よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ

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1名無し物書き@推敲中?
消極的な砂漠
2サル ◆yFo1k/URr. :2006/02/20(月) 17:18:19
そこに住む人々が望んだ結果、都市が索漠としたわけじゃない。
友情や愛情、労わりが最初から無かったわけじゃない。
しかし、金銭にまつわる欲望ばかりがはびこり、
人々が潤いは金で買うものだと信じるようになると、
人情は都市生活者に別れを告げ、去っていった。
そして今日も、灰色のビル群のすき間をぬって、乾いた風が吹き抜ける。
うれいに満ちた廃墟の都市を。

次のお題「肋骨の未来」
3サル ◆yFo1k/URr. :2006/02/20(月) 17:59:57
このスレを立てた方の必殺技は投げっぱなしのジャーマン・スープレックスですか?
たまらなく寂しいのですが。
4名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 00:36:26
4なら、このスレは焼きそばパンを語るスレになる。
5名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 06:28:05
焼きそばパン好きだお(^ω^)
6名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 12:01:47
 アルカイックスマイルを浮かべて、その人は言う。
「仕方が無いでしょう。二つじゃ満足できないんですから」
 老紳士の表情は浮かない。
「そこがね、理解できないんだ」
 聞かん坊に言って聞かせるように、その人は言う。
「たくさんあって困るもんじゃないでしょう?」
「……そうかねぇ」
「そうですよ。男と女の二つだけだなんて、少なすぎます。多様性ですよ、多様性」
 そう言って、男でも女でもないその人は、満面の笑み。
「まあ、だが、そのうち、三つでも満足できなくなるんじゃないかね?」
「なら、四つ目を作れば良いんです」
 老紳士はうんざりして、席を立つ。
 その拍子に、手術跡が痛んだのか、服の上から脇腹を押さえた。
「俺はこれ以上、肋骨を減らしたくないね」
7名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 12:03:00
次のお題「萌えない氷」
8名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 15:14:44
ソースのヤキソバは好きじゃない。酢じゃないと。
でもパンに挟むならソースヤキソバじゃないとなぁ。
9名無し物書き@推敲中?:2006/02/21(火) 19:04:48
酢の方がサッパリしてて美味いYO
10名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 07:09:14
やきそばに酢? 食べたことないお!
青のりはかけるのかな?
11名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 07:32:42
青ノリはデフォルトで入ってるよ
12名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 20:05:08
強調するってこと?
13名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 05:59:57
>>12
それデフォルメ。
14名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 18:29:47
>>11-13わらた
ところで焼きそばパンに紅しょうがは
許せる派?許せない派?
15名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 21:14:57
あっても無くても大して変わらないと思うのは俺だけですか?

一応、許せる派ww
16猫山宵 ◆P/NcoY4a.A :2006/02/24(金) 21:18:36
【萌えない氷】

「そう」反応はそっけない。
一度ボクを見やるとすぐに視線を移す。
女子高校生の彼女、マイとボクは同級生だ。
冬場だというのにテーブルには氷の入ったアイスティが置いてある。
マイが自分のために淹れたはずのものだったが
一時間程たっても彼女はそれに手をつけない。
ストーブの前で暖をとっている猫のシロとマイはどこかしらかが
似ていたがまだシロには愛想というものがある。
大抵、シロは「ニャー」と営業スマイルで挨拶してくれるのだ。
そのシロは主人であるマイに何か耳打ちし、するりと部屋から出て行った。
つとマイの温もりと質感を思い出し、ボクはいいがたい酩酊感を覚える。
マイはボクがいつもどれだけあたふたしているか知らないに違いない。
いや、もしかしたら知っててわざとしているだろうか。
身近な永遠を感じる。
「ひゃう」
ふと、時がはじける。
マイがアイスティから取り出した氷をボクのほっぺに押し付け、
そして氷にキスしてボクの口へ入れた。
17猫山宵 ◆P/NcoY4a.A :2006/02/24(金) 21:19:10
次のお題「ペパーミントペンギン」
18名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 05:58:59
>>14
焼きそばに紅しょうが乗ってるのは許せない!
ソースの匂いに紅しょうがの匂いが混ざると、もう人間の食い物とは思えない匂いがする。
しかも毒々しい赤に染まったメンなんて食う気がしない。
弾くね、最初の段階で。
紅しょうが自体、うまいもんじゃない!漏れは嫌いだね!
19名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 15:54:23
コンビニで買ったガムを口に含む。
ペパーミントの香りが口に広がるが、眠気を打ち消すほどの力を持ち合わせてはいない。
昨夜の騒ぎが夢の中の出来事のようだ。
さっきの店員、俺の顔を見て怯えてたな。
夢が現実になることより、現実が夢になることの恐怖を味わったことがあるかね。
空飛ぶペンギンを理解しえても、溺れるペンギンの劣弱極まる姿を想像できるかね。
一回りは若い店員だった。
だが、俺が店に背を向けたとき、奴は笑ったに違いない。
樋の外れたあばら屋のような、薄汚れたペンギンの後姿を。
ペパーミントの香りのもとで、俺は目を閉じた。

次のお題「偽りの木の下で」
20名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 16:42:50
「木は森に隠せというけれど……」
喧騒を縫うように、友人は俺の耳元で怒鳴った。「いくらなんでも、無理があるだろ!」
「そうか?」
俺も声を張り上げ、寒さでかじかんだ手をこすり合わせた。
「いいんじゃないか? 見つけたら儲けものだ」
「しかし設定が強引だ」
「でも参加するんだろう?」
友人は「そりゃあ……」と言いかけ、後ろにいた男に背中を押されて、よろける。
森の中は人でいっぱいだった。みな息を白くして押し合いへしあいしながら待っていた。
こう言っては何だが、むさくるしいやつばかりだ。俺もその一人なわけだが。
不意にざわめきが起こった。
木々の間から見える舞台に派手な男が現れ、派手な音楽と共に威勢のいい声が聞こえてきた。
「皆様お待たせいたしました! ただ今より第一回大会を開催いたします!」
ひしめいていた男たちの中に緊張が走る。
「木は数々あれど、お宝いりはただ一本だけ。誰が獲るかは運次第!」
司会の男は手で森の中を大きく示した。
「木にそっくりな竹を切ったら、あら不思議。中にはかぐや姫がいらっしゃる! さあ、当り目指して汗水たらせ!」
俺は扇子を懐にしまい、斧を手にして身構える。
「10秒前───5、4、3、2、1……スタート!」
大音声を合図に、一攫千金を狙う公達たちはいっせいに水干袴の裾をからげて走り出した。

21名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 16:43:53
次のお題「ふくろうは夜の女王」
22名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 00:39:53
紅しょうがのない焼きそばは焼きそばもどきだ!!
23名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 04:19:59
たまにピンク色したショウガが乗ってることあるよね。
あれも紅ショウガって言うのかな?
24名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 04:24:21
25名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 04:49:16
>>24
釣り
26名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 04:52:14
>>24
って言うか、本当に釣り情報
2720:2006/02/27(月) 13:05:23
あの〜
誰か「ふくろうは夜の女王」でSS書く人いませんか?
自分で止まっちゃうと心苦しいので。
一応違うお題もあげておきます。
「霧の中に潜む生き物」
どっちかで書いてください。いやほんと、頼みます。
28名無し物書き@推敲中?:2006/02/27(月) 19:04:54
>>23
ピンク=薄紅色と考えてみたらどうだろう。
29名無し物書き@推敲中?:2006/02/27(月) 19:12:18
「……映画とかでもてはやされてるけどさー」
カノジョが雑誌を読みながらポツリと呟いた。
「ん?」
俺はホームランバーの外れ棒をゴミ箱に投げ捨て、彼女の話を聞く体制をとった。
「梟って、実はそれ程賢くないんでしょ?」
「……さぁ」
そんなこと言われても俺は梟が夜行性であることしか知らない。
「いやさ、梟が凄く賢い動物みたいに扱われて、ペットショップでも入荷希望が絶えないってさ」
彼女の言葉に俺は梟がぎゅうぎゅう詰めに詰め込まれている箱を連想してしまい、口元を手で押さえた。
「あんた今一体何想像したのよ」
俺の様子を見て彼女が不審の目を向けた。
「……いや、スーパーのワゴンいっぱいの梟が「大バーゲン」と言う札付きで売られている様を」
まぁ、どっちを言っても大して変わらないだろう。
彼女に爆笑されることには変わりはない。
「……うわー、『夜の女王』で梟の大バーゲンしてるってさー」
雑誌のページを捲った彼女の言葉に、俺は思わず
「マジかよ!」
と突っ込んだ。

『梟を御求めの際は是非当店で! − 夜の女王 −』


次のお題。
「女子妄想症候群」
ってな具合で書いた人が次のお題を指定していいの?(何)
30霧の中に潜む生き物:2006/02/27(月) 19:22:50
その霧の中にはレッサーパンダが潜んでいると言われている。しかもただのレッサーパンダではないらしい、目撃者によるとそれは常に二本足で立っているという。
その噂を聞いてすぐに僕は出かけた。もちろんその霧の場所に。どうしても二本足で立つレッサーパンダが見たかったのだ。そして今まさにその場所で霧が晴れるのを待っている。
そうしてる間にゆっくりと霧が晴れて始めた。何かの生き物のシルエットが微かに見える。
レッサーパンダか!?  僕は急いでその影に駆け寄った。本当に二本足で立っているのだろうか。
近づくとその生き物の姿がはっきりと見えた。ゴマアザラシだった。

次のお題:空飛ぶ2ちゃんねらー
31名無し物書き@推敲中?:2006/02/27(月) 19:28:11
30のものですが、次のお題は「女子妄想症候群」でお願いします。29の人悪いっス。
3227:2006/02/27(月) 20:50:15
>>29>>30
いや〜ありがとうございます。
ほっとしました。
33名無し物書き@推敲中?:2006/03/01(水) 06:29:16
とりあえずそばメシでも食べるか。
34名無し物書き@推敲中?:2006/03/01(水) 19:35:44
age
35名無し物書き@推敲中?:2006/03/02(木) 15:42:46
整理しましょう。

次のお題は「女子妄想症候群」又は「空飛ぶ2ちゃんねらー」

誰か書く人いませんか?
36名無し物書き@推敲中?:2006/03/06(月) 21:33:31
age
37名無し物書き@推敲中?:2006/03/07(火) 05:41:19
あげ
38名無し物書き@推敲中?:2006/03/07(火) 06:12:36
 条件つきでなら、私の告白を聞いていただけるそうですね。
 いいですけど、その条件って…。
 はい、顔は当然出さない。ええ。音声も変えてください。だって、同じ学校の子にバレたら恥ずかしいですから。
 うっかり話したら、頭おかしいって思われるって、みんな言うから。そうです、首から下の写真もやめて欲しいんです。
 女の子的にどうかなって…。この間も、クラスの子がそれでいじめられたし。
 本当は大好きなんですよ、今風の服とか、コスメをチェックするの。でも、人目ってあるし。すごい抵抗あります、買いに行くのも。だから、買い物、通販しかしないの。
 え、ええ。カレ欲しいなーとか思うのもあるっていえば、あるけど。
 まだ早、っていうかやっぱ、コイツ頭オカシインジャナイノ、って目で見ない人がいい。
 あ、はい。今日はどうもありがとうございました。

 面会室から出ていく子は、どこから見ても今時のスレンダー体型少女だった。
 研究者は、MP3レコーダーを取り上げるとパイプ椅子から立ち上がった。
 つくり声の巧さといい、仕草といい、施設の少年たちは『本物以上に本物らしい』少女の幻影をまとっている。
 ホルモン分泌異常が原因の神経症なのか、あるいは社会への不適応が醸成した精神病か。彼らはこう総称される。

『女子妄想症候群』
39名無し物書き@推敲中?:2006/03/07(火) 06:14:40
次のお題。
「もっとも信仰される金持ち」
40名無し物書き@推敲中?:2006/03/08(水) 03:02:36
 
聖人はなるたけ貧乏なほうがいい。

「キリストさん、聞くところによれば、聖書の売り上げは世界一だそうじゃないですか。今までいったい何兆冊、いや何京冊の本が売れたんでしょうな。
しかも免罪符やなんやらで懐がたんまりふくれていらっしゃるようで、今に重さのあまり天国から落ちてしまうのではないですか? アハハハハ。」
「何をおっしゃるブッダさん。あんたのとこの仏具や経典はいやに高いじゃないですか。信者が少なくてもこれなら安心ですねぇ。
しかも新しい信者たちは霊験あらたかというぼろい壷でぼろ儲けをしてるとか。搾れるだけ搾って延命治療費も出せなくして、早く極楽浄土へ呼ぶおつもりですかな? イヒヒヒヒ。」
 こうやって2人の聖人が互いの顔をみてニヤニヤしているところへ、「まあ、待ってください」とある声が。
「おふたがたにはすみませんが、今の世では私こそ、もっとも信仰されている金持ちではないでしょうか。
なにしろ私がいなければ世界は動いてゆかないのですから。毎分毎秒、私は無数にある自分の末端をちょこちょこと変更いたします。するとお金自体は私が握っているのに、末端の数字だけで人間は喜んだりあわてたりするのです。
ついでに言えば、私はすべてを知っている。あなたがたの思想もね。つまりあなた方の信者はいうなれば私の信者でもあるわけです。」
 聖人たちは異を唱えようと相手をにらむが、反論のしようがなく歯軋りするだけ。
それをしり目にネットの神は悠々とあの世を後にし、空を飛び交う情報の波へ戯れにいくのだった。
4140:2006/03/08(水) 03:07:35
んー、強引だが『空飛ぶ2ちゃんねらー』と『もっとも信仰される金持ち』をMIX。
変な改行スマソ。一文が長すぎるということで引っかかってしまったので。

次のお題は『黄色と紅色と茶色のしょうが』
42名無し物書き@推敲中?:2006/03/12(日) 16:24:09
黄色のしょうが、仮にAと名づける、は暗闇の中で夢見ていた。
黄色のしょうがはいずれ紅色のしょうがになる運命だった。紅色のしょうがになれれば幸いなほうで、このまま腐敗して暗闇の中、ひっそりと茶色のしょうがに変わっていくものさえいた。
しかし、黄金のしょうがになれる者がいることを知っていた。
黄金のしょうがになれるのは選ばれし僅かなしょうがのみ。そんな都市伝説のようなものに希望をよせるのは馬鹿らしく、Aは悲しみに打ちひしがれていた。
同期のしょうがたちが掘り起こされ、荷詰めされてゆく。
暗闇からの解放の先にあるものが解体であることは誰もが周知の事実である。その運命は変えられない。でも、その先にある黄金のしょうがになることを誰もが望んでいた。
やがて、Aにも魔の手が伸びた。Aたちを詰め込んだ50Lほどのコンテナは、市場に出されると、他のコンテナとは違う業者に買い取られていった。紅色でもなく、茶色でもない未来。黄色いしょうがたちが憧れつづけた黄金への道だった。
やがては皮をはがされ、紅色に染められるであろう仲間たちを憐憫の眼差しでみつめながら、Aたちは運ばれていった。

Aたちは店に入ると、しばらく放置されていた。
ある日の夕方、そのときが来た。Aは皮をはがされ、こともあろうにミキサーにかけられたのである。同期のしょうがたちと共に粉々にされるなかで、Aは叫んだ。
「俺の未来はこんなはずではない」
これがAの最後の言葉だった。

夜も更けた頃、一軒のバーでマスターが差し出す
「はい、ジンジャエールになります」
43名無し物書き@推敲中?:2006/03/12(日) 17:30:43
次のお題「雪だるまの夏」
44雪だるまの夏:2006/03/12(日) 18:18:13
「あ〜暑い,本当に暑い」
 扉の向こうからヤケクソになったような大きな声が聞こえてきた。

「やった!チャンス!大チャンス!」
「うるさい」
 僕は躍り上がるようにして喜んでいる雪子を一喝して黙らせた。
 大喜びしたいのは僕も同じだ。なにしろ僕らはもう半年もこの快適だけど真っ暗で,面白味のない部屋に閉じ込められ続けているのだ。
 そして,この部屋から出られるチャンスは滅多にない。僕らが出られるか出られないかは完全に人の気まぐれにかかっている。
 だから,僕だってこのチャンスの到来が嬉しくないわけじゃない,ただ,もう裏切られるのはごめんだ。
 今までもチャンスはなかったわけじゃない。数は少なかったけれど,今のようなチャンスはたしかにあった。
 でも,僕らはその度に裏切られてきた。
 裏切られるのはもういやだ。
 僕がそんなことを考えていると,雪子が小さな声で話しだした。
「雪男,私この半年間色々あったけど結構楽しかった。一緒にいてくれたのが雪男だから。ねぇ,もし,もし,今から離ればなれになったとしても,私のことずっと忘れないでいてね」
 僕はとっさに言葉が出てこなかった。雪子がこんなにしっかりと覚悟を固めているとは思わなかったんだ。
「ねぇ,何か言ってよ。ねえ,雪男」
 その時,扉が開いた。強烈な灯りが射しこんでくる。
 僕はとっさ目を瞑り,言った。
「わかってる。今までありがとう」

 バン!
 乱暴な音を立てて扉が閉じられた。

 僕はおそるおそる口を開いた。
「雪子,いるかい?」
「うん」
「そうか」
「残念だったね」
「いや,よかったよ。まだ君と一緒にいられる」
45名無し物書き@推敲中?:2006/03/12(日) 18:20:26
次のお題「ロックンロール麦茶」
46名無し物書き@推敲中?:2006/03/12(日) 22:27:49
プレイスリーはステージでは必ず唄の合間に水分をとる。
僕はいつもその準備をさせられている。
奴は腐るほど金を持っているくせに細かいことには金を出さない。細かいってことっていうのは、まぁ、つまり僕みたいな奴の仕事なわけだね。だから僕はいつも自腹だ。まぁバイト代が高いからどうでもいいんだけど。
さっきプレイスリーは水分をとるって言ったけど水なんかじゃない。ビールだ。あの歌声はビールから生まれるんだとか。
そうは言うものの実際は怪しいもんだ。そんな訳で試しすことにした。代わりに麦茶を出すんだ。しこたま振って泡立てたら見た目じゃ分かんない。

プレイスリーが麦茶に手を伸ばす。口に含んだ瞬間霧ふきのように吐き出した。その舞う霧状の麦茶を見て思わず
「ロックンロール麦茶…」
とこぼしてしまった。するとプレイスリーが言った。
「無理矢理じゃね?」
僕は肩をすくめる。
「お題の設定が難しいんだよ」
47名無し物書き@推敲中?:2006/03/12(日) 22:32:28
次のお題は「メソポタミアの民もビックリ!」
48メソポタミアの民もビックリ!:2006/03/15(水) 01:30:33
その日、大変な事が起こった。詳細は省くがとにかく大変な事が起こったんだ。そしてメソポタミアの民はビックリ!した。


次のお題「ミッキーマウスおじさん」
49名無し物書き@推敲中?:2006/03/15(水) 06:34:19
ミッキーにその日が来てしまった。
妹であるミッフィーに子供が出来てしまったのだ。とうとうミッキーマウスは叔父さんになった。


次のお題「チョモランマとチョナンカン」
50名無し物書き@推敲中?:2006/03/19(日) 17:16:04
あげておきますね……
51名無し物書き@推敲中?:2006/03/20(月) 13:13:52
チョモランマとチョナンカンは姉妹だ。兄弟ではない。


次のお題は「フードファイター」
52NBV802N ◆ic8UUcyv5s :2006/03/21(火) 15:17:04
 ハッハー、俺はジョー
ジ! 人呼んでダイソン
・ジョーたぁ俺様のこと
よ。最後まで吸引力が落
ちないのさ、俺様はなっ
。ガハハハハ! ん? 
なんで毎日パーカーばっ
か着てんのかって? ハ
ッハー、決まってんだろ
が。「フード」ファイタ
ーだからよ! ガハハハ
ハ! ガーッハッハッハ
ッハッ!



次「あの人だれだっけ」
53あの人だれだっけ:2006/03/21(火) 19:22:35
あの人だれだっけ?ほらあの人。お笑い芸人で出っ歯の人。よくひき笑いしてる人だれだっけ?

明石家さんま。

そうそう、さんまだ。思い出した。じゃああの人は。二人組の歌手で拳を突き上げながら歌ってて、サングラスしてる方の人。誰だっけ?          
チャゲ&アスカのチャゲ。

そうそう。チャゲだ。思い出した。じゃああの人は?映画監督で死んだ人。時計仕掛けのオレンジ撮った人誰だっけ?いっつも忘れちゃうんだ、わたし。

スタンリーキューブリックでしょ。

そうそう。君すごい。じゃあ、あの人は?アイドルで娘もアイドルやってるあの人。娘の名前はさやかとかいう。わたしさっきも聞いたよねこの人の事。でも忘れちゃった。誰だっけ?

だから松田聖子だってば。
あぁそうだ。じゃあねぇ。あの人誰だっけあの人…
…一番上に戻る

次のお題「ダンベル祭り」
54名無し物書き@推敲中?:2006/03/21(火) 21:59:06
だんじりにダンベルを乗せて担ぐ男達。
「祭りだ祭りだ、筋肉祭りだ」
そうやって彼らは鍛えているのである。

次のお題「回るコンビニ店員」
55NBV802N ◆ic8UUcyv5s :2006/03/21(火) 22:50:00
 新しいコンビニがいつ
のまにかこんなところに。
どれ、のぞいてみるか。
お、店員の女のコかわい
いじゃん。でも……。

「いらっしゃいませコン
ニチハ〜」

 なんで回ってんの?

「ホープ下さい。それと、
なんで回ってるか聞いて
もいい?」
「はい〜ただいま、回転
セール中ですう〜」



次「馬乗り日和」
56名無し物書き@推敲中?:2006/03/22(水) 01:27:11
 一人で春風に吹かれながら自転車で土手を走る。
 一人、ってところがポイント。他人と一緒にでかけると、色々気を遣ってかえって疲れてしまうことがあるだろ?
 五分咲きの桜があったんで、足を休めるために降りると、先客がいた。
 ケータイのカメラで桜を撮影していたのは、二足直立歩行しているウマでした。

 自転車を捨てて、そのウマにまたがった。
 季節は春、まさに馬乗り日和。


次、「アドバンスなんて信じない」
57名無し物書き@推敲中?:2006/03/26(日) 07:44:10
あげときますね
58名無し物書き@推敲中?:2006/03/28(火) 22:56:46
アドバンス、伝説の剣。

そんなものあるはずがないオカルトもいいとこだ。
科学が支配するこの世界でそんな物の存在を認めてしまったら
今まで人類が使ってきた物差しが狂っていた事になる。

私はソファーに乱暴に座ると同時に旧友から久々に来た手紙をテーブルに投げつけた。
彼は大学時代から夢物語が好きだった、卒業してからも彼は地図にも書いて無いような場所
に好んで足を運んだ。本当にデタラメな奴だ。『私はアドバンスなんて信じない』

そう言いながらも顔はにやけてしまう私は彼と同じタイプの人間だと改めて実感した。

次【思い出の泉】
59名無し物書き@推敲中?:2006/03/30(木) 18:23:29
あげときますね
60名無し物書き@推敲中?:2006/03/31(金) 08:59:53
あの日、きこりの俺はいつものように森で木を切っていたんだ。
日もだいぶ傾いてそろそろ終わりにしようかと思った頃、うっかり手を滑らせて斧を泉に落としてしまった。
そしたらなんと泉の中から女神が現れたんだ。
あんなの子供だましのおとぎ話だと思ってたからそりゃ驚いたよ。
だけど、俺なんかより女神の方がずっと驚いてたな。
なんせ俺は泉に潜って斧を拾おうと素っ裸になってたんだからな、はっはっは。
ん、その後どうなったのかって?
まぁ、いろいろあってお前たちがここにいるわけだな。

次、「溶けない雪だるま」
61名無し物書き@推敲中?:2006/03/31(金) 09:00:41
あげときますね
62名無し物書き@推敲中?:2006/03/31(金) 21:56:07
さげときますね
63名無し物書き@推敲中?:2006/03/32(土) 00:22:29
雪山で遭難してしまった。
ところが、だ。もうダメだと思った時、温泉を発見して命拾いしたのだ。
冷えた体を温めていると、湯気の向こうから誰かの声がする。
「いい湯ですな」
目をこらして見ると、雪だるまだった。
「アナタはどうして溶けないんですか」
「心頭を滅却すれば湯もまた冷たし」
「……そうですか」
よく分からなかった。


次「熱帯魚の踊り」
64名無し物書き@推敲中?:2006/03/32(土) 06:38:04
8年間付き合ってきた彼女とようやくゴールイン。
俺は今、最高に幸せだ。
ぴちゃん、ぴちゃん。
ほら、熱帯魚たちも踊って祝福してくれている。

「「「(ヒーターが強過ぎて熱いんだよ、バカヤロー!)」」」


次、「チョコレート日記」
65名無し物書き@推敲中?:2006/03/32(土) 14:27:10
悔しいことも、哀しいことも、みんなみんな日記に書けば、
少し落ち着ける。心理学の先生も言っていたけど、
『書くことで、気持ちの整理がつく』
だからだそうだ。

さて、書いた後は溶かして食べるか!
これで証拠も隠滅、バッチリよね。

次、『あの夏に持っていく物』
66名無し物書き@推敲中?:2006/04/02(日) 09:45:10
「サンダルでしょ、サングラスにビニールシート、日焼け止めも持って行っちゃおう」
僕はバッグに原色の小物を色々と詰め込んでいた。
耳には早くも波の音が聞こえている。ぎらぎらした太陽が僕を待っていてくれると思うと、いても立ってもいられない。
 お菓子と水筒、それにお弁当を入れたらバッグははち切れそうになった。体重を乗せて無理やり押し込んでいると、
「用意できたかい?」
 ふすまを開けて、青い色のロボットが入ってきた。丸い体と大きな頭を持っている。
「もうみんな向こうに行ってるよ。きみも早く───」
「判ってるよ、もう! 焦らせないでってば!」
 いつもの口うるさい口調を遮って、僕は一気にチャックを閉めた。少し生地が広がって、軽く押しただけで音を立てて裂けそうになっている。
 そっと紐を持って、肩から下げた。重みでくじけそうになったが、僕は元気に立ち上がった。
「用意できたよ、早く出してよ。ドラえもん!」
「はいはい。『どこでもドア』〜!!」
 お腹のポケットから物理学上の矛盾を体現しながら大きなドアが現れた。取っ手を引っ張ると、僕の部屋の中に切り取られた常夏の島が出現する。
 砂浜の向こうには、小さい人影が水をかけ合ってはしゃいでいた。
「忘れ物はない?」
 青いロボットは、くふふ……と笑いながら言った。
「きみは必ず忘れ物するんだから。もう一度見直したほうがいいんじゃない?」
「んもう、うるさいな! もう行くからね!」
 つんと顎を尖らせてドアを潜り抜ける。ほんの少々の抵抗に体が抗って、突き抜けた。
 そこはもう白い砂浜にヤシの葉が繁る南国だった。僕は友達に手を振りながら走り出していた。
 合流するときになって、脳裡を掠めた物があった。
 僕は足を止めて叫んだ。
「ああ……浮き袋忘れた!」

次のお題【宇宙には柿の種が】
67名無し物書き@推敲中?:2006/04/03(月) 02:15:36
「ねえきみ知ってるかい?土星の輪っかは柿の種で出来てるんだぜ」
 既に相当酔っているらしく、座らない首をぐにゃり、と不可思議な角度に曲げて男は言った。
「もしそれが本当だとしたら」
 隣席の女は、俯いて自分のグラスに付いた水滴を見つめたまま尋ねた。
「ピーナッツはどこに行ったのかしら?」
 女が男の方を向いた時、男は既に夢の世界に片足をつっこんでいた。
 カウンターの中のバーテンは、グラスを磨きながらあくびをかみ殺した。

次、『落下する心太』
68名無し物書き@推敲中?:2006/04/05(水) 17:50:06
ageてしまえ〜!
69名無し物書き@推敲中?:2006/04/07(金) 20:17:59
age
70名無し物書き@推敲中?:2006/04/07(金) 20:58:55
「心太さん、私もうダメ・・・」
「諦めちゃダメだ!これまでずっと一緒に頑張ってきたんじゃないか!」
大波に飲み込まれた時もあった。
地獄の業火に焼かれた時もあった。
灼熱の太陽にさらされた時もあった。
それでも二人はいつでも一緒だった。
「ごめんなさい心太さん。 私、先に行くわ・・・」
「心子さーーーーーーーーーん!!」
必死で伸ばした手は空を切り、彼女は深い穴の中へと落ちて行く。
「ちきしょう!!心子さん、俺も今行くぞ!!」

「おーい」
「はいはい、お酢とからしでしょ。 お父さんったら、ホントに好きねー」
「んーうまい!やっぱり夏はこれだろう!」



次、「101回目のフラフープ」
71名無し物書き@推敲中?:2006/04/08(土) 21:36:19
このスレって、何人くらいでかいてるの?
72名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 00:45:30
俺は二つ書いた
73名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 00:51:11
私は3つ書いた。
いずれも二ヶ月くらい間があいてる。
74名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 02:31:23
わたしも3つ。
75名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 02:38:07
オレは2つ。
76名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 03:09:57
俺は一個。
77名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 04:02:37
私も三つ書いたよ。
78NBV802N ◆ic8UUcyv5s :2006/04/09(日) 05:26:26
小話を二つ
79名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 06:39:57
貴子は7歳の誕生日にフラフープを買ってもらった。嬉しくって学校から帰ると毎日練習した。
「貴子もう50回もまわせる様になったよ」貴子がそう言うと
「そうか、じゃあ100回まわしたら他に欲しいものを何でもプレゼントしてあげるよ」
お父さんは微笑んで答えた。貴子は一生懸命練習して100回まわせるようになった。
「お父さん、見て」
貴子は庭にお父さんを連れ出してフラフープをまわした。
「1回、2回、、、100回、出来た!」
喜んだ貴子の腰の回りを一回転してフラフープが地面に落ちた。
「あーあ、100回って言ったのに101回まわっちゃた。プレゼントは無しだね」
お父さんはそう言うと家の中に帰って行った。
「ちょっと待って下さい。
100回フラフープが私の腰をまわった時点であなたと私の間の契約は成立しており、
その後の1回転はその契約を破棄するに正当な程の重大な事由には該当しません。
私の欲しいものをプレゼントする義務があなたにはあります」
お父さんは化け物でも見るような目で自分の娘を凝視した。
「お父さん、そんなんだからいつまでたっても出世しないんだよ。
まあ、プレゼントはファミレスで食事で我慢しとくわ」
こいつかみさんに似てきたな、お父さんはそう思った。

次、「時計仕掛けの村上春樹」

80名無し物書き@推敲中?:2006/04/09(日) 15:16:07
 条件付けさえちゃんとしていれば、読める文章なんてすぐ書けるようになれますよ!
 そんな持論を持っている工学部の先輩に、普段から不満だった。文芸部六名中、五名がそう思っていた。
「じゃあ先輩、その理論を実践してみませんか」
 そんな事を言いだしたのが、この四月に入部した六ヶ迫嬢だった。
 言い方は丁寧語であっても、言葉のイントネーションは挑戦的、表情に至っては挑戦以外のなにものでもない。
 残り全員が、工学部の吉敷に「そうだそうだ」「やっぱり提唱したら、検証されないとな!」とはやし立てる。
 とうとう吉敷は自らの理論を実践すべく、日々『条件付け』を受けることになった。

 その結果。
 彼は自分の文章というものが全く書けなくなったが、有名作家のゴーストライターとしてアルバイトを始めたという。
正確な機械のように、過去の文体から抽出模写した表現をすぐに書くというので、出版側には重宝されているらしい。
 まさに時計仕掛けのなんとやら、というところか。
 老害を追い出すことに成功した我々は、喜びの乾杯をすべきなのだろう。だが、誰一人としてデビューの声は未だ聞こえず、
心の中には素直に喜べない思いが渦巻いているのであった。

次、『ミッション・隣のお父さん』
81名無し物書き@推敲中?:2006/04/10(月) 07:56:04
>>71-78妙な連帯感に(´∀`)
82名無し物書き@推敲中?:2006/04/12(水) 15:25:16
あげてみよう
83名無し物書き@推敲中?:2006/04/12(水) 17:07:58

隣も家から声が聞こえた。
「いよいよ私にもミッションが授けられた。
ついにこの日が来た。全力を尽くそうと思う」
「お父さんがんばって」
「うむ、では行ってくる」
バタンと車の扉を閉め、エンジンをかける。
ぷすぷすという音とともにエンジンが止まる。
「やはりミッションは難しいな」

次、「桜の樹の下に埋まっていたものは、、、」
84名無し物書き@推敲中?:2006/04/12(水) 19:41:33
桜の樹の下には死体が埋まっている。
僕のスコップを握る手に力がこもる。
一体誰が、美しい桜の下を掘ってみようなどと考えたのか。
桜の樹の下には死体が埋まっている。
妖艶なる桜に魅了され、その下に眠る青白い死者を想像し、
地面を掘り起こす者こそが憑かれているのか……。
それとも……彼らのために死体を埋める僕こそが
桜に憑かれているのではないだろうか……。


次、「アドレス変えました」

85名無し物書き@推敲中?:2006/04/13(木) 07:56:22
はて、これ↑どこかでみたことあるんだけど……
86名無し物書き@推敲中?:2006/04/14(金) 21:26:55
「アドレス変えました?」
「うん、ちょっとね」
「何でですか?」
「うるさいこと言って来る奴が多いんで、いい加減、嫌になってね」
そう言って男の打った球は300ヤード近くも飛んだ。
誰もうるさく言う奴はいない。言える訳がない。

次、「世界を滅ぼす幼稚園児」
87名無し物書き@推敲中?:2006/04/15(土) 05:49:50
「うちの子ポピュラスうめぇーんだ。ん?。スーファミだけど」。



次「ハニー、右利きピンキー」
88名無し物書き@推敲中?:2006/04/16(日) 21:03:48
「ハニー、私たちの人気もこれで終わりなの?」
「仕方ないさピンキー、君が左利きだったらあるいはもうちょっと、、、」
「男装までして、あんなぽっと出のぶりっ子に絡むくらいならこのまま埋もれた方がましだわ」

お題が難しかったので
次「プリンターの気持ち」
89「プリンターの気持ち」:2006/04/16(日) 21:33:50
4月15日
新人アルバイトが、連日の雨で湿気たままの紙を、捌かずにセットしたため、
俺の中に紙が数枚重なったまま一気に入ってきてしまい、紙詰まりしてしまう。
馬鹿。紙が湿気てたらくっつくという、一般常識さえ知らないのか。
しかも、マニュアルも読まず訳も判らずに、力任せに引っ張るものだから、
紙が途中で千切れてしまい、俺の中の歯車に絡まった状態で残ってしまった。
これじゃあ、この店の奴らじゃあ除去は無理だな。
あ、修理屋に電話してる。壊れたわけでもないのに呼ばれる修理屋も大変だな。

4月16日
修理屋が来て、俺の中の紙を除去しようと試みる。
……っとおい! なんで上蓋を外さないで無理矢理手を突っ込んでるんだ?!
脇の爪を引っ張るだけで外せるだろ? こいつも新人か??
痛たたたた  ……なんとか歯車からは取れたか。お、動けるようになった。
つっても、まだ何か凭れてる感じが……あ、ヘッドの脇に残ってるな。
「ああ、動くようになりましたね。じゃあこれで大丈夫だと思いますんで」
大丈夫じゃねえよボケ! まだ残ってるっつうの!
あーあ、絶対これそのうち歯車に引っ掛かっちまうな。

4月17日
昨日の危惧が早くも現実になった。
残っていた紙が歯車に巻き込まれ、俺はまたもや動けなくなった。
そして、昨日とは別の修理屋がやってきた。――ああ、こいつは以前にも来たことがあるな。
こいつはちゃんと俺の開け方を心得てる。大丈夫だ。良かった。
「では、一応予備のプリンタとお取替え致しますので」
おいっ! この間みたく上蓋外してくれれば、お前ならすぐわかるんだよっ!
取り替えなくて良いんだよっ! 症状も見ないでいきなり交換するなよお…
工場は嫌だ嫌だ嫌だ
修理屋の手が俺のパラレルケーブルとACケーブルに伸び


(次、「幻惑四重奏曲」)
90名無し物書き@推敲中?:2006/04/16(日) 21:45:26
てへっ、酔っぱらっちゃたい。
およ、カヨちゃんの他にも合わせて四人もおれのテーブルに。
いやあ、色男は辛いね。しかもお揃いのドレスときた日にゃあ
こりゃVIP扱いかね、どうも照れるね。

カウンターの奥
「田中さんは酔っぱらわせれば、コンパニオン代も四人分請求出来て一石二鳥ね」
91名無し物書き@推敲中?:2006/04/16(日) 21:48:42
次、忘れてた。「windowsとmacの恋」
92名無し物書き@推敲中?:2006/04/16(日) 23:18:38
お前だ、お前だよ。いっつもいつも俺を見下してさぁ。・・・正確にはお前とその偏屈な取り巻き、だったか。
気に食わねぇ。全く気に食わねぇ。下種下賎下品なハイキョウシャを見るようなあの目だよ。
ああ、あの目。全くたまんねぇ。思い出しても勃っちまうじゃねぇか。
いーい女だ。全くいい女だ。蹴落としてよ、屈服させて、そうだ心を折るんだ。あのプライドのたけぇ女のだ。
ポキッとはいかねぇ、させねぇ。こう・・・おしぼりで包んで、ぐぐっと、こう・・・んでバキバキだぁ。へへ・・・。
そんで、んで・・・・・・俺たちは一つになるんだよぅ。ロミオとジュリエット!織姫さま!彦星!
ハッピーエンドだ。その間抜けどもと俺たちの違うところは?そうさハッピーエンドってとこなんだよ。
待っててくれよ。今行くからよ。木偶どもの冷たい視線にもなんにでも耐えてみせるぜ。俺はいい男だ、うん。

・・・・・・へへ、Mac、Mac。たまんねぇよ。全くの全くにいい女だぁ。

お題「夢枕獏の恋」
93名無し物書き@推敲中?:2006/04/16(日) 23:52:51
夢枕獏の代表作は「神々の山嶺」だ。
おれはそれしか読んだ事がないからそうに決まった。
でもおれは「狼は帰らず」を読んでいたから神々の山嶺はちょっと、という感じだな。
おっと、お題を忘れていた。獏の恋か。
そりゃやっぱ相手は岡江久美子なんじゃないの。
こりゃ、獏違いで失礼しました。

次「クーラーからストーブへの交換の季節」
94名無し物書き@推敲中?:2006/04/17(月) 00:09:48
個人的には今までの中で「思い出の泉」と「宇宙には柿の種が」が面白かった。
95名無し物書き@推敲中?:2006/04/17(月) 01:12:41
クーラーからストーブへと季節が移り変わ・・・る?った?人によって異なるだろう。

そんな秋の夜長にも、Tシャツにトランクスのスタイルを崩そうとしない男が二人、いた。

「カミングアウトするよ。いやしたよ」

「何をだ」

「察せよ。幼馴染なら」

「ふん」

俯瞰したところ、多くの人間が直感的にBとみなすであろう男はビール瓶を握る手に力をこめた。

呪わしい。いつも、まったく、この具合なのだ。疲れてしまう。というか限界に近い。

神よ、何故に俺はこいつの隣家の天パ夫婦の息子などに生まれてきたのか。

解せない。解せないし解すつもりもない。かといって天命だと割り切れるほどに上等でもない。

つまり。

「殺すか」

「誰をだ」

「察せよ。幼馴染なら」

次のお題「図書券」
96名無し物書き@推敲中?:2006/04/17(月) 01:28:16
「しおりちゃん、お年玉よ」
「げっ、図書券じゃん、しおりもう来年は中学生だよ、子供じゃないよ」
「ついでに、本屋に予約も入れといたから」
「げっ、これおばさんの旦那の本じゃん、こんなの誰も読まないよ、すげーつまらないよ」

次、「栄光のひげ剃り」
97名無し物書き@推敲中?:2006/04/17(月) 01:33:41
お前なんか愛していないと。生まれてこなければよかったのにと
たまに口を開けば言っていたパパが、
大学の入学祝として図書券を10万円分くれた。
「本はいくらでも買っていい。教養のある人間としてこれから充実した人生を送ってほしい」と。
大学に落ちたら首吊って死ねって言ってたパパからの贈り物。
パパありがとう!

