
の親友だった>>1。こんなに早く別れが来るとは想像していなかった。
(…助かってくれ!>>1!)
心でそう叫びながらステアリングを握る。しかしどこかで、俺は>>1の死を直感的に悟って
いた。
18名無し物書き@推敲中?:2007/01/20(土) 23:20:47
おまいら、2がおわりでつよ(´・ω・`)
19名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 06:59:53
知ったことか
20名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 19:41:16
「今までありがとう…」
妻は言った。少し眩しい春の日差しが差し込む居間で妻と>>1は二人きりだ。
本当ならばまもなく銀婚式。互いに少し遅めの結婚であった。四半世紀に及ぶ結婚生活
は平穏で、どこにでもある平凡な家庭であった。しかし今日、二人は離婚する。>>1は少
し俯いたままだった。何を言ったらよいのか言葉が見つからなかった。重い沈黙が居間
全体を包む。自ら望んだ離婚ではない。それは妻も同じことであった。しかしどうして
も許せなかったのだ。>>1にも妻にも何も非があるわけではない。むしろ二人は被害者だ。
たった一人の娘を失って以来、既に老境に差し掛かった>>1と妻は希望を失ってしまった。
そして何も起こらず、何も変わらず、ゆっくりと衰えて死ぬまで続く絶望の日々…。
>>1は遂に耐えられなくなった。これ以上こんな日々を過ごすなんて耐えられなかった。
そして決意したのだ。
「すまぬ、絹子。俺の我儘でこんなことになってしまって…」
ようやく>>1は言葉を発した。妻に目を向けることなくテーブルの天板をじっと見つめ
ながら呟くように言った。そしてそのまま動けなかった。妻に自分の真意を告げて以来
ずっとそうだった。妻を真っ直ぐ見てしまったら自分の決意が揺らいでしまう、という
恐怖があった。
日差しは何時しか霞みかかってきた。遠くで運送用トラックのエンジン音が響くほかは
静かだった。
「今までありがとう…」
妻はもう一度言った。>>1はハッとして顔を上げた。妻と目が合った。真っ直ぐに自分を
見つめる目。まるで自分の心の奥底まで見通しているような目だった。
21名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 19:42:01
…知り合ったのは上司が仲介した見合いであった。営業の仕事に追われて少し婚期
を逸しつつあった>>1に、病床の実父の介護で同じく婚期を逃しつつあった絹子が
紹介されたのだ。互いに初対面の印象は「平凡な人」だった。そしてそのことを
新婚旅行で互いに知り、大いに笑った。…この人と上手くやっていけそうだ…
>>1はその時そう思った。結婚して4年後に娘が生まれた。恵美と名づけた娘は
親の期待通りにすくすくと成長した。互いに平凡で、取り立てて野心も野望もある
訳でない二人にとって、娘の恵美は唯一つの宝だった。
…あの日までは。

大学から帰宅する途中、恵美は複数の男に拉致された。道を歩く恵美にヴァンで近
づき、人気のないのを見計らって強引に車内に連れ込んだのだ。そしてそのまま
廃工場の倉庫に連れ込み乱暴した。
発見されたときには意識不明の重態で、顔面は腫れあがり、内臓の一部が破裂して
いた。散々暴行を受けたため子宮も破裂していた。
なんとか命をとりとめたものの、精神的に不安定になっていた。話しかけても泣き
叫ぶばかりで手が付けられない。そして遂に娘は自殺した。引き千切ったタオルで
鴨居から首を攣ったのだ。
22名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 19:42:45
犯人は捕まり有罪とされたものの、初犯ゆえにということで執行猶予まで付く者もいた。
安っぽい反省の言葉を並べ立て、金にまかせて腕利きの弁護士を雇い、無理解な裁判官
の同情を誘っての結果だ。
(被告たちにも将来があり、更正可能である…)
絶望的な裁判官の言葉が>>1の耳に響いた。

>>1は会社を辞めた。早期退職制度を用いて4000万円の退職金を手にした。うち半分
の2000万と今までの預金の大半(特に贅沢な趣味を持たない夫婦であったため長年の
地道な貯蓄の結果、資産総額は一億を超えていた)、それにこの家の名義を妻の絹子に移
した。さらに>>1は、娘の恵美を犯した男達の自宅の住所、勤務先や通学先、家族構成その他あ
らゆる情報を4年がかりで集めた。また>>1は肉体を鍛えた。妻の絹子には仕事に行くと
説明し、実際に肉体労働に従事したり専門的なトレーニング施設に通ったりした。学生時代、
柔道の心得があった>>1だったが、これも再び鍛えなおした。
そして営業先で知り合った某氏より拳銃を入手した。大量の銃弾とともに5丁ほど入手して人気
のない山の中で4年近くにわたって射撃の訓練を繰り返した。
「…絶対に、絶対にあいつらを殺してやる。」
憎悪のみが>>1を支えた。老体にムチ打って鍛え上げられた>>1はいまや人間兵器であった。
23名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 19:43:30
妻に全てを打ち明けた時の反応は意外だった。打ち明けるべきかどうか悩んだ>>1であったが
遂にはそれを決意したのだ。妻は何か>>1がやろうとしていることを気付いているみたいだった。
そして決意し打ち明けた時、妻は全てを静かに聞いた。そして
「ありがとう…」
と言った。その瞬間、>>1は、自分と同じかそれ以上に妻の方が犯人達を憎んでいた事を知った。
何も出来ない自分、そして何もなせないまま、このまま死の訪れを待つ自分…>>1と同じく、絶
望的な未来見ていたのだ。

