いきつけのコンビニがある。
会社帰りに利用している店だ。
その日、店に入ると、初めてみる店員がいる。
その店員は若い女で、茶髪だったが頭頂部はすでに黒くなっていた。
じゃらじゃらと大量のピアスを耳につけている。
どこかに引っ掛けたら、耳が根元からもげてしまうのではないか?と思うほどだ。
弁当とビール、雑誌をカウンターに置いた。
ピアスの店員がぴっ、ぴっと無機質な音と共に、バーコードをレジに読み込ませる。
ふと、その店員の腕に違和感を感じた。
ひじの内側にぷつぷつとした、吹き出物のような突起がついている。
皮膚のその部分は、茶色と青紫色と黄色が混じったようなおかしな色になっていた。
(これは、あれだな)
“つめたいやつ”をこの女はやっているのだ、と思った。
別に他人事だ。俺には関係ない。
「千六百円でず」ろれつの回らない声で、女が言う。
表示している金額と違う金額だったが、それだけ払って品物を受け取る。
自動ドアをくぐろうとしたとき、背後から大声がした。
「……おぎゃぐざん、へびおんな、がぁ、せなかにまきついているよぉ!」
振り返ると、ヤク中の女がロンパった目で俺を見ていた。
「おぎゃくざん、みせものごやのひとぉおおお?」
俺は、その声を無視して、店の外に出た。
数日前。俺の妻は死んだ。自殺だった。俗に言う縊死というやつだ。
発見したのは俺。
一週間の出張から帰ってきて発見したのだ。
発見したときには、妻の首は伸びきり、膝が腐汁だらけの床についていた。
テーブルに残された遺書。
「死んでも、ずっと、一緒よ。あなた」