でもねパパ、10万円分もいらないと思うの。
いま一番知りたいことは、この1冊に書いてあって
それについて知れば他の本や教養なんて、これから必要なくなるから。

あたしは手に取った本を
パパがくれた図書券といっしょにレジに出した。


98名無し物書き@推敲中?:2006/04/17(月) 01:42:24
重複ですね。
97さんもお題をどうぞ。
続けた人のお題で継続しましょう。
by 96
9997:2006/04/17(月) 12:35:03
>>97です
重複申し訳ない。
お題は
「初夏と君」
100栄光のひげ剃り/初夏と君:2006/04/20(木) 02:15:55
僕の朝はいつも、ひげ剃りから始まる。
 台所では君が朝食を作っている。
 僕が右の顎に始まり、左の頬に至るまで、いつも通りの順番で完璧にこなしてダイニングに行けば、
初夏の光に包まれたテーブルの上には、オムレツの黄色とケチャップの赤が計算され尽くした構図で鎮座し、美しい君が微笑んでている。
 それを見た瞬間に、僕の幸せは頂点に達する。これ以上ないほど整った食卓。美しい妻。理想的な朝。
 誰が何と言おうと、僕は幸せだ。
 例えケチャップが、毎日オムレツの中に潜んでいる卵の殻でズタズタになった頬にしみたとしても。

二つのお題を無理矢理まとめようとしたら訳が分からなくなってしまいました。
とりあえず次、『未確認飛行仏陀』
101100:2006/04/20(木) 02:18:44
訂正
4行目:微笑んでている→微笑んでいる

知らぬ間に100ゲトしてましたね。
102未確認飛行仏陀:2006/05/02(火) 04:23:17
雲一つ無い空に大きな太陽がきらきらと輝いていていました。吹き抜ける風の匂いが春を感じさせ、私はうきうきとした足取りで彼氏との待ち合わせ場所に向かいました。
今日は彼氏とのデートなのです。彼とデートするのは今日で三回目なのです。なんだかドキドキします。

会いたいという気持ちが強すぎたのか、予定より三十分も早く待ち合わせ場所に着いてしまいました。
当然彼はまだ着いていませんでした。
「早く会いたい」
高まる気持ちを抑えなが私は彼を待ちました。

待ち合わせの時間になりました。しかし彼はやってきません。事故にでも遭ったんじゃないかと心配になったので彼の携帯に電話しようとしたちょうどその時どこからか低い笑い声が聞こえきてその声の方向を見ると大仏が、
そう何故か大仏が笑いながら空を飛んでいて私はびっくりしてあっと声を上げるとその大仏が
ぎろりと私を睨み物凄いスピードで私の方に迫ってきて逃げようとしたけど体が動かなくて私もう死ぬんだなと思った
瞬間目の前が真っ暗になり気が付くと私は自分の部屋のベッドの上で叫び声を上げていました。

「なんだ夢か。」
どうやら私は夢を見ていたようです。
大仏の夢。変な夢。何か良いことが起きる前兆でしょうか。
釈然としないまま私はベッドから起き上がりました。
窓からは太陽の光が差し込んでいました。もう朝です。
そうそう今日は彼氏との三回目のデートなのです。ドキドキなのです。
時計を見て私は焦りました。急いで準備しなければ待ち合わせに遅れてしまいます。さあさあさっさとしなければ。私はんんっと背伸びをしました。

異変に気付いたのは部屋のドアを開けた時でした。
もう朝だというのに廊下は暗闇に包まれていました。
おかしいな、と思いながらも電気を点け洗面所に行くと低い笑い声が聞こえてきて
私はびっくりしてその声の方を見ると大仏が、何故か大仏がいて私をぎろりと睨んでいて・・・・

103名無し物書き@推敲中?:2006/05/02(火) 04:28:06
次のおだいは

「仮面OFF会」
104仮面OFF会 1/8:2006/05/03(水) 07:19:33
 どうにも、気になる青年だった。
 ナンバープレート『7』を胸に張った彼女は、チャットメンバーの一人から
目が離せないでいた。

 とあるクラブを貸し切ったそのオフ会は盛況だった。
 昼間なので室内は明るく、それは彼女にとっても好ましいものだった。
 あまり派手なのは好きではない。
 人数は三十人ほどだろうか。
 地域チャットのメンバー、ほぼ全員が参加しているようだった。
 みんなは少し離れたところで盛り上がっている。
 しかし、自身の引っ込み思案な性格のせいか、彼女はなかなか話の輪に入り
込めないでいる。
 端の席に座り、オレンジジュースなどをチビチビとやりながら、みんなの話
を聞いている。
 そして、さっきから気になってしょうがない青年を観察する。
 大学生ぐらいだろうか。長身で、鮮やかな青色のジャケットを羽織っている。
胸には『10』と数字の記された丸いプレート。
 今回のオフ会は少し変わっていて、誰が思いついたのか全員がナンバーで呼
び合う覆面オフ会という形式をとられていた。
 だから、青年がチャット上でどういうハンドルネームをしようしているのか、
彼女には分からなかった。
105仮面OFF会 2/8:2006/05/03(水) 07:21:16
 どこかで会ったような気がするんだけど、それがどこだか思い出せない。
 直接の面識はない……と思う。
 すると、テレビに出ているタレントか誰か……でもなさそうだ。そもそも、
彼女はテレビもあまり見ない。
 気になる……けれど、直接話しかける勇気も彼女にはなかった。
 すると、不意にその青年と目があった。
 その青年はみんなに断りを入れてから、彼女に近づいてきた。この時点で、
彼女の頭の中はパニック状態だった。ど、どうしよう。
「盛況ですね」
 彼は愛想良く話しかけてきながら、彼女の隣に腰掛けた。
「っ!? そ、そうですね……」
 彼女は、思わず愛想のいい青年と距離を取る。引っ込み思案の上、かなり人
見知りで、さらにいえば小中高と女子校だったためか男性も苦手だった。
 しかし青年は、彼女のそんな様子にも気を害した様子はなかったようだった。
 首をかしげ、彼女の地味目の服の胸に記された『7』の数字を確認する。
「7(なな)さんも、混じればどうですか? いや、無理にとは言いませんけど」
「その、あんまり騒ぐのって、得意じゃないんです……こうやって、隅っこで
飲んでる方が合ってるというか」
「そうですか」
 まあ、そういう人もいるでしょうね、と青年は穏やかに頷いた。
106仮面OFF会 3/8:2006/05/03(水) 07:22:21
 その様子に、彼女は少し安心した。混乱していた頭が、少し冷静さを取り戻す。
「あの……10(じゅう)さん」
「テンの方が呼びやすいんじゃないかな。『じゅう』じゃ呼びにくいでしょ、
これ」
 青年は、主催者自作の胸のプレート『10』を指差した。
「そ、そうですね」
 頷いてから。
「……その、テンさん、ひょっとして……どこかで会った事、あります?」
 彼女は、さっきからずっと気になっていた疑問を口にした。
「あ、それなんですよね。俺もどうもさっきからそんな気がしてて、つい声を
掛けちゃったんですけど」
「ですよね。でも、今回はお互いの素性を探るのは禁止ですし……うーん」
「まあ、それはまたチャット上ででも、お話出来ればいいかなとは思いますけど」
「……ですね」
 お互いに微笑みあう。
 その時、彼女のポシェットが小さく振動した。
「あ」
 携帯電話だ。着信相手は、仕事先の上司だった。
 一方、青年の方もポケットを探っていた。
「くそ、携帯か」
 青年は顔をしかめながら、自分の携帯電話を取り出していた。
 どうやらお開きのようだった。
 彼女はポシェットを手に席から立ち、青年に頭を下げた。
「すみません。急なお仕事が入ったみたいです。せっかく休みだったはずなの
に……」
「まったく同感。それじゃまた、今晩のチャットで会えるといいですね」
「はい」
 彼女と青年は主催者に先に帰る事を告げ、外に出て分かれた。
107仮面OFF会 4/8:2006/05/03(水) 07:23:56
 ……三十分後。
 彼女は郊外の石切り場にいた。
 ただし、服装が圧倒的に違う。
 地味目だった衣装は、胸元が大胆に開いた露出度の高い、皮製のいわゆるボ
ンデージに変わっていた。
 顔は凶悪な厚化粧に塗りこめられ、変身というかもはや変装の域に達している。
 そして手には、笛の役割を果たす杖を持っている。
 彼女は、紫色のルージュを塗った唇を開き高笑いをあげた。
「おーっほっほ! これで形勢逆転ですわね、アスレンジャー!」
 彼女の正面には、トゲ付きの茨で全身を縛られた四人の青年が転がっていた。
それぞれ赤色黄色緑色桃色のコスチュームを身にまとっている。
 ヘルメットのせいでその素顔は見えないが、赤と緑が男、黄色と桃色が女性
だというのはプロポーションで分かった。
 彼女……今は悪の秘密結社カルティアの女幹部ミュージクイーンは、部下で
ある薔薇怪人カドービーストに指示を飛ばした。
「さあ、トドメをお刺し、カドービースト!」
「シャシャー!! ミュージクイーン様、助太刀ありがとうございますー!
 これでも食らえ、触手攻撃ー!」
 敵、つまり正義の味方であるアスレンジャー達の身体を拘束する茨がうねう
ねと蠢き始めた。
108仮面OFF会 5/8:2006/05/03(水) 07:26:14
「くっ、このままじゃ、俺達男連中はともかく、イエローとピンクが……」
「エロゲー展開になりますね」
 悔しそうに呻くアスリーレッドに、割と冷静に困るアスリーグリーン。
 そしてジタバタもがくアスリーイエロー。
「いやー! そんなのいやー! これお子様向け番組ー!」
「レッド、やらしい目で期待しないでよ!! ちょ、ちょっと、変なところ触
らないでよ、このぉっ!」
 アスリーレッドを蹴飛ばしながら、アスリーピンクは茨を引きちぎろうと全
身に力を込める。
 アスレンジャー絶体絶命の危機であり、秘密結社カルティアの勝利は目前で
あった。
 その時、どこからともなく円盤が高速で飛来したかと思うと、アスレンジャーを
縛っていたツタを寸断してしまった。
「っ!? 何者!?」
 ミュージクイーンは、円盤を目で追った。
 円盤は高く高く舞い上がり――青い手が、パシッと円盤を掴んだ。
 涼やかな声が響いた。
「ふぅ、やれやれだ……みんな、だらしないぞ」
 そこには、鮮やかな青いコスチュームに身を包んだ青年が立っていた。例に
よってヘルメットでその素顔は見えない。
109仮面OFF会 6/8:2006/05/03(水) 07:27:35
「遅いぞ、ブルー! どこで何やってやがったんだ!」
 アスリーレッドが叫び、その青年、アスリーブルーは肩を竦めた。
「ヒーローに休日はないのかね、まったく」
 そして、その場でアスリーブルーは大きく見得を切った。
「投・跳・走! 変幻自在、十の必殺技を持つ青のアスリート・アスリーブルー、
ただいま見参! ついに幹部のお出ましか!」
 アスリーブルーと対峙したミュージクイーンは、反射的にいつもの高笑いを
響かせる。
「おーっほっほ、たった一人でこの音界の女王・ミュージクイーンを相手にす
るつもりかしら?」
 そして。
「…………」
「…………」
 なんか、妙な間があった。
「……不思議だな。あんたとは、初対面という気がしない」
 アスリーブルーの言葉に、ミュージクイーンは深々と頷いた。
「……同感だわ」
 だが、今は和んでいる場合ではない。
 部下であるカドービーストは、拘束の解けたアスリーレッド達と既に戦闘を
再開している。
110仮面OFF会 7/8:2006/05/03(水) 07:29:16
 すぐに気を取り直して、彼女も自分の杖――魔笛を構えた。
「それはさておき、いくわよ、アスリーブルー!」
「おおっ! 今日はあいにく夜に予定があるんでね! さっさと片付けさせて
もらうぞ!」
「おーっほっほ、それは奇遇ね、ワタクシもよ!」


 アスリーブルーとの一騎打ち、カドービーストが敗北から巨大化を経て、
アスレンジャーの巨大ロボット・フィットネッスルとの対決。
 それらが終わり、ミュージクイーンは自分達のアジトである秘密結社カルティア
本部へ戻った。
 上司、すなわち悪の秘密結社カルティエ総帥から、部下の窮地を救い奮戦し
た事をたたえられ、同時に敗北を戒められる。
 厚化粧を拭い、着替え、女子戦闘員たちに挨拶しながら本部を出る。
 バスに乗り、近くのファミレスで少し早い晩御飯を食べ、彼女はようやく自
宅のマンションにたどり着いた。
 時計は夜八時をさしていた。
 寝るには少々早い時間だ。
 パソコンをつけると、いつものチャットに入室しているのは一人だけだった。
 入室している『デカ』さんは、彼女の馴染みの一人だ。かなり仲がいい。
111仮面OFF会 8/8:2006/05/03(水) 07:32:15
フルート「こんばんは」

 彼女は自分のハンドルネームで入室し、挨拶する。
 すると、すぐに返事が来た。

デカ「こんばんは。今日はおつかれ様でした」
フルート「はい、お疲れ様です。他の人達はどうしているんでしょうね」
デカ「まだ、オフ会やっているみたいです。夜の部は居酒屋らしいですよ。
   さっき連絡がありました」
フルート「そうですか。うらやましいです……こっちは急な仕事が入って、
     途中退場でしたから」
デカ「そうですか。奇遇ですね。僕もですよ。フルートさんは確かオフ会初め
   てだったと前に伺いましたが、どうでしたか?」
フルート「あ、楽しかったです」

 それから、彼女は一時間ほどチャットをし、パソコンの電源を切った。
 今日はもう疲れた。
 もう寝よう。
 そう思い、ベッドに向かう途中でふと、足を止めた。
 本棚に向かい、辞書を手に取る。
「デカ……1795年の当初のメートル法で定められた六つの接頭辞の一つ。
ギリシャ語で『十』を意味する(deka)に由来する」
 うん、と頷き、彼女は辞書を閉じた。

すみません、長くなりました。
次『美少女山姥』でお願いします。
112名無し物書き@推敲中?:2006/05/03(水) 07:52:40
仲間の攻撃で魔王が大きく仰け反った。チャンスだ。私は呪文書を開いた。
これを唱えさえすれば魔王は息絶え、世界は永遠の平和に包まれる。
長い戦いに、今幕が降りる。私は大きな声でその呪文書を読み上げた。
「くらえ魔王め、美少女…や…美少女山…や……あれ、読めん」
そんで世界滅んだ。

次のタイトル
「続・仮面OFF会」
113名無し物書き@推敲中?:2006/05/03(水) 09:41:42
【続・仮面OFF会】

4回目の仮面OFF会も、もう2時間が過ぎようとしていた。
「・・・それでは、そろそろお開きにしたいとおもいます。で、この後の2次会ですが・・・」
幹事の人が場を締めよとしている。マズイ!い、急がなくちゃ。2回目も3回目も
会えずに、ようやく今回、またあのテンさんに会えたんだから・・・。
「あ、あのう・・・テンさん」
「ん?何?」
「テンさんて・・・間違ってたらごめんなさい。ハンドルネーム、デ、デカ・・・」
「イラッシャイマセ〜〜〜!!!」
ん、もう!これだから居酒屋の無駄な元気良さってキライ!
「・・・テンさんて、ハンドルネーム、デカさんですよね。私・・・フルートです!!」
「・・・」
「ち、違うんですか?」
「違うよ」
「えぇ!!そ、そんなぁ・・・」

「・・・飽きたから、今度からメタにしようと思うんだけど、どう?フルートさん」
薄いライチハイのアルコールが今頃一気に急上昇して、
鏡を見なくても私の顔が真っ赤になってるのが分かる。
「でさ、フルートさん、これからどうするの?良かったら二次・・・」

「ヨロコンデェ〜〜〜!!!」

次のタイトル
「続々・仮面OFF会」

114名無し物書き@推敲中?:2006/05/08(月) 23:27:43
あげあげエビナイ
115続々・仮面OFF会:2006/05/13(土) 15:36:54
テン、改めメタとフルートが、ラブホテルのフロントで部屋を選んでいたちょうどその頃、ある一人の男がある場所向かって歩いていた。
彼はしきりに時計を気にしながら黙々と歩く。帽子を深く被り、手に大きな鞄を抱え、もう何回目になるだろうか、腕につけた時計んチラリと覗きこんだ時に、彼はその場所についた。

「遅れてすまん」
勢いよくドア開けながら部屋に入った彼の顔には、いつの間に被ったのだろうか、仮面が付けられていた。
「こんにちは初めまして」部屋の中にいた数人の男女が言った。
彼らの顔にも仮面が付けられていた。


おわり
116名無し物書き@推敲中?:2006/05/13(土) 15:37:45
次のおだい

世界最強決定戦
117名無し物書き@推敲中?:2006/05/16(火) 02:07:46
ドアが音を立てて閉まるのを見ていた。あとはもう残り香が消え去るのを待つだけ。
あの夜、彼女が泣いた理由は結局わからないままだし、言葉の裏を探る気力も今は持てない。疲れた思考で閉じられたドアをぼんやりと見つめている。
何一つ嘘はなかったはずなのに、何一つ証明する事が出来なかった。
「世界最強決定戦でもあればな」
笑い飛ばすように呟いてもまるで現実味はなく、視線の先でドアが鼻を鳴らしたような気がした。[了]

次どうしよう。えーと、じゃあ
「真夜中のピエロ」でどうぞ
118名無し物書き@推敲中?:2006/05/16(火) 08:33:13
夜の路地裏でピエロを見たことありますか?実はあれ、S.キングが演出したほどには
恐ろしくないんです。ほら、メイクをしてるでしょう?それが赤塗りの部分は黒く
白塗りの部分は青白く見えるんです。黒い部分は夜に溶けてしまいますから、わか
り易くいうとオペラ座の怪人の仮面みたいに見えますかね。
ま、恐ろしさが滑稽になるのはこれからなんですが…まずアフロヘアー、赤ければ
当然見えませんよね。さすがにスキンヘッドには見えませんが、ほら、仮面をつけ
てるでしょ、感覚的にシルクハットをかぶってると錯覚します。それでもってあの
服、某ドナルドを想像しちゃいけませんよ。ピエロは大抵太って見える服を着てる
んです。そうなれば段々おかしなことになってきますよね?なんたって太ったオペ
ラ座の怪人ですから。滑稽です。あ、なるほど、ピザが粋がって仮面舞踏会に参加
したな、すぐピンと来ます。さらに、エスコートする女性もおらず、あろうことか
徒歩ですよ!ここまできたら憐れみしかありませんね。私もつい、スニッカーズ(食
べかけ)を恵んでやろうと思いました。で、忘れちゃいけな
いのは、実際にいたのは太ったオペラ座の怪人ではなくピエロなんです。夜の路地裏
にピエロがいたんです。そりゃどう考えたって私は殺されますよ。

次「お尻のほっぺた」
119名無し物書き@推敲中?:2006/05/28(日) 21:52:30
俺は鏡の前で再確認した。
うん。おできではない。これはほっぺただ。
数日前から違和感があった。
笑ったときに尻がやけに引っ張られたような感覚を
感じていたからだ。
どうしてこんなところにもほっぺが出来てしまったのか?
俺は不思議に思った。
しかし、あまり生活の支障には関係ないだろうと思い、
考える事をやめて風呂に入った。

・・・俺がこのほっぺたについて再び考えることになったのは
それから半月たったことであった。

・・・ごめん、出だししか考え付かんかった。
NEXT「感情が逆転した世界」
120名無し物書き@推敲中?:2006/05/29(月) 00:31:48
世界はおかしくなってしまった。楽しければ悲しくて、悔しければ嬉しい、壊れた世界。
最初はみんな戸惑って、俺はこの世の終わりってやつを予感したものだが、いやはや人間の適応能力ってやつはすごい。
感情が180度変わってしまったのなら、今度は行動を180度変えちまえばいい、ってわけだ。
仕事でミスをすれば褒められ、愛する人に気持ちを伝えるため怒鳴りつける。ほら、以前と何も変わらないだろう?
今ではみんな、新しい感情の表現にも慣れて、いつもと同じ毎日を送っているようだが、俺だけはそうはいかないんだ。
なんでかって? もともと感情が逆転していたからさ。
まったく、気が狂いそうだ。

Next→「落下する女」
121 ◆AzfIEss5SA :2006/05/29(月) 01:01:21
落ちていくのがわかる。
あんなヤツ最低の男だってことはわかってる。
なのに、なのに離れられない。
この腕が、目が、胸が、心が
あなたを求め続けている。
名誉? お金? 家族?
もう何一つ残っていない
全てあなたのためだけ・・・
落ちていくのがわかる。

NEXT→「隕石の落ちた日」
122fusianasan ◆skip69/qP6 :2006/05/29(月) 01:50:57
地球は隕石にアタックを繰り返した。
隕石の心はしだいに地球に傾きかけていたが、隕石には夢があった。
地球圏を出て外宇宙へ。
太陽は隕石の心を汲んだ。「ただし試験がある。それにパスすればお前の意のままだ」。
試験官はなんと地球。地球は言った、「重力を振り切るテストだ。いいから僕を振り切れ、君の幸せをつかめ」。
しかし隕石は、なにごとかをを決したように、地球の温かい大気の中におちていった。

NEXT→「コーヒーガムとブルーベリーガム」
123名無し物書き@推敲中?:2006/06/05(月) 03:19:20
立ち入り禁止の張り紙が貼られた屋上のドアをくぐる。
空は雲ひとつない快晴。
「あっつ・・・」
真夏の日差しがジリジリと私の肌を焼く。
急いで日陰に逃げ込むと、そこには先客がいた。
「こんにちは」
「・・・何してるんですか先生」
保険医の伊藤女史だった。
「それはお互い様。 それより、そこ暑くない?」
「・・・・」
誘われるままに腰をおろす。
ひんやりと冷たいタイルが心地よい。
「どっちがいい?」
伊藤女史の手にはコーヒーガムとブルーベリーガムが1枚ずつ。
普段なら迷わずブルーベリーを選ぶところだが、私はコーヒーガムを口に放り込んだ。
「・・・コーヒーなのに甘いじゃない」
「ガムだからね」
プールからは水泳部の水音、校庭からは野球部の掛け声、そしてセミたちの大合唱。
私の夏はもう終わってしまったけれど、暑い日はまだまだ続きそうだ。

NEXT→「駅を駆ける少女」
124名無し物書き@推敲中?:2006/06/06(火) 23:43:10
どこで止まるんだろう。どこで疲れるんだろう。どんな風に走るのをやめるのだろう。
駅にいた人々はみな、知らず知らずのうちに目の前を駆け抜けていく少女に注目していた。
どこに向かうのかな。誰かに会うのかな。それとも趣味か何かなのかな。
一方、なんの理由も無く走っていた少女はこの雰囲気に苦しんでいた。
一体いつ止まればいいんだろう。どんな理由で止まればいいんだろう。どこで止まればいいんだろう。
答えを求めて周りの人間を見回してみるが、誰も答えなど示してはくれない。
あなたたちのせいなのに、ずるい!
しかし言っててもしょうがない。少女はいよいよホームへと突入した。

NEXT→「雨の日の唄」
125雨の日の唄:2006/06/07(水) 05:49:25
 僕の学校には最近、妙な噂話が流行っている。朝から雨が続いていた日の放課後、
校内で耳を澄ますと、雨音に混じって誰かの歌声が聞こえて来るというものだ。
 もちろん、部活動で残っている合唱部の歌声なんかじゃない。音楽室はとにかくすごい防音設備がつけられているとかで、
室内でどれだけ大声を出しても決して外に漏れたりしない。それを聞いた授業で、選ばれた男子数人が試しに大きなシンバルをもってがしゃがしゃ鳴らすこととなった。
けれど廊下で待っていた僕らの耳には何も届かなかった。その日、音楽の恭子先生が、終始、自慢気な笑顔で授業をしていたのをよく覚えている。
 それに今は合唱部に入ってる子はいない。三年前までは実力のある六年生が一杯いて、市のコンクールなんかにも出ていたらしい。
けどその六年生達が居なくなって、一昨年には新入部員が一人も入らなくて、ついに今年、合唱部には一人も居なくなった。
つまりどうあっても放課後に歌が聞こえるわけがない。音楽室から声が漏れることもなければ、その声を出す生徒も存在しないのだから。

 けれど、僕は聞いた。
 もう一人の日直である女子が欠席した雨の日、たった一人で書き上げた日誌を職員室に持って行った放課後。
 かすれるような声が、体をくすぐるように耳に忍び込んできた。
 怖くなかったと言えば嘘だ。そのとき僕はがたがたに震えていたし、きっと見た人が気の毒に思うくらい
青ざめた顔をしていた。誰も見えない廊下で、どうして僕一人で日直なんだ、遅くまで残らなきゃいけないんだと休みの工藤さんを恨みもした。
 それでも歌を聞いてしまったのは変わらない。いつのまにか、その歌に聴き入っていることに気づいたのはおしっこを漏らしかけたときだ。
慌てて男子トイレに駆け込んで、小用の便器に思い切りぶちまけて、手を洗って深呼吸を一つ。息を止めて、意識を耳に。
 やはりまだ歌は聞こえていた。
126雨の日の唄:2006/06/07(水) 05:50:33
 ここまで来ると逆に怖い物なんかなくなってしまって、今思い起こすによくそんな勇気が出たなと自分を誉めてやりたくなる。
僕はもしかしたらという妄想じみた確信を持って、音楽室へ走った。第二校舎の四階。歌は徐々に鮮明になる。歌詞は聴き取れない。
ハミングほど「声」だと分かるものじゃない。僕は歌っている人は喉に楽器がくっついているんだと思った。
 渡り廊下を越えて、二階から四階へ階段を駆け上って、どきどきしてる心臓が
怖いせいなのか好奇心のせいなのか走ったからなのか分からなくなって。
 それでも音楽室のドアノブを捻って、ゆっくり、ゆっくりと扉を開いた。
 唄が、僕の身体を押し流そうと溢れ出た。
 目に見えるほどの美しい歌声を一身に浴びて、その中央に立つ女の子に恋しない男の子なんているわけない。
 例外ではなく僕はその子の一目惚れ、したとおもう。

「雨の日の唄」の正体は、こうして僕の秘密になった。

NEXT→「飴玉の包み紙」
127名無し物書き@推敲中?:2006/06/07(水) 16:30:15
「ミルキーの包み紙って変わったよね」
「そう言われてみればそうだね」
「私は前のパサパサしたやつの方が好きだったな」
「あーあの蝋を塗ったみたいな感じのやつね」
「そうそう。 あれをこうやってパキパキ言わせながら結ぶのが好きだったんだー」
そう言いながら彼女は片手で器用に包み紙を結ぶ。
「今のやつだとやわらかくてなんか物足りないんだよね」
「そんなもん?」
「うむ、そんなもんなのですよ」
僕の問いかけに彼女は満足そうに頷いて包み紙をゴミ箱に捨てた。
「じゃ、そろそろ勉強再開と行きますか」
「げーっ」
僕は家庭教師、彼女は生徒。
そして今は期末テスト3日前なのだから。

NEXT→「我輩はタコである」
128名無し物書き@推敲中?:2006/06/07(水) 16:52:52
我輩はタコである。
「なぁ、タコ、昨日のテレビ見た?」
「すまん、タコ!宿題写させて!!!」
「実は俺好きな子ができたんだ…なぁ、タコ、聞いてるか?」
入学初日から本名を呼ばれたことは、まだ、無い。

すまん、捻りなさすぎた。スルーしてください。お題そのままで。
129名無し物書き@推敲中?:2006/06/07(水) 17:13:14
「それで、どうなったの?」
「彼本人も大分悩んだみたいなんだけどさぁ…ほら、見てよ」
見ると、空には子供の引く糸に頑張って抵抗し浮かんでいるタコ一匹。
「ね、分かりにくいんだよ。もっと分かりやすいのがいいんじゃないかなぁ…。
そう、猫とか」

そこで夏目漱石は目が覚めた。
そして彼は数行しか書いてない原稿用紙を破り捨て、新しいのにこう書いたのだ。

「吾輩は猫である」


…これが我輩は猫であるの創作秘話だって?
あっはっは、そんな

NEXT→「そんなバナナ」
130名無し物書き@推敲中?:2006/06/07(水) 23:42:40
我輩はバナナである。
名前はジャイアントキャベンディッシュ。
フィリピンの農園で生まれ、海を越えてはるばるこの日本へとやってきた。
明日はいよいよ我々にとって最も重要な日がやってくる。
そう、遠足だ。
祭りのチョコバナナやスポーツ時の栄養補給など、我々が活躍する場は他にも数多く存在する。
しかし、遠足でおやつと同等以上の立場に立てる遠足こそが我々にとって最高の舞台なのだ!
「ただいまー」
どうやらこの家の小学生が帰ってきたようだ。
「ママー、大変大変!」
明日、我輩はこの子に食べられることになるのか。
「あら、どうしたの?」
思い返してみれば長かった。
「先生がバナナもおやつの300円に入りますって」
まだ青い未熟な頃に収穫された時はこの先一体どうなってしまうのかと不安になったものだ。
「あらら、それじゃあどうするの? バナナの分おやつ減らす?」
妙なガスを嗅がされて無理矢理熟成させられたこともあったな・・・(しみじみ)
「えーっ、そんなのヤダよ! だったらバナナなしにする」
・・・はっ!
「あらそう。 それじゃあこのバナナは今日のおやつにしちゃいましょうか」
お、おい、我輩は明日の遠足で食べられるのではなかったのか!?
「わーい、今日のおやつはバナナだー」
ま、待て! 皮を剥くんじゃない!
「いただきまーす!」
そ、そんなバ(ぱくっ)

NEXT→「たまにはこんな日も」
131名無し物書き@推敲中?:2006/06/11(日) 02:02:52
目と目で通じ合う、という言葉がある。
結婚生活十五年目を迎えた僕と妻も既にその域に達している。
目を見れば相手の考えが分かる。己が何を言われているのか。

その夜の僕と妻はテーブル越しに座って目と目で火花を散らし、静かに罵り合っていた。
甲斐性なし、と妻が嘲る。安月給の癖に風俗ギャンブル狂いのチンカス野郎。
このトド、と僕は悪態を吐き返す。少しは痩せろ、日がな一日食っちゃ寝の鬼婆ァが。
相手が何を言いたがっているのか。とてもよく分かる。だが明確な発声で聞くのと違い、
ひたすら押し黙って目に憎しみを込め睨んでいるだけならば角も立たない。
これが夫婦円満のコツ――と、しかし僕ら夫婦は何も悟ったわけじゃない。
仲良く同じ風邪を引いて、共に喉をやられ、全く声が出なくなってしまった。
ただそれだけだった。
だから常になく今夜の我が家には静寂が満ちている。
だが目で雄弁に物を語り合っているわけだから、それはいかにも空々しい。
しかし、太った妻の金切り声を聞かずに済むだけ心は束の間の休息気分だった。

NEXT→「茶色い山」
132名無し物書き@推敲中?:2006/06/13(火) 21:26:39
真っ赤だ。山一面が真っ赤だった。
俺は「見事な紅葉ですねぇ、山が羞恥に染まっているようだ!」と、
可聴域ギリギリの高音で叫んだ。すると、
通天閣Tシャツに茶色いシミをつけた男が「いえ、茶色です。うこんとうんこの中間ぐらいの」と呟いた。

またか。またなのか。俺は溜め息を吐く。
最悪の同行者だ。この男、先ほどから何を見ても茶色いとしか言わない。まったくふざけている。
ストレスで胃に少量の空が作られたのを感じ、俺は靴下にしのばせていたニンジンを取り出し、齧った。
咀嚼しながら隣をみやると、通天閣男はチョコレートと赤味噌を両の手に持って、交互に啄ばんでいる。

こいつの底が見えないほどに茶色い瞳の秘密はそのド腐れな食生活にあったのか。そりゃ世界も茶色く見えるはずだ。
唾棄する思いで鼻を鳴らし、俺は山麓の売店で買ったトマトジュースを喉に流し込んだ。

次は「コンビニから揚げ戦争」
133名無し物書き@推敲中?:2006/06/13(火) 23:56:21
感想レスありだったらもっと伸びるのかな、ここ
いや、淡々とSSがのっけられていくストイックさがいいのかもしれないけど
134名無し物書き@推敲中?:2006/06/14(水) 00:52:13
史上3番目の唐揚げブームがやってきた。
巷の老若男女が、こぞって唐揚げを買い求めた。
そのブームに便乗しようと、コンビニ数社が唐揚げ事業を拡大しはじめる。

まず、それまで多くても5種類程度だった味のバリエーションを増やした。
最低でも10種類、多いところでは「選べる100テイスト」を売りにした。

驚くべきことに、唐揚げの売上げだけで、1日の売上げが100万を越えた。
いわば、唐揚げさえ売っていれば、他の商品が売れなくても経営が成り立った。

次に、そんな唐揚げ需要を見込んで、コンビニ事業の新規参入が増えた。
飽和状態だと思われていた寡占が崩れ、一気にコンビニ戦国時代が訪れる。

そうなってくると、唐揚げの材料である「鶏肉」が不足する事態が発生した。
今や、世界の92%の「鶏肉」は、すべて日本が輸入しているのだ。
仕方がないので「牛」「豚」はては「馬」「鹿」などを用いた新商品を開発した。

「鶏肉」の不足により、もはやブームもこれまでかと思われた。
しかし、終息するどころか、唐揚げブームはさらに加速していった。

世界の肉という肉は、全て日本に集中した。
とうとう「カエル」まで原材料にした唐揚げまで出現した。
それでも、唐揚ブームは終わろうとはしなかった。

あー、もう続き書くのマンドクセ。
135名無し物書き@推敲中?:2006/06/14(水) 02:51:47
「あー、もう続き書くのマンドクセ」
パソコンのモニタには、全画面表示されたWordが映っている。
タイトル部には「10野菜ヘルシー唐揚げ」とあった。

俺の仕事は、他人が面白いと思うもの、他人が喜ぶもの、他人が旨いもので、
さらには作るのがすごく楽で安価にできるものやその手段を探し出すことだ。
いまや、誰も彼もが「唐揚げ」を作っている。
それじゃあダメだ、同じことをしたって、結局チキンレースだ。
だから、肉の代わりに誰もまだ目を付けていない野菜や植物油を使用し、
健康によい唐揚げを世に問うべきなんだ。
けれども、今のところどのコンビニも「野菜唐揚げ」を売ったことはない。
だからこの提案は多分捨てられる。

次は、21回目のボツだな。
彼はそうつぶやくとオフィスチェアの背もたれに体を預け、溜息をついた。



次「人肉」
136名無し物書き@推敲中?:2006/06/14(水) 08:25:24
それにしても、無名草子さんたちとは、さぞやすごい作家先生の匿名書き込みなんでしょうね。
作家なんて才能が全てだから、津井ついみたいに、いくら努力したって駄目なものは駄目ですよ。
私なんか、早々に見切りをつけて趣味の世界で細々ですから。
          小説現代ショートショート・コンテスト優秀賞受賞 阿部敦良
137名無し物書き@推敲中?:2006/06/18(日) 20:12:34
 どこかの伝説によると、ザクロという果物は人肉の味がするらしい。
 一体誰が言い始めたのか。聞き齧った話によると雑食性の動物――例えば人間等の肉は臭みも癖も強く、とてもじゃないが美味とは言えないらしいのに。
そりゃ、所詮伝説上のお話だもんな。でも、もしも人の肉があの甘い果実と同じ味なら食べてみても良い気がしてきた。ザクロは結構好きな食物の部類に入る。
ああ、そういえばこの頃食べてないな、ザクロ。昔、子供だった時によく母が買ってきてたっけ。俺が好きなのをちゃんと知っていてくれていたのか。
学校帰りに冷蔵庫を開けると剥いて切られたザクロが入っていて、そのまま手でつまみ、口に運ぶ。白い果肉に歯をたてると甘い香りが口中に広がった。そう、こういう具合に……。

ひどい吹雪に見舞われ続け、ここに立往生して何十日経ったか。もう食料も底をついてしまい、食えそうな物といったら一緒に遭難し、俺一人残して寒さにやられた人間の死体たち……。
次のお題「アルコール」
138名無し物書き@推敲中?:2006/06/20(火) 04:43:11
「……で」
「で〜?」
「深夜に保健室で誰が騒いでるかと思えば、あんたらか」
「秋山せんせ〜も、飲みます〜?」
「飲みません。ほら、春野先生しっかりして下さい。
 こんな不良教師に付き合うから、こんな所で酔っ払う羽目になるんですよ」
「不良教師とは失礼ね、秋山〜」
「やかましいわ。どこの世界に、飲み足りないからって学校に忍び込んで、
 保健室の冷蔵庫漁る教師がいるんだ。ってか、何でビールなんかあるんだよ、ここ!?」
「化学実験室の薬用アルコール飲まなかっただけ感謝しろ〜」
「するか! そこも何脱ぎだしてるんですか!?」
「だって〜、暑いの〜」
「やっはー、秋山セクハラ〜」
「黙れそこ! 明日絶対公開するぞ、あんたら…
 …くそ、何でよりにもよって、宿直日にこの人らは」

次「走るレストラン」。
139名無し物書き@推敲中?:2006/06/22(木) 00:37:13
この町にはうまいレストランがあるらしい。
ウマイのだからさぞかし値段も高いのだろう。俺は愛車のカローラUに乗りながら財布の中身を確認した。
所持金は十万。これならどんな店でも行ける。
俺はアクセルを強く踏み、レストランのある峠に来た。

峠は一本道で迷いようが無いので俺は車を乗り進めながらレストランを探すことにした。

しばらく走ったが一向にレストランがある気配が無い。俺は不思議に思いながらも車を走らせ続けた。
すると不意に背後に車のエンジン音が、やけにデカイ。俺は目を凝らした。
「あ、アレはレストランだ!!」俺は驚愕した。
「あんなデカイ車体でこの峠を走ってきただって?ありえない!なんて運転がウマイレストランなんだ!!」
レストランのテクに見とれて前方を確認していなかった俺は崖の底に転がり落ちながら叫んだ。

次「手にかいた汗」
140名無し物書き@推敲中?:2006/06/22(木) 02:13:15
人気のない真夜中の十字路で、秋田犬の姿をした死神に出会った。
「君を迎えに来た」
「そっか」
手のひらの汗をジーンズの腿で拭って、僕はギターをケースにしまった。
「…何考えてる?」
「君が悪魔だったら、僕にも新しい音楽が作れたのかな、って」
「さあ、どうだろうな」
 毛むくじゃらの口の端を器用にひん曲げて、死神は笑った。

次、『マンホールと幽霊』
141名無し物書き@推敲中?:2006/06/27(火) 23:11:47
むかしむかし・・・でもありませんが、ある街に1つのマンホールと1人の幽霊がいました。
ある日のこと、2人(?)はどちらが人間を驚かすことができるか勝負することになりました。
「よし、まずはぼくからだ!」
幽霊は地面をすり抜けてこっそりと人間に近付いていきます。
突然目の前に現れて人間を驚かそうというのです。
「う〜ら〜め〜し〜や〜」
「・・・・・・」
ところが、人間は何事もなかったかのようにすたすたと歩いて行ってしまいました。
「あぁ、やっぱりぼくのすがたはふつうのにんげんにはみえないんだ・・・」
人間を全く驚かすことのできなかった幽霊はがっくりと肩を落としました。
「よし、つぎはぼくのばんだね」
マンホールはその場でじっと人間がやってくるのを待ちます。
「いまだ!」
そして人間がマンホールの上を通ろうとした瞬間、サッと蓋を外してしまいました。
人間は幽霊と違って地面のない所には立つことができません。
「ぎゃあああぁぁぁ・・・!!」
そして、人間はものすごい悲鳴をあげながら暗闇の中へ落ちていきました。
「ふふん、どうだい? すごい驚きようだったろう」
「いやぁ、やっぱりマンホール君にはかなわないなぁ」
こうして、このマンホールは人間たちに「呪いのマンホール」と呼ばれ恐れられるようになったのです。
めでたしめでたし?

