東さんも【屁本&幽怪談文学賞8】見てる

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685名無し物書き@推敲中?
 いきつけのコンビニがある。
 会社帰りに利用している店だ。
 その日、店に入ると、初めてみる店員がいる。
 その店員は若い女で、茶髪だったが頭頂部はすでに黒くなっていた。
 じゃらじゃらと大量のピアスを耳につけている。
 どこかに引っ掛けたら、耳が根元からもげてしまうのではないか?と思うほどだ。

 弁当とビール、雑誌をカウンターに置いた。
 ピアスの店員がぴっ、ぴっと無機質な音と共に、バーコードをレジに読み込ませる。
 ふと、その店員の腕に違和感を感じた。
 ひじの内側にぷつぷつとした、吹き出物のような突起がついている。
 皮膚のその部分は、茶色と青紫色と黄色が混じったようなおかしな色になっていた。
(これは、あれだな)
 “つめたいやつ”をこの女はやっているのだ、と思った。
 別に他人事だ。俺には関係ない。
「千六百円でず」ろれつの回らない声で、女が言う。
 表示している金額と違う金額だったが、それだけ払って品物を受け取る。

 自動ドアをくぐろうとしたとき、背後から大声がした。
「……おぎゃぐざん、へびおんな、がぁ、せなかにまきついているよぉ!」
 振り返ると、ヤク中の女がロンパった目で俺を見ていた。
「おぎゃくざん、みせものごやのひとぉおおお?」
 俺は、その声を無視して、店の外に出た。

 数日前。俺の妻は死んだ。自殺だった。俗に言う縊死というやつだ。
 発見したのは俺。
 一週間の出張から帰ってきて発見したのだ。
 発見したときには、妻の首は伸びきり、膝が腐汁だらけの床についていた。

 テーブルに残された遺書。
「死んでも、ずっと、一緒よ。あなた」