本スレのために、借ります
澄んだ青空がどこまでも高く、遠方には崑崙山脈を望むことのできる、ある山村でのことだった。
風雨に耐え、その表面を滑らかにしている花崗岩の石積みの中に、ひときわ白い屋根が目立つ僧堂があった。
「蘭瑛、庚蘭瑛はおるか」
石壁に穿たれた開き窓から、艶めかしい声が漏れてきた。暗い陰にちらり、と見えたのは気品のある、しかしどこか癖のある瞳だ。
やがて入り口の簾を揺らして、質素な身なりの女人が現れた。肩に垂らした白布は擦り切れていたが、おそらく天竺のものだろう、気品のある紋様を日の光に浮かび上がらせていた。
観世音菩薩、だった。