次のお題、「晴れのち隕石」
142名無し物書き@推敲中?:2006/06/27(火) 23:13:49
age
143名無し物書き@推敲中?:2006/07/03(月) 04:15:26
部屋の隅で、玲菜は泣いている。
僕は静かに窓の外を眺めている。外は霧雨。それはやわらかく、そして冷たい。
付けっぱなしのテレビから、抑揚の無い声でニュースが流れている。

気づけば、僕は…彼女を呼んでいた。
「玲菜」
鼻を小さく啜りながら、玲菜は泣きはらし赤くなった瞳をこちらに合わせた。
「…?」
まるで子猫のように首を傾げてみせる玲菜。結局、僕は彼女の事が他の何よりも愛おしいという事実を否定し続けてきただけなのだった。
…肯定してしまえば、それは同時に僕にとって最も辛い果てをもたらすものだったから。
「玲菜」
しかし、やはりそれは何か違うと思った。僕はもう一度彼女を呼んだ。
「…愛してるよ。ずっと一緒に行こう」
玲菜の頬に、先程とは違う涙が伝う。彼女は微笑みを僕にくれた。
「…ありがとう」

144名無し物書き@推敲中?:2006/07/03(月) 04:16:06
↑続きな

―玲菜は僕の隣で静かな寝息を立てている。
僕は窓の外を眺めている。外は雲一つない春の青空だ。それはあたたかく、そしてやさしい。
付けっぱなしのテレビから、抑揚の無い声でニュースが流れている。
「皆さん。今日までありがとうございました。我が局はこの時間を持ちまして、最後の放送を終了したいと思います。件の隕石が地球に衝突するまで後数十分。最後くらいは大切な人の傍で……」

長文ごめんw 次『死んだ彼女』
145名無し物書き@推敲中?:2006/07/03(月) 04:51:37
それにしても、無名草子さんたちとは、さぞやすごい作家先生の匿名書き込みなんでしょうね。
作家なんて才能が全てだから、津井ついみたいに、いくら努力したって駄目なものは駄目ですよ。
私なんか、早々に見切りをつけて趣味の世界で細々ですから。
          小説現代ショートショート・コンテスト優秀賞受賞 阿部敦良
146名無し物書き@推敲中?:2006/07/04(火) 00:56:06
死んだ彼女が生き返った。ただそれだけ。

とりあえず次、『孤独のかけら』
147名無し物書き@推敲中?:2006/07/04(火) 02:01:57
 新宿2丁目で拾った孤独のかけらをプランターに埋めた。
育て方の参考にしたホームページには、
「決して日には当てずに、明け方3時に水をやる。それだけで、立派な孤独が育ちます」
と、書いてあった。
 日の光を遮る為に1日中部屋のカーテンを閉め、明け方3時に起きる為に仕事の後の付き合いもやめた。
 そうして気付いた時には、僕は本当に孤独になっていた。 
 結局プランターからは何も生えては来なかったけれど。

次、『昨日の今日』
148名無し物書き@推敲中?:2006/07/05(水) 19:50:36
明日を映しだすカガミを手にいれた俺は驚愕した。
そのカガミには、信じられないほどの不幸にみまわれる自分が映っていたからだ。
次の日、俺は昨日の自分に向かって叫んだ。
「見るな! 見たら、今日と同じになる!」涙が溢れだした。――「今日と同じ悲しみに、うちひしがれる……」

次のお題[三角ぺろりでオッパイぽろり]
149名無し物書き@推敲中?:2006/07/05(水) 20:55:10
彼女の水着姿は素晴らしかった。
豊かな胸を隠す生地の三角形が眼鏡レンズほどの大きさしかないのだから。

自分に集まる熱い視線を意識して、ゆっくりと見回す彼女が挑発的にビキニの布地を指でつまむ。
ぺろんと剥いた。歓声が沸きあがるかと思いきや、観客席からブーイングが飛んだ。

「ぽろりしたってちっともエロくねえぞ!もう一回隠せ!隠せ!」

いざ外されると、あってもなくても違和感がなかったことに対する客の不満だった。
元から裸であったかのような彼女の生地が少ない水着は
そこを隠すのが極小の三角形だからこそ、興奮をかき立てられる。

スポットライトの中心に立つストリッパーはつんと顎を上げて再び胸をビキニで覆う。
おお、と走ったさざなみのような興奮のどよめきに馬鹿じゃないのと言いたげな目を向けた。

次のお題「キンカン」
150名無し物書き@推敲中?:2006/07/06(木) 16:19:43
彼女の水着姿は素晴らしかった。
豊かな胸を隠すのはキンカンのような大きさの橙色の丸い物体しかないのだから。

自分に集まる熱い視線を意識して、ゆっくりと見回す彼女が挑発的に胸の物体を指でつまむ。
ぺろんと剥いた……かと思いきや、剥かない。観客席からブーイングが飛んだ。

「なにやってんだ!早くぽろりしろ!ぽろり!ぽろり!」

「なに言ってんのよ。私は最初から裸よ!」

観客席は一気に静まり返った。


……すまん。もちろんお題続行で。
151名無し物書き@推敲中?:2006/07/13(木) 14:07:38
薬液を満たした茶色い壜。適度に重く、握ると冷たくてすべっこくて気持ちがいい。
指の爪で弾けばキン、カンと涼しげな音色も奏でる。
これぞ夏の風物詩。虫刺されの際にご使用下さい。

次題「火の車」
152名無し物書き@推敲中?:2006/07/13(木) 19:09:52
無理して高級車を買ったら、我が家は火の車。

次のお題[さみしい筋肉]
153名無し物書き@推敲中?:2006/07/13(木) 21:39:21
私のマスターの命はもはや無い。
しかし、マスターは私に動けと言っている。
私の周りにはもはや同僚なぞいない。
みな青黒く、動くたびに汚らしい音を立てる。
なぜ、この私だけが・・・このように仕事を
しなければならないのか・・・?

私はたった一欠けらのさみしい筋肉。
私のマスターはすでに生ける屍と化し
古い洋館をさまよっている。

次「赤い光と陽太君」
154 ◆RelMnLZ5Ac :2006/07/18(火) 18:46:17
 赤い光と陽太君は仲良しでした。
155名無し物書き@推敲中?:2006/07/19(水) 03:31:18
ぼくには陽太君という友達がいる。
ぼくらは学校が終わるといつも近所の公園へ出かけて、日が暮れるまで一緒に走り回っていた。
時には喧嘩したりもしたけれど、ぼくらはいつも一緒だったんだ。
けれど、ある日陽太君は赤い光につれて行かれてしまった。
ぼくも必死に追いかけたけど、赤い光はとても速くて追いつけなかった。
だから、ぼくはあの公園で陽太君を待つことにしたんだ。
近所の人はそんなぼくのことを「えらいね」って誉めてくれるけど、おとうさんとおかあさんとおばあちゃんは泣いていた。
どうしてだろう?
まあいいや。
陽太君、早く帰ってきて。
そしてまた一緒に走り回ろうよ。

次のお題、「大きな杉の木の下で」
156名無し物書き@推敲中?:2006/07/19(水) 07:56:54
 雄司とわたしは大きな杉の木の下に来ていた。杉って言うと、大量に植林されて無駄な枝を切り落とされた背
の高いスコップみたいなのが並んで立ってるのを思い浮かべるかもしれないけど、そこはもとから植林なんてで
きないほど茫々に草木が生い茂った荒れ山。そこには植物に半分食べられてる古い家なんかもあるけど、ちょっ
と歩けば立派な道路も走ってて、そういう中途半端な自然っていうのは近代っ子が外で遊ぶには格好のスポット
で、ちょっとしたスリルを味わってきゃーきゃー言いながら人のいる空間に戻ってくると妙にほっとして、気分
があったかくなったりする。そんな天然の遊園地のアトラクションのひとつである杉の木は、手入れをされてな
いから低いところまで枝が生えてるし、木の下から遠くまで離れて、木々のもこもこからちょんと突き出したと
んがり頭を見ないことには杉だということも信じられなかった。
 雄司は近くの枝に手をかけてするすると杉の木を上っていった。いつもよりちょっとだけ心配になったわたし
がやめようよと声をかけるが、雄司は聞こえていないのか無視しているのか黙々と上り続け、ついにはてっぺん
にまでたどり着いてしまった。わたしは杉の下から離れて、遠いところまでいってから杉の木を振り返る。
 てっぺんでは雄司がお母さんに抱っこされるみたいにして杉の木の頂上にしがみついていた。その姿がちょっ
と変に見えたのは、雄司が必死だったからかもしれない。杉の木は風も吹いていないのに雄司の重みでゆらゆら
して、おかしいくらいにひん曲がっていた。わたしは口の中であ、とつぶやく。
 風が吹いたのかもしれなかった、杉の頂上は一気にしなったと思ったら、そのまま上に向き戻らずにここまで
聞こえるばぎりという音を立てた。雄司の体は折れたとんがり帽子にしがみついたまままっさかさまに落ちてい
き、もこもこの葉の中に消えた。
157名無し物書き@推敲中?:2006/07/19(水) 07:57:45
 わたしは急いで木の下に戻った。杉の根元には、服中にちぎれた杉の葉っぱをつけて、折れた杉のてっぺんを
抱いたままの雄司が寝転がっていた。雄司はぴくりとも動かなかったし、頭の上半分がすごく普通じゃないくら
いに青かった。雄司を見ているわたしの中にはなにか冷たい水のようなものが流れていて、ぐるぐると循環しな
がらわたしの体温を下げていった。わたしは思い出した、ここの近くに走っている道路のことを。
 わたしは植物に埋まった家を大回りで避けながら道路へと向かった。遠くから木々に隠れて見えない車の走り
抜ける音だけが聞こえてきて、わたしはほっとした。灰色のアスファルトが見えたときには疲れていた足がいつ
の間にかまた走り出していた。わたしが森を出て道路に立つと、右から凄い勢いで大型の車が直進してきた。
 一瞬、雄司の青黒い顔がわたしの目の前に蘇った。
 丸木のままの木材をゴムで車体に縛りつけた大きなトラックは、風の塊だけをわたしにぶつけてそのまま走り
去っていった。左右の白いラインをほんの少したりともオーバーせずに。
 わたしは、自分が帰って来たという満足感で大きく息を吸った。排気ガス臭いけどとってもおいしかった。
わたしはとても良い気分で家路についた。今日の感動はきっと忘れられない。生きている、というのがどのよう
なことか、そのときのわたしほどよく理解している人間はいなかっただろう。

次のお題「お笑い好きのちゃぶ台」
158名無し物書き@推敲中?:2006/07/20(木) 05:08:31
ロバートは一人チャイナタウンをさまよっていた。
「私中国人いいものあるよ」中国人が手招きする店に入ると怪しげな骨董が。
「あなた、株で大損したね」ぎくりとしてロバートが後ずさりすると、茶ぶだいにぶつかった。
「それちゃぶ台。日本製よ。メイドインジャパン。あなたが気に入った見たいあるね」
ロバートは自殺をやめ、ちゃぶ台を家に喪って帰った。(願いがかなう茶舞台といっていたが・・)
つけっぱなしのコメディを見てちゃぶ台がカタカタ鳴り出した。視聴者が笑うところで一瞬間をおいて鳴り出す。(日本製ということか)
カタカタなるたび、お金がちゃぶ台に現れる。メロドラマはだめ。コメディのときのみ。
「お父さん」メアリーが帰ってきた。「それなあに」「これは・・」(その子がほしい・・)ロバートはガソリンを持ち出しちゃぶ台にぶっ掛けた。
燃えない。くそ、のこぎりを探しに地下室へ。戻ってくるとメアリーが泣き叫んでいる。メアリーの背中にちゃぶ台がくっついている。
「ジャップめ。くそ、サルが娘から離れろ」しかし離れない。メアリーは、亀のようにちゃぶ台を背負ったままだ。
「こういってはならんが、亀のようだなメアリー」カタカタカタカタ。ちゃぶ台のつぼにはまったようだ。ドルが山となって振ってきた。
「悪いがメアリーそのままあるいてごらん、ゆっくりと」カタカタカタ。ドルがドルがドルが。
「これが日本人なのか、よくわからんな」ちゃぶ台はメアリーから離れた。その後ロバートは日本を勉強した。ちゃぶ台返しとかやると、ちゃぶ台は大いにカタカタなった。
「それちゃぶ台返し、ちゃぶ台返し」ロバートは金持ちになった。
次のお題は「悲しい両想い」
159名無し物書き@推敲中?:2006/07/20(木) 10:26:33
蠅がブンブン飛び回ってます。
餌を与えないで下さい。
蠅は残飯が大好きで、いつも飛んできてたかります。
でも頭がテラワル杉なので、間違えて蟻にも飛んできます。
本当は、好きなくせに……。

蠅と残飯、本当は両思いwwwwww
wwwっうぇwwwww
プケラ
160名無し物書き@推敲中?:2006/07/20(木) 10:49:08
次のお題は「蠅と残飯」
161名無し物書き@推敲中?:2006/07/21(金) 15:24:29
「ブンブン、ブンブンうるせぇ蝿だ。おれにたかるんじゃねぇ!」
「うぁ、臭ぇなあ。てめぇこそ、おれの目の前から消えろや、残飯!」
「なんだと、この野郎!」
「なんだ、やるってか。おら、かかってこいよ!」
こうして今日も、蝿さんと残飯さんは互いに求め合います。
蝿さんには残飯さんが必要であり、残飯さんも蝿さんがいないと寂しいからです。
はにより二人は似たもの同士なのです。
本人たちは、気付いていませんが……。

次のお題[禿げあがるほど好き]
162名無し物書き@推敲中?:2006/07/21(金) 20:18:18
「なんてきれいなところだ」
宇宙船コンラッド号のクルーはたった今新たに発見した惑星に第1歩を記したところである。
緑豊かな星だった。彼らのボセイはすでになく、コンラッド号のコンピューターにかつての姿が映像
として残っているだけだった。それでも、もちろんクルーたち全員その姿を心の奥底に刻み込んでいた。
「よく似ている。われわれの星と」
「オオ、モンチッチまでいるぞ」クルーの一人コンラッド15世が叫ぶ。アナライザーのマリアが彼らに近づく生き物を捕獲し分析する。
「これはモンチッチとは全然別の生き物。体毛に覆われているわね。モンチッチの背中はうろこよ。似てなくもないけど、もっと高度な生き物だね」
「そうか。これペットにしていいかな」15世の提案をクルーたちは賛成した。彼らはこの星を第2の故郷とするべく開拓をはじめる。
彼らの苦闘は10年続いた。ある日衝撃的な発見があった。マリアがこの星に近づく隕石を見つけたのだ。
脱出するしかない、ここまできての撤退と再び始まる漂流。クルーたちは何度も議論を重ねた。しかし出発するしかなかった。
すっかりクルーたちとなれたあの動物もおいていくことになった。
「ウキキ、キキー」動物は悲しそうに鳴き15世にぶら下がった。
その様子を宇宙船のデッキからマリアとゴーラが見つめていた。
「いいのかよ、ここまでして」ゴーラはマリアに詰問する。
「うそをついてでも、コンラッドとあの動物とを離さないと」
「あの動物って・・・ちゃんとモン美って名前が・・・」
宇宙船は再び空に舞い上がった。
地上に残されたモン美。
「ウキーウキキー」
(ああ、好きよ。好きだったのよコンラッド・・)
モン美の体毛が悲しみのあまり白くなり、抜け始める。
これは今から2千万年前の地球という星の出来事だ。
毛のないサルの祖先である。
次のお題は「どこかとつながった翔太の心」
163名無し物書き@推敲中?:2006/07/29(土) 21:25:45
翔太はある日から突然別の人と心を共有するよになった。
始めは男なのか女なのか分からなかったが、
次第にお互いのことが分かるようになっていく。
相手の名前はサラというらしい。
彼女は心を通じて翔太の周りの世界を見せて欲しいといい、
翔太はそれを快く承諾した。
けれど、翔太がいくらサラにお願いしても、彼女の心の奥底は
決して見せてくれなかった。
そんな二人の心の共有はある日の深夜、突然終わりを告げる。
夢の中で翔太はサラの姿を始めて感じ取った。
可愛らしく、背の低い、黒人の女の子。
しかし、その瞳には涙を湛えており、翔太はそれを尋ねた。
だが、彼女はそれの問いには答えず彼女は「ありがとう」と言い残し、消えた。
翌日の朝刊。翔太が国際面を見ると、
パレスチナで空爆、民間人一人死亡というニュースがあった。
彼はその時、ようやく彼女が心の一部をさらけださなかった理由が分かり、
大声で天に向かって泣き声をあげたと言う。

次「残された赤い靴」
164名無し物書き@推敲中?:2006/07/30(日) 08:42:18
物語の舞台はとある日ある時ある国の城。
12時の鐘の余韻が残る中、階段にたたずむ王子様の手には1足の赤い靴。
後日、王子様はあの残された赤い靴を手がかりに・・・って、赤い靴!?
「あー疲れた。 さすがにこの格好で全力ダッシュはきついわね」
ちょ、ちょっと、何なんですかあの赤い靴は!?
「あーあれ? 逃げる途中にいた酔いつぶれてる女の人からかっぱらってきたのよ。 彼女もツイてるわね。 玉の輿よ、玉の輿」
だからなんで他人の靴なんか置いてきたんですか!?
計画ではそのガラスの靴を置いてくるはずだったでしょう!
「だってこの靴ガラスでしょ? あんなとこで放り投げたりしたら割れちゃうわ。 こんないい品なんだからもったいないじゃない」
し、しかし、あなたも王子様のお嫁さんになりたくて来たんでしょう?
「やーねぇ、こんな機会めったにないから気分転換に来ただけよ。 そもそもアタシは王女様なんてガラじゃないしね」
そう言ってシンデレラはけらけらと笑う。
まさか、この人最初からこうするつもりで・・・
「それに、アタシがいなくなったらあの家は誰が守るのよ? お母様もお姉様たちも家事どころか食材の買出しだってロクにできやしないんだから」
そ、それじゃあ、あなたは結婚もせず一生あの継母たちの面倒を見るというのですか!?
「そーねぇ・・・アタシと一緒に家事してくれる人なら考えてみてもいいかしら」
お、王子様より家政夫さんを選ぶなんて・・・
「ありがと、今夜は楽しかったわ。 それじゃね」
そんなぁ・・・

師匠、どうやらこのシンデレラはかなりの変わり者だったみたいです・・・



次のお題、「ひなげしの咲く頃に」
165名無し物書き@推敲中?:2006/08/11(金) 22:16:44
 油蝉の鳴く声が頭の中にこだまする。
こんな夏真っ盛りと言える日は庭の草花も大変だ。
僕は暑さに苦しむ草花の抗議の声を心の中で聞き、急いで庭に飛び出した。
庭には黄色、緑、ピンク色の薄い花弁が咲き誇っていた。ポピーだ。
僕の大好きな花。そうか、ひなげしの咲く頃になったか。
「お父さん何しているの」子供が声をかけてきた。
庭にボーっと突っ立ている僕を見て、不審に思ったようだ。
 そのとき、僕はほかの草花の事を忘れ、あることを思い出そうとしていた。
美しい色合いとその弱弱しい姿。思い出した。3羽のカラーひよこ。
166名無し物書き@推敲中?:2006/08/11(金) 22:20:11
 10年前の夏のある日、小さい僕は一人でバスに乗って
田舎のおじいさんの家に向かっていた。
 僕の席のすぐそばに色つきひよこを抱えたおじさんがいた。
小さい僕は、おじさんの許可を得て、ひよこを触らしてもらった。
ひよこが糞をしてそれが僕の服についた。おじさんは謝って僕に3羽のひよこをくれた。
ひよこのおじさんは僕より前のバス停で降りていった。
 かつて縁日ではカラーひよこが売られていた。
僕のもらったのはその売れ残りだった。黄色、ピンク、緑のひよこたち。
 ひよこを抱えておじいさんの家に着いた僕は
相談しておじいさんの鳥小屋で育ててもらうことに決めた。
 田舎のおじいさんは大きな鳥小屋を持っていた。
孔雀や雉やインコや鶏や鴨など今じゃ考えられない鳥たちがわさわさすんでいた。
 数ヶ月が経過して、ひよこたちを見に行くと、黄色が一羽しか残ってなかった。
僕はおじいさんとけんかした。
色つきひよこは仲間たちのいじめにあったという。
 最後の一羽を僕は引き取り、籠に入れて自分の家で飼い始めた。
雌だった。えさをやり糞の掃除をして、生き残りのひよこは立派な雌鳥となった。
数ヶ月が経過したのちのある日、学校から帰った僕は鶏がいないのに気づき母親を問い詰めた。
肉屋に売ったという。くさいしうるさいと言うのが理由だった。
そんなことがあるのだろうか。肉屋は本当に・・・・・・。小さい僕はわけがわからなかった。
「お父さん何しているの」子供が声をかけてきた。
 油蝉の鳴く声が頭の中にこだました。

次のお題「砲台付き山手線」
167名無し物書き@推敲中?:2006/08/29(火) 19:10:32
砲台付き山手線は死んだ 完

次のお題「ペニスの繁栄について」
168名無し物書き@推敲中?:2006/08/29(火) 23:41:09
「だらしのないおちんちんだこと」
そう言いながら彼女が僕から切り取ってトイレに流したペニスが地下鉄半蔵門線のどこかで
繁栄しているところを発見されたというのは嘘だ。

次「温泉キャンディー」
169名無し物書き@推敲中?:2006/08/30(水) 01:37:56
車の窓から顔を覗かせると何処か古風な建物群が見えてきた。、その中に白い煙があがっている。
別に火事ではない、温泉の煙だ。
そして風に乗って運ばれてくる硫黄の臭いが悪臭と言う形の悪いもので鼻腔を刺激する。
この温泉原産地独特の臭いは嫌いだ。硫黄の臭いが好き、という人もあまりいないだろうけど。
僕の家では年に一度、夏休みを利用して、家族総出で温泉旅行に行く。
祖父母、2歳年下の弟、父、母、そして僕の合計6人だ。
その中で僕は、僕だけはあまり乗り気じゃない。
そもそも温泉というもの自体、あまり好きじゃない、場所によって、とんでもなく暑かったり臭かったりするからだ。
老人は熱いのが好きらしいと言う話を聞いたことがある、その証拠にうちの祖父母は
「あっつい温泉に入ろうねぇ〜」
なんて後ろの後部座席から僕の気持ちも考えずに気安く話し掛けてくる。
若い僕にはさっぱりわからない。ゆでダコにでもなってろ。
「お兄ちゃん。」
なんとなく気分が沈みかけたころ、隣に座っていた弟が唐突に話し掛けてきた。
「温泉キャンディー食べる?」
何だそれは、と思った。
温泉卵や温泉まんじゅう、と言ったそういう類のものだろうか?
しかし聞いたことがない。
そう言う弟の手にはいつのまにかキャンディー・・・のようなものが握られていた。
「おいしいよ。」
温泉キャンディー。名前だけ聞けば少し不気味だ、キャンディーの何がどう温泉なのだろう。
でも満面の笑顔でペロペロと一心不乱にそれを舐める弟の顔を見れば、少しは興味も出てくる。
「それ1つくれるか?」
「はい、どうぞ。」
弟からそれを受け取ると、恐る恐る口に運んだ、「温泉」だから。
「うまい・・・」
それは予想外に今まで食べた、否、舐めた、どんな物よりもうまかった。
それ以降、僕は温泉が好きになった。
風呂上りの温泉キャンディーがまたたまらないのだ、風呂上りのカルピスなんて外道だ。
時代は今、まさに温泉キャンディーへと移りあがろうとしている。

次のお題「アイスを愛する愛の巣」
170名無し物書き@推敲中?:2006/08/30(水) 08:11:54
私の妻は無類のアイス好きである。
そして私たち夫婦は深く愛し合っている。
そこで私は考えた。
私の性器を凍らせて妻に与えれば、妻は私とアイスを同時に味わうことができる。

問題はその方法である。
切り取って凍らせるのは却下。痛いではないか。
液体窒素ではおそらく冷たすぎてもたないだろう。
あぁ……勃起した状態で凍らせねばならないのも難題だ。
悩んだ私はふとTVを付けた。
白衣を着た怪しげな教授が「この水を振ったら氷になります」と言っていた。
「これだ!」
私は吠えた。

水では味がないのでカルピスと精液を混ぜ合わせた過冷却状態の液体を用意し、
その中で私の象徴をシェイクする。できた…・・・。
私は歓喜して妻を呼んだ。あぁ喜ぶ顔が目に浮かぶ。
しかし妻は私に一言だけ残して去っていった。
「いくらなんでもソレはひくわ……」

次のお題「バケツプリンの夢と富士山」
171名無し物書き@推敲中?:2006/08/31(木) 21:46:26
>>168
ワラタ
172名無し物書き@推敲中?:2006/08/31(木) 22:31:44
「悪いけれど」私は冷たく言い放った。「あまり食べたくないわ。ごめんなさい」
「どうして?頑張ってつくったのよ。一口でもいいから食べてよ!」
「自分で食べればいいでしょう。そんな気持ちの悪いものなんて食べられないわ」
「そんなのひどいわ。私は一生懸命つくったのよ、このままだと見てくれは悪いかもしれないけれど…ほら、ちゃんとお皿に盛れば富士山のように―」
「しつこいわね!そんなもの食べたくないんだったら!」
私が怒鳴ると、彼女はそれ以上何も言わずに、しゅんと肩を落として部屋を出て行った。

私がバケツプリンに興味を示さなかったことで、彼女はひどく落ち込んでいた。
「あなたにバケツプリンを食べてもらうのが夢だったのよ」と彼女は言った。
今に思えば、多少がまんしてでも口をつけるべきだったのかもしれない。
しかし、テカテカとした水色のバケツいっぱいに入ったクリーム色のプリンを見たとき、
私はその物体にあからさまな嫌悪感を隠せずにはいられなかったのだ。

次「愛のないセックスと大学のキャンパス」
173名無し物書き@推敲中?:2006/09/01(金) 06:31:31
――ねえ、私たちの関係ってさ、愛がないわよね。
まったく、無駄にお喋りな西八号棟西棟であった。
この場合の「無駄」というのはつまり、相手に対してなにかしらを伝えようとする配慮
が足りない言葉のことである。
つまり私は西八号棟西棟が欲求不満にあるのだなというところまでは分かっても、具体
的にどうして欲しいのかが分からない。
これだから文系の建物は困ると愚痴を溢せば陰に潜んだ経済系西七号棟が聞き耳を立て
ていたりするものだからたまらない。
だいたい愛があろうとなかろうと関係ないではないか。
私の二階から四階の西側部分はがっしりとした渡り廊下でもって西八号棟西棟と深々と
交接しており、重機か天変地異でもなければ揺れることも離れることもできない。
そんなことを云うとこいつは「つまんなーい」とかフザケた返答をしやがる。

――ねえ、私たちの関係ってさ、体だけじゃないわよね?
まず、同意して欲しいのか否定して欲しいのかを枕詞にしてから、そういう台詞を吐く
べきだと私は思う。
つまりは肉体的に満たされないものだから精神的云々、というやつだろう。そういう話
は西七とやってろ。

と、思っていると地面が揺れた。実に一ヶ月ぶりか。
私は全力で体を揺らした。
結合部がギシギシと音を立て、私は絶頂に達しありったけの子種を彼女に注ぎ込もうと
する。
しかし悲しいから今日は夏休みの真っ最中、がらんどうの体内から西棟玄関に向かう子
種は思いのほか少なかった。

三十秒は動き続けたと思う。私が深い深呼吸を繰り返していると、珍しく先に復活した
西八号棟西棟が言った。
――もぉ、愛が足りなぁい。
うるせぇ。

次「不幸にして田んぼ」
174名無し物書き@推敲中?:2006/09/02(土) 02:31:35
「今日、社会でね、焼き畑農業っていうの習ったんだ」
今年で10歳になる娘が、目を輝かせて言った。
「家でも出来るかな」
可愛い娘の希望に答えてやりたいのはやまやまだが、我が家の広大な土地は、この春から全て水田にしてしまった。

次、『相互不愉快』
175名無し物書き@推敲中?:2006/09/02(土) 21:01:35
「相互不愉快論というものがある」
「なんですかそれは」
「君のオマンコを見せてくれないかい」
「死ねよ変態」
「こういうことだ」
176名無し物書き@推敲中?:2006/09/03(日) 07:45:52
このスレオモロイ
>>175
お題は?
177名無し物書き@推敲中?:2006/09/03(日) 20:22:42
つ『半田鏝カレンダー』
178名無し物書き@推敲中?:2006/09/28(木) 03:45:54
先日やってきたセールスマンに、はんだごてカレンダーなどという
珍妙なアイテムをすすめられた。
それはいったいどんなものかと尋ねたところ、はんだで点字を打っ
たカレンダーだと彼はいたってシンプルな説明をした。
目の不自由な私にとってインクで刷られたカレンダーは用をなさな
い。そのため点字を打ったカレンダーは生活の必需品だといえる。
ただ、私はもう市販の点字付きカレンダーを以前に購入していた。
それを彼に伝えると、彼は熱く語りはじめた。
「メクラにインテリアを楽しむ権利がないなんて法はないでしょう?
このはんだごてカレンダーは当然点字の部分が銀色です。オシャレ
なんです」
結局、若干の違和感を覚えるも私はそのアイテムを購入することに
した。親切なセールスマンは「一番目立つところへ」と、カレンダー
の張り付けまで済ませて帰っていった。

インテリアを楽しむ権利があるという彼の言葉はその後の私を勇気
づけたものである。
しかし、奴め、カレンダーを張り付けた位置を教えていかなかった
のはどういうわけだ……

お題『鉛筆かじり』
179白木の子:2006/09/28(木) 06:41:03
 最近僕が通っている学校では、何やら幽霊の噂が後を立たない。
 既に30人ほどがその被害にあっていると言うのだ。
 その名も『妖怪鉛筆かじり』。
 登校時には鉛筆特有の殺傷能力満載の突起が、いざ帰る頃になるとその突起も含め全体がぼろぼろになっていると言うものだ。
 どうやら鉛筆だけが被害にあっていると言うらしく、シャープペンやボールペン等は無事らしい。
 そして、とうとう僕もその被害にあってしまった。
 そして僕は、『溶解鉛筆かじり』の第一目撃者になってしまった。
 部活が終わって薄暗い教室を通りかかったときだ。
 教卓の上にそいつはいた。大体それと同時に先生の言葉を思い出した。

「いやあ……学校にハムスター持ってきたら脱走しちゃってね、誰か知ってたら教えてくれないか?」
 先生のハムスターは『ロッキー』というらしい。
180白木の子:2006/09/28(木) 06:42:29
お題「萌え燃えジェットコースター」
181名無し物書き@推敲中?:2006/09/28(木) 16:16:55
 はにゃ〜ん、という発車ベルとともに動き始めたコースターが
ゆっくりと急な坂をのぼる。
 ガッタン…ゴットン……ンッショ…ンッショ……
 ンッショ…ンッショ…オニイチャンノ…オフトン…ヨイショ。途切れるレール。
 ンッショ…ンッショ…オニイチャンノ…オフトン…ヨイショ。頂上が近い。
 一瞬静止したかにみえたコースター。つかの間の休息、安堵。
が、急降下。小悪魔。
 垂直に近い降下に大きなお友達はみな死を覚悟する。
が、地上すれすれ、レールが描く柔らかな曲線がコースターを
墜落から救う。ツンデレ。
 急カーブ。らめぇぇぇぇぇぇぇ。
 息つく暇ない起伏の連続。
 おーてーつーだーいーしーたーかったーのぉぉぉ。
そして、オタの帰還。
 恍惚の表情。完全燃焼の彼らは立ち上がる気力もない。
そんな彼らを抱き起こす逞しい肉体の男たち。アッー!!!!

萌え燃えジェットコースター 絶賛稼働中!!



        1回 20000円
182名無し物書き@推敲中?:2006/09/28(木) 18:44:31
>>181
お題は?
183名無し物書き@推敲中?:2006/09/28(木) 20:59:21
お題「問題です」
184名無し物書き@推敲中?:2006/10/02(月) 23:22:19
「問題です」
 と言った途端、彼女はアスファルトへと崩れ落ちた。
 ぴくりともしない彼女の細い身体を見下ろしながら、俺は考えを巡らせる。
 これはどういう意味か、何かの問題を言う前に倒れてしまったのか。倒れ方が問題なのか、倒れた事自体が問題なのか、倒れた後彼女がどうするかが問題なのか。
 彼女は普段からクイズを出題するのが好きだった。日に日に問題が高度になってきたなと感じてはいたが、今日の問題は実に難しい。
 人だかりやサイレンの音も無視し、俺は思考の海に深く深く潜る。
 因みに、倒れた彼女の身体に外傷はなく何か持病があったらしい、と誰かが言っていた。ヒントか? 分からない。

 分からない――まま、二度と起き上がることのなかった彼女の葬儀を終え、2年の歳月を独りで過ごした。仕事中以外は常に問題の事を考えていた。
 ある日、久しぶりに袖を通したジャケットの内ポケットに紙片が入っていた。
 これは彼女が倒れた時に着ていたものだ。今更気付くとは回答者失格だな…と苦笑いしながら広げてみる。やはり彼女の字だった。

『問題です。私が病で死んでしまっても、貴方が悲しまずに生きていける方法は何でしょー』

 ヒントだと思っていたのに、ほぼ答えのようなものを見てしまった…。
 俺は突然悲しくなった。いろんな意味で。


↓次のお題【レゴ】
185みどりの日:2006/10/12(木) 22:05:49
子供の作り上げたレゴブロックをゆっくり壊すこと。
 それを同じことを人はいつでも見ている。 何かを壊すということをしない人間などいないと、昔の学者は語ったようだが、それは自分のことでさえもあったようだ。
「………」僕は口を開けはするが、喋りなどしない。
いつからか完成していたレゴブロックを、崩し始めて。 僕の前にいる生物が誰なのかも、腕にあるそれが何かもわかりはしない。 記憶を崩すことは、消えていくことはそういうことだ。
 その生物がやさしく微笑むが、この感情を伝える手段は無く、甲高い鳴き声しか出せない。 生物は、何で泣くのだろう。 なんでやさしいのだろう。
 毎日違っていく、僕たちをすべてやさしく笑ってくれるこの生物は。

いつかの僕と一緒にいた人なのだろうか………

お題「回転」
186:2006/10/13(金) 08:54:45
お題「地獄の風景」
187名無し物書き@推敲中?:2006/10/13(金) 09:14:39
>>185
「回転」
僕は今、回っていた。既に何もしていない、或いは、
もう生きていないのかも知れない。とにかく僕はここで回っていた。
天地に満ちる星空。スーツの警告音がして、「酸素残量残り30秒」と告げた。
でもその時間が過ぎても、僕は多分、”ここ”で、果てしなく回り続けるのだろう。
188名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 05:20:16
済まない、順番ミスった。
お題「地獄の風景」
189名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 06:42:25
>>188
却下。
これを認めればお題ばっかり出されることになりかねん。

↓お題どうぞ
190名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 16:57:48
「地獄の風景」
そこは、地獄だと言われた。周囲を歩く人々、その喧騒と、走り回る車、乱立するビル。
「お前はこれからここで生きていくのだ」そう言う声に促されて僕はここに来た。
道行く人々は僕を見てはにっこり笑う、みな優しげな笑顔だ、時には頭を撫でたりする。
ふと尿意をもよおし、その場の電柱についした。”彼女”は苦笑して見ている・・・、僕はなんだ?