…妻が立ち去った居間には何時しか夕日が差し込んでいた。鮮やかな朱に染まった西日が床の間
に飾られた花瓶を照らした。決して高いものではない。多分どこかで何気なく買ったものだろう。
しかし新婚時代に買って以来ずっと我が家にあり続けたものだ。絹子はそこに季節ごとに花を生
けた。「彩りがあったほうがいいでしょ」と微笑みながら言っていた妻。何時しか恵美も帰りがけ
に花屋に訪れ、色とりどりの花を花瓶に生けるようになった。何気なく、そうするのが至極当たり
前のように…
今、花瓶には白梅の小枝が差してある。少し綻んだ花びらから雄蕊が僅かに覗く。まもなく本格的
な春が来るのだな、と>>1は思った。悲しかったが涙は流れなかった。すでに涙は枯れ果てていた。
24名無し物書き@推敲中?:2007/01/21(日) 19:44:06
数日後、会社員の山本剛(27)が銃殺された。路上で真正面から額を打ち抜かれていた。
その日の翌日にはトラック運転手の里見祐介(28)が自宅アパート前で射殺された。真正面から
心臓を一発で打ち抜かれての即死だった。
さらにその二日後、大学院生の吉田通彦(28)が自宅マンションでナイフで喉を切られて死亡し
ているのが発見された。彼は激しい拷問を受けた跡が認められ、このときになって山本剛と里見祐介
の命を奪った銃の線条跡が一致していることが判明した。
一週間ののち、無職の阿部翔太(29)が富山県の魚津市の知人女性宅で射殺されて死亡。この時点
で警察はこの連続殺人事件が数年前の婦女暴行事件と関係していると認め、>>1は重要参考人として
指名手配した。
同時に残る婦女暴行犯のひとりである斉藤保(28)を保護するためにマンションへと
向かったが行方不明であった。数日後、拷問のすえに銃で脳天を打ちぬかれて死亡している斉藤の遺体
が東京湾で発見された。

>>1の自宅が妻の絹子に譲渡され、さらに売却されていたために>>1の行方も、妻の絹子の行方もわから
なかったが、数日後に妻の絹子が娘の恵美の墓の前で死亡しているのを発見した。睡眠薬自殺だった。
残された財産は既にチャリティー団体へと寄付されていた。

そして>>1は…行方が知れないまま現在も捜索が続いている。
25名無し物書き@推敲中?:2007/01/22(月) 15:19:30
今までありがとう...
26名無し物書き@推敲中?:2007/01/22(月) 15:27:04
これからは敵同士?
27名無し物書き@推敲中?:2007/01/22(月) 15:43:03
なるほど。
    ヘ⌒ヽフ
   ( ・ω・) d
   / ~つと)
28名無し物書き@推敲中?:2007/01/22(月) 21:51:35
「今までありがとう…」
試合後のロッカールームで>>1監督が言った。少し目を潤ませ、テーブルに両手をついて僕らを眺める。
いつもは厳しい監督が涙ぐんでいるのを見て僕たちは驚いた。普段は一切感情を表に出さない人だった
からだ。試合に負けて号泣する僕らを見守りながら、監督は遂にラグビー以外の気持ちを言葉にしたのだ。
僕らは泣くのを止めた。いや、流れる涙をそのままに>>1監督の方を向いた。ロッカールームが静寂に
包まれる。女子マネージャーのすすり泣く声だけがかすかに響いた。
>>1監督はもう一度僕たちを眺め回した。一人ひとりの目をしっかり見据えて、僕たちの心の中を掬い取る
ようにジッと見つめてくる。…普段だったら絶対に目を合わせられないほど怖いのだが、今日の僕らは違
った。真っ直ぐ見つめる監督の視線に、真正面から堂々と答えた。縋るのではなく、頼るのでもない。
一人の男として堂々と>>1監督と向き合ったのだ。
…選手全員を見回した後、監督は静かに口を開いた。
「今日は良く戦った。何も恥じる事など無い…オラァッ!お前らもっと胸を張れ!」
>>1監督の突然の叫びに、我々は射抜かれたように反応した。いつも練習で聞かされるあの怒鳴り声だった。
今日で最後…今日がみんなと一緒に戦う最後の日…そうした思いが僕らを昂ぶらせた。そして気負いすぎて
冷静さを失い、試合でもベストパフォーマンスとは言えなかった。それが僕らの実力であり、限界でもあった。
しかし監督はその全てを見て、なおかつ僕らを責めなかった。それは、今日の僕らが、決して相手から
逃げずに戦い抜いたからだろう。強豪相手に逃げなかった…それが何時の間にか僕たちの自身となり、誇りに
もなっていた。
…僕らは堪えた。涙は溢れ、頬を伝う。しかしこれ以上泣かない、みんながそう思った。口元をぐっと
引き締めて、情け無い泣き声を上げまいとして顔を強張らせた。
>>1監督は僕らの姿を見て、納得したように少し微笑んだ。そして最後に言った。
「…キミ達は今日まで良く戦った。今までありがとう…」

それが>>1監督の姿を見た最後の日だった。
29名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 02:00:55
取引先から帰社して直ぐに、事務の女子社員から電話があったことを知らされた。
電話を掛けてきたのは高校の同級生だった牧村だった。僕は直ぐに牧村に連絡をとった。
数回のコールで牧村は出た。何か忙しい物音が響く中、牧村は挨拶もそこそこに言った。
「…>>1監督が亡くなったぞ」
>>1監督の名前を聞くのは久しぶりだった。あまりに唐突にその名前を耳にしたため一瞬
混乱した。一度、誰が?と牧村に聞き返してしまったほどだ。僕は電話口で呆然として
しまった。目の前の納品スケジュール表を意味も無く見つめながら牧村の話を遠くから聞
いていた。
>>1監督。その名前で僕は一気に高校時代に引き戻された。ラグビー部の仲間達とグラウ
ンドで泥まみれになって楕円のボールを追いかけて仲間達と走り続けたあの日々。監督は
グラウンドの隅で、濃い目のサングラスを掛けながら僕たちの汗を流す姿を見守っていた。
怠慢なプレイに対しては容赦なく檄が飛び、常に勇敢さとチャレンジ精神を奨励し続けた
あの監督。寡黙で厳格で、それでいて頼りがいのある人生の師だった監督…

「…おい、聴いているのか?」
電話口で牧村が言った。僕ははっとして我に返った。
「…あ、ああスマン。あまりに突然のことでショックを受けてしまって」
僕はそう言い訳した。そして通夜が今晩行われること、そして葬儀は明後日に>>1監督の
自宅で催されることを聞いて電話を切った。
>>1監督の死。終業時間が迫りあわただしくなった会社のオフィスで僕は、窓の外の沈む
夕日をジッと見続けていた。
30名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 02:01:36
>>1監督は僕たちが3年生部員として試合に出場したのを最後に我々の通った高校の監督
の座を辞し、>>1監督自身の故郷である隣の岡山県の高校に赴任することになった。した
がって僕らが部活を引退することとなったあの日の試合が監督と会う最後の日だったのだ。監督
はあの試合後、事務整理などを済ますと直ぐに引き払ってしまった。少し冷たいようであったが
監督自身の母親が病気で介護が必要であり、一刻も早く引っ越す必要があったのだ。
>>1監督はその後、新たに監督に就任した監督自身の母校を全国大会へと出場する県内の強豪高
に育て上げた。僕は卒業し大学に進学したあともその噂は耳にしていたが、何時しか社会に出て
仕事に追われるようになるにつれて、かつての泥まみれの青春時代を振り返らなくなっていた。
あれから10年。それだけの時間が経過してしまったことに僕は驚いてしまった。