つー事でお題「天使の誘惑」
191名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 18:56:14
「天使の誘惑」
生まれ付き猿顔であった私は、自分の面相によって支障の出ぬ仕事を探していた
しかし、究極的に考え詰めていくと、やはりそんな仕事は無いことが分かる
他者に対する印象は、外見で殆どが決まってしまうのだ
やがて絶望した私は、ビルからでも飛び降りてしまおうかと、考えた
場所は、私をクビにしたデパートである
猿に退職金などやれるかなどと言われ、もはや我慢の限度を超えているではないか

そうして夜、いざ屋上に来てみると、天使が一人で佇んでいた
天使は言った
「今なら天使になれますよ」
「へえ、天使か」
天使は、様々な利を私に告げた。
働かずとも良いだとか、笑ってさえいれば良いだとか、甘い誘惑を以て弁ずる
しかし、あることが気になった私は、何気なく訊ねた
「天国って、じゃあ、誰が仕事してるんだ?」
「誰もしませんとも。みんな、好き勝手なことをしています」
「じゃあ、食料とかはどうなる?」
「人間の皆さんに頼んで分けてもらいます。皆さん、僕らに優しいんですよ」

私は誘いを断り、階段へと歩みを向けた
死に理想を求めたのが、そもそもの間違いだったのだ
退職金を拒まれる猿が、どうして捧げものを貰える?
私は、階段を下りながら、かの天使の淋しげな顔を思い浮かべていた



んで、お題は「マネーロンダリング」
192名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 19:57:39
掲示板で見慣れない文字を見て、ふと興味が沸いた。
「マネーロンダリング」、資金洗浄・・・。要するにあくどい事をして得た、
その利益をそうでないように見せるために口座をあちこち移動する事らしい。
不正な利益で無ければ問題は無い訳で、なら僕は大丈夫だなと、今日も僕は、
自分とは異なる名前の自分の口座に有る資金を彼女の口座へと振り込んだ。
いつもいつも、建設現場のお偉方には苦労させられる。仲介料としてこの程度?
真っ当な仕事をしている人間に良くもまあ。一度くらいビルでも爆破しないと、
或いは彼らは解らないのだろうか。世の中には逆らっちゃいけない力が有るって事を。
翌日、建設現場のお偉方が捕まった。警察は不透明な金の流れを調査しているという。
因果応報と言う奴だろう、警察もご苦労な事だ。しかし今日は彼女と連絡が付かない。
まさか、悪い事でもしたのか?もし”僕が稼いだ”手数料を持って逃げたら承知しないぞ。


お題「メガネと味噌汁」
193名無し物書き@推敲中?:2006/10/14(土) 21:19:49
 「メガネと味噌汁」それが僕らのニックネームだ。
俺が相方につけた名前が「メガネ」。
ただメガネをかけていただけで、本当にひねりも何もなかった。
ちなみに今、相方はコンタクト派。でもコンタクトはなんとなくカッコいいので
メガネぐらいが丁度良い。

 当然、もう片方の「味噌汁」は相方がつけた僕のニックネームだ。
僕が相方をメガネと名付けた時に味噌汁を食べていたから味噌汁になってしまった。
しかし、味噌汁とかいうニックネームはどうも気に入らない。
味噌汁って食べるものだろ。本当にそれでいいのかと聞きたい。
毎朝味噌汁食べる時、僕の顔が浮かんでくるけどそれでもいいのかと聞きたい。
メガネはいい。僕メガネしないし・・・。でも食べ物は駄目だろ。
この前、スーパーで「味噌汁、味噌汁」と探してるいる人がいてつい反応をしてしまった。
ということで「味噌汁は止めないか?」と相方に抗議してみた。
相方は当然断った。なんて嫌な奴だろう。やっぱりコイツはメガネだ。
でもそう簡単に僕も引き下がれない。僕は思い切って交渉してみた。
「だったらメガネは止めてコンタクトにするからさ。」
相方は喜んで同意した。メガネの様に堅い奴と思ったらコンタクトな奴だった。
そして、僕の名前も変わった。
メガネ→コンタクトと昇華したのをヒントに味噌汁→豚汁になった。
余計嫌な気がした。ていうか食い物から離れろよ。

お題「ニートな2ちゃんねらー」
194名無し物書き@推敲中?:2006/10/15(日) 06:25:27
「ニートな2ちゃんねらー」

小説家を目指し始めて、もはや6年になる。
受賞経験皆無、しかし文章くらいしか取り柄がない僕は今日もひぐらし、
硯に向かわず掲示板の書き込み欄を開いた。相変わらず馬鹿な奴らだ、
一つお手本を見せてやらねばならない。全くどうして世の文芸賞は!
この才能を埋もれさせておくのだろう。

「ググれカス」

日本のわびさびさえ感じさせる引き締まった文章だ。やはり僕には、
素晴らしい才能があると確信する。今では掲示板での常套句に成っている、
始めて書いたのは僕だ。過去ログなんか見ていないがともかくそうだ。

雑誌の文芸賞を覗く、今回もしかし僕の名前はない。流石に掲示板の書き込みでは、
受賞は無理だったろうかと、今回だけは少し反省した。
195名無し物書き@推敲中?:2006/10/15(日) 06:26:15
お題忘れたw。
お題「忘れ物」
196名無し物書き@推敲中?:2006/10/16(月) 17:31:30
「忘れ物」

網棚の上。
電車になら大抵あるその場所は謎多き空間である。
大抵は鞄と紙袋。時々人形。時には人が乗っている。そしてその一部は忘れ去られる。
中でも紙袋ほど恐ろしい物は無い。
ある日興味本意で派手な紙袋を覗いた私は、恐ろしい物を目にした。『歯』である、大量の歯。私の頭の中を様々な想像が駆け巡った。
これは殺人の証拠隠滅か?それとも歯の好きな変人、それとも私に対する何らかの警告なのか…
今考えれば何故、この時ある一つの可能性に至らなかったのかが不思議でならない。
次の駅で降りた私は駅員にそれを渡そうとした。すると不気味な声を上げながら急いで近づいてくる男がいた。かなり強いタバコと薬品の匂いのする男は私の肩を掴んだ。「ありがとう!電車の中に忘れた事に気付いて…」
その後の言葉は聞き取れ無かった。

お題「予備校」
197リンコン:2006/10/17(火) 05:17:23
朝早い新宿のビルの下、コンビニで買った肉まんを朝食に歩く。
可愛い女の子の水着の眩しい巨大広告の横をすり抜け今日も辿り着いた。
ここは大日本予備校。朝焼けに照らされた正門は威風堂々たる面持ちで
学生を迎える。気の優しそうな守衛さんがおはようございますといいながら
門を開いてくれた。しかし門は二つあるのだ。予備だ。もし不審者が侵入して
きたらどうする。大日本予備校ぬかりは無い。下駄箱も一人に付き二つある、
あれ、昨日はどっちに上履きいれたっけ。教室の数も無駄に多いように思える。
いやいやしかし予備なのだ。階段の手すりは2本。校庭も仕切りが区切られ体裁
的にはなんとか予備を保ってる。今日は休日だが補講がある、何時大災害やら戦争
などが起こって授業の進行が滞ってもいいように、予備として事前に振り替え授業があるのだ。
今日は現代文の予備としての英語だ。教室は3−A(2)。教師は前田(佐藤)と
竹村(甲斐)の我が校自慢の講師だ。誰か来る。そうそう昨日の夜に買っておいたあんまんを
予備の朝食として食べよう。入り口の2重扉をあけながら教室に入ると、俺の席に見知らぬ学生が
ペットボトルを2本置き教科書とノートを2冊広げて肉まんをほうばっていた。
198リンコン:2006/10/17(火) 05:18:39
お題を書き忘れてた。
「波止場」
199名無し物書き@推敲中?:2006/10/24(火) 16:38:47
海に来た。

港町を訪れるのは生まれてから14年で初めてのことだ。海岸線からかなり離れたところでも、潮の匂いが鼻をついてくる。
その匂いに僕は何処か後ろめたさを感じ(原因はこないだの「あの」出来事のせいだ)、逆にその匂いの元をこの眼で確かめる為に、
ふらふらと波止場まで歩いていった。それは僕が大人に成長する為の、一種の儀式のようなものだったのかもしれない。

民家の間の狭い道を進む。

最初にザアザアという潮騒が誰かを手招きしているのが聞こえ、次に白い防波堤が顔を出し、鈍色の小魚を咥えている猫が、
何の為かよく判らない段差の上から黄色い両眼で胡散臭げに僕を睨んだ後、急に視界が拓けて、僕は海の前にいた。

海は僕の前にあった。

そうしてしばらく呆けている内に、僕は足元に太い円筒形の何かがあるのに気づいた。停泊した船をロープで繋ぐ為のあれだ。
TVや幼い頃に読んだ絵本なんかでよく知っている筈の物なのに、考えてみると名前を全然知らない。全く不思議なものだ。
何と言うんだろう?とにかくこれを見たら、男がやるべきことは一つだ。
その「何か」に右脚を掛け、同じ側の拳を顎に当てて、更にその肘と脚で左の手を挟んだ。

ハードボイルド。

遂にやった。全国の(しかし恐らくは海に面した地域以外の)少年達の夢。長年僕を縛りつけてきた、耐え難い程の衝動が
一瞬の内に四散してかき消え、代わりによく晴れた草原に吹く風のような開放感が僕の身体の中を駆けめぐる。
帰ったら友達に自慢しよう。

このように僕の儀式は終わった。

そろそろ戻ろうかと思って後ろを振り返ると、近所の女子高生らしい制服を着た女の人がこちらの方を見てくすくすと笑っていた。

かなり、恥ずかしかった。
200名無し物書き@推敲中?:2006/10/24(火) 16:40:26
お題忘れてたごめん
「コーヒーの代用品」
201名無し物書き@推敲中?:2006/10/25(水) 19:00:47
あれってボラード(係船柱)って言うらしいね

調べて初めて知ったよ
2021/2:2006/10/25(水) 22:04:45
コーヒーの代用品

「コーヒー、無いの?」
「うん、ちょっと切らしちゃってて」
僕の目の前にあるコップに、褐色の液体が注がれる。
「何これ?」
「コーヒー牛乳」
口に含んでぎょっとした。この忌々しい液体に何故コーヒーという名が許されたのか?
でもコーヒーは家に無い。仕方が無い…。我慢して一杯飲んだ。
明日は湯気を立てるブラックコーヒーが飲めるだろう。

翌朝。そこにはまたしてもコーヒー牛乳。
「何でこれなの?」
「ごめん。買い忘れちゃって」
母の神経を疑った。買い忘れたとは何事だ。仕方が無く一杯。
自分でコーヒーを淹れようにも、コーヒー豆は無い。
「喫茶店で飲めば良いじゃないか」という人もいるだろうが、僕はコーヒーは自分で淹れた物じゃないと納得できないどこか異常な人間なのだ。
コーヒー豆を買いに行こうにも、この辺りでコーヒー豆を売ってる店は無く、だからこそ母に頼んでいるのだ。
正に救いの無い状況。いつの間にか、意識していないのにため息が出た。
2032/2:2006/10/25(水) 22:05:19
翌朝。そこにはコーヒー牛乳が…。
怒りと悲しみにさいなまれ、半ば思考がフリーズした状態で液体を胃に流し込んだ。
飲んだ後で激しく後悔する。わああああ。惰性で飲んでしまった。
自分が嫌だ。何でこんな目にあわなきゃいけないんだ。そういえば母は昨日買い物に行ってなかった。
怒りを抑えて、母に言った。
「お母さん、今日はコーヒー豆買って来て下さいね」
「なによ下さいねって。はいはい、買ってきてあげるから」
母は笑っている。何で笑っているんだ。お前は幸せだろうがこっちは怒ってんだよ…。
湯気の立ったブラックコーヒーを心で思い描くと、恋しさと哀しさが慕った。

翌朝。
「…」
「ごめん、昨日も買い忘れてきちゃった」
そこにはコーヒー牛乳が置かれていた。
何が「買い忘れてきちゃった」だ。何様のつもりなんだ。ふざけんな。
なんでなんだよ。もうやだこひーをくれこーひーコーヒー濃ーヒー抽・鰍枕窯高遂・・℃・桙關・・翌鮪l
僕は耐え切れず家を飛び出した。
「わああああああああぎゃあああああああ」
口からいつの間にか叫びが漏れていた。
コーヒーを飲ませろコーヒーを飲ませろコーヒーを飲ませろコーヒーを飲ませろコーヒーを飲ませ
そのときやっと赤信号で横断歩道を渡っていることに気がついた。
白い乗用車が僕に


初です。こんなのでよかったのか疑問ですが・・・。
ちなみにコーヒーよりコーヒー牛乳の方が好きです。

次のお題
「空間認識力」
204名無し物書き@推敲中?:2006/11/04(土) 17:57:31
初とか余計なこと言わんでいいよ
言い訳にもなんない
205名無し物書き@推敲中?:2006/11/04(土) 19:30:53
この板なかなか活性化しないね…
206名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 17:07:26
どうしたらいいんだろう?
207名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 19:25:15
「空間認識力」

まあ2chのシステムから言って無理。
各レスに対して「好き/普通/嫌い」とかボタン設置で、
それ使用の投票とかでも出来ない限りは、支持率は解らない。
解らないならアップする意味もない。面白い作品、
それに「おもしろい」などと自ら負けを認めるような、
いやそんな「面白味も何もない」書き込みが出来る香具師が、
この場にそんなに居る筈がない。書き込む限りは読者の反応、
それを大なり小なり期待するし、ROM連中も”面白い書き込み”、
それを期待してここに見に来ているのだ。「ワラタ」とわざわざ、
2ch用語で書き込むのがその現れだろう。そしてなのに表現とは、
それ相応な熱意と技能が求められる。「面白い」等という当たり前な、
そんな表現は求められていないのだここは。しかし頑張った評価は>>204
誰が書き込むものだろう。よほど自信がある奴か馬鹿かのどっちかだ。

そして。2chの管理者がそんな面倒な事を、いや色々問題の出そうな、
そんなシステムを苦労して入れる訳がないし。2chはあくまで雑談主体、
そう割り切った方が良い。作品発表者はレスを空間認識力を駆使して把握する、
その位で無ければダメだ。期待するな、感じるんだ、「ウケタ、らしい!」と。

こんな場所だが、ここは賃金は期待できないが”実戦だ”と思えばそれなりには。


次のお題「お社」
208名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 20:18:03
道端の陰をじっと見つめる。
黒が、みちみちと音を起てながら染みだしていく。
そろそろ夜になるようだが、依然として人は通らない。
私は草木に侵食されながら、隙間より見つめている。
次のお題は「芋虫の日」
209名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 21:08:29
今日はこたつから一歩も出ていない。いわゆる「こたつむり」の状態だ。
その小さな楽園に半身を潜り込ませたまま、決して広くはない室内を這いずりまわる。
何か食べようと冷蔵庫に向かったとき、私の脳天に衝撃。
見ると、こたつの机部分の板がずり落ちてきていたのだった。
私の自堕落な生活態度に対する天罰だろうか。だが私はこの楽園を机として使う気は
更々無いのだ。邪魔な板を部屋の隅にうっちゃり、野菜室からクレソンを取り出して
(私は菜食主義者だ)寝そべったままもそもそと齧る。

その様は、はたから見ると何処か芋虫に似ていた。
210名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 21:15:05
駄目だな、これじゃ別にナメクジでも構わないじゃないか

「用途不明の道具」
211名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 22:06:58
おじさんから変なモノを貰った。長さは大体六十センチ程で、よくしなる。
最初は振り回して遊んでみたけれど、すぐに飽きてしまった。
やっぱり相手がいないと詰まらない。今日は一日中ごろごろ。
ふと、目をやると十メートル程先に蟻塚がある。
ちょうどお腹も空いてきたし、いい感じだ。
指を突っ込んでみるけれど、上手く蟻が捕まらない。
苛立ってきたから、貰ったモノを突っ込んでやった。
引き抜いてみたら、蟻がくっついてきた! 美味しい。
そうか、こうすれば蟻が捕れるんだ!
「適応能力はBプラスか…。ま、普通だな。さぁ、次だ次」
おじさんは何かしてるみたいだ。


お次は【偏屈な街】で。
212名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 23:21:51
主人公がゴリラかチンパンジーなら、「センチ」や「メートル」ではなく
「指の先から肘ぐらいまで」や「十歩先」などを使った方が良かったんじゃないか?
猿がメートル法で表現しているのは不自然だ。
213名無し物書き@推敲中?:2006/11/05(日) 23:38:10
>>212
ありがとう。
自分で書いてても違和感があったから、なるほど、と思ったよ。
やっぱり書いてる時は視野が狭まっていかんね。
214名無し物書き@推敲中?:2006/11/06(月) 08:49:49
>>210
ダメなのはおまいだ。
大事なのは”芋虫の特徴”だろう。まるまるとして、野菜を囓る。
「ああ、ダメだ」。かたつむりじゃなく「芋虫」である所がみそだ。
215ナメクジじゃなく「芋虫」である所がみそ、ってこと?:2006/11/06(月) 11:41:54
>>214
いや、>>209>>210も俺なんだけどね。
かたつむりから殻を取ったらどっちかって言うとナメクジじゃん。
ナメクジも野菜食べるし。

まあどっちでもいいか。
216名無し物書き@推敲中?:2006/11/06(月) 15:04:33
「殺チョン光線発射」
連合艦隊旗艦が発した信号に応じて全艦艇が一斉射撃を始めた
217名無し物書き@推敲中?:2006/11/06(月) 15:24:16
【偏屈の街】
それはたぶん、きっと、既存の書籍でも横書きにおいては使用している
算用数字を頑なに拒み続ける街。主にネットの世界に存在する。
218代理:2006/11/06(月) 23:55:01
つ「寝る前の嫌な儀式」
219名無し物書き@推敲中?:2006/11/08(水) 19:32:02
目が覚めた。 枕が湿っている。
外は薄暗く、白い光を放っている。
また、か。
俺は枕脇の小さな机に置かれたコップを手に取る。
昨日の夜、ワインを入れておいた。
真赤なワインをたっぷりと。 
朝起きて一番に飲むと体にいいと妻が言ってたからだ。
もう、何年だろう。
仕事が終わると
飲みもしないワインを一生懸命、丁寧にラベルをよんで選んでは
静まり返った家に持ち帰る。
もう、なんどめだろう。
そこに置くのは危ないんじゃないか、と囁くのは。
どうしてなんだろう。
愛する人を信じることで、悲しませてたんじゃないか。
家に帰って、飯を食って、風呂に入って、赤ワインをついで枕元において寝る。
妻のしてた儀式を知らないまに俺が繋いでる。
帰ってこないのに。
もう、帰ってこないのに。
ごめんね、夜帰ってくるまでに洗っとくから。でも、本当に体にいいのよ。明日こそは倒れないかなぁ。
はにかむ彼女は。
220名無し物書き@推敲中?:2006/11/08(水) 19:33:11
次のお題は【帰国子女】で
2211/2:2006/11/08(水) 20:10:44
「寝る前の嫌な儀式」
私は大学二年生で親戚の叔母の家に下宿していた 
叔母は速くに夫を失くしていた 
美しい容姿を持っている叔母で 
たびたび再婚の噂があったが何故か叔母は毎回自分から 
男を振るのである、何故ならそれはその男に飽きてしまったからだ  


2222/2:2006/11/08(水) 20:11:47
私は平日大学から下宿に帰ってくると 
叔母は夕食を用意して待っている 
叔母はなかなか料理の腕がいい  
夕食を食べ終え風呂に入りそして床に就く 
 
そして毎夜訪れる「寝る前の嫌な儀式」が始まるのである 
 
私が叔母に一銭も払わずその上月十万円の小遣いをもらっているのは 
この「寝る前の嫌な儀式」のおかげである 
私にとってこの「儀式」最初は拷問のようだったが 
いっそ慣例的な儀式だと思うと少しは楽になるのである 
私が寝付きそうなころを見計らったかのように彼女は 
私の布団の中に彼女が裸同然の姿で入ってくる 
そして熱い口付けをしながら私の服を脱がしにかかるのである 
私の陰部をまさぐり続ける彼女はまさに至福の表情を 
その美しい顔に浮かべていた 
一通りの行為を終えると悲しげな顔をしながら 
「ごめんね」 
と言いつつ私の部屋を出て行く 
  
 
 
 

 
私は女だ  
 
223名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 05:18:37
「帰国子女」

突然だが、私の兄は帰国子女である。
しかも、アメリカやヨーロッパなんかの普通の国に行っていたわけではない。
いろいろな事情があって詳しく話せないのが残念だが、その国に行ってみたいという人間はきっと世界中にいることだろう。
そして、そこで仲良くなった友人が今度の夏休みに家に遊びに来るという。

兄曰く、その友人は「額に傷のある心優しい少年」だそうだ。



次のお題、「海に降る雪」
224名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 05:20:23
age
225名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 10:10:52
額に傷でスカーを想像してしまった俺は何ですか。
226名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 13:52:48
すまん 帰国子女よくわからん・・・ ブラックジョーク?
227名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 15:26:06
自分もわからんかった。
どこの国なのか教えて。
228223:2006/11/12(日) 17:29:37
素直に稲妻の傷って書いておけばよかったか・・・orz
229名無し物書き@推敲中?:2006/11/12(日) 20:16:28
そうか、ハリポタだったのか!
230名無し物書き@推敲中?:2006/11/15(水) 00:46:18
「海に降る雪」


海に花束を投げるのはよくないとのことで、俺はばらした花を投げた。
白い花が海面に散る。
百合とカスミソウは花屋が選んだもので、別にあいつの好きだった花じゃない。
そもそも、あいつは別に花は好きじゃなかったはずだ。
男勝りの隊のエース。
酒が好きだと豪語した、連戦連勝だった女。
俺の部屋で飲んだときだけ、妙に優しい笑みを浮かべた、あいつ。
彼女はよりにもよって停戦前日に、新米をかばって撃墜された。
その愛機ごと沈んだ海を見つめていると、視界を白いものがよぎった。
――雪か
白い花の浮いた海面に振る白い雪。
そしてふいに俺は思った。
――あいつの眠る海溝にも、海中の雪が降っているのだろうかと。



次のお題は「六畳一間と豆腐」
231名無し物書き@推敲中?:2006/11/16(木) 18:58:56
町外れに建つ一軒の長屋。
六畳一間バス・トイレ付きのこの物件に1組の夫婦が住んでおります。
さてこの夫婦、近所でも評判の仲良し夫婦なのですが、毎晩必ず夫婦喧嘩をしております。
その原因となっているのが一丁の豆腐。
嫁は木綿派、旦那は絹ごし派でお互い一歩も譲らない。
ではどうやって喧嘩を終わらせるかといいますと、旦那が嫁の買ってきた木綿豆腐をひっくり返すのです。
すると喧嘩はピタッと終わり、嫁が準備しておいた夕飯を食卓に並べてまたいつもの仲良し夫婦に戻るのです。
では、ひっくり返された豆腐はどうなるか?
いえいえ、捨てるなんてとんでもない。
汚れないよう敷かれたビニールシートの上に落ちたそれは、飼い猫ミケの晩御飯になるってぇ寸法です。
ところで、さっきから語っているお前は何者かって?
へい、あっしは今さっき宙を舞った木綿屋木綿豆腐乃介十一万七千飛んで七十八代目でございます。

「ミケの姐さん、いつもお世話になりやす。 ささ、一思いにガブリと喰ってやってくだせえ」
「たまには魚が食べたいにゃー・・・」


次のお題、「部屋とTシャツとたわし」
232名無し物書き@推敲中?:2006/11/18(土) 23:16:45
「部屋とTシャツとたわし」

「なあ、まじで女なんだろうな」
「嘘じゃねえって、いいから見てみろよ」
友人に言われて、僕は壁の穴を覗き込んだ。
ここから隣の部屋が見えるらしく、しかも隣人は女だと友人は嬉しそうに言う。
「すっげーいい体の女がさ、Tシャツ一枚でいるわけよ。見えるだろ?」
後ろから小声で言う友人。
僕は藤原紀香みたいなのを期待して、穴の向こうの部屋をじっと見た。
「あ、何か動いた…」
僕が言うのと同時に、その隣人が見えた。
たわしみたいな頭の相撲取りかと思うような女が、Tシャツ一枚でどかどかと部屋を横切っていった。

僕は友人がデブ専なんだと思い知った。



次のお題、「空飛ぶ一輪車」
233名無し物書き@推敲中?:2006/11/18(土) 23:49:36
「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」
http://chodenshop.com/greeting.htm

鉄オタが板違いの宣伝で失礼します。。
千葉の東端、銚子に銚子電鉄という小さな鉄道が走っているのをご存知でしょうか?
http://www.choshi-dentetsu.jp/
なんのことはない、地方交通の一端を担っていた普通の鉄道でした。
しかし、数年前に前社長が会社の資金を横領するという事件が発生。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/chiba/archive/news/2006/11/16/20061116ddlk12040406000c.html
ただでさえ資金が不足していた会社が、前社長に関わる借金まで抱え込んでしまったのです。
このままでは法で定められた車両の整備をすることもできず、
年明けにはいつも通りの運行すらできなくなるかも知れないとのこと。
今このときも、じわじわと廃止に向けて追いつめられているのです。

そ れ も 経 営 状 態 の 悪 化 で は な く 、 個 人 の 犯 罪 が 原 因 で 。

銚子住民の足として、また犬吠埼の観光の一端を担う路線としても
銚子電鉄をなんとか存続させるため、皆さんのお力を貸して下さい!
こんな遠い所いけないよ…というあなたも、この会社が売る濡れ煎餅
というおせんべいで会社を手助けしてあげてくれませんか?
主な販売店→http://chodenshop.com/nuresenbei/index.html
また、通販や千葉県内の総武線の駅売店でも売っているとのことです。 ぜひ見かけた際には買ってあげて下さい。
たかが煎餅一袋ですが、銚子電鉄の未来がかかっています。

以上長々と失礼しました。重ねて銚子電鉄存続のためにお力添えくださるようお願いします。
元スレ:銚子電鉄を救おう
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/train/1163685536/
234名無し物書き@推敲中?:2006/11/19(日) 01:30:17
「空飛ぶ一輪車」
クリックの日課は朝の散歩だった。つれあいに先立たれ十年余り、とはいえ、こうして出かける折りに彼のポケットに綺麗に畳まれたハンカチは欠かした事はなかった。
いつもの川辺、流れゆく春先の水は生温かった。菜の花の中に腰を降ろしながら、彼は小さな人影を見た。
黒い服を着た少女は微笑んだかと思うと、霞の空に遠ざかっていくようだった。
あたかも亡き妻の幼い面影、一輪車に乗って遊んだ時そのままの眼差しをしていた。
次のお題「硫酸銅」
235名無し物書き@推敲中?:2006/12/03(日) 23:42:08
お前の顔に硫酸銅を塗りたくってやる。
硫酸銅の粉末を卵に溶かして、お前の口へ流し込んでやる。
わかったか?わかったならもうくるな。
ここはお前らの居場所ではないのだよ。
駄文ばかり書き連ねやがって。
面白くもなんともないのだから。やめたほうがまし。
これ以上レスするなよ。
わかったな?

「GABA」
236名無し物書き@推敲中?:2006/12/04(月) 00:35:30
情緒的に不安定だった彼は思わずそう口走った。
そしておもむろに、グリコ「GABA」を自らの口へ投じた。一粒、そしてまた一粒。
気付けば、彼の震える手は自らの穴という穴に、「GABA」を詰め込んでいたのであった。
「赤い糸」
237名無し物書き@推敲中?:2007/01/03(水) 06:43:54
age
238名無し物書き@推敲中?:2007/01/03(水) 13:52:29
「赤い糸」
世の中には”運命の赤い糸”なる物が存在している、と誰かが言った。
それは主に、己の小指の付け根部分に存在し、
付け根をぐるりと一周した後は、俗に言うところの”運命の人”・・・
別な言い方をすると”恋愛対象”の小指付け根部分に到達している、
というのだそうだ。

今、私の小指付け根部分には黒い糸が在る。
それは小指の付け根をぐるりと一周し、遠く、遠く、何処かに向かってそれは
まるで影のように、途切れることなく果てしなく、
ただただ先へと、伸びているのであった。

サテサテ、この先には一体全体、誰が待ち構えているというのか。

私は今、その先に在る者を追っている。
右手にナイフを握り締め。
左に飴を、心に雨を。
小指の付け根に夢を持ち。
私は影を追いかける。

次のお題「虎とバナナ」
239名無し物書き@推敲中?:2007/01/03(水) 19:27:10
虎がバナナを食べている。
どっしりあぐらをかいて偉そうに、右手に握ったバナナを不味そうに喰らう。
少年は思う。
こいつ、虎のくせにバナナを食べてらぁ、座り方も間違っているし、
前脚で物を掴んでやがる。少年は「キチガイめ」と罵った。
すると虎は片方の眉根をヒョイとあげると、馬鹿にするようにひと声吠えた。
その吠えっぷりはまったく虎然としていて、殴り付けたようにあたりの空気が強張った。
そしてそれから一層の静寂がおとずれた。
少年は猟銃を構え、虎の眉間に狙いをつけた。
黒と黄色の体模様は腐りかけのバナナに見えないこともなかった。

次、「怪鳥さん」
240名無し物書き@推敲中?:2007/02/07(水) 00:06:44
「会長」
私の呼びかけに彼は反応しない。
彼は革でできた黒いつやのある椅子に深く腰掛け、悠然と窓から空を眺めている。
私の方には体さえ向けてくれそうにない。
しっかりと肉のついた体を、ただ落ち着けているだけだ。
「会長」
無駄だと分かりつつ呼びかけてみるが、やはりその度に、私は自分の行動の無意味さを実感するばかりだ。
これでは書類が作成できない。この書類には彼の拇印が必要なのだ。
仕方がない。会長という身分のものにこのようなあさましい手を使うのは気が乗らないが…
「君、あれをお願いできるか」
「かしこまりました」
例のものを頼むと、秘書はもう準備ができていたというように、さっとそれを会長に近づける。と、
「ゴァー!」
電光石火にこちらを向いた会長、いや怪鳥は、食欲を露わにしてたこ焼きにかぶりついた。
青のりやソースを汚らしく嘴につけ、更に周囲にも散らかすこの怪鳥を見て私は思う。
「いくら人間が意地汚いからといって、こんな奴を会長にすることもなかろうに…」
241名無し物書き@推敲中?:2007/02/07(水) 00:10:03
次のお題を入れ忘れてました。
「明るい闇」
242名無し物書き@推敲中?:2007/02/13(火) 22:58:00
「今日は何を食べようか」
「さやかの好きな物にしよう」
「じゃあカレーライスにしましょうか」
「そうしようそうしよう」
少女が何も言わずにただ微笑むのを見て、少女の両親は、笑顔と明るい声で台所に立つ。
賑やかなキッチンに、少女はただ耳を傾ける。
少女は暗闇に沈む世界で、明るい声に微笑んでいる。
…あんなに、仲が悪かったのに…。
少女の左手は包帯が巻かれ、右足は絆創膏だらけ。
身体のあちこちには古い傷痕が宣っている。
そして、少女の小さな顔には、大きな暗闇しか映さない瞳が二つ。
…お医者様が言っていた。私の瞳に光はもう戻らないと。
けれど少女は笑っていた。
…光があった頃よりも、私の世界はこんなにも明るい。
「パパ、ママ、私は幸せよ」
少女が笑う。
少女の両親は、少女を抱き締め、涙を流していた。



次、「ベランダの縁」
243名無し物書き@推敲中?:2007/02/20(火) 00:50:50
私がこの部屋で常に寝たきりになったのはいつからだろうか?私がこの部屋に
きたときにはベランダは綺麗なセメント色だったのが今はツタがベランダに幾
重にも巻きつき緑に侵食しているところを見ると大分時間がたっているのでは
ないだろうか?私は果たして死ぬまでにこの緑に染まっていくベランダの向こ
う側をみることができるだろうか?だれかわかるなら教えて欲しい
「いつかのクリスマス」
244名無し物書き@推敲中?:2007/02/20(火) 03:26:50
「雪,降るかな?」
天気予報では快晴らしいよ
「ちょっと残念」
今年のプレゼントは何がいい?
「・・・・・・お願いがあるの」
なに?
「私のことは忘れて,幸せになって」

「・・・・・・」
メリークリスマス
「・・・・・・」
天気予報おおハズレ.週間天気は当てにならないね
「・・・・・・」
大雪だよ.交通機関もストップ.南国は雪に弱い
「・・・・・・」
頑張って,幸せになってみるよ.無理かもしれないけど
「・・・・・・」

あなたがいなくなった日
全ての人が幸せになっていいハズの日
どれだけの時間が経っても
この日には,あなたのことを思い出す

次のお題『冬の春』
245高橋源一郎誅伐評議会局長・悪い太郎 ◆LziSwFxVAU :2007/02/20(火) 04:10:15
サクサクサク
乾いた雪を踏みしめる朝
サクサクサク
玄関を埋めた明るい新雪を掻き分けた
サクサクサク
朝食のみそ汁に大根を入れたあと、
サクサクサク
俺を捨てた女の遺骸を切り刻む
246高橋源一郎誅伐評議会局長・悪い太郎 ◆LziSwFxVAU :2007/02/20(火) 04:11:01
次のお題『早朝の殺人鬼』
247名無し物書き@推敲中?:2007/02/20(火) 04:24:03
珍しく霧の晴れた朝、濡れた道路に電柱が立っている。つまりその陰には殺人鬼が入るのだ。
248名無し物書き@推敲中?:2007/02/20(火) 04:25:05
「小説家志望はバカ」
249高橋源一郎誅伐評議会局長・悪い太郎 ◆LziSwFxVAU :2007/02/20(火) 04:57:01
>>119
アンタの書いたものに間違いはないハズだが、
なんとなく鬱陶しく思えるのは、文体のせいだろう。
もっとスッキリさせたほうがいい。
250名無し物書き@推敲中?:2007/02/20(火) 05:03:30
どこの誤爆?
251名無し物書き@推敲中?:2007/03/14(水) 21:42:43
もう万年筆は持たん。
自室のベッドの上、俺は隣の窓から入る日差しに何度目かの決心をする。
その時俺は諦めていた。何度か推敲した文章が出来上がるたび、束の間の達成感がすぐに消えていく。
これでは駄目だ、書き直さなくては、と再びの推敲の後、また振り出しに戻り同じことを繰り返す。
いつまで経っても、俺の「小説」は完成しない。
部屋に散らばり、むしろ敷き詰められたように床を見えなくしている原稿用紙を見ていると、なんとも表現しがたい虚無感に襲われた。
ため息が自然に洩れてきた頃、ドアをとんとんと二回ノックする音が聞こえる。
こんな姿を見られてはまずい、と急いでベッドから起き上がると、枕元に設置された蛍光灯にがつんと頭を思い切りぶつけた。
くら、と目眩に似た感覚が押し寄せる。ドアの向こうに居る誰かが音に気付いたらしく、少し躊躇した様子でドアを開けた。
252名無し物書き@推敲中?:2007/03/14(水) 21:43:55
「…あ、あの…大丈夫ですか」
おずおずと声を掛けたのは、見知らぬ女性だった。そういえばいつもの担当が田舎で親の介護につくから居なくなるって編集から聞いていたか、とぼんやり思い出す。
どうやら彼女がそれらしい、俺の名前が書かれたファイルを抱えている。
ふと彼女のあどけなさを残す表情が、一転して懐っこい笑顔になる。
「ふふっ…。面白そうな方ですね」
丸みを帯びた輪郭を隠す少しウェーブが掛かった髪をさらさらと揺らし、今初めて会ったばかりの彼女が喉を鳴らし笑った。
「ええと…は、はは」
つられて俺が笑ってしまうと、彼女はまた急にはっとした顔へ表情を変える。
「ご、ごめんなさい!紹介が遅れましたけど、その…私が新しく配属された担当です、編集部から連絡があったと思うのですが」
わたわたと懐から名刺を取り出すと、俺に押しつけるような態勢でそれを渡された。一応だが緊張しているらしい、落ち着きの無い動きだった。
「あ、はい。どうも、えーと…山下さん」
「はい!」
機敏な反応を見せた。
小動物と同じ香りがするな、と俺は彼女の第一印象を固める。
彼女は見開いていた丸い瞳をふと下へ下げると、しゃがみこんで散らばった原稿用紙をまじまじと見つめた。
253名無し物書き@推敲中?:2007/03/14(水) 21:45:30
「…散らかっててすみません」
「い、いえいえ!そういう訳じゃなくて!」
彼女が否定する。
「前から、あなたの書く文が大好きで…それで、その。
……ちょっとだけ、見てもいいですか?」
頬を林檎の様に赤く染めながら、上目遣いに願われる。
俺は数秒見とれたあと、すぐに手のひらを彼女のほうへ向けてぱたぱたと振る。
「どうぞどうぞ!いや、あの、出来がどうとかじゃなくて、まだ推敲中ってやつなんですが」
「推敲…」
彼女は興味深々といった目付きで、原稿用紙のうち一枚を拾う。目線を次の行へ移すたびに瞳が下から上へ、下から上へと移動した。
しばらくして、はあっと短く息を吐くと、俺のほうへきっと顔を向き直した。
俺がぴくりとその動きに引きを見せると、更にずいずいと近付き顔と顔の距離を猛烈に縮める。
そして少し神妙な面持ちになると、
「…すごい、です…!」
と一言声を洩らし、頬を一気に緩ませた。
「は、はあ…」
「一部だけ読んでこんなに続きが気になるなんて、本当に、すごいです!あの、これって以前執筆されてらした…」
「ああ、はい。続きになります」
俺が少し途切れ途切れな口調で説明すると、彼女が目を細める勢いでにっこりとほほえむ。
254名無し物書き@推敲中?:2007/03/14(水) 21:46:54
「これから一緒にがんばりましょう!まだまだ推敲して、もっと書き直して、納得がいくまで諦めずに!」
気付けば彼女は俺の手を取っていた。熱が伝わるほどの声量でそう言うと、床に散らばった原稿用紙をせかせかと拾い始めた。行動に移すのが早い。
しばらく彼女の行動に唖然としていたが、何かが引っ掛かった。彼女の言葉に、何かを。デジャヴのようなものを感じたのだ。
俺ははっとした。刹那に、長く付き合ってくれた前の担当が俺と初めて会ったときのことを思い出す。

『一緒に頑張ろう。
自分のなかで納得が行くように、何度も推敲して。終わらないなんてこと、絶対に無いから。
諦めてそれで終わりにするより、好いでしょう?』

今傍に居る彼女と、少し前まで今より未熟だった俺と歩んでくれたあいつと。未だ原稿用紙を拾い続ける彼女の姿に、少しだけあいつの面影を感じた。
忘れていた記憶を取り戻したような、そんな感覚を覚えると、俺は彼女の原稿を拾う腕に自分の腕を重ねた。
「わ」
彼女が声を上げる。
俺は自然に笑顔を浮かべていた。彼女は動揺したように、また目を丸くする。
「宜しく、お願いします。山下さん」
彼女の頬が林檎でもなく紅でもなく、ほんのりと桃に近い色へ染まる。
そして、また笑顔を取り戻した。
「…はい!」
その笑みに二度つられ、少し声を出して笑ってしまう。

俺は気付いていなかった。
また何度目かの馬鹿な誓いを破ってしまえたことに。 
 
長々とスマソ 
次「取り憑く」
255名無し物書き@推敲中?:2007/03/19(月) 23:09:48
ほすん
256名無し物書き@推敲中?:2007/03/21(水) 04:05:28
私は何かに取り憑かれたかの様に
窓の外を見つめ、彼がいないか何度も確認してしまう。
しかし見えるのは街灯のちっぽけな光のみ。
いないって分かっている。だって彼は首を吊って自殺したから。 次は絶望の合格
257名無し物書き@推敲中?:2007/03/21(水) 23:59:26
僕は同窓会から帰り、ご機嫌で家に入った。久しぶりに会った友人達との飲み会はとても楽しいものだった。
皆昔より少しずつ変わっていたが、懐かしい面影は微かに残っていた。それが昔を思い出し、とても嬉しかった。
「あの頃は、日本は戦争なんかできなかったし、しなかったのになぁ」
思わず僕は独り言を言ってため息をついた。テレビをつけると、キャスターが意気揚揚とニュースを読んでいる。
「本日、日本政府は新たに5000人に合格通知を出した。選ばれた者達は喜んでこれを承諾し、明後日に○○基地まで集まること。来なかったものや、違反者は法にかけるものとする。以上だそうです。私からもことばを送ります、今日選ばれた人達、おめでとうございます!」

キャスターはすこぶる笑顔だった。政府はそうやってまた捨て駒を集めるのか。

せっかくの楽しかった同窓会から一気に覚めてしまった。朝入れていた新聞を手にとり、リビングまで行く。お茶でも飲もうとしたが、ぱっと新聞から封筒が挟まれているのが見えた。

「いまどき手紙なんて……」

封筒を見て、僕は凍り付いた。

“日本政府  合格通知同封”

背筋に冷や汗が流れた。
258名無し物書き@推敲中?:2007/03/22(木) 00:08:39
ごめん次のお題忘れてた、「ピンボケな人生」
259名無し物書き@推敲中?:2007/03/22(木) 02:01:23
>>257
これは巧い
背中にキたわ…久々のGJ
260名無し物書き@推敲中?:2007/03/23(金) 16:26:07
はーあ。
眼鏡をかけた男は酔ったようにパソコンの前の椅子に再び腰掛ける。
>>257が巧すぎて次にSSなんか書けるかよ……)
マウスの上の男の手は、パソコン画面上の「前100」までカーソルを操り、カチャリとクリックした。
(俺より下手なSSはないものかね)
男は眼鏡を外した。しばらくスクロールを繰り返し画面は動く。カーテンを閉め切った薄暗い室内だけが静止し続けていた。
ふと更新ボタンを押すと、>>260が投下されていた。男はうすら笑って言った。
「やっぱり、俺が書けば良かったじゃないか」
あまりの内容に、男は失笑を漏らした。そうして、ふと真顔に戻る。
「でも、次のお題は難題だ。手を出すのは辞めておこう」
今日も部屋は動かない。

そういうSSを、ある女は書いて、投稿する。
>>260への反応を先回りして書くことで安堵して。
それがその女の人生。




次のお題は「死線の街」
261名無し物書き@推敲中?:2007/03/26(月) 20:24:09
ほしゅage
262名無し物書き@推敲中?:2007/03/28(水) 14:34:46
 私がこの町を訪れるのは、4年ぶりだった。世界が核に包まれている今、この町も例外ではなく、町の入り口の床には、DETH ZONEと書かれてあった。
 広場のような場所までやってきた時、急に風が吹いた。その風は私の帽子を吹き飛ばそうとした。私は慌てて押さえた。その時、後ろから視線を感じた。
 振り返ってみた。しかし、そこには何もなかった。帽子を被り直そうとして、帽子をしっかりと持った。そして、あることに気づいた。
 まるで銃弾で打ち抜かれたかのように、後ろに穴があいていたのだった
私はそれを見てただならぬ気配を感じた。そして、この町から早く脱出しようと思ったのだった。

 私は走った。どこまでも。どこまでも。そして、壁で囲まれた行き止まりに来てしまった。私は壁を登ろうとした。しかし、掴めない。まるで空気をつかむようだった。何度かやっている内に、バランスを崩して転んでしまった。

  オ     ド        ロ          イ          タ

 自分の前に壁。後ろにも壁。めり込んでいた。痛くはなかった。

 そうしていると、そばに少女が来た。 そして、こう言った。
「あなたもあの線を越えてしまったのね。生と死の境のあの線を。」
263262:2007/03/28(水) 16:18:59
スマソ 次のお題は
 「崩壊した海」
2641 of 2:2007/03/29(木) 01:24:51
「海だあ!!」
俺は人目もはばからず叫んでみた。だってここは海外。
あの水色の海が反射してまぶしい。視界からははみだして、水平線が遠い。
あの金でここ一面が全部俺のものになるだなんて、まったく、なんということだろう。
とはいえ正確には“今、俺達の”海だ。
雄介、香子、聡、山崎。
そして俺。
「マジ、山下ありがとな!」
「ほんと、感謝しているんだからね!」
「山下ネ申!!」
「ネ申降臨!!」
自慢じゃないがこの案は、俺のおかげだ。詳しくは内密だが、一口で言えば不法入国ってやつをやってみせたのだから。まあ、日本まで帰るルートもしっかり確保してある。飛行機なんか乗らなくても、土日に遊びに来られる。
「まあな、感謝しろよ。今、ここはおまいらの庭だ――!!」
「やっほーい!」
五人でビーチバレーもやった海で泳いだ。もぐって見た魚はキラキラ光って宝石のようだったし、全員で遠くの日本を眺めたりもしてみた

俺達五人は、無邪気に遊んでいるように見えたんだろうな。
そのときまでは。
2652 of 2:2007/03/29(木) 01:25:49
俺は一人、浮き輪を担いだまま浜辺を離れた。さっきからずっと、俺達をじっと監視しているやつらがいる。
不法入国をした、俺達を。

俺はどうにかしてさりげなくそいつらとコンタクトをとらなくてはならなかった。
どこまで伝わっている?
些細なミスが、たちまち最悪の結果を呼び寄せる。

最初の話題はなんでもいい。

すれ違いざまに、俺は言った。「ここにコイン落ちてませんでしたか」
彼らは言った。「うまくやったな」
俺はごくりとのどを鳴らした。
「ま、まあな」
彼らの表情に、含み笑いが増えた。「じゃ、約束の金だ」
俺も安堵せざるを得なかった。
「おう。――後は任せた。極秘裏に、あいつらを処分しろよ」

あいつらはまだ、無邪気に遊んでいるように見えた。
監視していたやつらは、4人に銃口を向けた。
266264-265:2007/03/29(木) 01:33:34
忘れてすいません。次は「ゲームの裏」で。
267名無し物書き@推敲中?:2007/03/29(木) 18:40:25
 4人の女がいた。彼女たちの前には丸いテーブルがあり、ディーラーがカードを無機質に並べていく。
 それが終わると彼は四面サイコロを振った。その数字に女達は複雑な表情をする。
 やがて彼女たちは2枚ずつカードをめくり、元に戻す作業をおこなった。同じ数字が揃うとカードを自分の手元に引き寄せた。
 神経衰弱のようだ。

 ここはどこなのだろう? 部屋の広さは20畳くらいだろう。真っ赤な絨毯に趣味の良い調度品が高級感を漂わせている。
 部屋の中心には、ぽつんと1つだけ丸テーブルがあり、5人がそれを囲んでいる。
 窓は1つもなく、部屋の隅には貧相な扉が1つだけ用意されている。
 地下室なのだろうか?

 彼女たちは黙々と神経衰弱を続けている。
 勝敗をディーラーが記録しているようだが、勝者も敗者も感情を表に出すことは無かった。
 ただ淡々と行為を繰り返すだけ、そう仕事的であった。

 目を凝らしてみると、並んでいるトランプには傷が付いているようだった。回数を重ねるごとに傷は増えていく。
 よく見ると、彼女たちも目を凝らしてカードを眺めていた。
 どうやらカードの裏に傷をつけることは許容されていて、それが神経衰弱にゲーム的要素を与えているらしい。

 ゲームの裏では一体何が動いているのだろう?
 金だろうか? それとも恋人や愛人の類だろうか?
 機械的なプレイの中に、彼女たちのとても大切な何かにかける思いが見え隠れしているような気がした。

 そんなことを考えていると、女達がこちらを見ていた。
 カードの裏を見つめるときと同じように目を凝らして。
 こっちを見ていた。


 次の御題は
 「日本経済の今後」
 でお願いします
268名無し物書き@推敲中?:2007/03/29(木) 21:23:48
おっどれぇた〜!
269名無し物書き@推敲中?:2007/03/30(金) 23:13:12
>>268
どこ?
270名無し物書き@推敲中?:2007/04/01(日) 10:24:54
壊れた時計は何時までも時を刻む代わりに正確さを失った。
先端が欠けたナイフは切れ味が落ちた代わりに脅しに使うのにはもってこいの道具になった。
夢を失った僕たちは現実的に生きる事にくだらない価値を見出した。

営業の途中で立ち止まった信号待ちの人ごみの中。僕たちは一体どこへ向かおうとしているのか。
会社の歯車の一部として働いて、家族のためだとか、社会貢献のためだとかいろいろと理由をつけて働いて。
君たちは一体どこへ向かおうとしているのだ?何のために働いているんだ?
信号が青に変る。人々はまた歯車の一部として歩き始める。僕の思考も、大いなる流れの前においては砂粒程度の抵抗しか表さなかった。
今日もあそこと、ここと、ああ、あっちも回らないといけないな。
思考は単調な繰り返し。今日も明日もそのまた未来も。僕たちは働き続ける。
何の実感もないままに。データ化されたお金を貰って使って、僕たちは生きていく。

壊れた電球は部屋を明るく照らし出さない代わりに漆黒を与えてくれるようになった。
壊れた歯車は一緒に大きなものを回さない代わりにアンティークとして楽しまれるようになった。
壊れた僕たちは今日も変らない代わりに平穏な毎日をおくっていた。
でも。
壊れた社会はもう元には戻らない。壊れた僕たちはもう元には戻らない。
壊れたこの国はもう明日が分からない。
この国の経済の行く先を、周りの諸外国が行っている戦争を、壊れた僕たちはどうすることも出来ない。
航海し始めたこの海が凪いでいるのか嵐に覆われているのか。
僕たちには知るよしもない。そして、知る必要もない。
だって僕たちは壊れているのだから。

青に変ったはずの信号機は、ほんの二、三秒で再び赤く点灯した。
走り去っていく人ごみを眺めながら歩いていたキミは、容赦なく発進した自動車に吹き飛ばされてしまった。
壊れた僕たちは淡々と営業先へと向うのだった。


次、「限りなく緑茶に近い紅茶」で。
271名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 03:43:32
外は雨。早く終わった仕事帰り、一人でカフェに入った。雨の音が響いている、だけどカフェの中は湿気などほとんど感じられないぐらい透明な空気だ。とても心地よい。
「紅茶を一つ。」
少し濡れたコートを脱いだ。
「少々お待ちください。」
ちらりと見た店員は、なんだかニヤニヤしていて、その顔は近所の生意気な野良猫に似ていた。
チクタクチクタク。やけに店内に一つだけある時計の秒針の音が気になる。不思議に思っていたが、この店には何もBGMが流れていないのだ。とても静か。
「お待たせいたしました。紅茶でございます。」
さっきの店員がやっと来た。やっぱりニヤニヤ笑っている。
「あぁ、ありが……あれ?私は紅茶を頼んだのだが……」
目の前にあるお茶は緑色だ。
「ハイ、紅茶でございますよ。」
店員は繰り返しそう言った。だがどう見ても緑色だ。さらに香りを嗅いでみた。「どう考えてもこれは緑茶だろ!どうなってるんだ」

早くくつろぎたいのにオーダーを間違え、さらにはそれを認めないなんて!とイライラがだんだんこみあげてくる。
「まぁ、飲んでみてくださいよ、紅茶ですよ。」
客が怒っているのに、まだ店員はニヤニヤしている。怒りを押さえながら、どう見ても緑茶な飲み物を少し口に含ませる。
チクタクチクタク。さっきの時計の秒針の音が、やけに早く聞こえる。そんなものは変わるはずがないのに。

「やっぱり緑茶じゃないか!もういい帰る!」
僕はまだ濡れているコートを取り、席を立とうとした。
「待ってください旦那!もう一度飲んでみてください、あくまでこれは紅茶なんです。そう思って飲んでみてやってください。」
ずっとニヤニヤしていた店員の顔つきが変わり、少し焦っている。
座る気はなかったのだが、突然立ちくらみがして、座ってしまった。そして近いはずの入り口のドアがとても遠く感じる。そうかと思ったらドアがぎりぎりまで近寄ってきたように感じた。何かゴムのように店内が伸び縮みしているかのようだ。
272名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 03:46:46
めまいがする。
「じゃあ……」
そう言って、僕は再び飲んだ。不思議な事にその味は紛れもなく紅茶だった。
「ほらね、美味しいでしょう?」
またニヤニヤしている。コップの中で揺れている水面は確かに緑色。
「確かなものなんて、思っているより少ないのさ。人間は少し、色々と決めすぎだよ。」
店員の声がエコーがかって響いて、意識が急激に下降していくのがわかった。


気がつくと近所の公園のベンチで寝転んでいた。まだ月は隠れていない。片手には缶の紅茶が握られている。頭が上手く回らず、今の状況が理解できない。

「にゃー」

びっくりして声のする方を見ると、もう水の止まっている噴水の上にあの野良猫のシルエットが見えた。暗くて顔が見えないが、やはりニヤニヤしているように見えた。

次のお題は「伝染する愛」
273名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 03:57:14
ツンデレ殺人紅茶もの書いたのだが、もうレスした人がいたか
かなり酷い出来だったから助かったよ……
274名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 04:02:52
先に書いちゃってごめんorzよかったら載せちゃえ〜
275名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 07:09:39
いや、今回は遠慮しておきます。
本当に出来が悪いので……
276名無し物書き@推敲中?:2007/04/02(月) 16:09:07
じゃあ次回作に期待しておきます。ガンガレ
277名無し物書き@推敲中?:2007/04/03(火) 13:20:53
「好きだよ」
 彼女が囁いた瞬間、僕は恋に堕ちた。
「好きだよ」
 僕も囁いた。彼女は微笑んだ。僕らは幸せだ。

 こんな幸福があるとは思わなかった。足が地につかない気分というものを初めて知った。
 僕は募金をした。電車で席を譲った。何も苦にならなかった。世界中の人すべてが幸せであればと願う。
 あそこの寂しそうなお爺さんも、不機嫌そうなレジのおばさんも、ガンを飛ばしてくるチンピラも。
「好きだよ」
 僕は囁いた。お爺さんが笑った。
「好きだよ」
 お爺さんが囁いた。おばさんが笑った。
「好きだよ」
 おばさんが囁いた。チンピラが笑った。
 僕らは幸せだ。

「好きだよ」
「好きだよ」
「好きだよ」
 魔法の言葉は世界中を巡る。すべての争いが止まった。

 彼女が他の奴と歩いていた。仲良さそうに手を繋いで歩いていた。僕は包丁を買った。邪魔な奴を取り除く。再び、彼女に囁いた。
「好きだよ」
 彼女が微笑み、僕らはまた幸せになった。手を繋いで歩く。
 お爺さんが僕の前で笑っていた。手に包丁を持っている。その向こうでは、おばさんがお爺さんを愛しそうに見詰めていた。チンピラが隣にいる。

「好きだよ」
 魔法の言葉は世界中を巡る。



次は「回転運動は止まった」
278名無し物書き@推敲中?:2007/04/06(金) 02:10:54
 紫陽花の季節が終わり、やっと天気も安定し始めた頃、奴は殺された。
 水を吸ってしまい、すっかり重くなったジャンバーを脱ぎ、僕は妻に話しはじめた。
「地球ゴマを知ってるかい?」
「地球ゴマ? いいえ、知らないわ。」
「まず地球儀を想像してほしい。一番上と下、つまり北極と南極の位置にマイナスドライバー用の釘の頭のような部
品がついている。赤道にあたる真ん中にはちょっとだけ幅のある輪っかがついている。釘の頭みたいな部分と金属
の輪っかは球形の金属棒で繋がっている。これが外部構造だ。そして、その中に駒が入ってる。」
「駒って、お正月に回すような駒のことですか?」
「そうだよ。ちょっとだけ形状が違うけどね。上と下の釘の頭の部分を真っ直ぐに繋ぐように円柱状の細長い金属棒
が伸びている。―――ただし、この金属棒は釘の頭の部分に固定されていないのがミソなんだ。自由に回るんだね。
そして丁度真ん中の所にカラフルな円形のパーツがある。丁度赤道断面を表すような感じでね。これが地球駒の全
てだ。」
「なんかよく分からないわ。どうしてそんな複雑な形をしているの?」
「本物を見せることが出来ればいいんだけどね。そんな形をしているのは、駒の回転運動を出来るだけ長く続けさせ
るためなんだ。紐を円柱状の部分に巻いて、駒を回すのだけれど、円柱状の部分は釘の頭みたいな部分に固定されて
ないから、内側だけが回る。内側は宙ぶらりんだから、摩擦はほとんどない。だから地球駒は普通の駒よりずっと長
く回り続ける。」
「? 内側しか回らないの? 微妙な駒ね。」
「でも、ジャイロ効果のせいで内側が回っている間は倒れない。立っている間は外側も少しだけ回る。ほんの少しだ
け内側に触れていてるのだろうね。そして、回転運動は止まったときにね―――駒を、倒す」
279名無し物書き@推敲中?:2007/04/06(金) 02:12:36
「ほんの少しだけ触れていて、それに影響される……か。暗に私のことを言っているのかしら?」
「君はどっちだと思う?」
「え?」
「僕が君のことを例えているのかどうか。そして君は駒の外側なのか内側なのかか。」
「前者はイエスかな。そうじゃなかったら後者の質問の意図が見えないもの。」
「じゃあ後者は?」
「……」
「僕の痛みが君に伝わり、君は僕の代わりに奴を殺した。だから僕も君のために何かやらなくちゃいけないと思う
んだ。」
「そんなの!」
 彼女が叫んだ。整った顔を歪めて。今にも泣き出しそうなくらいの真っ赤な顔。
 こんなに表情を面に出した妻を見るのは、いつ以来だろうか……。
「地球がなんで太陽の周りを回っているか知っているかい? 太陽が地球を引っ張っているから。そして地球が太陽
から離れようとしているから。この二つのバランスが取れているから。でも、釣り合いが取れていればいいなら、回
っているる必要はないよね。でも、回っていない惑星はない。なぜなら回っていなければ、ちょっとした変化で、太
陽に突っ込むか、太陽から離れて行ってしまうから。回転運動しない惑星は長続きしないんだ。」
 僕は続ける。
「だから―――そう。だから、君に決めて欲しいんだ。僕が君のために何をしなくちゃいけないのか。」



次のお題は「10月のお花見」でお願いします
280名無し物書き@推敲中?:2007/04/12(木) 16:33:12
久しぶりの青空の下で僕は公園のベンチに
身を預けながら静かに空を眺めていた。
寒い冬が終って、春を感じるような季節である。
この町に着てからもう随分経つ。
あれは4年前の1月、突然の海外派遣だった。
それから僕の慣れない海外生活が始まり
忙しい日々を過ごしてきた。
そしてついに今年の暮れに東京の本社に戻ることが決まった。

思えば毎年、この公園で桜を見てきた。
この10月に咲く南半球の桜が僕に日本を思い出させてくれた。
日本の美しさ、家族の優しさ、人の温かさ。
多くの思い出と共に僕は桜を眺めていた。

この桜が満開になった頃、僕はきっと日本にいる。
何度も夢に見た、懐かしき故郷に僕は立っている。
そして僕をたくさんの人が待っていてくれる。
この桜が満開になった頃、新しい未来が僕を待っている。

そんなことをおもいながら僕は静かに空を眺めていた。
柔らかな風が吹き抜けていった。
春はこれからやってくるのだ。



批評していただけたらうれしいです。
次のお題は「独り酒」でお願いします。
281名無し物書き@推敲中?:2007/04/14(土) 20:15:15
この三語で書け! 即興文ものスレ 第二十一ヶ条
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1158761154/
怪談文藝【三題噺スレッド】八百文字
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1160311130/
よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1140421498/
お題画像を描写するスレ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1175876477/
20行以内のショートショートを作れ! Part2
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1128159354/

お題スレ4つ。
ショートショートスレは自由に書きたい場合や、先を越されてしまった作品の投稿用にでも。
282名無し物書き@推敲中?:2007/04/15(日) 02:22:38
満天だった桜も半ばは地面を覆い、まるで白い絨毯のようだ。
その上にはとても無粋な、青、白、赤、黄色とごた混ぜになったビニールシートのマーブルカラー。
花見は今宵が最期かと、強力なライトに照らし出される葉桜の下で風流とはほど遠いらんちき騒ぎ。
根元の地面を踏み固められた桜も来年はなお一層、私も生き物なのだと主張する事だろう。

無理矢理連れてこられた花見だが、下戸の私は逃げ出してペットボトルのお茶と剣先スルメ。
満開の桜はすでに堪能したし葉桜の今は少々みっともない姿ではある。若い葉だけになった時にまた来よう。
渋いお茶と餡がたっぷりの和菓子などを用意して。一人で来るのも、物静かな友人を誘うのもいい。

そしてしばし日が過ぎて病院の待合室。毛虫に刺されまくった私は、独り酒饅頭を囓っている。


次は「傘が落ちてきた」でおながいします。
283名無し物書き@推敲中?:2007/04/15(日) 08:47:32
落ち込んでしまったから、全てを投げ出して散歩に出かけることにした。ちょっと大きめの黄緑色の傘を差して早朝の町へ。目的地なんてないけど、自由きままな極小旅行。
軽快なリズムで傘を叩く春の雨。少し寒いけど、何だか楽しい。子どもの頃、長靴で水溜まりに飛込む時のような、好奇心と悪戯心の混ざった感じ。訳もなくわくわくするんだ。
家を出て、町を歩いて、のらりくらりときままな散歩。右も左も見慣れた町並み。だけどなんだか素敵に見える。雨が汚れれを流したのかな? よく分からないけど、とってもいい気分。雨ひとつでこんなに世界が変わって見えるなんて! 突然スキップがしたくなった。
ぶらりぶらりと散歩道。団地の中にやって来た。最近できたたっかい建物。小高いところに建ってるんだ。
ずっとずっと町には合わないな気がしてた。でも、今日は違う。雨に打たれた建物は何だかちょっとシックな感じ。ほどよく湿って男を上げたみたいなんだ。
……あ。雨、止んでる……。
傘を閉じて、後ろ手に組んで、少し目を閉じる。鼻唄なんかを歌いながら、一歩二歩、恐る恐る進んでみる。澄んだ空気が体の中も外も通り抜けていくのがとっても気持がいい。悪いものを洗い流してくれるみたい。
町を一望できる団地のスポット。綺麗になった町並みに、何だか親近感を覚えた。空を見上げた。灰色に染まった空一面。キラッと光って、光が差し込んで。天と地上を繋ぐ一筋の道。世界が始まる時のような、変な神々しさがあったんだ。
うっとりと眺める自然の神秘。いつの間にか割れた灰色の間から澄みわたった蒼がのぞいていた。何だか今日一番の最高な気分! どうしてかな、胸が一杯になって、すっごい幸せ!
よしっ。また頑張りますか!
気合いを入れて、満面の笑顔。大丈夫。世界はこんなに美しい。だから、きっと大丈夫。
立ち去ろうとした雨上がりの団地の中。不意に背後で音がした。
驚いて振り返って、そこに咲いていた真っ赤な傘。一体どこから……? 右を左を不思議に思って眺めてみて、最後に屋上を見上げてみた。
落ちていく人影と一緒に、視線は傘に激突した。



「トイレットペーパーの意地」
284名無し物書き@推敲中?:2007/04/24(火) 23:23:16
あげときます……
書きにくいお題かもしれませんが、お願いします。
285名無し物書き@推敲中?:2007/04/25(水) 03:40:38
 店頭で山積みにされ、いつも窮屈な思いをしていた。僕は誰かが買ってくれるまで、ずっとここでこうして静かにしているのだ。
 もう何日経っただろうか。外側にいつやつらは、どんどんと外の世界に運び出され、与えられた任務を遂行しているだろう。
 早く僕も外に出たい。仕事がしたい。
 そんな思いが通じたのか、僕はあるおばさんの手によって、めでたく外の世界に出ることができた。もじゃもじゃした頭が気になるが、とにかく今はこの喜びを肌で感じるほうが有意義だろう。
 そして、僕は洋服を剥がされて、仕事場に装着されることになった。僕の芯は結構大きめなんだが、ここの装置は旧型で、芯よりももっと細い棒で支えられてしまうことになった。
 ちょっと残念な気もするが、仕事ができるんだ。これくらいは我慢しないと。
 最初に僕を使ってくれたのは、小太りの冴えないおじさんだった。お父さんかな。便座で力む姿はどこか貫禄がある。
 いよいよ僕の出番だ。
 勢いよく引っ張ってくれよ!
 だが、そんな思いとは裏腹に、お父さんは15センチくらいしか引っ張ってくれなかった。ケチンボ。
 次こそ思いっきり引っ張ってくれよ。ついでに、折り畳んでモミモミしてくれると嬉しいんだけど。
 お、今度は買ってくれたおばさんだ。店頭でボーっとしていた時、隣にいたベテランの再生紙さんが教えてくれた。
 おばさんは遠慮を知らない、と。
 期待するなというほうが無理だろう。さあ、勢いよく僕を引っ張ってくれ。いや、ください。
 ……結果はお父さんの時と同じだった。15センチくらいだけしか引っ張ってくれなかった。
 原油価格が高騰しているから、節約でもしているのかな。
 それとも、あまり綺麗に拭きたいという願望が少ないのかな。
 買ってもらっておいて、こんなことを言うのは嫌だけど、どうせならもっとズルズル引っ張ってくれる買い主さんにあたりたかったな。
286名無し物書き@推敲中?:2007/04/25(水) 03:41:21
 うじうじ考えていると、今度は鼻水を垂らした小汚い子どもが来た。
 子どもってのは遠慮を知らないらしいし、このガキ、否、このお子様なら僕を目いっぱい引っ張ってくれるかもしれない……。
 よーし、そうだ、もっときばれ。
 おっ! 出たな!
 いよいよ俺の出番だ。
 わくわくしながら待っている僕だったが、クソガキときたら、僕を使わないままトイレから出て行った。不衛生にも程があるだろう。まったく、おばさんもお父さんも躾がなっていないな。クラスメイトにバレたらイジメの対象になるぞ。
 
 色々考えた末、この家で僕を存分に引っ張ってくれる人間はいないと、悲しい結論が出る結果になった。
 僕だって一枚前のトイレットペーパーなんだ。みくびるなよ!
 あくる日から、僕はある反抗をすることにした。

「お母さん、あのトイレットペーパー、ちぎると反動ですぐに切れめが蓋の奥にいっちゃうんだ。なんとかならんかね」
「そうねえ……。やっぱり今まで使ってたものに変えましょうか。ちょっと高いけど、お父さんのお小遣いから引けば、なんとかなるし」
287名無し物書き@推敲中?:2007/04/25(水) 03:42:35
ああ、次のお題を忘れてしまった……。
「隅っこのけしごむ」
288まあ:2007/04/25(水) 16:54:45
やぁ、こんにちは
新入りかい?
まぁキョロキョロしなさんな。ここに居るのはイワクつきばかりだよ。
なに、怖がらなくても大丈夫。ここに居る事さえ忘れられちまうんだから。
「オ…オレ…いっぱい刺したんだ!血が出て…それで…きっと死んだんだアイツ」
そうか、そうか、そんなつもりで生まれて来たんじゃ無いのになぁ。
あっちの震えてるの居るだろ?アレも殺っちまったみたいだぞ。
なぁに巡り合わせが悪かったってこったなぁ。
お…また、新入りか?
あ〜この前の…帰ってきたか?
「知らんって言われたわ!こんなに血だらけなのに!全く信じらん無いわ!」
知らんか…言い逃れだねぇ。どこまで通るか。アンタの場合、他にも有力なのが居るんだろ?
まぁったく、使い途を間違っとる奴らが多くていかん。
ホレ、さっきの刺しちまった奴、こっち来てみ。
お前さんの意識の中から、野菜や肉を切る包丁だった部分を、ワシが消してやるよ。
そうすりゃ、この証拠品置き場でも、ちったぁ苦しみも薄らぐってもんだ。
まぁったく、違う使い途をする輩が増えておるわぃ。



次は空のかけら
でお願いします。
289名無し物書き@推敲中?:2007/04/29(日) 03:26:04

川の方から飛んできたトンボが目の前で旋回すると
キャップの先に止まった。

僕は目だけを動かしトンボの様子を観察すると
縞々の胴体を震わせ羽を休めている。

――汗の匂いに惹かれたのかな?

太陽は中空にあって下手糞野球部のライトという
動かないポディションでも滝のような汗が
あとからあとから噴いてくる。

僕は野球のことを忘れ目を閉じ耳を澄ますと
仲間達の掛け声が消え、自分の鼓動が
世界の中心にあった。

夏、僕の青春、もどらぬ時

ブンという音と共に飛び立ったトンボを
見上げると空のかけらが見えた。
青い空に入道雲、太陽きらめき。

「ライトーーー!!!」

金属バットの鋭い音が響き渡った。


次は
音楽を聴きながら
で。
290名無し物書き@推敲中?:2007/04/30(月) 02:10:07
音楽を聞きながら


僕の指先がテーブルに触れる。冷たくて、固い。
今度は僕の拳がテーブルに当たる。ガツン、と鈍い音をたてて。
やはり冷たくて固いので、僕の拳は反発され、想像以上の痛みが帰ってくる。
少し力を入れすぎたようだ。
耳にはヘッドホォン。聞き慣れたロックが、ずっと僕の耳を塞いでいる。
でも聴覚が鈍くなっているから、力の入れ具合を間違ったのでは、ない。
たぶん感情が高ぶったからだ。人間はそういうイキモノだから。
「何だっていうのよ!」
遠くの方で女性の高くて細い声が聞こえる。いや聞き間違いかもしれなかった。
そんなこと、どっちだっていいんだ。
華奢な身体、白い肩、細い首、赤い口紅、怒りと恐怖を表した顔。
それがスローモーションのように、流れて見えた。
相変わらず、耳には自由を唄うロックが聞こえている。

暫くして僕は部屋を出る。ヘッドホォンを外すことは一度もなかった。だって何も、聞きたくないのだもの。
もう遠くの方からも高く細い声は聞こえない。うなだれた青白い腕が見える。
また僕は力加減を誤ったようだ。
それはこの耳を塞ぐ音楽のせいなのか、それとも僕の気持ちの問題なのか。
まぁ、そんなこと、どっちでもいいと思う。
291名無し物書き@推敲中?:2007/04/30(月) 02:12:22
次のお題は「眩しすぎる他人」で
292名無し物書き@推敲中?:2007/05/01(火) 03:41:31
あげあげ
293名無し物書き@推敲中?:2007/05/01(火) 03:58:14
ちっ
294名無し物書き@推敲中?:2007/05/04(金) 01:58:00
 ここには何もない。白い机、黒い椅子、灰色のベッド、二つの窓、二つのカーテン、床、扉、
それ以外何もない。伽藍とした部屋のベッド上に男がちょこんと座っている。男に名はある。
しかし必要は、ない。
 彼の髭は無精髭と呼ぶには伸びすぎであり、意図的に伸ばしていると呼ぶには無造作すぎ
る。もみあげと顎髭は完全に繋がっており、頬の辺りも一面に髭が伸び散らかしている。その
ため彼の容姿から年齢を推測することは非常に困難であり、十人に彼の年齢を尋ねれば十人
とも全く違った年齢を予想するであろうことは、容易に想像できる。そしてその予想の大部分は
彼の実年齢よりかなり高い年齢であろう。精気を失ったその瞳から若さなど微塵も感じられない。
あるいは、髭が顔を覆っているだけ幾分マシに見える可能性さえ、ある。
 彼には何もない。何もない部屋、呼ばれない名、それ以外何もない。家族もない、恋人もない、
親友もない、友人もない、知人もない、仕事もない、学校もない、金もない、理想もない、思想もな
い、夢もない、勇気もない、元気もない、立ち上がる気力さえない。
 不意に、彼は古い人間が残した言葉を思い出す。『生きるとは、死んでいないことだ。』、なんて
曖昧な言葉であろうか。 死んでいないから生きているのか、生きているから死んでいないのか、
どんな意図が込められた言葉なのか、全く伝わってこない。曖昧過ぎる、曖昧すぎだ。この言葉
の形を借りて、彼が言葉を残すなら、『眩しすぎる他人とは、閉じすぎた自分』、と、こんな感じだ
ろうか。曖昧だ、こんな言葉じゃ救われない。しかし立ち上がることもできない。彼にとって、あま
りにも魅力的すぎる、何もない世界が、ここに、ある。


次のお題は「世界の隅」で
295名無し物書き@推敲中?:2007/05/09(水) 11:40:35
あたしはノブに訊いた「こっちてあってる?」ノブは返事をしない。
ずーっと向こう迄舗装された道が続く、空は今日も覆われてる。あたしは第28地球地域の住人、第28って事から分かるように、第2から今では400位まで地球地域がある。
探査結果何とか調整出来る星に、覆いを作り中の環境を地球の過しやすい地区に調整する。そこに地球から或いは他の地球地域から移民手続きをして移り住む。
「ほら、アレ」やっとノブが話し出した。あたしはノブって名付けたけど、もっと難しい名前や恐ろしい名前を付けてる人も居る。ノブはイワユル武器だ。あたしのノブは小型の拳銃。
やっと見えてきたターミナルに歩を進めるあたしにノブが言う「本当に来るのか?」それなんだよね!第279地球地域からのお客を迎えに来たあたし、この地域を差別する訳じゃ無いけど、全くもって悪評高い地域でさぁ、
昔、犯罪者を送り込んだ地域だって本当か嘘か定かじゃ無い噂もある。時間や約束は守らない利己主義、環境が違えばお国柄資質も変わって来るけどね。
ターミナルで出迎えの手続きをして、更に枝分かれした複雑な通路を迷子にならないよう進む。
「俺様の雷(イカズチ)の威力を見ろ!」たまに居るのよね、新しい地域に来てハイになって武器使う人が、雷さんも気の毒に。あたしは更に枝分かれの奥へ進む、出迎えが無いと地域に入れない規則だから、船毎のゲート迄行かなくてはならない。
グヮヲン!バリバリ!ビーー!揺れた!ビービービー警報が鳴り響く!「行く?戻る?ノブ」「通路がやられてたら戻らない方が良い」「見たとこ分からない」あたしは言いながら駆け出していた。前へ。うわ!煙?戻るべきだった!と思うと同時に凄まじい力で吸い出された。
穴の空いた所は自動修繕がなされ、気付いたあたしは地域のゲート外に居た。周りに数人同じ様に吸い出された人が居るがこの手の事故で救助は無い。どさくさに紛れて入り込もうとする輩が居るからだ。
「どうしよう?ノブ」訊いてみた「さぁ参ったね」環境調整してない外で生存は難しい、勿論外からの連絡手段は無い。「ココが世界のハシかぁ」近くのおじさんが呟いた。

次は、竹藪と潮干狩 でよろしく
296名無し物書き@推敲中?:2007/05/10(木) 02:35:09
「もうええよ」
「もうええんかいな」
「ええゆうとるがな」
「そないどなるなや、ほんまわややわ」
ざくりざく、と巨大なシャベルを扱いながらタカヤマミツルは潮砂を掘る。一振りでミツルの背の丈程の穴が空き、ドリーマー蟹の子供がわらわらと顔を出す。
汗ばむ額を葬竜紋の手拭いで拭く間に穴は波の打ち返しで土砂に埋まってゆく。
どこか遠くで鉄と鉄を打ち鳴らす音が聴こえる。
「おまえどこや」
「あ?なんて?」
「おまえどこにおんねんて。さっきから手当たり次第掘り返しとるけど、わやや」
「まあ気長にいこやないか」
「ほらお前はそーやって膝かかえとるだけやさかいええけどなぁ」
じりじりと延命措置を受けた太陽が鳴く。無言で汗を拭く。シャベルを振るう。
十年前からいる女がまた話しかけてくる。
「しかしお前もあわてものやのう」
「なにが?」
「昨日もゆうたやろ。
結局こんかったで、怪獣」
「らしいな」
「ほんまに、先走りすぎや」
「絶対くるおもたんやけどなぁ」
「まあおかげで老けんですんだみたいやけども」
「おお、見た目はまだまだ多分十代」
「たぶん?」
「ここ真っ暗やでみえん」
「あほか」
「はよあけてー」
「うっさい」
竹藪の向こうに光が見えたとミツルが聞いたのはそれから八時間後の放課後だった。

次は「コンクリート・キッヅ」で。
297名無し物書き@推敲中?:2007/05/10(木) 10:11:28
廃墟のビルからクツクツケタケタ
子どもの声が聞こえくる

光も途絶えるビルの中
広がる落書きビールの缶
居場所をなくした若者たちの
最後の最後の隠れ家だった

ビルの奥からクツクツケタケタ
嘲るように笑い声

ある日闇から聞こえてきたのは
こっちへおいでと誘う声
若者たちは怖がるが
一人の少年踏み出した

クツクツケタケタ子どもの声が
クツクツケタケタケ響く闇

一人奥へと少年は
勇気を持って踏み出した
闇の外から待つ仲間たち
叫び声を聞いたんだ

クツクツクツクツ……闇の声
クツクツケタケタ……響く声
ケタケタケタケタ……廃墟のビルに

コンクリート・キッヅは潜んでいる


次回「青い太陽」で
298名無し物書き@推敲中?:2007/05/11(金) 20:07:36
おはようと言っても、おやすみと言っても、太陽からの返事はない。
別に返事が欲しくて言っているわけではないので、独り言でかまわないと思っている。

「太陽〜」
猫なで声でそう呼びながら、俺は太陽をレンズごしに見つめる。
一方で太陽は、その声に応えようとはせず、いつもどおりのマイペースだ。
「こっち向けよぉ」
と言っても、なかなかこっちを向いてくれない。
気まぐれでこちらを向いてくれるのが、十回に一回程度だろうか。
写真の中の太陽は、いつもそっぽばかりを向いている。

「太陽、美味いか?」
俺がそう訊いても、太陽からの返事はない。
あまり味わって食べているようには見えないが、きっと美味いと思っているはずだ。
そうでなければ、旺盛な食欲の説明がつかないし、何より俺がそう思っていたいのだ。

いくら素っ気なくても、太陽はとにかくかわいい。
太陽といるとき、おそらく俺はデレデレした顔をしているだろう。
他人が見たら笑われてしまうかもしれないが、自然と顔の筋肉が緩むのだから仕方がない。

ある日、遊びにきた友人がその姿を見て、一言「バカじゃねえの」と言った。
太陽がいかにかわいいかを話し、反論する俺に、友人は完全に呆れ顔だ。
怒った俺が「太陽に謝れ」と言うと、嘲るようにこう言った。

「どうして青い金魚ごときに謝らなきゃいけないんだ。お前、頭おかしいんじゃないのか?」


次、「ピンクのチャーハン」で。
299名無し物書き@推敲中?:2007/05/11(金) 21:56:47
『桃色炒飯』
私は、メニューの中にあるその言葉に強く惹かれた。
どんな炒飯だろう。『桃色炒飯』と言うのだから、多分ピンク色のチャーハンなのだろう。そのくらいは想像出来る。しかし、味の方はどうだろう。まったく想像出来ない。
私は店の中を見渡し、『桃色炒飯』を食べている人がいないか探した。
しかし、『桃色炒飯』を食べている客は一人もいない。人気は無いようだ。
私は『桃色炒飯』の注文をためらった。
美味しくなかったらどうしよう。値段を見ると580円だ。もし美味しくなかったら、580円を捨てる事になる。
私は悩みに悩んだ。優柔不断な自分が嫌になった。
そして、しばらく悩んだ結果、私は注文する事にした。『桃色炒飯』を。
「……すいません。『ももいろチャーハン』を一つ」
オドオドした私の注文に、店員は元気良く返事をした。

「はい!『ピンクチャーハン』を一つですね?」



次のお題は『山と茄子』で。
300名無し物書き@推敲中?:2007/05/12(土) 00:21:44
『山と茄子』

侍は日頃から無茶ばかり言って周囲を困らせる主人に仕えていた。
ある日、主人は侍を呼びつけて言った。
「わしは新しい山が欲しい。そちが手配いたせ」
侍は困り果てた。遂に自分が無茶を言われる時が来た。
無理難題を押し付けられて憂き目に遭った物は数知れない。
考えあぐねた侍は、観念して主人の前に再び参り出た。
「主上の御所望、これにて御座います」
ざる一杯に盛られたそれを侍が差し出した。
「なんじゃこれは」
主人は意味を計りかねてたまらず尋ねた。
「山で御座います。茄子をざる一杯に盛って、山と茄子」
侍は即刻打ち首を言い渡された。
その後、主人が無理難題を言うと皆が侍に倣って
洒落で応えたので、主人は無理難題を言わなくなって隠居した。

侍は勇気に溢れる英傑だと、後々まで言い伝えられた。

next:「百回目は焼肉定食」

301名無し物書き@推敲中?:2007/05/12(土) 13:04:37
『焼肉定食』。
それがお前の好物だったよな。
外食する時は必ず『焼肉定食』を注文したな。けど、いつも最後まで食べきれずに残す。
仕方ないよな。お前は身体が弱かったし、病気のせいで食欲も無かったんだろう?それなのにお前は、病院で最後に食べた『焼肉定食』を、全部一人で食べきったよな。
お前が苦しそうに、「ごちそうさま」って言った時、俺は酷く悲しい思いがしたよ。
多分お前は、アレが最後の『焼肉定食』だって、わかっていたんだよな。だから無理して、全部一人で食べたんだよな?
お前が死んでもう一年経ったけど、俺は今だに、メニューの中にある『焼肉定食』を見るとハッキリ思い出すよ。お前の「これ食べたい!」って言う、元気だった頃の声を……。
だから今日は……。


司会者が叫んだ。
「さぁ大食いチャンピオン!記念すべき百回目の挑戦です!」
客席が盛り上がる。
司会者はそれを見て、満足そうに続けた。
「今度は一体何キロ食べるのか!?またも記録的な数値を叩き出すのか!?それでは発表してもらいましょう!百回目の挑戦を飾る、記念すべき食べ物とは!?」
司会者のマイクが、チャンピオンに向けられた。
チャンピオンは、一瞬悲しそうな顔をしたかと思うと、すぐに真剣な顔に戻り、そしてこう言った。
「百回目の挑戦は……『焼肉定食』です」
彼の目には、涙が滲んでいるようだった。



次は『怪獣の始まり』で。
302名無し物書き@推敲中?:2007/05/12(土) 14:52:40
『怪獣の始まり』

「せまいよ」…
慌ただしいいつもの朝だ。ママはボクに、サラダのトマトを残したらいけません!って睨みながら、早くお着替えをしなさいと言う。
だってトマトを食べなきゃテーブルから離れちゃダメなんでしょ?って目で訴えながら、ボクはハーイと返事をする。うーんトマトトマトトマトトマトと考える。このグニュってのが嫌なんだ…
ごちそうさまと言うと同時に憎いトマト一切れを口に入れた、そしてトイレにダッシュだ!ぺっ!ザァー!トマトは流れて行った。
着替えを大急ぎでして、ママに手を引っ張られ走るとバスが来ていた。おはようございますっ!今日のバス当番は、かおり先生だ。ボクがちゃんと座ってからバスは動きだす。ここでママに手をふるのを忘れちゃいけない。
バスはいつも通り幼稚園に着いた。靴を履き替え出席帳にシールを貼る、黄色い飛行機のシールを選びちょっとずれたけど貼った。
朝のお歌だ。先生おはよ皆さんおはよ!力一杯怒鳴るのが良い。
「小鳥もちっちと」…
後ろの子も怒鳴ってる。おはよーおはよーっ!次のお歌は今日は何かな?って待ってて、ボクは後ろの子と喋ろうと振り返った、アレ?ボク一番後ろだった!
うん!だって踵でおもちゃ箱コンコン蹴りながら歌ったんだもん。さっき後ろで歌ったのは誰だろう?ボクはおもちゃ箱を見つめた。
ゴソ…
今、動いた?何かな?カマキリでも居るのかな?かおり先生はカマキリ嫌いだから、見付けてそうっと先生にあげよう!先生キャーって逃げるんだ。
ボクはおもちゃ箱に手を突っ込んで、カマキリを探した。居ないなぁもっと奥かなぁ?と頭も突っ込んで、ガラガラとおもちゃを動かした。
え?くま?縫いぐるみの茶色のくまが、ボクの手を掴んだ。みんなが引っ張りあったり振り回したりするから、アチコチ歪んだり破れた所を先生が縫ったりしてある。
くまは歪んだ口を大きくあけた。凄く固そうな歯が見える。くまの歯ってジョーズみたいだ!びっくりしているボクの手をくまはもっと引っ張りボクはおもちゃ箱に入ってしまった。
ズキっ!ズキっ!痛い!
ボクはくまに沢山噛みつかれた。あんまり痛くて泣き叫ぶ事しか出来ない。


次は 鍵の幸せ でお願いします。
303名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 03:08:16
「鍵の幸せ」
 山中は高麗人参をかじっていた。パクポクと偏屈な音が六畳の部屋を満たした。
山中は少しだけ八百年前の事を思い出していた。窓から青い光が優しく差し込んでいた。

ビニール袋を口に充てて新宿一番街を闊歩していると、電話が鳴った。
「はい」
「山中昭人くんですか?」
「はい、そうですが」
「こちらは日本国政府です。
おめでとうございます。あなたは今世紀の《鍵》に選ばれました」
「あ、はあ、どうも」
「詳しい事は書類をお送りしますんで」
「はあ、あのちょっと声が大き」
「それでは!素晴らしきミレニアム・ツアーを!」
どうかと思う叫び声の後電話は切れた。
昭人は発作を抑えるため必死だったので、新宿一番街をさらにうろうろした。電話の事も当然忘れてしまった。
しかし三週間後、彼はロケットの中にいた。

「太陽系も何時から見えなくなったっけ」
かつて山中昭人だった物体は、形ばかりのぶよぶよした発声器官をそう震わせた。
やけにレトロな丸窓から外を眺める。
巨大な戦艦とすれ違う。挨拶か何かのつもりなのか、船首のライトがべかべかと二度光った。
恐らくあの戦艦の腹は、ありとあらゆる資源でぱんぱんの筈だ。
彼はそのことを知っていたが、いつ知ったことなのかは分からなかった。感情が泡のように消えていった。幸せだけは消えなかった。

次は「パーフェクト山田」で。
304名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 12:58:08
『パーフェクト山田』

昔から完璧な男を目指していた。
遊ぶことなんか目もくれず、ただただ勉強をしまくった。
頭は良くなったが、運動も出来ないと完璧じゃない。
今度は身体を鍛えた。集中できるように一人で、家で黙々と筋トレをした。
そして、俺は完璧になる。
どうだ!俺は完璧だ!もうただの『山田』じゃない!
『パーフェクト山田』だ!
俺は遂に完璧になった。勉強も運動も出来る『パーフェクト山田』。
だが、俺は気付いた。
目標を達成した俺は、この後どうすれば良い?勉強と運動を黙々としていた俺には、誰一人友達がいない。この喜びを分かち合う友達がいない。
『パーフェクト山田』になった俺は、友達がいない事が酷く哀しい事だと気付いた。

完璧を目指していたはずの俺は今、完璧から最も遠い所にいた。


次は『チーズと骸骨』で
305名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 14:04:24
なにげに良スレ
306チーズと骸骨@:2007/05/13(日) 15:47:26
「ねえ、アネット。今日の、晩餐は、突然の申し出だったけど、何かあったの?」
 カーテンを閉め切り、ロウソクの炎だけが妖しく辺りを照らすリビング。テーブルに並べられた豪華な料理を前にして、突然の晩餐会に招待されたカディナはついに口を開いた。
 リビングにはカディナ以外に招待された客の姿はない。ロウソクの炎だけが頼りの部屋には、息苦しい重圧が静かに漂っていた。厳かな雰囲気にカディナは少なからずの不安を募らせていた。
 アネットの身に、心に何かあったのではないか。耐えられない、辛い出来事があったのではないのかと。そう疑わずにはいられなかったのだ。
「何でもないわよ。ただね、突然あなたの顔が見たくなったの。幸せに暮らしてるのかなって」
 アネットはキッチンに向かいながらそう答えた。
「顔が見たくなったって……大学でいつも会うじゃない。本当に何かあったんじやないの? あなたらしくない」
「もう、カディナったら。本当に大丈夫よ。あなたに会いたくなっただけ。カディナにもあるでしょ? 不意に誰かに会いたくなる時が。……何だか急に虚しくなってただけよ。でも、カディナに会って良かった。元気になれた。本当よ?」
 そう、アネットは返す。口に出す声色にも、振り向いた顔にも明るさが滲出ていた。彼女自身が言うように、確かに元気にはなっているようだ。一つ一つの動作が軽い。目前に控えたパーティを楽しみにしている子どものように、無邪気な笑顔を振り撒くのだから。
 だが、この薄暗い部屋にその笑顔は少し不釣り合いだった。戦場に可愛らしい絵が描かれているかのように、そこにはある種のグロテスクさが漂っていたのだ。カディナは釈然としないものの、これ以上の詮索は無礼だと思い、仕方なく口をつぐんだ。
307チーズと骸骨A:2007/05/13(日) 15:49:05
 アネットが一際大きな料理が乗った皿をテーブルの中央に置いて、二人は血のように赤いワインを互いのグラスに注ぐ。
「乾杯」
 軽い音色を響かせて、二人はグラスを掲げた。そしてゆっくりと燕下する。アネットはそんなカディナの様子をじっくり眺めていた。
「……ねえアネット。このワインちょっと変な味しない? 鈍い……鉄みたいな不思議な味……」
 グラスを口から離し、カディナは眉間に皺を寄せて聞いた。
「あらそう? 今日初めて買ってみたのだけれど。私は好きだわ、この味。そんなに気にならないわよ」
 そうかしら、とカディナは再びワインを口にした。
「確かに、悪くはないかもしれないわね」
 グラスを置き笑顔で返したカディナに、アネットはとても嬉しそうに微笑んだ。晩餐の始まりだった。

308チーズと骸骨B:2007/05/13(日) 15:51:03
「ねえ、アネット。この料理、なんて言うの?」
 暫くの間、料理を食べてお喋りをして、二人は晩餐を楽しんでいた。本当に楽しんだ。そして話が頓挫した時に、カディナはテーブルの中央に位置する巨大な料理についてそう尋ねたのだ。
「チーズでトマトとポテトと……何かしら、不思議な肉を包んで焼いてあるのだけど……」
「これ? ああ、これはね、私が母から教えて貰ったものなの。大切な人に食べさせる、特別な料理なのよ」
「ふーん……とっても美味しいわ。特にこのお肉。何かは分からないけど、凄く美味しい。ねぇ、一体何の肉なの?」
 興味津々に尋ねたカディナ。アネットは朗らかな笑顔を称えて見つめ返す。
「何だと思う?」
 重く、そう言った。
 カディナは思い付くまま様々な肉の名を挙げた。が、アネットの首は一向に縦に振られる事はない。ただ微笑んだままカディナを見つめるだけだ。そんなアネットにカディナは次第に不安になってきた。
「ねえ、アネット。本当にこの肉は何なの? 牛でも豚でも羊でもない。鳥も鯨も蛙も蛇も。鰐だって違う。一体何の肉なの?」
「フフフ……秘密よ秘密。教えてあげないわ」
「ちょっとアネット。私たくさん食べちゃったじゃない。変なものだったら承知しないわよ」
 少しだけ声を荒げたカディナ。そこにはまだ余裕があった。まだあったのだ。
 アネットはそんなカディナを慈母のような瞳で見つめ返す。
 愛しい。可愛らしい。私だけのものにしたい。あの目も、鼻も、口も、髪も、右手も、左手も、足も、体も、肉体も。
 精神まで。
 私のものにしたい。いいえ、もう、私のもの。ジェームズにはあげないわ……。あ、もう、食べちゃったかしら。
 そんな事を思いながら、アネットは立ち上がった。彼女を永遠のものにするために、自分だけのものにするために、立ち上がった。ジェームズを殺した鈍器を持って。ゆっくりとカディナに近付いて。
 異変を感じとったカディナは何やらヒステリックに巻散らしている。興奮して席を立っている。そんなカディナに近付いて。微笑んだまま近付いて。
「それはね、ジェームズのお肉よ」

 チーズの中、骸骨が小さくのぞいていた…………。


次回「盗まれたドアノブ」で
309名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:12:07
『盗まれたドアノブ』

ドアノブが盗まれた。誰が、いつ、何のために、どのようにして、
解決すべき問題が沢山だ。だけど沢山の問題を一挙に解決しようと
すれば当然ぼくは混乱する。だからまずは事実を冷静に把握すべきだ。
ドアノブが無い。部屋の内側のドアノブが無い。つまり閉じ込めら
れた。困った。問題だ。また問題だ。増えた。困った。何が困った
って脱出できなければ死んでしまう。死因は餓死だ。腹が減った。
これは大問題だ。questionではない、problemだ。つまり解決しな
ければ惨事が起こる可能性が大だ。惨事とはdieだ。3時だ。おやつの
時間だ。お菓子が食べたい腹減った。お菓子が無ければ餓死だ。こ
れはちっともおかしな話じゃない。ギャグを言ってる場合じゃない。
むしろ逆だ。不可思議な状況だ。フガシがうまい。グレーテルはなぜ
助けに来ない。ぼくがこんな状況に陥ってしまったってのに。
それにしてもフガシはもう無いのか。ならチョコをちょこっと、ケーキ
を景気よく食べよう、わたくし綿菓子好きですのよオホホ。
だけどぼくが一番好きなのはリンゴ飴だ。それなのにたった一個し
かないなんて、酷な話だ。嗚呼、外に出たい。そうすればもう一つ
310名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:14:39
べられるのにね……。


次『悪魔のお手入れ』
311横からすみません:2007/05/13(日) 17:19:57
感想スレないのですか?
無かったら立ててもいいのでしょうか?
312名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:23:18
感想は確かに欲しい。
誰かスレ立てて
313名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:23:19
荒れる原因になりそう。
ここはずっとこんな感じだったし
それてイクね?
314名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:25:07
ここは荒れないだろう。
作品書くだけだし
315名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:29:39
〔盗まれたドアノブ〕

 柄でもなく良い事なんてしたら空き巣に入られた。全くもってやってられねぇ。
いくら不景気だからってコタツまで盗んでいくんじゃねえよ。しかもなんで天板だけご丁寧に残していくんだよ。
気に入らなかったのか。あの裏面の緑のもふもふが。古臭くて悪かったな、花札する時には便利なんだよ。気分が出るんだよ。
俺はあれをマザーアースって呼んでるんだよ。どうでもいいよ。
後よ、自分の好みの物しか盗んでいかないってどういう事だ。こっちがセンス悪い気がして凹むじゃねえかよ。よっちゃんイカのクッションはレトロブーム的にもアリだろうがよ。

まったく。

まあ問題は寝てる間に入られて気付かなかった俺にもあるんだよね。
ちゅーかさ、泥棒の奴、ドアノブまで盗んで行きやがってさ。ドア空かないのよ。
一体どうやって出てったのかな。
つーか、なんか焦げ臭くね?
うち窓がユニットバスのとこしかないから換気悪いんだよね。
つーか、サイレンの音うるさくね?
なんか熱くね?


次は「アスパラガスジレンマ」でお願いします。
316315:2007/05/13(日) 17:33:26
>>309
申し訳ない!かぶった!
次の方 俺のお題はナシの方向でー
317名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 17:46:27
立ててみました。よかったらどうぞ。

よくわからんお題で次の人がSS書くスレ 感想メモ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1179045857/
318名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 18:55:17
『悪魔の手入れ』ってお題は難しいな。
誰か凄い奴。早く書いてお題を変えてくれ。
319名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 19:28:52
>>319
ハードルが15センチ程上がりました
320名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 19:30:30
>>319 ×
>>318
321名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 19:39:41
お題が難しい分、次の作品はモノ凄く面白いんだろうな。
あ、ゴメン。気にせずに書いて。
322名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:11:57
『悪魔の手入れ』
窓の外は大雨だというのに、その日も悪魔は散歩へ行こうと俺を誘った。
「今日は行かない」と悪魔に言ってみても、全く聞こうとしない。
それどころか、俺の目の前に雨合羽を持ってきて「行こうよ」としつこく誘ってくる。
五分程放っておくと、悪魔が泣き出したので、仕方なく散歩に出かけることにした。
俺も甘いよなあ、と傘の下で思う。
スニーカーが汚れるのもズボンの裾が汚れるのも、全部悪魔のせいだと非難する目つきで悪魔を見ると、
隣を歩く悪魔がこちらを見上げながら歩いていた。
キラキラした目で、鼻歌でも歌いだしそうな程に楽しそうな悪魔を見て、俺は深いため息をついた。
「まあ、いいか」
家に帰ると、俺は玄関のドアの前で悪魔の雨合羽を脱がせた。
そして悪魔をバスタオルで包むようにして、風呂場へ運ぶ。
シャワーで悪魔の足から泥を洗い流し、タオルで拭こうとすると、悪魔が俺の手の中から逃げ出そうとした。
もちろん慣れている俺は逃がさなかったが、悪魔は必死に逃げ出そうと暴れる。
その暴れる悪魔の毛から水分をふき取り、ざっとドライヤーをかける。
これも悪魔が大嫌いなことなので、悪魔は当然のように暴れ、いい加減俺もイライラしはじめる。
「仕方ないだろ、お前は長毛なんだから!」
思わず俺がそう怒鳴る。
やっとのことで悪魔の毛を乾かし、俺は風呂場に落ちた悪魔の毛の掃除をした。
悪魔から抜けた毛を見ながら、俺は思う。
次飼う犬は、短毛にしようと。
長毛のミニチュアダックスフントは、雨の日の散歩が厄介だ。
足が短いので、余計に泥で毛が汚れてしまう。
掃除し終わった俺がドアを開けると、先に出ていた悪魔がそこで待っていた。
キラキラした目をして、今度は遊んでくれと訴えている。
やれやれ、と俺は小さくため息をつきつつ、悪魔のおもちゃ入れから悪魔のお気に入りのボールをとってやった。
悪魔がとても幸せそうにボールで遊ぶのを見て、俺は顔の筋肉が緩む気がした。
悪魔の手入れは大変だが、悪魔が幸せそうなので、まあいいとしよう。

なにこれorz
323名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:20:54
>>322
乙!がんがったね。
待ってる人にお題出してあげるの忘れてるよ。
324名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:27:37
『悪魔のお手入れ』

「コイツよりも、あのオッサンのネジを締め直すべきだろ……」
 目の前に大量に広がる謎の部品、配線……それらを見ていると、ため息が漏れる。

『これを、この悪魔を治してくれ、お願いだ』
 昨夜、定休日にもかかわらず親父の工務店に押しかけてきたオッサンは、
 小太りの腹を地面に押し付けるように土下座していた。
『そうは言ってもねえ。ウチは、悪魔なんて物は扱って……』
 押し付けられた風呂敷包みを突き返すことも放り投げることもできないまま、
 いつまでも上がらないオッサンの禿頭から目を逸らす親父。
 その視線が俺に向いたのはまさに災難、悪魔の仕業と言うべきだろう。

「大体、俺は洗濯機の修理くらいしかできねえっての」
 広げた包みからでてきたパーツは、黒髪らしきものが生えた(植毛?)頭部、
 肩甲骨の下に大きな縦スジの入った胴体部分、やけに細っこい手足と、
 ちょうど人間一人分といった感じだった(各部分の連結部からは、いくつものコードやシャフトが伸びていたが)。
 しかもこの大きさは、おおよそ10代前半の少女といった所だろう。
「そういう趣味じゃねえだろうな、あのオッサン。……ん?」
 あちらこちら、適当にひっくり返していると、首の後ろに、英語らしきものが書いてあるのが見えた。
「エム、エー、……」
 一部の文字が掠れて消えかかっていたが、そこには確かにそう書いてあった。

 MADE IN CHINA

「…………」
 考えるのはやめておこう。
 俺は、とりあえずドライバーを一本手に取った。
325名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:28:51
被った\(^o^)/
お題は頼んだぜ
326名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:35:54
書き上げた誰かがお題を出すまで
永遠に『悪魔の手入れ』を引っ張るつもりか。
まさに、悪魔。
327名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:40:14
スマン…忘れてた。
アスパラガスジレンマで。
328名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:41:33
暫く『悪魔の手入れ』で書く?
人と比べるの面白いよ。
同じテーマでどんな違いがあるか、ってね。
329名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:50:17
>>327
採用

>>328
今回はやめとこう。もししたいなら、次の人へのお題を自作のものと同じにしたらいいからね。
330名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 21:50:29
いっそのこと『アスパラガスの手入れ』
331名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 22:11:57
歩は鏡台の前に座って顔中に白い液体を含ませたはけを滑らせている。
手馴れたように、むらのない滑らかな表面で顔中を白く仕上げた。
出来上がりに満足すると、歩は容器とはけを鏡台に置いて
鏡台に座る前から点滅し続けていた携帯を手に取った。
 
『今日ね、さゆね、コウくんにあげるプレゼントのTシャツ買って来ちゃった〜(*//)』
 
歩は今日、そのコウくんとデートしていた。三度目になる。
コウくんの為に、今日は精一杯のお洒落をした。小学校から貯めていたお小遣いも
ほとんど使い切った。
『今日なんかすごく可愛くて、照れるんだけど俺』
コウくんは言葉通り照れくさそうで、手をつなぐ時もすごく緊張していた。
そんなコウくんが可愛くて仕方がなかった。歩は別れ際にコウくんの腕を掴むと
首に両腕を回してキスした。コウくんはびっくりしていたけど、振り払ったりしなかった。
十秒ぐらいだったろうか。大人のキスはできなかったけど。

『もう引き返せないね〜ファイトださゆ!!!o(*д*)o』

そうだ。もう引き返せない。
友情よりも恋を選択した私は、悪魔にだって負けない罪を犯したのかもしれない。

キーを叩いて返信すると、すぐに返信が来た。
歩はさゆりから来たメールに目を通すと、すぐに返信のメールを打ち出した。

next:『アスパラガスジレンマ』

出遅れたけどこれで解決でおk?
332名無し物書き@推敲中?:2007/05/13(日) 22:14:48
よくやった
333名無し物書き@推敲中?:2007/05/14(月) 17:55:28
遅筆な俺は、投稿しようと思ったら違うお題に替わってしまってることが多い。
このスレ、期間とお題を決めてやるルールにかえてもらえないだろうか……
334名無し物書き@推敲中?:2007/05/14(月) 17:59:55
確かに遅筆な人には向いてないかもな
ポンポン進んでいくものだし
335名無し物書き@推敲中?:2007/05/14(月) 18:03:42
感想スレでやれ
336名無し物書き@推敲中?:2007/05/14(月) 22:31:57
『アスパラガスジレンマ』

どうしよう…。
アスパラガスが数本、まな板の上に置かれている。
俺は、このアスパラガスの食べ方を知らない。当然、食べた事はある。しかし、それが煮た物なのか焼いた物なのか、まったく思い出せない。
俺は考えた。
焼いてみようか。いや待て…。もしかすると焦げるかもしれない。ここは一回煮てから、それで駄目なら焼いてみよう。
よし。そうと決まれば早速……。
……待てよ。
一回煮ると、アスパラガスの繊維が柔らかくなるんじゃないか?一回煮たアスパラガスを焼いたら、グチャグチャになるんじゃないか?
そんなの嫌だ。それじゃグロテスクだ。とても食べる気にはならない。きっと料理名は『アスパラ・ザ・グロテスク』。嫌な名前だ。避けるべきだ。
よし焼こう。焼いて失敗したらそれを煮よう。そうと決まったら早速……。
……待てよ。
焦げるじゃないか。焼いたら焦げるじゃないか。いや、焦げると決まったわけじゃないが、焦げるのは嫌だろう。だからさっき煮ようとしたんじゃないか。
よし煮よう。それじゃ早速…。
…待てよ。グチャグチャになるじゃないか。『アスパラ・ザ・グロテスク』だよ。
よし焼こう。待てよ。焦げるよ。
困ったよ。焼いても煮ても失敗しそうだよ。なんて言ったかな?こういうの。
そうだ。ジレンマだ。ジレンマだよ。俺は今アスパラガスのジレンマに陥っているわけだ。つまり『アスパラガスジレンマ』だよ。『アスパラガスジレンマ』。
………関係ないよ。今は取りあえず、このアスパラガスをどうにかしないと……。
よし、煮てみよう。煮て駄目なら、それを焼いてみよう。
それじゃ早速………



次は『虎とタヌキ』で。
337名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 00:02:15
『虎とタヌキ』
 
「俺、今日阪神が中日に勝ったら、ゆうこにコクるから」
「今の阪神最強だから、間違いなくお前コクることになるぜ。それに
今日は下柳と山本昌の先発だろ、今期の成績見ても一目瞭然、今日は
阪神デーだぜ」
「それわかって、言ってんだよ」
「まさかお前本気なのか?」
「ああ」
 拓也はどうやら本気でゆうこにコクろうとしているらしい。しかし
その勇気が出ないから、阪神の勝利に助けてもらおうという魂胆だ。
「俺、シュチュエーション考えるからさ、祐樹はつっこむなりして
ダメ出ししてくれ」
「ったくしょうがないな、で、明日のいつコクる?」
「放課後、体育館裏で」
「べただな、どうやって呼び出すんだよ」
「お前に、頼む」
「いくらで?」
「ラーメン奢るから」
「乗った」
 それから延々と議論は続き、一時間にも及ぶ議論の末に、ようやく告白作戦の内容が
固まった。そして阪神対中日の結果がそろそろわかる時刻になった。
岐阜の長良川球場というところで試合をしているためテレビ中継がなかったのだ。し
かしそれもわかった上でやっていた。ニュースをつけると阪神が0対5で負けたとの
情報が流れていた。
 二人は顔を見合せて、苦笑いをした。
「拓哉、『トラ』ぬタヌキの皮算用だったな」


次のお題は「僕のレーゾンデートルと彼女」
338名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 01:32:00
〔僕のレゾンデートルと彼女〕

吐く息が白くなってゆく。

図書室にはもう誰もいない。

校舎の最後の明かりが消えた。

遠くで彼女の鳴き声が響く。

「何もしないで」と叫んでいる。

窓ガラスが超能力で割れる。

「世界の終わりだ」と野良犬が云った。

彼女は今日も予備校へ通う。

スカートの裾が弧を描く。

兄弟がどっちが死ぬかで揉めている。

僕はただタウンページをスクラップしている。

入念に。



次は「イルカのテロ」でお願いします
339名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 02:59:01
 私はロベスピエールに憧れている。彼は十八世紀フランスでフランス革命時代を生きた
気鋭に満ちた政治家だった。いや、本職は弁護士であった。古今見られるように、弁護
士から政治家、というのはよくあるパターンだ。彼は三部会に選出されて政治生活に入
った。フランスでは長らく国民による議会が開かれていなかったのだが(それはルイ王
家に代表される国王が独裁政治を円滑に進めようとしたためだ)、久々に開かれたのが
国民、貴族、聖職者から成り立つ三部会だった。ジャコバン派の指導者として革命的民
主主義を推進し、革命を成功させたかに思えたが、彼自身私欲から独裁政治に転じた。
公安委員を設立し、反逆者は片っ端から死刑、その暴君ぶりは恐怖政治と言われた。
 これは私が中学校のときに読んだ歴史の本に書いてあったことそのままなのだが、
ロベスピエールは今でも私の心の支えになっている。明日は待ちわびた都知事選挙
である。心配はない。私の三選は確実だ。私はマスコミからイルカと言われている。
顔がイルカにそっくりだからだ。しかし僕はそれを好意的に思っている。人々
に親しまれるのは悪くない。というかマスコミにそう言わせたのは私の命令なのだが。
明日は紙面にイルカ都知事三選の文字が躍るだろう。私以外の人物に投票する都民はい
ない。なぜなら候補者は私しかいないからだ。私に反逆した人物は即刻打ち首。
こんな恐怖政治をする私のことを、ロベスピエールの再来だと未来の歴史家は語るだろうか。
 
 
340名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 03:00:11
次のお題「携帯できない携帯電話」
341名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 03:01:55
訂正
中学校→中学生
僕→私
342名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 03:12:09
その恐ろしいエゴに食われるのは勘弁です。
どっかの小説にでてきたような展開は避けたい。

次のお題「潜水艦の潜伏」
343名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 03:16:40
>>342
誰に対して言ってるかわからないから意味がぼやける。
それに>>340のお題でいけない理由がわからない。
もっともそれは僕の「読解力」のなさ故のことかもしれないが。
344名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 03:23:31
>>343
次のお題が例えば+1だとし、そのお題が出される前の本文を−1だとすると
>>342はその−1に合わせて書いたということになる。
題と本文を合わせれば見事プラマイ0になり、見事中和されているが。
345名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 10:55:44
『携帯出来ない携帯電話』

ヤバイすぐに電池切れする
346名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 11:14:58
あ!次 『サクランボとマヨネーズの志し』 でお願いします
347名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 13:07:55
>>344
え、もっとわかりやすく言ってよ。
伝わらなくていいようなどうでもいいことじゃないんでしょ?
348名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 17:40:32
>>345
一行ってアリなのか?
349名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 17:46:51
>>345
良いお題だったのになぁ……。
350名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 17:51:55
>>348
お題を消化していれば1行でも構わない。
ただ、個人的に>>342>>345みたいなのはお題を消化しているとは思わない。
351「携帯できない携帯電話」:2007/05/15(火) 18:18:24
先週A社から発売された新型の携帯電話「A-2929」。
これまでにない斬新なデザインが話題を呼び、A社のシェアを一気に10%以上伸ばす大ヒットとなったが、
今週に入って「携帯電話なのに携帯できない!」という苦情が相次いでいる。
それもそのはず、その携帯電話は本物のハリネズミを精巧に真似てデザインされたものなのだ。
つまり、ハリネズミだけに毛痛いd
352名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 18:29:40
351を見て、名前欄にタイトル(お題)入れるのもいいんじゃないのかと思った。
353名無し物書き@推敲中?:2007/05/15(火) 18:30:35
>>351
不覚にもワロタwww
じゃあどうやって電話するのかと小一時間)ry
354「潜水艦の潜伏」:2007/05/15(火) 19:33:04
「今回の作戦はこの海域に潜伏していると思われる敵潜水艦の発見、及び撃沈だ。 総員、配置に付けーっ!」
「「「はっ!」」」

「潜望士ー、何か見えるかーっ?」
「はっ、海面を航行中の船の底が見えます!」
「そうかーっ。 それは船の腹、「船腹」だーっ」

「ソナー士ー、そっちはどうだーっ?」
「はっ、どうやらあの船の幅は12メートル前後のようであります!」
「そうかーっ。 それは船の幅、「船幅」だーっ」

「む、何だこの揺れは・・・操縦士ー、何が起こったーっ?」
「はっ、敵艦側部に激突。 どうやら敵艦を撃沈したようであります!」
「そうかーっ。 それは横転して沈むこと、「転覆」だーっ」

「よーしっ、これにて作戦終了ーっ! これより本土に帰還するーっ!」
「「「こんなんでいいのかよ・・・」」」



かなり適当な造語へのツッコミはなしの方向でよろ。
>>346はネタが思いつかんので、次のお題は「サクランボとマヨネーズの志し」で。
355名無し物書き@推敲中?:2007/05/16(水) 18:43:43
『サクランボとマヨネーズの志し』
大雑把な性格の両親は、子供の名づけもいい加減に行った。
姉の名前は「桜」、妹の私の名前は「真世(まよ)」という。
出産後、入院中の母が「さくらんぼが食べたい」と言ったことから姉は「桜」と名づけられたのだが、
私のときは、それが「ツナマヨのおむすび」だった。
安直に「ツナ」と名づけようとした両親を周りが止めなければ、
今ごろ私のあだ名は「シーチキン」だったかもしれない。
その話を聞いた私たち姉妹は、「自分達の子供の名前は、真面目につける」と固く誓ったのであった。

次、「ペンギンのバンジージャンプ」で。
356名無し物書き@推敲中?:2007/05/17(木) 01:17:17
「ペンギンのバンジージャンプ」
「なぁ、おまえの泳ぎ方って空飛んでるみたいでいいな」
水面が太陽光を反射して、キラキラしている。
すぅーっと流れるようにペンギンが泳ぐと、緩やかな波が寄せられる。
「そうか?僕は空を見上げるぐらいで、あんま知らないからなぁ。実際飛んだらどんな感じなんだ?」
ペンギンはピョコンと陸に上がると、プルプルと体をふった。水滴が勢い良く四方に飛んだ。俺はその水滴さえキレイだと思った。
「さぁ?俺だって空飛んだことないしなぁ。カモメに聞いたらいいんじゃない?」
空を見上げると数匹のカモメが気持ち良さそうに飛んでいる。
「ダメだよ。あいつら僕の話なんて聞きやしないさ。鳥なのに飛べないって見下してる。」
「そっか……」
言ってはいけないことだったか、と俺は少し後悔した。
「でも、でもね!僕は空を飛べないけど、水中を泳げるんだ!あいつらは空を飛べるけど、水の中に入ることすらできないさ。凄いでしょ?」
ペンギンはうれしそうだ。
「めっちゃ凄いよ」
俺がそう言うとさらに顔をくしゃくしゃにして笑っている。
「海の中はね、キラキラしてるんだ。光が入ってきたりして、意外と明るいんだ。泡がぶくぶくしてたりして、羽に水が当たっていって気持ちいいんだ。」
ペンギンはいっぱい喋った後、一息おいてまた口をひらいた。
「でも、やっぱり、空も気持ちいいんだろうね」

空を見上げるペンギンは、隠していてもやはり少し羨ましいようだ。
「……そういや、この前バンジージャンプってのをしたんだ。」
「なにそれ?」
ペンギンはそれとなく聞き、また水中にドボンと入った。
「たかーいところから、自分の体に紐を付けて、飛び降りるんだ。」
「そんなの楽しいの?」
なめらかに泳いでいたペンギンが、クイッと首を傾げる。
「楽しいっていうか恐かったけど、多分似てると思うよ」
「何に?」
しなやかなペンギンの体が、水中を通った光に当てられ、輝いている。
357名無し物書き@推敲中?:2007/05/17(木) 01:23:43
「空を飛ぶ感覚に。空気が体に当たってく感じとか。飛んでるんじゃなくて落ちてるのが問題だけど。」
「大問題じゃん。」
そういってペンギンはケタケタ笑っている。
「まぁ僕はこんなに泳げるし、興味ないけどねっ」
すーっとあっちの方まで泳いでいってしまった。


「興味、あるくせに。」
でもペンギンに紐付けにくいし無理だな、と想像して笑ってしてしまった。
そしてバケツと掃除道具を持って、我が海辺の動物園のペンギンコーナーを後にした。
相変わらず空ではカモメがすました顔で飛んでいる。
358名無し物書き@推敲中?:2007/05/17(木) 01:25:42
次のお題は「削除されるわけでもなくごみ箱に捨てられたものの気持ち」
359名無し物書き@推敲中?:2007/05/17(木) 16:49:14
「削除されるわけでもなくごみ箱に捨てられたものの気持ち」
生活のマンネリ化と、なんの刺激もない毎日に、俺は飽きていた。
社会人になって、一日の大半を仕事に費やさなければならなくなったストレスから、
それを解消するために、小説を書きはじめたのだった。
仕事の合間をぬって創作活動を続け、新人賞に応募するようになったが、当然のようにそれは、落選してばかりだった。
悔しいと、俺は思った。
改めて読み返して、何が悪かったのかと試行錯誤を重ねた結果、
足りなかったのは誰もが共感できるような内容ではなかったことだと思った俺は、
誰もが経験したことのあるだろう、青春時代の淡い恋心を題材にした。
理由はそれだけではなかった。
俺自身が成し得なかった告白を、物語の中で俺の分身にさせたかったからだ。
あの頃、まだ穢れを知らなかった俺の毎日は、光り輝いていた。
学生時代は楽しかったな、と思い、深いため息をつく。
原稿用紙にして、三十枚。
その原稿を、俺は直接出版社に持ち込んだ。
前もって連絡しておいたので担当者はすんなりと対応してくれたが、
読み終わるとすぐに、慣れた口調で「お帰りください」と言った。
席を立とうとした担当者にどこが悪かったのかと聞くと、
「どこかを削除してよくなるものではない。全部ゴミ箱行きだな」という言葉が返ってきた。
原稿用紙三十枚の中に込められた俺の思いは、呆気なく葬り去られた。

次、『猫と犬の板ばさみ』
360「猫と犬の板ばさみ」:2007/05/18(金) 11:24:03
「散歩へ行きたい」と犬が言う。
「ご飯をちょうだい」と猫が言う。
犬4匹に猫3匹。飼い主は相当な動物好きかと思いきや、楽しそうに電話をしている。
そのために雇われたのが私。
「はいはいはいはい…」と嫌々ながらも彼ら7匹の要求をこなす。
これも生活のためだ、仕方がない。
体が小さく、逆らう事もできずにこんな仕事をしてきたが、それももう終わりが近いと予想する。
つい先日、私達カラスの賢さが証明されたというのだ。
人にすると3歳程の賢さ。つまりは猿並。
この賢さがあの犬猫に理解できたのならこの板ばさみのアルバイト生活は終わるのだろう。
そうしたらこの艶やかな黒い翼を広げ、犬と猫を押し倒してやる!板ばさみもサヨナラだ!
今度は犬や猫が私に尽くす…あぁ、なんというすばらしい世界っ!
しかし、この計画にはいくつか問題がある。
1.犬や猫の賢さは人にして何歳にあたるのか
2.賢いと分かったところで誰がこの嫌われ者をかわいがり、養ってくれるのか
…肉ひと塊に釣られてしまう限り、私の生活はかわりそうにない。


上手くいかないもんだな。下手ですまん
次は「断末魔の電気信号」
361断末魔の電気信号:2007/05/19(土) 00:04:13
「こんばんは」
「こんばんは〜」
「あ、炒り卵さんいらっしゃーい」
「いらっしゃいました(笑) 外寒いねー」
「こっちはそんなでも無いですよ。外にいるんですか?」
「そうそう、仕事の帰り」
「大変ですね もう十一時じゃないですか」
「今どこ?」
「駅。一人寂しく電車待ってるよ(笑)」
「炒り卵は一人じゃない!俺達が付いてる!」
「出たw今日の恥ずかしい台詞w」
「一日一回はこれやっとかないとねw」
「寒すぎて鳥肌たってきたんですけどー(笑)」
「寒さとサムさを掛けたんですか?w ラムさんのよりは巧い」
「酷いなー」
「えー、だって弄られキャラでしょ」
「そんなことない! どう思うよ、炒り卵」
俺は、と打ち込もうとした所で。
甲高い電子音と共に携帯電話の画面が真っ暗になった。

電気信号じゃないけどまあいいや。
次、「100円ショップの自動ドアが憂鬱」
362名無し物書き@推敲中?:2007/05/19(土) 12:00:36
「100円ショップの自動ドアが憂鬱」
安月給の俺にとって、給料日前の一週間は嫌な時期。
自炊能力がないせいで高いコンビニ弁当を買わなきゃいけないし、飯を作ろうと思っても仕事の疲れでやる気が起きないし・・・。
もしこの文章を見て、「ああ、俺と同じだな・・・」と思う人がいたら言っておきたいことがある。
いや、この給料日前の一週間を知る人だけじゃなく、金がない人に言っておきたいことがある。

この時期、そして金がないときに100円ショップには行くな

この一言だ。
100円ショップ、それはどんな商品でも105円で売っている夢の店(100円ショップ105円なのは消費税があるから 紛らわしいよね)
だがしかし、この夢の100円ショップは金がない時に行くと後悔の気持ちにさせてくれる店なのだ。

確かに100円ショップは商品が安く欲しいものがお手軽に手に入る良い店だ。
だが考えても見てくれ。
その100円、何か他に良い使い道はなかったか?

例えば腹が減った時、金がなくても100円あればうまい棒が10本買える。
お菓子で腹を満たすなんて不健康だと言われても、飢えて餓死するよりはマシだろ?
そこまで貧乏な俺もどうかと思うが・・・。

とにかく、俺のように金がなく自炊能力がなく一人暮らしで貧乏性なやつには給料日前の100円ショップはお勧めしない。
店に入って買い物をしてる時は「100円だから別に・・・」と思っていても、店を出る時には「この100円、食い物を買う金の足しに出来たんじゃ・・・」と思うと後悔の気持ちで一杯になる。
そんな俺は100円ショップの店員。

給料日前、店の自動ドアが開かれるだけで憂鬱になる。

終わり
100円ショップの自動ドアが憂鬱と言うよりも、100円ショップが憂鬱みたいな話になったな
話のまとめ方も進め方も下手糞だし、正直すまんかった

次、「梅雨が明けて、これから夏に入るというときの夏前の気候」
363名無し物書き@推敲中?:2007/05/19(土) 19:06:40
>>362
お題が無駄に長過ぎ。
しかも「梅雨が明けて」「これから夏に入るというとき」「夏前」の3つは意味が重複してる。
364名無し物書き@推敲中?:2007/05/19(土) 20:50:58
『梅雨が明けて、これから夏に入るというときの夏前の気候』

カッラカラ。さんさんピーカン。雲は無し。
ひなたが温(ぬく)いと誘われるには、あまりに今は春じゃない。
秋とは違うし、むろん冬でもない。夏。夏。夏。夏。ここは夏。
本当に? ごめんちょっと嘘ついた。まだ汗だくになるほどじゃないね。
だから今はココナッツの収穫時じゃないよ。もう少し暑くなってか
らだね。というかここじゃココナッツ採れないし。何はともあれ僕は、
愛すべき故郷、ここ夏前に帰ってきたのだ。
ばあちゃん元気にしてっかな。なんちゃって。とっくに死んだし。
実を言うと殺されたんだけどね。犯人は悪の組織のしたっぱだとさ。
あいつら何ていったかな。ええとね…たしか…
そうそう、思い出した。初っ夏ー。ヒィ!


次『空ときみの間』
365名無し物書き@推敲中?:2007/05/19(土) 23:24:24
『空ときみの間』

「あっ、ちょうちょ〜」
 握っていた手をするりと離し、温もりだけを残して走っていく、きみ。
 どれだけしっかり捉えていようとしても、いつの間にかどこかに消えてしまう。
 決して届かないあの青空のように、僕に近づくことを許さない。
 空ときみの間に、境界線なんて無いのかもしれない。

「私が空になれたら」
 いいのにね、仰向けで寝転がりながらきみは、また空を見ていた。
 足元を追うので精一杯の僕には、いつも上を見て歩くきみが遠かった。
 僕の声は、届いているのか、いないのか。あの青空に聞いても、答えは無い。
 空ときみの間に、境界線なんて無いのかもしれない。

「           」
 しっかりと握った手は離れずに、温もりが消えていく、きみ。
 きみには離れて欲しくなかった。ずっとそばにいて欲しかった。
 きみの願いは叶って、叶ったはずの僕の願いは叶わずに、
 空ときみの間に、境界線は無くなった。
366名無し物書き@推敲中?:2007/05/19(土) 23:25:25
お題、『貧相な喫茶店』
367名無し物書き@推敲中?:2007/05/20(日) 02:53:24
貧相な喫茶店

コーヒーは酸っぱく、深みを知らないままの、安っぽい味が香った。
店はがらんと空いていて、レコードを置いているらしいカウンターの向こう側から
ごくわずかな音量のときどき低く曇った音が、ぼーんと、もわもわと、残って肌をなでていく。
大学生のときにここへはよくきた。同い年の、親しい彼と一緒だった。
彼はよくサンドウィッチとコーヒーをセットで頼み、安っぽいコーヒーだというのに
砂糖とミルクを一気に入れて、ティースプーンでぬるく冷めるまでかき回すのが好きだった。
人肌程度、というのが飲みやすくて気にいっているのだそうだ。
私はやけどしそうなほど熱いものを喉にすべらせてばかりで慣れていたから、
あんまりぬるくなったものはなんだか気もちが悪くて口に出来ない。
彼は笑っていた。せっかちなんだねと。だから人と向き合うのが少し、怖かった。
目を見ていると、だんだんどこを見ていいのか、そして何を話していいのか、
わからなくなってしまう。戸惑って、自分の居場所さえ見失う。
高校入試の面接試験ではネクタイを見ろ、と指導されたが、あれは至近距離の話ではないのだ。
テーブルを挟んだような距離では、彼に、すぐに見破られてしまう。
(どこを見てるの?あるいは、何かついてる?)
そんな彼と最後のランチを食べたのは、油断すればもう忘れてしまうぐらい前のことで、
君のことがよくわからないから別れてほしい、というのが彼の言い分だった。
あなたがそうしたいのならそうすればいいわ、と私は許容するように彼を了承したのだけど、
彼は憤慨したみたいに大好きなサンドウィッチも人肌程度のカフェオレもそのままで、
財布から取り出した千円札一枚を置きざりに外に飛び出していってしまった。
引き止めることはしなかったが、悲しげに怒気と混乱した彼のにおいで私まで気落ちする。
(何かしてしまったの?何がいけなかったんだろう?どうして彼はいきなりあんな選択を
一人でしてしまったのだろう?)考えれば考えるほど、答えは無かった。
368367:2007/05/20(日) 02:54:14
酸味のきいたコーヒーを、カップの半分あたりまで飲み終えたところで、
私は当時の彼と同じようにティースプーンでコーヒーをかき混ぜているのに気づいた。
笑ってしまう。あれから連絡もなかったし、することもしなかった。不器用で、つまらない、
手も充分に繋ぎあえないただの子供が背伸びをしただけだったのに、
いつのまにか遠い所までたどり着いて、引き返す方法も最早見当たらない。
どちらかを犠牲にしないと家に帰ることもできないような恋だった。
見知らぬ場所で言葉もない子供には、ただ思い出と明るい過去が邪魔をして、
口に出来ない食事を投げ出すほかに手段がない。ふるぼけてすすけた木造のカウンターや、
窓際の乾いたテーブルと椅子を見渡した、あのときの私が座りこむ。


長くなって申し訳ないです…。
お題 tender QP
369tender QP:2007/05/20(日) 21:59:04
かつての地名を残す「モリオカ駅」から空へと伸びる線路。
その上を真っ黒な蒸気機関車が進んでいく。
行く先は空の更に向こう側にある宇宙ステーション「メトキ駅」。
「メトキ駅」は地球の自転にあわせて周囲を回りつつ線路を引っ張り、他に何の支えもない線路を支えているのだ。
元々この路線は資材の運搬用に敷かれたものだったが、ある2つの理由により乗客用列車として運用されるようになったのだという。
その1つは今時珍しいこのレトロな車体。
製作者の強いこだわりによりD51の外観を忠実に再現した車体は、子供から老人まで幅広い人気がある。
もっとも、炭水車に積まれているのは水と石炭ではなく、水素エンジン用の水素と酸素なのだが。
その時、周囲から一斉に歓声が上がった。
窓の外に目を向けると、そこには並走する蒸気機関車が出現していた。
そう、これがもう1つの理由、「ミラートレイン現象」である。
海面から蒸発した水蒸気に一定の条件で光が反射し・・・まぁ細かいことはいいだろう。
こちらの私が向こうの私に視線を向けると、向こうの私もこちらの私に視線を向ける。
まるでアルファベットの「q」と「p」のように左右対称の私たち。
やがてミラートレインは見えなくなり、乗客たちは残念そうに席に戻っていく。
本音を言えば私自身も少し残念だったのだが、前向きに気持ちを切り替えることにした。
そう、私の旅はまだ始まったばかりなのだから。



tender=炭水車で書いてみました。
次のお題は「永遠の約束」
370永遠の約束@:2007/05/22(火) 18:28:59
 君は少し時代遅れ。

「同じお墓に入りましょうね」
 告白した。本気で本気で。告白した。でも返ってきたのがそんな返事。僕はつい吹き出してしまったんだ。
 だってさ、このご時世に「同じお墓に入ろう」だよ。僕らはまだ高校生だったんだ、そんな言葉、時代遅れだったんだよ。でも君はさ、不思議そうに、笑う僕を眺めていた。その何も分かってない顔がまたおかしくてね。僕の笑いは益々加速してしまったんだ。
 それが君との始まり。
 君は少し時代遅れだったんだ。

 二日前、下らないことで、本当に今思うと何がそこまでさせたのか分からないけど、大喧嘩をしたことがあったね。あれは確か……そうそう、僕が早く風呂に入らなかったからだった。君は「殿方はお先にお風呂に入るものです」って巌として譲らなかったんだ。
僕は昔から遅風呂だったから、君と価値観が合わなくてさ。二時間ぐらい怒鳴りあって、出ていったのは僕だった。あの時はもう君とは無理だと思ってたんだ。
 そのまま今日まで僕は君のところに帰らなかった。色々と気持の整理が必要だったんだ。帰って君にどんな顔を見せようかなとか、何をするべきなのかとか。本当に悩んだんだ。本当だよ? 悩んで悩んで、答えを見付けて、帰ろうって決心したんだ。
371永遠の約束A:2007/05/22(火) 18:30:37
 だからだよ。今僕がここにいるのは。今この場所で、深い深い山の奥、人目につかないこの場所で大きな大きな穴を埋めているのは。
 君の死体を埋めているのは。
 仕方がないよね。僕らは合わなかったんだから。告白した時、僕は君を変な奴だって、その瞬間に思ってしまってたのだから。だって君は少し時代遅れ。今を生きる今時の僕には合わなかったんだよ。
風呂なんかどうでもいいじゃないか。あんまりわめくから、つい包丁で刺しちゃったけど、今は時代遅れの君にいいことをしたと思ってるよ。君はこの時代には合わないからさ。
 小さく山になった地面を、スコップで叩いて、よく踏み馴らして、高くジャンプして固める。お墓つくってあげたよ。君のためのさ。君だからだよ、つくってあげたのは。他の奴ならそのまま棄てるからね。
 ……ふう。それじゃあ。僕はもう行くよ。今度は産まれる時代を間違えないようにね。バイバイ。

「……同じ……お……墓に……入りましょう……ね……」

……ああ、やっぱり。……やっぱり君は時代遅れ。



次回『登るカメラ』で。
372登るカメラ@:2007/05/23(水) 01:25:48
デジカメを落としてしまった。
僕は色々な場所を撮影するのが好きで、たまの休日だからと朝日を拝みに行った、その時の事だ。
見たのは山からだ。恐らく七十度くらいの崖の上に立った僕は、青白い空気に包まれた街を見下ろす。春とはいえ、まだ冷たい空気に指はかじかむ。
待ち侘びて、陽が顔を出して、最高の瞬間を撮ろうとしたその時だった。
指が滑り、転がり落ちた銀色の箱は、そのまま草木に飛び込んで見えなくなった。あ、という短い声と、ガサリという音が重なった。
すぐに探しに行きたかった。だが、降りるにはどうにも無理そうだった。
そう判断した僕は、溜め息を残してその場を去った。
心の隅に留めながら、また僕は一週間を過ごした。雨が降った日は気が気でなかったし、風の強い日は集中する事もままならなかった。
373登るカメラA:2007/05/23(水) 01:31:22
それでもようやく休日が来ると、僕は真っ先にあの崖へと足を運んだ。
予備のデジカメを取り出して――今度は落とさないように――構える。山陰から飛び出た朝日のてっぺんがぼやけて映る。
ふと。
足元に何かが落ちていた。
それは、僕のあのデジカメだった。皮肉にも、傷だらけの身体がそれを証明していた。
誰か、あの時下にいて、それで拾ってくれたのかもしれない。もしかしたら違うかもしれないが、それでも僕は「誰か」と「神様」に感謝した。
早速画像を順繰りに見ていく。
良かった、壊れていない。と、安堵すると共に、ブレた朝日が映った。
多分、落ちる時撮れたのかもしれない。画面の中で、遠くの山は上下逆さまになっていた。
仕方がない、また撮り直そう。そうしてピ、とボタンを押して次の画像を表示した。

そこには、山からのぼった、最高の朝日が写っていた。


クソ。なげぇ。
次「ヒステリ人形の理性」
374「ヒステリ人形の理性」1:2007/05/23(水) 23:49:01
 しょうゆさしは投げないでほしい、と思う前に今度は納豆の入った鉢が飛んできた。
 近頃、姉はずっとこんな調子だから困る。彼氏にフラれたばかりだという気持ちはわからな
くもないけれど、でも朝ご飯を片っ端から投げたところで何も解決しないと私は思う。そう思
うのだけれど、でも私はなにも言えない。どう言えば伝わるのかわからないし、そもそも姉の
ような症状の人には「頑張れ」という励ましさえも厳禁らしかった。
 お味噌汁が飛んできた。冷めててよかった、と思う。おかげで大やけどは負わずに済んだけ
れど、でも服は見事にびしょびしょになった。同じことをしてやろう、とは思わない。姉の服
は、私のものより遥かに高い。二十歳過ぎにもなってそんなフランス人形みたいな格好をする
のはどうかと思うのだけれど、でもそれが姉の趣味なのだから文句も言えない。
 ご飯の入ったお茶碗が飛んでくる前に、私は席を立ってお風呂場へと向かった。こんな格好
じゃ大学へも行けない。服を洗濯かごに放り込んで、シャワーを浴びる。双子は似ている、な
んてのは大嘘だと思った。姉ならシャワーの前に、ちゃんと服をつけ置き洗いするのだろう。
私はそれをしない。準備は平気だけれど、後片付けは苦手だ。例えば朝ご飯の支度はできても、
洗い物ができない。悪い癖だな、とは、自分でも思う。でも性格だから仕方がない。
 お風呂場から出て体を拭く。姉はもう自分の部屋に籠ってしまったようだった。私も自分の
部屋で新しい服を着て、玄関へと向かう。朝ご飯は早めにとっているから、ひとコマ目の講義
にもまだ間に合う。髪を洗っていたら遅刻だった。姉は毎朝ものを投げるくせに、それが私の
首から上に当たったことは一度もない。
375「ヒステリ人形の理性」2:2007/05/23(水) 23:49:45
 いってきます、も言わずに家を出る。夜に戻る頃には、いつも食卓は奇麗に片付いている。
どうせ自分で片付けるのに、なんであんなに散らかすのか。私には姉の性格が理解できない。
そもそも出かける気もなくて、いつも家で家事しかしないのに、なんであんな服を着るのかも
よくわからない。でもそんな私の悩みとは関係なく、今日も外はよく晴れていた。
 いつもの通学のバスの中で、私は夕飯の献立を考える。焼き魚が食べたいけれど、でも投げ
られると臭いからいやだな、と思う。しばらく迷ったあと、私は帰りにサバを買うことに決め
た。

お題「カウントツースリーからのミルクせんべい」
 さく、と音を立てそいつは砕けた。甘い香りを残して溶けていく菓子を、ただぼんやりと口に運ぶ。
 テレビ画面には、相変わらず奮わない男の姿。今期はまだ、一勝もしていなかった筈だ。今夜の試合は本拠地のドーム球場だというのに、外野席から男を野次る声が聞こえる。
 マウンドの上で、男が振りかぶった。手を離れた白球は、狙ったであろうコースから僅かに浮き上がる。これでツースリー。
 アップで映された彼の頬に、汗の雫が流れる。九回裏。ここで抑えれば、今季初の完投勝利。だが、相手にとっては一打逆転の契機。
 否が応にも緊迫する場面で、突然、俺の頬に冷たい物が触れた。
 顔を上げると、嫁さんがビールを右手に、俺の携帯を左手に持ち笑っている。
「ねえ、アナタ。先週末の出張、随分楽しかったみたいね」
 携帯の液晶画面には、ハートマークだらけの絵文字入りメール。笑顔の嫁さん。笑っていない目。
『――さぁ、カウントツースリー。ここで抑えきれば、完投です!』
 テレビから、興奮気味の実況が流れる。
 逆転の一打は出るだろうか。俺は惰性で菓子を口に放り込み、打者の幸運を祈った。
 甘い筈のミルクせんべいは、砂のような食感と苦味を残した。

次のお題は「マフラーに残るコーヒーの染み」
377376:2007/05/25(金) 01:05:08
ごめん。よく考えたら、九回表だ orz
378マフラーに残るコーヒーの染み:2007/05/25(金) 20:53:48

どうしようか……。
私は悩む。なにしろ染みがあるのだ。マフラーにベッタリと。どうせなら全体に染みて、コーヒー色のマフラーになれば良いと思う程。ベッタリとコーヒーが。
捨てようかな……。
そう思ったが、何だかもったいない気がする。別に値段が高かったわけではないが、それでも捨てるのには気が引ける。
どうにかならないかな……。
そうは思っても、どうにか出来る染みではない。三分の一がコーヒー色だ。ごまかすのは難しい。やはり捨てた方が良いのだろうか。しかしどうしても、もったいないという思いが前に出る。
貧乏性だな……。違うか、ただの貧乏か。
私は一人で笑った。笑ってもどうしようもない。それに気付いて何だか淋しくなった。
……そうだ。
突然私は思いついた。
染みを落とす必要はない。最初からわかっていたではないか。
コーヒーが染みたマフラーを手に、私は台所へ向かった。
まずはコーヒーを準備しないと……。

次は『置き去りのキュウリ』で
379置き去りのキュウリ:2007/05/30(水) 22:09:57
その母親は、大変困っていました。
小学三年生になる一人娘が、夏休みに入ってからというもの、毎朝どこかに遊びに行っては日が暮れるまで帰らないのです。
今時分、外で元気に遊んでくるのはむしろ喜ばしいことなのですが、なにしろ自分が朝、日の出過ぎに起きた時には、
『行ってきます!』と、元気な書置きが残っているだけなのです。
どこへ行っているのかと問いただしても、娘は頑として言おうとせず、口についたチャックを開けないのです。
危ない遊びでもしてはいないか、悪い友達でもできていないかと心配になった母親はある日、娘が出かける現場を押さえようと決めました。
目覚ましを鳴らしては気付かれると思い、いつもよりたっぷり長く昼寝をして、徹夜をすることにしました。
時計の短針が四回ほど回った頃、娘が電気もつけずに部屋から這い出して来ました。
母親は、重たい瞼をこすることも忘れて寝室の引き戸のすき間から娘の行動を追っていました。
娘が、音を立てないように(と言っても古い茶の間の床はみしみしと鳴っていましたが)台所へと入っていくのを見て、
母親は慎重に後をつけます。
ガタガタと、やや大きい物音が聞こえる先で、娘は冷蔵庫を漁っていました。
母親は、最近冷蔵庫の中身が無くなっていることがあったのを思い出しました(当然娘は知らんぷりでした)。
初めは冷凍のサンマ、そして鳥のささみ、昨日は、確かキュウリのぬか漬けでした。
思い出しているうち、ガタッと、一際大きな音が聞こえました。娘が何かを取り出したのかと思いましたが、
娘は冷蔵庫に手を突っ込んだまま、固まっていました。
母親が疑問符を浮かべたのもつかの間、その音は、自分の足元に転がっている酒瓶から出たものだったのです。
娘は一瞬母親を見た後、脱兎のごとく駆け出しました。
追おうとした母親は、今度は転がっている酒瓶に躓いて転んでしまい、言葉もかけられませんでした。
娘に開け放しにされた冷蔵庫の前に、何かが転がっていました。娘が慌てて置いて行ってしまったのです。
母親が拾ってみると、それは、漬け直そうと思って買っておいたキュウリでした。
娘が何の目的で食べ物を持ち出していたのか、母親にはどうしても分かりませんでした。


下手くそな文章で申し訳ない
次のお題は『今話題の無人島』
380今話題の無人島:2007/06/02(土) 23:43:37
例えば物語には何かきっかけが必要で。じゃあそれを『空から美少女が降って来た』にする。
彼女はすんごい力を持っていて、それが故に悪党から狙われてしまうのだ。
巻き込まれた俺は逃亡生活を強いられるが、その中で少女と恋をする。萌え。
そんなこんなで(中略)すんごい力を手に入れた俺は悪党を撃退する……



とかだったら面白いのになあ、と考えながら、今日も俺は登校するのだった。
友達のいない学校生活は少しばかり、憂鬱だ。
381名無し物書き@推敲中?:2007/06/02(土) 23:47:17
連レス&下手でごめん。次のお題は『ビスケット・パンチ』で
駄目ならスルーしてあげて下さい
382ビスケットパンチ:2007/06/06(水) 12:15:59
パンチパンチクラッシュパンチ 両手を構えて飛び出すパンチ 感情表す強烈パンチを嫌いな貴様にくれてやる

今日も貴様は私を見ては にやにやへらへら笑ってる 私の体綺麗な体卑しい瞳で視姦する 激しく鳥肌立っちゃった!
パンチパンチクラッシュパンチ 今日こそガツンとやってやる!

私はゆっくり近づいてキモイ貴様に微笑んだ 喜ぶ貴様の顔面にまずは一発ぶちかます
ワンツーワンツークラッシュパンチ まだまだおかわりありますよ?
弛んだみぞおち食い込んで ナイスだグッドたもう一発
脂が乗ってるその頬に 唸るぞ放つよもう一発

攻撃受けて怯んだ貴様 腹部と頬を押さえてる 驚愕瞳は私を見てる

まあ、攻撃はやめないけどね。

頬へ肩へ連打連打! 顎へ腹へ連打連打!
オラオラオラオラオラオラオラオラ
炸裂パンチは爆裂拳
オラオラオラオラオラオラオラオラ
フラつく貴様は無様よのう

最後に一発どでかいやつを貴様の体打ち込んでやる
パンチパンチクラッシュパンチ
全てを壊すビスケットパンチ!


次『大三次世界牛乳大戦』で
383第三次世界牛乳大戦:2007/06/06(水) 21:08:36
王は目の前のテーブルに近付く。
「どうだ?」
大臣は王の質問に答えながら、テーブルの上に地図を広げた。
「駄目です。相手国は牛乳を手放そうとしません」
王は交渉に失敗したことを知り苦い顔をする。
「駄目かのぉ……」
王の呟きに、大臣は人知れず心を痛めた。
「申し訳ありません」
「いや、謝る必要はない。謝るなら国民にだ」
大臣は王の言葉に「はい」とだけ返事をし、心の中でもう一度謝った。
「ふむ、それにしても……」
王は地図に目を落とす。
「三回目か……」
大臣も地図に目をやる。
「三回目です。相手国はそれを承知で、こちらの要求を拒否したのでしょう」
「他に方法はないものか……」
「ありません。わが国には相手国を説得する時間も、国民の反乱を押さえる他の方法も」
王は厳しい大臣の言葉にため息を洩らす。
「伝染病がこうも早く広がるとは……」
「だから今のうちに、まだ生存している牛、及び牛乳の確保を急ぐ必要があるのです。国民達の願いでもあります」
「短期間に三回も、それも大規模な。国民は本当にそれを望んでいるのか……」
「国民の望みは牛乳です。戦争はそのための手段。決して争いを望んでいるわけではありません」
王は、葬式の時よりも暗い顔で、大臣にゆっくりと言った。
「軍司令官を、呼んでくれ。進軍経路を決める」
「はい、わかりました」
大臣が去ったあと、王はただぼんやりと、地図を見つめていた。


次は『すり減るミカン』で
384すり減るミカン:2007/06/07(木) 01:25:40
冬はやっぱり炬燵でミカンだ。
だけどミカンの入った幸せの籠は今、俺の正面にいるあいつの手元に。
「ミカン、一つくれ」
「あぁ? 何か言ったかー?」
「ミカン! ミカン!」
「何!? 聞こえねー!」
「ミーカーンー!!!」
俺は両手でミカンをあらわす大きな円を形作りながらミカンへの思いを込め全力で叫んだ。
「あー! ミカンか!」
ようやく通じたらしい。
籠の中のミカンを無造作に一つ掴み、あいつはミカンを投げて寄越した。
まだ届かない。
まだ届かない。
…そろそろか。
ゴオッ……!
低い唸りをあげ表面に薄い炎の膜を発生させながら飛んできたミカンを、俺は特注アームでキャッチした。
飛んできた物の衝撃をやわらげ、どんなに柔らかいミカンでも潰さずにキャッチできる。
「ありがと!」
遥か前方に見える、遠すぎて実は誰だかわからないあいつ(たぶん友達の内の誰かだろう)に礼を言い、空気との摩擦でうっすらと表面が焼け磨り減ったミカンを、俺は丁寧に一つずつ口へ入れた。
冬はやっぱり炬燵でミカンだ。


次のお題は「おにぎり色」で

385名無し物書き@推敲中?:2007/06/07(木) 17:33:30
おにぎり色というと、人はどんな色を想像するだろうか。
大抵は白米の白地に海苔の黒が少し入った典型的な三角おにぎりのそれだろう。
だが、僕の場合は少し違う。
僕母は、俵型にせよ三角にせよ、おにぎりのほぼ全面に海苔を巻いていた。
その方が食べやすいし海苔もおいしいでしょう、と。
実際に僕もその方が好きだった。たとえ友人達から奇異の目で見られようと、
おかかや梅のたっぷり詰まった真っ黒なおにぎりは僕にとって最高のご馳走だった。
毎日毎日早起きをして僕の弁当を作ってくれた母。大学時代にも作ってもらったから
10年近く、世話焼きな母に甘えて僕は真っ黒なおにぎりを食べ続けたのだった。
あれから何年経っただろうか。もう母は居ない。おにぎりを作ってくれることも、もちろん無い。
親から受けた恩は子供に同じように返してやれば良いなんて言うけれど、
もし僕に子供が生まれればもちろんそうするつもりだけれど、それでも――
母本人にもっともっと恩返しをしたかったものだ。
5月は母の誕生日と命日、そして母の日が次々に訪れて感傷的になってしまう。
新緑と青空の下、大して美味くないコンビニのおにぎりを頬張りながら、
僕は空に向かって口の中で呟いた。
母さん。別に僕のことずっと見ていなくてもいいよ。たまには父さんと
ピクニックにでも行っておいでよ。おにぎりを持ってさ。
すると、唐突に頬に落ちてきた小さな小さな水滴。
雨に真っ先に気付く人間は親不孝者だなんていうけれど、これはきっと……

次は「人類VS汗疹」でよろしく
386人類VS汗疹:2007/06/10(日) 11:53:31
人類がベビーパウダーと出会う以前。
汗疹の脅威に人々は脅かされていた。

「いやぁああああ!! この子だけは! この子だけはッ…!」
むちむちの柔肌を侵されてしまった赤ん坊と、その子を想い泣き叫ぶ母親、苦しみの嗚咽を漏らす父親。

「何故、何故キミがこんな目に……」
「…お願いがあるの。生まれ変わってもまた隣で笑って歩いてくれるかな…?」
汗疹によって悲恋を辿り、来世を誓い合う恋人たち。

「負けんなよぉッ! 北森のボスマントヒヒにだってお前負けなかったじゃねーか! 一緒に七つの海をわたるって約束しただろッ! そ、それなのにこんなボツボツごときに負けるなんて……ッ! ウソだッ! 俺は信じねェーッ!!」
共に世界を股にかける冒険をしようと、幼い日に誓った友情。

数々の想いを喰らいつくしながら尚貪欲に、汗疹はその猛威をふるい続けた。
人類が、ベビーパウダーと出会う以前の話。

B.P.後、人類は安寧の内に繁栄し、汗疹の脅威とは遠く離れた文明を謳歌していた。
そんな粉ボケした人の世の片隅、とある研究室で偶然により一つのウィルスが生まれる。
ベビーパウダーに頼りきった粉っぽい研究室で誕生したそれは、生まれながらに粉々したものへの耐性を身に付け世界中を再び汗疹の恐怖へと誘う。
人類の新たなる戦いが始まった。



次は「本物だけれど、はみ出てる」でお願いします
387本物だけれど、はみ出てる:2007/06/10(日) 15:53:52
何かのギャグだと思っていた。
よくできた置物だろうと。この冬休みの、妹の宿題か何かだろうと。
そいつが動き出したときも、ラジコンで操作してるだけなんだろうと。
今思えば、そんな物が小学生の妹に作れる筈も無く、
人間くさい話し方をするそいつは、
漫画から抜け出てきたように、どうしようもなく本物だった。
無機的な体で、美味そうにモチを食う。
腹についた大きなポケット。そこから次々と出てくる、そいつの体より大きな道具。
ロボットのくせに人間より人間らしい言動。
信じられない物を次々と見る中で、俺の目は、信じたくない物を捉えていた。

──俺はずっと、そいつの体は金属でできていると思っていたんだ。

左の側頭部から頭頂部に掛けて、それが出ていた。
それは一見、溝のようにも見えて、
でもそれはへこみではなく、出っ張りで。

まさかそいつの体がプラスチックで、しかもバリがはみ出てるなんて……。
388名無し物書き@推敲中?:2007/06/10(日) 15:55:03
おっと書き忘れ
次のお題は『当たり前のように非常識』で
389当たり前のように非常識 1:2007/06/13(水) 11:26:54
16度目の遭難という危機に直面していた俺は、やっと再会した人間用登山道を登りきり山頂に出た。
「ユウコー! 鼻毛出てるーーーッ!!!」 
は?
デテルー…テルー……ルー………
爽やかな空気に相応しくない山彦が、見事なまでにこだまする。
「あっ!?」
立ち尽くす俺の目の前で山彦に聞き入っていた内の一人が、こちらに気付き声をあげた。明らかな警戒の視線が集中する。
「この山は私有地ですが、どうやって入ってきたのですか?」
どうやら一団の代表らしいおじさんが前に出てきた。
遭難してここにたどり着いた経緯を話す。
「ははあー。あなたが登っていたのは隣の隣の山ですな。相当な方向音痴ですね」
あかの他人に軽く失礼な事を言われたものの、一団の放つ異様な雰囲気の方が気になり、さっさとこの場を離れる事にした。
「そうですか。私有地とは知らなくて…ごめんなさい。すぐ下山しますから」
「お待ちなさい!」
逃がさないぞという力強さで、おじさんが俺の肩を掴んだ。
「私たちの活動を知られてしまったからには、このまま帰す訳にはゆきません。あなたにも我々『ヤマビコ倶楽部』の仲間になって頂きますよ」
「ヤマビコ?」
「そうです。あなたさっき聞いたでしょう、鼻毛の告白ヤマビコ。あなたもご自分の秘密や、普段言いたくても言えない事を、ヤマビコに託すのです」
「な、なんでですか!?」
「それが我々ヤマビコ倶楽部の活動だからです」
いや、そういうことじゃなくて。
「大丈夫。秘密の漏洩には細心の注意を払っています。その為の私有地ですから。安心してレッツヤマビコ!」
いや、だから……。
「あ、ちなみに外部への漏洩を防ぐ為、通常は『Y倶楽部』と呼んで下さいね」
「何かズレてませんか……」
「エッ!?」
あわてて頭部に手をやるオッサン。違う。そっちじゃない。そうまでして知られたくないなら何故叫ぶ、という意味なのだが。
そんなやりとりをオッサンと交わしている間に、遭難者によってあっさりと秘密が漏洩しそうになった倶楽部の他の面々は、再び自分たちの心の叫びを雄大な景色に向かってぶちまけ始めた。
390当たり前のように非常識 2:2007/06/13(水) 11:29:05
「会社の金、300万ほど着服しちゃったぜーーーッ!!!」 ッタゼーー…ゼー……
「下郎どもーっ! このオレ様に跪けーーー!!!」  ヅケー…ケー……
「オーディション受かったーっ! でも6歳サバよんだーーーッ!!!」  ヨンダー…ダー……
内容は様々だが、叫んだ後は皆でゆったりと山彦に聞き入り、そして当事者の顔はどこか晴れ晴れとしたものになっている。なんだか気持ちよさそうだ。
「お、『メンバーになってもいいかな』という顔ですね」
しつこい勧誘と鋭いタイミングの指摘に、俺は白旗をあげた。
普段誰にも言えない事を大声で叫ぶというのは、どんなに気持ちがいいだろう。
倶楽部の面々に俺を紹介した会長が、さあ叫べ遠慮はいらぬという様に、連なる山々へ手を振り向ける。
いざ。
「総務のケンジとブルマ一丁で乳繰り合いたいーーーッ!!!」  タイー…イー……
言ってしまった。叫んでしまった。
しかし。
開放感に浸る俺とは逆に、周囲からはさっきまでの和やかな雰囲気が消え失せていた。まるで異物を見る様な眼差し。
何故だ。ゲイ差別か。変態だからか。ヤマビコ倶楽部などと言っても、所詮その程度のものだったのか。
これまで何度も味わってきた苦い絶望感を噛み締める俺に、会長が困ったように言った。
「今のはちょっと非常識でしたねェ。艶事というのは密やかに、暗い所でこっそりと忍んでこそと思うのですが。こんな昼間に叫ぶ事じゃないでしょう。あなたの今の叫びは『ひめやかなヤマビコ倶楽部』向きですね。Y倶楽部、夜の部ですよ」
え?
「そうそう、こっちも通常は略して『ひY倶楽部』と呼んでいます。勿論、活動の秘密を守る為にです。今回は初めての参加ということで大目に見ますが、今度からは『Y倶楽部』と『ひY倶楽部』の使い分けに気をつけて下さいね」
そういう区別ははじめから言ってくれ……いや、じゃなくて『ひワイ』ってかえってそのままじゃ?……じゃなくて、ええと今更常識って………
なんだかモヤモヤしている俺をよそに、Y倶楽部の活動は滞りなく行われていった。



次は「存在証明 うりぼう篇」でお願いします
391名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 14:14:00
イノシシは幼年期の間、ウリ坊と呼ばれる。
何故ウリ坊か?何故、幼年期のイノシシは「イノシシ」ではないのか。
もちろん、幼年期のイノシシをそのまま「イノシシ」と呼んでも問題は無いだろう。しかし、だからこそ、このウリ坊の「ウリ坊」と言う名が疑問視される。
もしも今、目の前に幼年期のイノシシが現われたとして、貴方はそれをウリ坊と呼ぶだろうか。続いてそのウリ坊の親が現われたとして、その親とウリ坊を、「イノシシ」と「ウリ坊」、という風に名を使い分けるだろうか。同じ生物を、違う名で呼ぶのだろうか。
はたして、「ウリ坊」という名の存在は必要なのか。何故「ウリ坊」という名が生まれたのか。ウリ坊はいつまでウリ坊と呼ばれるのか。
まぁ、そんな事を考える私とは関係無しに、イノシシは今日も山の中を走っているわけである。


スレがストップしたから無理に書いてお題を変えるぜ!
次は『サイコロ・パラダイス』だ!
392名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:03:17
男は食事を終えるとポケットから
長年の汗と汚れが染み付き茶色になった
サイコロを取り出した。命のサイコロだ。

この荒野を貫く国道のガソリンスタンド件食堂の客は
男とテーブルに突っ伏して午睡を取ってる
長距離トラックの運転手だけでカウンターの
備え付けられたTVの前に座り接客の手伝いをしている
子供も所在なげだった。

「ぼうや」

少年は大量リードで前半を終了した退屈なサッカー
中継から目を離すと男の方に顔を向けた。

「ちょっと、こっちへ来てごらん」






393名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:09:37
男はテーブルのベーコンの染みがついた
皿をわきに寄せると、肘をテーブルに載せ
手のひらでサイコロを転がした。

「よく見ててごらん」

男はテーブルの横に立った
少年の前でサイコロを器用に操ると
サイコロは意思を持ったかのように
男の右手から左手、左手から右手
指の間を隠れたり姿を現しながら移動した。

―パチン

男が指を鳴らすとサイコロが消えた。
394名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:14:27
「さあ、サイコロはどこへ行った?」

少年の目は今や輝いていた。
サッカー中継の後半が始まったが
そんなものは耳に入らず、ただただ
男の指を蜂のように飛び回るサイコロの行方に
心を奪われていた。そして
ずっと目で追っていたサイコロが消えている。
これはいったい?