「…よう、お前少し頭が薄くなったんじゃないか?」
僕は牧村と川村と千葉の3人で岡山県の>>1監督の実家に辿り着いた。門前で副キャプテンだった
内藤が僕たち東京組を出迎えてくれた。内藤は地元の老舗旅館の御曹司であり、今はそこで役員
をしている。ちなみに妻は高校当時マネージャーをやっていた靖子だ。
「うるせえなっ!いずれお前らも抜けてくるぞ!」
内藤は薄くなった頭頂部を手で覆い隠しながら少し笑った。このようにかつてのラグビー部員同士
が会うのは久しぶりであった。故郷ではないこの地で、このような機会に再開するのは複雑な心境
であるが、とにかく懐かしさでいっぱいだった。
「で、俺達の代は何人くらい来るんだ?」
僕は内藤に尋ねた。内藤は懐から手帳を取り出すと
「…えっと…真田と遠藤は少し遅れてくるよ。あとは貝塚も、既に来てるのは三原と谷口と原だよ。
あとはさすがに無理らしい…みんな仕事してるからな」
「オレたちだってしてるぜ?」
牧村はそう言い返した。思わずみんなでクスクス笑った。そしてそれが不謹慎だと気付き、何とか
笑いを抑えた。
「結局、全員は無理か…」
31名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 02:02:11
「結局、全員集まるのは無理だったか…」
高校時代、チーム一の俊足ウイングだった千葉が言う。彼はその後に建築を志し、現在は
中堅の建設会社に務めている。
「まあ、そう言うなよ。とりあえず記帳を済ませろ。それから>>1監督に会って来いよ」
内藤にそう言われ、僕らは順に記帳を済ませ、家の中に入った。
家は地元の古くからの農家らしく、母屋の他に東屋や穀倉がある広いものだった。中庭の
隅には白黒のブチの雑種犬が鎖につながれたまま眠っていた。僕らは母屋へ向かって歩い
た。玄関に入ると近隣の農家の人達やラグビー部の関係者らしき人たちが客間に集い。仕
出し弁当をつまんだりビールをあおったりしていた。僕らは一礼して母屋に入ると、>>1
督が眠る居間へと向かった。

「父の教え子の方々ですね?」
呼び止められて僕らは立ち止まった。そして声のする方へと振り返った。そこには初老の、
>>1監督に良く似た初老の男性が立ってお辞儀をしていた。僕らは振り返り礼をし、おのお
の簡単な自己紹介をした。男性は>>1監督の息子さんで、今回の葬儀の喪主を務めていると
いう。
「…広島の高校の方でしたか。そうですか。わざわざ遠いところを有り難うございます
では、父に会ってやってください」
そう言って息子さんは僕らを居間へ入るように促してくれた。僕らは廊下を抜け、祭壇のある
居間に入った。

遺影は相変わらずの強面であった。が、僕らの高校の監督であった頃に比べ少し白髪が増えて
いた。カメラ目線ではなく僕らの左後方をジッと睨みつけるように写されている、かなり変わ
った遺影だった。一方でお棺の中の>>1監督の面は青白く、完全に精気を失って目を閉じていた。
引き締まった表情しか思い出に無かったせいか、その死に顔には少し胸が疼いた。
僕らは遺影の前に正座し、順に焼香をして手を合わせた。
32名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 02:02:59
葬儀の会場を辞した後、同級生だったラグビー部員数人で岡山市に出た。そして夕食を兼ねて
駅近くの小料理店に入って酒を飲んだ。弔い酒だ。

…僕の心はいつの間にか高校時代のグラウンドに飛んでいた。西日が照りつけるグラウンドで
楕円のボールを追いかけていたあの日々。甲高い叫び声を上げてチームメイトに向けてタック
ルを仕掛け、モールからボールを出してはまた走る。時折>>1監督が鋭くホイッスルを鳴らして
プレイを止める。各選手たちに必要な指示を次々に伝え、息つく間も無く再び開始のホイッスル
が響く。僕らは無我夢中でボールを追いかけ走った。膝は擦り剥け、筋肉は悲鳴を上げる。決
して楽な練習ではなかったが、なんの迷いも無く一心不乱に物事に立ち向かったのはあの日々が
最後だった。そして何時の間に僕らは鍛えられていた。たとえ敵わない相手であっても勇敢に立
ち向かえる強さを身に着けていた…そう、>>1監督との最後の試合。あの時僕らは負けた。しかし
チームメイトの誰もが逃げず、倒れても倒れても立ち上がり、ボールに向かって駆け出した。
「今までありがとう…」
>>1監督はロッカールームで言った。あの時も夕日が窓から照りつけていた。僕らは>>1監督の前で
散々泣いた。それを一喝した>>1監督はもう一度僕らに「ありがとう」と言った。

そして今度は僕らが言う。
>>1監督、今までありがとう」
33名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 17:44:34
そうだったのか。
    ヘ⌒ヽフ
   ( ・ω・) d
   / ~つと)
34名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 17:45:09
ぶーちゃん可愛いw
35名無し物書き@推敲中?:2007/01/23(火) 23:39:27
今までありがとう
36名無し物書き@推敲中?:2007/01/24(水) 01:03:15
いえいえどういたしまして
37名無し物書き@推敲中?:2007/01/24(水) 22:53:05
ハァハァ(;´;・;ω;・;)(;・;ω;・;`;)ハァハァ
38名無し物書き@推敲中?:2007/01/25(木) 01:23:56
大したお構いも出来ずに申し訳ございませんねえ
39名無し物書き@推敲中?
いえいえ、こちらこそ
突然お伺いしまして申し訳ございません