「さあ。わかるかい?」

少年は無言で首を振ると
男は笑いベーコンの乗っていた皿をどけると
そこにさっきまで目で追っていた
サイコロが1を出しテーブルクロスの上に置いてある。
395名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:20:55
食堂の様子がおかしいことに気づいた
少年の父親がキッチンから顔を出した。

―せがれは何をやってるんだろう?
まったく、あいつは役に立たない。

父親が顔を出した時、少年の食堂に歓声が
響いた。父親が聞いたことのない声。
母親が出て行ってから少年はずっと寂しい思いを
していたが、それを父親に話すことはなかった。
少年は繊細で言っていいことと悪いことの
区別がついた。分別。それはもう大人の考えだった。
396名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:28:19
「それでは私はどうしたらいいのでしょう?」

30分後父親は男の魂胆を見破ると男を
外に連れ出し照りつける太陽のもと
向かい合った。

「いや、あんたが詐欺師だと、
食い逃げをするつもりだということは
分かったよ。あんたはここいらに住む
私らみたいな連中を学のない馬鹿なカモだと
思ってるかもしれないがね」

男は黙ってうなだれたままだった。
首筋があつくチリチリと音がするようだった。

―なんて、あついんだここは。

国道から熱せられた風がやってきて
土ぼこりをまきあげた。

「でも、いいんだ息子が
あんなに笑ったのを見たのはひさしぶりだったよ。
俺は父親として反省しなきゃいけないのかもしれない」
397名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:33:54
「良かったら、夕食をここで取らないか?
どうせ行くあてはないんだろう?
もし良かったらわしが、駅まで送ってやってもいい」


―1年後

少年はがっちりと男と握手した。
父親は笑っている。

「どうも、お世話になりました。
まさか、ここで働くことになるとは・・・
とても短い一年でしたが私はまた旅を続ける
決心をしました」

男は少年の膝を落とすと
サイコロを渡した。

「さあ、運命のサイコロだ。俺が詐欺師と決別
するためにも荒野に放り投げてくれ」

少年は父の目を見、ためらった後
国道に向かってそれを投げた。
398名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:35:49
長距離トラックがやってきて
サイコロをつぶすと砂になって風の中に消えた。

「さようなら、相棒」

「さようなら」

男は帽子をかぶると道を歩き始めた。
それを父と子は地平線に消えるまで見送っていた。


終わり
399名無し物書き@推敲中?:2007/06/16(土) 21:38:56
次は「愛を教えて」で
400名無し物書き@推敲中?:2007/06/17(日) 01:21:21
男は少年の膝を落とすと

男は少年の前に膝を落とすと
401392-400:2007/06/17(日) 05:55:00
題が普通すぎました。

「愛を教えてと蛙は言った」
にしてください。
402愛を教えてと蛙は言った:2007/06/19(火) 03:30:54

生物室で飼っているおたまじゃくしの、そのうち1匹に後足が生えた。
俺はそれをアイツに教えるために教室まで呼びに行き、ここへ連れてきた。

「ほら見ろよ。このおたまじゃくし、もう足がはえてるんだぜ」

アイツは水槽の中をまじまじと覗き込み、さほど興味がなさそうに呟いた。

「なんだか不完全な物体」

水槽の中では真っ黒なおたまじゃくしが数匹、所狭しと泳ぎ回り、
確かに足の生えているおたまじゃくしが異質に見えないわけでもない。

「これから立派な蛙に変身するんだよ。後足の次は前足が生えてさ」
「まるで誰かさんみたいだな」

その言葉を残してヤツは生物室から出て行った。
403愛を教えてと蛙は言った:2007/06/19(火) 03:32:35

誰かってなんだ、俺のことか。半人前だって言いたいわけか?
嫌味なやつだ。俺と同じ年のヤツだって同じようなもんだろう。
まあいい。アイツのあんな物の言い方はいつもの事だ。

しかし内心面白くなかった俺はなんとなくアイツとは口を利かないまま一日を終えた。
混雑している帰りの電車に揺られて外の景色を眺めていると、携帯にメールが届いた。
ヤツからだった。


何故いつも優しくしていられるの?
なぜいつも意地悪な私の言葉を笑って聞いてくれるの?
どうしたらあなたみたいな人間になれるの?
おしえてほしい。

立派な蛙さんへ
足のはえた不完全なおたまじゃくしより



次の題は『悪徳詐欺師ブログ』で

404「悪徳詐欺師ブログ」1:2007/06/24(日) 03:33:48
ブログなんて、俺の柄じゃない。んなこたぁ十分に分かってる。
大体、人様に言えるような商売をしてたわけでもねぇし、仕事以外の話題なんてモンを持ってるわけでもない。
それを分かってて、ブログを始めちまったのには、当然理由がある。
単純な事だ。すげぇ仕事をやってのけたら、自慢したくなった。それだけ。


始めはさ、いつも通りだったのよ。
そこら歩いてる一見綺麗な姉ちゃんに声掛けて、『私はこういう者ですが……』とか、ありもしない芸能事務所の名刺を出す。で、雑誌モデル専門の事務所で〜云々とか切り出してさ。
……ああ、そう。そうやってレッスン料とかふんだくるわけ。世間で言うところの詐欺師なんだよね、俺。
あ、因みに声掛ける相手を選ぶにも、ちゃんとコツがあるんだぜ。
並より少し上、って程度のルックスの娘を選ぶんだ。人より可愛いって自覚はあるけど、飛び抜けてはないってくらいの。
そういう娘って、ちょっとくすぐってやると簡単に引っかかるんだよ。それなりにプライド高いけど、自信がない。だから、自信を付けさせてくれる人間に弱いんだな。

っと、そう言えば、すげぇ仕事の話だったっけ。脱線しちまった。

ま、その日も郊外の駅前(都心より成功率高い)で、女の子に声掛けてたんだけどさ。
そこで二十代半ばくらいの女に目ぇ付けた。カモるには年いってるかな、と思ったけど、ルックスが上に書いてある条件にバッチリ合ってんの。パンツスーツなんか着て、出来るオンナ、みたいなオーラ出してて。
これは行っとくしかないだろ。俺、そう決めて声掛けたんだ。
そしたらその女、かなり乗り気みたいで「詳しい話を聞きたいんですけど」ときた。
よっしゃー! と思って速攻で茶店。自作のパンフ見せながら、説明してたんだけどさ。

……笑うぜ。
手帳出しやがんの。

「続きは署の方でお願いします」
すげぇ冷静に言われたよ。愛想笑いのサービス付きで。
見事にお縄喰らって、わけ分かんねぇ内に裁判終わって、塀の中放り込まれて。
波風立てないように過ごしてたら、五年で出てこれた。それが半年前。
405「悪徳詐欺師ブログ」2:2007/06/24(日) 03:34:54
何? これじゃあ『すげぇ仕事』じゃなくて、俺がドジ踏んだ話だろって?
慌てんなよ。すげぇのはこれから。

ムショ出てからすぐ、あの女刑事のトコ顔出したんだ。俺のことハメた女だと思ったら、ムカついて仕方なかったし。
ぶっ飛ばすのはムリだろうけど、ちょっと脅してやろうとか考えてさ。そしたら……


っと、悪い。嫁さんが呼んでる。風呂沸いたらしい。
とりあえず、続きは後で書くわ。
それにしても、パンツスーツってホント色気ねぇな……三十路の刑事にゃ、色気なんて必要ないのかもしんねぇけど。

そんじゃ、また。




何か悪徳っぽくないな……orz 次のお題は「チーズケーキ哀歌」で。
406「チーズケーキ哀歌」:2007/06/24(日) 19:29:45
チーズケーキはデコレーションケーキに憧れていた。
同じケーキと呼ばれる食べ物なのに、なんであの子達はあんなに輝いて見えるのだろう。
なんで自分は、こんなにも垢抜けないのっぺりとした姿をしてるんだろう。
土曜日の夕方になると、いつも決まって私を買っていく男性客がいる。
今日は幼い子供の手を引いて、お店にやってきた。

「さぁ、どれでも好きなのを選ぶといいよ」
「やったぁ!じゃあ、これと、これと……あっ、これも!」
幼い少年に次々と指名されていくデコレーションケーキ達。少年は私には目もくれない。
「それで全部かい?よし、じゃあお父さんはこれを買うよ」
そう言いながら父親が私をそっと指差した途端、幼い少年は不思議そうな顔を浮かべて見せた。
「えー、そんなのより僕の選んだケーキのほうが絶対美味しいよっ」
「ははは、お父さんはこれが大好きなんだ。正也も食べてごらん。きっと気に入るよ」
「僕が選んだ派手なケーキのほうが美味しそうなのになぁ」
そう言って首をかしげる幼い少年の頭にぽんと手を乗せ、父親は言った。
「これはね、中身がすごく美味しいから着飾る必要がないんだよ、きっと」

今でもこの親子は土曜日の夕方になると、お店にやってくる。
「僕今度もこれがいい!お父さんもこれだよね!」
今日も幼い少年は、瞳を輝かせながら私を指差してくれた。






次のお題「ポケベルの逆襲」
407名無し物書き@推敲中?:2007/06/25(月) 02:08:03
机の引き出しに仕舞われ真っ暗闇の中
ポケベルさんは悩むのでした。

――ああ、麻衣子ちゃんはあんなに僕と
  仲良くしてくれたのに、なんで最近は触ってもくれないのだろう?

ポケベルは体を震わせると埃を落としました。
いえ、体を震わせたのは泣いているわけではありません。
どこからもかかってこない電話。存在さえも忘れられたそのこと。

ごきぶりさんが言いました。

――馬鹿だなあ。携帯電話を知らないのか。ポケベルはほんとに馬鹿だ。

ポケベルさんは、それでも何も言わず黙っています。

――そうだ。

ポケベルさんは電話を始めました。
その電話はどこかの机の奥に仕舞われた別のポケベルさんにつながりました。
二人はずっと夜までお話していたそうです。
408407:2007/06/25(月) 02:10:34
次は「代々木公園には絶対に行かないでください」
409名無し物書き@推敲中?:2007/06/25(月) 19:29:51
>>404
何故かジョジョを感じた。
看板があった。代々木公園には絶対に行かないで下さい。
いつ立ったのかは知らないが、昨日は確か無かった。一昨日は電話で代々木公園で待ち合わせしようと彼と電話をした。
だから昨日公園を見に行き、その途中この道を通ったけれど何もなかった。
看板にも「代々木公園には絶対に行かないで下さい」、それ以外に何もなかった。
私は看板を引っこ抜いて捨てた。
行ってはならない理由も分からないので、行ってもいいだろう。

……その後、交通事故があり、私はもう一度戻って来て看板を立て直した。
代々木公園には絶対行かないで下さい。

次のお題「おみくじのおまけ」
411名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 01:29:04
「おみくじのおまけ」


友達三人と一緒に、寺に来た。辺りには桜が咲き誇っている。桜の季節ぐらいしか寺なんか行かない。
けど古風な時代を感じさせる柱や床と、淡いピンクは結構マッチしていて、私はがらにもなく少々感動していた。

「綺麗だねー。」
「あ、写真とろうよ!」
「見て、この前買ったんだコレ。」
優里が鞄から出したのは最新型の赤。
その景色に合わないデジタルカメラで、はしゃぎながら撮りあった。混んでいるので、どうしてもはしっこに見知らぬおっさんなどが入る。それが唯一、とても気に入らなかった。


「あ、おみくじ引こうよ〜。運勢を占ってもらうのだ!」
果夏はもうはたちになるというのに、こどもっぽい。率先して、勝手に、おみくじ待ちの列に並びだした。私の後ろで優里と真由が「またか」みたいな顔を見合わせて笑っている。

412名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 01:31:51
「げっ、凶だ」
「やーい優里キョウー」
「うるさい」
「あ、私は吉だ〜」
「真由いいなー私の吉と変えてよ」
「あ!だいきち!私だいきち!」
「なんで果夏が大吉!」
皆わーきゃー言いながら引いたおみくじを見せあっている。私は引いたおみくじを見つめて、固まっていた。
「うわぁ、あやちゃん!大凶じゃん!」
果夏が心配そうに私をのぞきこむ。
「あ、あれだよ!確率的には一番運がいいんじゃない?」
「くくらないと〜」
皆それぞれに慰めてくれたけど、私が驚いているのは大凶とかそんなんじゃない。
「むきゅ?」
なんかついてた。
おみくじになんかついてた!その丸い謎の生物は、滑り落ちないようにおみくじにしがみついていた。
目の錯覚だと思いたくて、おみくじを軽くふった。
「む、むきゅー!」
振り落とされるか、と異様に大きな目でこっちをにらんでくる。
謎の生物はおみくじから飛んで、今度は私にしがみついた。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないかも」
「むきゅー」
413名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 01:36:59
次のお題「剣と銃どちらを選びますか?」
414名無し物書き@推敲中?:2007/06/27(水) 11:31:35
勇者なんてただの馬鹿だ。
ある日、突然王様に呼び出されてたかだか50Gポッキリで魔王を
倒して来いって言われてイエッサーで大冒険の始まり。
そんなことあるわけなだろ?
「剣と銃どちらを選びますか?」だって?
下らないこと聞くんじゃねぇ。
革命の時代に生きれば殺しは合法だ。
生きる「権」利を手に入れるために俺は「獣」になる。
乾いた北の国のテロリスト万歳。
乾いた北の国のテロリスト万歳。



次のお題「ルパンが盗んだフジコちゃんのパンティーの値段」
415名無し物書き@推敲中?:2007/06/28(木) 21:10:38
>>414
この人は酷評スレを荒らしてた人かな?
返事が無かったら>>413で続けます。
416名無し物書き@推敲中?:2007/06/30(土) 01:32:21
剣と銃どちらを選びますか?

「剣と銃どちらを選びますか?」
家でパソコンをたたいていると、こんな言葉がふと頭をよぎった。唐突にだ。
仕事のしすぎだろうか。どっかで見た映画のワンシーンだろうか。
まったく覚えのない質問だった。第一こんな質問、答えられるわけがない。
どんなシチュエーションかだって判らないし、武器を手にする理由などない。
それに、私は平和主義者なんだ。痛いのはきらいだし、人を傷つけたくなんてない。
私には愛する妻だっている。親父もお袋もいるんだ…

「銃はダメ!剣を、剣を選んで!!!!!!」
私の頭にかわいらしい女の子の声が波紋のように広がる…いったい誰の声だろうか…

その声で、私は目を覚ました。どうやらあのまま寝てしまったらしい。
しかし、いつもとの違和感を覚えた。
私の目に広がるのはいつもと違う無機質な白い天井。
ここはどこだ…?そんなことを考えているといきなり妻が抱きついてきた。
どうやら泣いているらしい。

その後、事の顛末を妻から聞いた。なんと、私は家でぶっ倒れたらしい。
原因は脳梗塞。なかなかにやばい状態らしい。
医者いわく、早急にレーザーで焼くか、メスで切開し手術するしかしか治す方法がないそうだ。
レーザーかメスか…どちらにしようか…ふと私の頭に再び女の子の声が広がる…

「パパ、銃はダメ!剣を、剣を選んで!!!!!!」
私はその日、頭部切開という大手術を受けることになった…

その後、私は順調に回復し、二年後には娘もできた。
その娘が私の頭を見てこう言う度に、あの声が思い出される。
「パパはケンシみたいだね。頭に剣で切られたみたいな傷があるもん。」
お題は「安い物件」
417安い物件:2007/06/30(土) 04:21:42
その物件の裏に回ると真新しい芝生が生えている庭の半分は
隣家と隔てるブロック塀ごと崖の下に落ちて黒い土砂の間からは
赤い金属のパイプのようなものが午後の光を反射していた。
「あれはブランコなんですよ。うちの社長が子供にも
楽しめる家というコンセプトで開発したんですが
あの台風で一度も使われないまま崩れてしまいました。
契約された場合には引き上げますけどいかがなさいますか?」
私は妻と顔を見合わせると妻は苦笑いをした。
眼下には町が広がっている。
あの高い建物は県庁のビルだろうか?
私は手を翳し新しい勤め先の県庁を思い出した。
「まあ、住めば都です」不動産業者はそういって笑った。
一ヵ月後
サーフィンをしてる夢で目が覚めたがサーフィンを
しているのは私ではなく家だった。
降り続いた雨によって家ごと山を滑り降りていた。
長いライディングが終わったあと家は県庁に横つけした。
玄関を開けると目を丸くした課長が見慣れたバーコード
頭を崩しながら唖然と口をあけている。
「おはようございます。お早いですね」
私がそう言うと課長はなぜかスキップをしながら
県庁に向かっていった。
起きだした妻はホウキとちりとりを持って
道路にぶちまけた泥を掃除していたが私はそれを制止した。
なぜなら私は土木課の職員だからだ。
418417:2007/06/30(土) 04:24:53
お題は「尿道からビールが出た日には」
419尿道からビールが出た日には:2007/06/30(土) 12:48:53
 便器の中が妙に泡立っていた。しゅわしゅわしゅわしゅわ、炭酸が弾けるように。俺はしょんべんを放つ俺のイチモツを眺めた。泡が付いていた。
「わ、わわわ」
 驚いて数歩後じさった拍子に転んでしまった。尿が宙を舞い、俺に降りかかる。最低だ。思ったのは瞬間だった。
「これは、ビール……か?」
 運悪く口にも入ってしまったしょんべん。その味はまさにビールそのものだった。しょんべんがビールの味になってる! 衝撃的事実に、俺は恐怖を覚えるよりも妙に納得していた。
 やっぱり一日で三百本はよくないよなぁ……
 いまだ垂れ流し状態のビールの感覚を感じながら、ああ、もうこんなんになっちまった。涙が流れた。
 禁酒しよう。
 リストラのショックを乗り越えようと、一歩踏み出した。


「実は俺、牛乳上戸なんだ」
鑑定師がパンティをガラス板の上に乗せ三方をクリップで留ると
ガラスの下の白熱球のスイッチを入れた。
純白のパンティがさらに白く輝いた。
「ここを良くみてください。ここです。そうこのステッチのところ。
別の繊維が紛れ込んでいるように見えますがこれは陰毛です。
日本人女性以外のね。つまりこれは…」
そう言うと鑑定師はメガネを外し意味ありげに私の目を覗いた。
「不二子のもので無いと?」
鑑定士は頷き私の肩をたたく。
「不二子のパンティーは、この私の下着鑑定人生において
一度しか見た事がありません。それはシマウマのアップリケがついた
不二子が幼女の頃のパンツです。成人してからの不二子の
パンティは図鑑でしか見た事がありませんよ」
421実は俺、牛乳上戸なんだ:2007/06/30(土) 23:22:40
ルパンの隠れ家

「おいルパン。これを見ろよ。お前の盗んだ下着
偽物だったって書いてあるぜ」
次元はそう言って新聞をルパンに渡した。
するとルパンは笑いやがて爆笑をし始めた。
「何だってんだよ。ルパン!」
「なあ、次元。不二子はパンティーなんて着けないよ。
あいつはいつもノーパンさ」
戸惑う次元のもとに五右衛門がお盆に牛乳の入った
三つのカップを持ってやってきた。
「さあ次元。この中の一つはヤギの乳だ。それがお主に分かるか?」
「なんだよ。五右衛門。どういう意味だ」
「つまり。心頭滅却すれば火もまた涼し。つまり
オナニーするのに必要なのは想像力だってことだ。
パンティーなど関係は無い」


422名無し物書き@推敲中?:2007/06/30(土) 23:25:48
次は「悲しみ採掘所」で
423悲しみ採掘所:2007/07/01(日) 17:15:27
顔に住むドワーフは言った。
「女を泣かせるのは難しい」
顔に住むドワーフの仲間は答えた。
「だからと言って掘る穴を間違えちゃいけねぇよ」

女は男に突然の別れをつきつけられたが涙を流すことは
なかった。それはいい女であるため、恋のイニシアチブ
を握り続けるため、女は涙を堪え続けた。
「スンっ……」
鼻をすする音はまるでお姫様だ。
女は男が見えなくなるまで待って涙をこぼした。
「スンっ……」

顔に住むドワーフは言った。
「女を泣かしちゃいけないぜ」
顔に住むドワーフの仲間は答えた。
「だからと言って掘る穴を間違えちゃいけねぇよ」





次のお題は「モヒカンにしたキリン」

424モヒカンにしたキリン 1/3:2007/07/02(月) 01:47:58
5月5日

息子へのプレゼントに絵本を買った。
その本屋で、変わった名前の絵本を見つけた。
『モヒカンにしたキリン』表紙に描かれたキリンは、少し寂しそうな目をしていた。
ごんぎつねを買って、夜に息子に読み聞かせた。

6月20日

立ち寄った本屋で、再びあの本を見た。
『今話題のベストセラー』レジの正面、一番目立つ棚に平積みにされていた。
今買うとブームに乗せられているようで嫌だった。
何も買わずに、店を出た。

7月31日

あの本『モヒカンにしたキリン』の人気は衰えないらしい。
読んだことが無いと友達からバカにされると息子が言うので、しぶしぶ買いに行った。
『次回入荷までお待ちください』3件回ったが、どこも売り切れだった。
息子をなだめるのが大変だった。最後は「うちはうち、よそはよそ」だ。

8月7日

息子が友達に見せてもらったらしい。
内容は教えてくれなかった。息子は根に持つタイプのようだ
こうなればこちらも意地になる。読みたい気持ちを抑え、絶対読まないと決めた。
425モヒカンにしたキリン 2/3:2007/07/02(月) 01:48:43

5月5日

息子へのプレゼントに小説を買った。
その古本屋で、懐かしい名前の絵本を見つけた。
『モヒカンにしたキリン』表紙に描かれたキリンは、だいぶ色あせていた。
村上春樹を数冊に、その本をこっそり買った。
他愛も無い話だった。モヒカンにしたキリンとは、私の事だった。


『モヒカンにしたキリン』

「ぼく、モヒカンにしたんだゾウ」
「わぁ、ゾウさんかっこいいね」
みんなが口をそろえてそう言うと、
「なんだい、そんなのちっともかっこよくないや」
キリンは、一人そっぽを向いてしまいました

「わたしも、モヒカンにしたの」
「わぁい、ウサギさんもモヒカンだ」
みんながうらやましそうにそう言うと、
「へん、かっこわるいったらありゃしない」
キリンは、またそっぽを向きました
426モヒカンにしたキリン 3/3:2007/07/02(月) 01:50:46
「ぼくも、モヒカンにしたんだ」
「ぼくも」
「わたしも」
「なんだいなんだい、みんなしてそんなかっこうをして。
 ぼくはぜったいに、モヒカンにはしないぞ」
キリンは、ほんとうはうらやましく思っていましたが
それでもやっぱりそっぽを向きました

「ねえねえ、ぼくも、モヒカンにしたんだよ」
キリンは、あれだけ言っていたのに、とうとうモヒカンにしてしまいました
でも、みんなはもう、モヒカンにはしていませんでした
「やぁ、キリンくん、モヒカンなんてへんなの」
みんなにわらわれて、キリンははずかしそうにうつむきました
「ちぇっ、こんなことなら、さいしょからモヒカンにすればよかったなぁ」

                                     おしまい


次のお題『飛び出す幽霊写真集』
427飛び出す幽霊写真集:2007/07/02(月) 02:42:23
新入りのアルバイトが最初にやらされる仕事。
それは誰もがしたくない仕事である。
俺がはじめたバイト「ブック・オフ」の初日の仕事は倉庫での
買い取った小説や雑誌の整理の仕事だった。
陰気な倉庫で一人きり棚に分類する、嫌な仕事である。
とは言っても接客が好きでない俺には、それほど
辛い仕事ではなかったが。
「毒島君。悪いけどこっち手伝ってくれる?」
ようやく要領がつかめてきた頃、顔を出した
先輩に言われて倉庫出口の方へ行くと
古い民家取り壊しのために膨大な書籍を引き取ってきたばかりの
ワンボックスカーが止まっていた。
「倉庫へ入れるの手伝ってよ」
ダンボールに入った本また本。雑誌また雑誌。
古本特有の甘酸っぱい匂いは、田舎の家を思い出させ
ノスタルジックな気持ちにさせたがアルバイト初日から
気を抜いて仕事をするわけにはいかない。
俺は夏の太陽の下、黙々と荷卸を続けた。
428飛び出す幽霊写真集:2007/07/02(月) 02:42:54
作業がひと段落して、倉庫で一人、昼食をとっていると
不思議な音がした。洋服が擦れあう音と板張りの廊下を
歩くようなミシミシという音。とても小さい音だ。
ご存知のとおり、ブックオフは始終、うるさいBGMが
掛かっているので倉庫にいてもその音は聞こえてくる。
その中に小さく聞こえてきたから最初は空耳かと思った。
しばらく聞いていて聞き分けられるようになってくると
その小さい音はさっき下ろしたばかりのダンボールの中から
聞こえてくるようだった。俺はコンビニで買った弁当を
床に置くとおそるおそる音がするほうに足を向けた。
――このダンボールだ。
ウオークマンのような機械のスイッチが勝手に入って
再生されているのだろうか?俺は「紀州みかん」と書かれた
埃だらけのダンボールを見下ろしながらそうつぶやいた。

「新入りがいないけど、なんか仕事やらせた?」
古株のバイト二人はそういって新入りのいない
倉庫を見回した。
「トイレですかね?」
「ちょっと見てきてよ、さっき確認したけど
いなかったんだ。逃げたかな?」
二人は顔を見合わせた。またかというように。
最近の若いやつは根性が座ってないというように。
429飛び出す幽霊写真集:2007/07/02(月) 02:44:00
――1週間後

美佳は霊能力者というほど第六感があるわけでも
無かったし、幽霊が見えたという体験もしたことが無かったが
その写真集の前に来るとうすら寒い感覚を味わった。
誰かが助けを呼ぶ声がする。ここから出して!というような。
不明瞭な叫び声。とても小さくこのうるさいBGMに
かき消されてもしまうような、あるいはこの声は
私の心そのものに呼びかけているんだろうか?
美佳は背筋が凍るような感覚を味わいながらその
写真集を手取った。その瞬間。

「いらっしゃいませ!」

新入りは挨拶を忘れていなかった。
写真集に閉じ込められ一週間ぶりに写真集の世界から
ここに戻ってきた新入りバイト卓也は
開口一番、そういった。彼はそれから一生懸命仕事し
店長代理にまでなったそうである。
430名無し物書き@推敲中?:2007/07/02(月) 02:45:33
次のお題は「コンピューターと友達になった少年」
431427-429:2007/07/02(月) 02:49:41
新入り=毒島卓也

スレ汚しスマソ
突然の事故で少年は体を失った。
正確に言うと残ったものは脳の一部だけだった。
だけれど幸運な時代のめぐりあわせのおかげで少年は
永遠の命を手にいれることができた。
この時代、最高の科学といわれたウォーターチップの
存在で少年は死の恐怖から開放された。
ウォーターチップ、液状化された染色体に直接情報を
書き込む装置。DNAに直に、情報を取り込むことに
よって最小のスペースで地球一つ分以上の知識を持ち
歩くことのできるようになったポエムのような科学だ
った。

少年は端末とウォーターチップを繋げてもらうことに
よって世界になった。死のともわない電脳の世界では
神になった。
だが進化と退化は常に同じベクトルの上で生きること
しかできなかった。
少年はウォーターチップの海のなかで小さな羊となり
地球規模の柵のなかでしか草をはむこのとできない、
自分の存在に虚しさを感じた。

これは全てのSF基礎物語だ。かつてヨハンと呼ばれた
少年が個人を世界から抹消するため戦ったように。
少年も全ての世界を水の惑星に帰依するため端末の世
界TOMODACHIとの契約を交わした。

いづれこの世界は滅びゆくであろう。
端末にとりこまれた少年の世界はウォーターチップの
なかにある。
世界最小の海のなかで死ぬことのない少年は宇宙を創
り続けなければならない。

それはきっと涙のなかの海とかわらないだろう。




次のお題は「ペリカンは死なない」です。
434ペリカンは死なない 1:2007/07/02(月) 17:18:22
ペリカンはその行きつけの飲み屋の暖簾を
二ヶ月ぶりにくぐった。いつものカウンター席に座りいつもの
ビールを頼むと後ろのテーブル席から聞きなれた濁声が聞こえた。
「おやじ! 焼き鳥一羽!」
そう言うと店内に爆笑が起こった。
毎度変わらぬお約束のギャグである。ペリカンは
天井に届くほどの翼を広げると威嚇のポーズをした。
これもまたお約束。
とは言っても落ち着くのはこの飲み屋であり
あいも変わらずの常連たちの野暮だけど優しい人柄である。
ペリカンはグラスに入ったストローをくわえるとビールを飲んだ。
435ペリカンは死なない 2:2007/07/02(月) 17:19:28
「久しぶりねえ、元気だった?」
ママさんの問いかけにペリカンは値下げ競争による皺寄せ
規制緩和による中小企業の参入など悲しげに語った。
「そういえば黒猫さんも同じようなこといってたわねえ」
ああこの世に春が来るのはいつの日か。
人間もペリカンも辛いのである。
ビール一杯のために働くなんて気違い沙汰は勘弁して欲しいのである。
その上、郵政民営化。まったくどうかしてる。
――俺は死なないぞ。負けてたまるか。
から元気を装っても、出るのは溜息ばかり。
今度の選挙はどこに入れればいいのか?
ペリカンは支払いを済ませると翼を広げ夜の街に飛び立とうとした。
「酔っ払い運転禁止!」
自転車に乗った警官が声をかけた。


436名無し物書き@推敲中?:2007/07/02(月) 17:23:52
次のお題は「中田、卓球に挑戦す」です。
437中田、卓球に挑戦す:2007/07/03(火) 15:25:25
中田氏スポーツパート17・卓球編。

俺の上司はアホAV監督。マニア向けのスポーツAV
を考え出した男だ。
この男がどれだけ阿呆かというと。ドラマ仕立てのス
ポーツにエロシーンを入れればいいのに、常に性技・
性交を絡めながらリアル競技をさせたが所である。
簡単に言うなら同じ卓球でも羽子板ルールを導入して
ミスしたら女優が服を脱いでいって最終的には……。
という程度の展開でいいものを、下半身二人羽織りス
ーツなるものを開発して女が前、男が後で下を固定し
たまま本気で卓球をさせるのである。
こんなものが本気で売れるのか?
まともな裸の映像のないエロビデオのなかで、ミック
スダブルスの試合が行われながら、たまに女優の声が
「あっ、あっん」と体育館にこだまする。

世も末だこんなビデオがAV売り上げランキングで第
13位にランクされていた。
キャッチコピーは「中田、卓球に挑戦す!!」
俺も監督もセットでこの業界の人気者。
格好いいぜ、ベイビー♪



次のお題は「お醤油時計」です。
438お醤油時計:2007/07/04(水) 22:35:29
夏休みに端正込めて作った工作。と言っても砂時計の中の砂を取り出して、代わりに砂鉄を入れたにすぎないんだけど。僕はそのタイトルを『ファウスト』とつけた。新学期にこの工作を学校に提出するつもりだ。
一見ただの黒い砂時計だけど、磁石を近づけると砂が落ちずに時が止まったように見える。
3歳の弟はこれを見て「おそーゆ」と言った。「おそーゆ」とは醤油の事で、黒い物を見ると何でも「おそーゆ」と言った。それを見ると思わず笑みがこぼれ、だっこせずにはいられなかった。

学校に提出した工作は『お醤油時計』というタイトルだった。
時よ流れよ。世界に変化をもたらすお前が一番美しい。君の成長を見守っていたい。


次のお題は「猫とカサブランカ」
439名無し物書き@推敲中?:2007/07/04(水) 23:44:08
猫とカサブランカ

あるはれた昼下がり一匹の猫と一輪のカサブランカが激論を繰り広げた
「ニャーニャー」
『・・・』
なかなか結論は出ないらしい
「ニャー」
『・・・・・』
「フギャー!」
カサブランカが何か失礼な事を言ったようだ
『・・・・・・・・・』
「ニャーニャーニャー」
どうにか落ち着いたようだがなかなか結論にはたどり着けないようだ
両者の言い争いは三日三晩続いた
やがて何らかの決着がついたらしく猫はしょんぼりしながら
カサブランカのもとを去っていった
ただ残ったカサブランカはどことなく誇らしげだった

次のお題は「月の裏側」
440月の裏側:2007/07/05(木) 01:43:52

「ねえ、知ってる?月の裏側って地球からは見えないの」
「だって、月だって回ってるだろ? なんで見えないんだ?」
「知らない。見えないものは見えないの」
その露天風呂からは七月の月が木立の間から見えた。
シンと静まり返った森の上に浮かぶ満月の一歩手前の月。
ユーミンが歌の中で一番好きと言った月だろうか?

まだ肌寒い北海道は湯船から肩を出すと夜風が冷たく
火照った体に心地良かった。観光客が押し寄せる夏になるには
まだ早くこの露天風呂に併設されたキャンプ場には僕らの他
誰もいない。

「ねえ、月の裏側には宇宙人がいるって言うけどほんとかな?」
「さあね。ロマンティックだと、思うけど宇宙人なんていないよ」
「でも、私たちだって宇宙人でしょ?」
そう考えればそうかもしれない。広い宇宙に住むたった一つの
知的生命体、人類。おろかで間抜けで、愛しく、醜く、哀しい。
その時、彼女が立ち上がりつぶやいた。
「私、あなたが好きよ」

深い森で見知らぬ動物が鳴く声がした。
夜は優しかった。



441名無し物書き@推敲中?:2007/07/05(木) 01:44:05
次のお題は「夏休みの宿題を一日でやる方法」
442名無し物書き@推敲中?:2007/07/05(木) 02:02:49
夏休みの宿題を一日で
443夏休みの宿題を一日でやる方法:2007/07/05(木) 21:56:52
夏休みの宿題を一日で終わらせるため、
ぼくは恋人候補のY子ちゃんを七夕祭
(ぼくの街では旧暦に行われる)花火
大会に呼び出した。
「もし僕のことが好きだったら全部の
花火が打ち終わるまでに僕の唇にキス
をしてね」
ひゅ〜……。
どぉ〜ん……。
ぱらぱらぁ〜……。
ぼくたちは星空と暗闇と夜の一瞬の
太陽のしたで初めてのキスをした。
ひゅ〜……。
どぉ〜ん……。
ぱらぱらぁ〜……。
そこは校庭の朝礼台の上だった。
ひゅ〜……。
どぉ〜ん……。
ぱらぱらぁ〜……。

ぼくは今日少しだけ大人になったんだ。



次のお題は「海底火山と車輪のキヨスク」です。

444海底火山と車輪のキヨスク:2007/07/10(火) 04:47:17
最初にそれを発見したのは釣り人だった。
船の上から糸を垂らそうとしたとき
海面の色がいつもと違うことに気づく。
「鯨かと思ったんです」
後に彼はインタビューに答えた。
「まさか、あんな場所に海底火山が出来るなんて」

キヨスクに勤めるトメ子は夫が発見した
海底火山の話を聞くと、いてもたってもいられなくなった。
これで貧乏生活から抜けれると。島を手に入れられると。
でも、そう話は甘くない。のちに日本を代表する巨大なゴミ捨て場として
有効利用されたそうである。特に処理に困っていた中古車の
廃棄所として重宝された。



次のお題は「俺は貧乳が好き。ただし幼女は不可」
隣のお兄ちゃんが女子大生と幼女に揉みくちゃにされていた。
修羅場なのに、端から見ていると結構笑える。
「あんた、もしかしてロリコンな訳?」
「おにいたん、うわきするなんてひどいぉ」
両方から引っ張られたお兄ちゃんは、だんだん不機嫌になって二人に怒鳴った。
「俺は貧乳が好き。ただし幼女は不可! わかったら二人とも帰ってくれっ!!」
女子大生は巨乳だし、小さいほうはつるぺったんだけど幼女だ。
二人を追い返したお兄ちゃんに「私なら貧乳だし、幼女でもないよ」と、さりげなく胸元を見せる。
勿論、ブラなんて必要無いからつけてないデス。
今日は高校のセーラー服姿だから、きっとお兄ちゃんも悩殺間違いなしだ。
お兄ちゃんはこちらを見て理性を失い「うおぉぉぉ! つるぺったんな女子高生ギザ萌えス」
と奇声を発しながら突進してきた。
こうして、胸がつるぺったんな私はお兄ちゃんと付き合い始めた。
私におちんちんがついている事は、まだお兄ちゃんにバレてない。


エンディングテーマ
http://jp.youtube.com/watch?v=4WB02meT0L4


次のお題は「虹彩異色症少女が愛した絶対領域」
446虹彩異色症少女が愛した絶対領域:2007/07/10(火) 21:42:57
虹彩異色症

虹彩異色症(こうさいいしょくしょう、heterochromia iridis)は左右の目で虹彩の色が異なる、
若しくは一方の瞳の虹彩の一部が変色する症状。
また、異色症(ヘテロクロミア)だけでも虹彩の異常をさす場合がある。
バイアイやオッドアイも虹彩異色を表す言葉として使われる事がある
(特に動物に対して使われる事が多い)。
人間よりもイヌやネコが発症する場合が多い。

絶対領域

絶対領域(ぜったいりょういき)とは、
女性がミニスカートとサイハイソックスを着用した際に、
太ももの素肌が露出した部分を指す言葉。インターネットスラングの一つ。

私はレズビアンで会社を経営している。
小さなデザイン関係の会社だ。主に食品のパッケージのデザインをしていて
この間は三連になったゼリーのデザインを依頼された。
よくスーパーに並んでいるようなやつだ。私のデザインは好評で
手がけた商品は出荷の品数が多くなるので依頼が絶えない。
世の中は不況らしいが、私の小さな会社ではあまり関係が無い。
447虹彩異色症少女が愛した絶対領域:2007/07/10(火) 21:44:18
会社は吉祥寺にあって、時給も良いのでアルバイトの募集をかけると
多くの希望者がやってくる。私はレズビアンなので女性しか
取らないというわけではないが、男性より女性特に
女子高生にはこちらが考えていないような発想を出すことがあるので
女性を採用することが多い。しかしいくら考えていないような発想
といっても、そこは素人だから使える物にするには
私や社員の手直しが必要だ。当たり前のことだ。

今日も二人面接に来た。吉祥女子と光塩女子の女の子で
吉祥の女の子は将来、デザイン関係の仕事をしたいと、そしてその
ためにこのバイトをしたいということだった。
面接ではみな、体のいいことを言うので話半分に聞いておかなくては
ならないが、私の興味を引いたのはそんな言葉ではなく
彼女のスカートから見える肌だった。
成人と女子高生の肌は、決定的に違う。それがホルモンのせいなのか
セックスを知ることなのか私は知らない。しかし
その艶やかで無防備な肌は、成人になると失われてしまう物なのだ。

私は明日、電話をかけてその子を採用したいと思う。
もう一人の女の子は残念だが不採用だ。
私は明日、電話をかけるとき手が震えるかもしれない。
面接を終え仕事を再開しようとしたとき世界が明るくなったような気がした。
448虹彩異色症少女が愛した絶対領域:2007/07/10(火) 21:49:02
私は鏡の中の自分の顔を見てそこに虹彩異色症を発見する。
奇妙に色が違うたがいの瞳。ある人はこれを
守り神といった。あなたの守護するものだと。少女の頃から
この瞳は私に特別なものを与えてくれた気がする。
勇気、決断すべきこと。会社にとって必要なものだ。
この瞳はこんど私にどんなものを導いてくれるのだろう?
私は明日のために新しい服を買うことにした。
いや面接の電話をかけるためではない。自分自身のために。
449名無し物書き@推敲中?:2007/07/10(火) 21:52:04
次のお題は「ある日、空からお金が降ってきた」
450ある日、空からお金が降ってきた:2007/07/12(木) 02:53:40
 2007年7月5日、ドイツ西部ボルムス。ハイウェイを疾走するフィアット500チンクェチェント車内で笑いの止まらない三人が、札束の海と戯れていた。一枚のユーロ紙幣を眺めた男から笑いが消える。
「次元、五右衛門、これ捨てちまおうぜ……」悪趣味な赤服の男が溜息をつく。
「何だ、また贋札かよ!」髭の男も失望を隠せない。
「…………」侍みたいな東洋人は微動だにしない。
「ゴート札が消えたと思ったら、今度はキム札かよ!」赤服は顔まで真っ赤にしながら、車内の贋札を捨て始めた。風に飛ばされ、国営カジノから強奪したユーロ紙幣が舞い上がる。
彼らが手にしたユーロ紙幣は、第二のカリオストロと呼ばれる、東洋のテロ国家で作られたキム札であった。

 ドイツ西部ボルムスで、空からユーロ紙幣が舞い落ちるのを車を運転中の女性(24)が発見し、「相当な量」を拾い集めてから警察に届け出た。現地当局者らが5日に明らかにした。[ベルリン 5日 ロイター](注意:この部分 実話)

 ニュースを見て、少年は溜息をつく。俺のところにもお金が降って来ないかなぁ。
ふと見上げると、空からお金の代わりに何か違うモノが降ってくる。
それは、ふわふわと漂うように落ちてきたかと思うと、彼の腕の中でいきなり重力に委ねられた。
「大変だ、親方〜! 空から女の子がっ!!」


次のお題は「ある日、空から女の子が降ってきた」
451名無し物書き@推敲中?:2007/07/12(木) 19:52:18
空から空から少女が降ってきている。青い服を着た、三編みの少女。胸の上が青く光っている。
僕はそれを見ている。ここに立って、ただただ見ている。
青い少女。不思議な少女。
暗い大きな穴の中へと沈んでいった。


次回「太陽の涙」で
452太陽の涙:2007/07/12(木) 21:12:01
火星人が凍えているのを見て、太陽はちょっと頑張ってみた。
灼熱に包まれて金星人が絶滅した。
慌てて力を抜いてみた。
冷気に包まれて火星人が絶滅した。
太陽は泣いた。そして、もう何もしないと決めた。
そんな訳で、今では地球人しか生き残っていない。


次のお題は「K-T境界におけるロシュ限界おむすびころりん」
 後世の人々がこの時代をK-T境界と呼ぶことなど、もちろんこの時の鉄治は
知らない。ただ「今日も寒いな」と思ったのみである。
 今朝もまた裏庭で、小山ほどもあるトカゲが八匹ほど死んでいた。しばらくは
それでも食うかと考えたが、女房のカネはこのところ頤の具合がよろしくない。
大トカゲの肉では噛みにくかろうと思い直し、鉄治は釣竿を担いでいつもの
海岸までやって来た。
 海は凪いでいた。ついこの間まで荒れに荒れていたというのに、まるで次々と
死んでゆく大トカゲたちの弔いでもするかのように静まり返って、いつもなら
糸を垂らせばすぐに喰らいついてくる巨大魚も影をひそめている。
「潮目が変わったか」
 そう言えば昨日の回覧板には、ユカタンに落ちた石ころの一件を知らせる紙
と共に、潮汐分裂を伝える紙も雑じっていた。カネは長い間じっとその紙を
見詰めていたが、やがて、トカゲが死ぬのは構いやしないけれど、星が消える
のは悲しいと言って鉄治の胸で泣いた。
「どうってことねえよ、どうってことねえ」
 背中を摩ってやったが、カネはその後も暫らく泣いていたのだった。
 鉄治は顔を上げて目を凝らしてみた。だが、うっそりと曇った空のどこにも星
など見えはしなかった。
「見えねえくれぇ小せえんだものなあ。そりゃあいつかは潰れもするぜ」
 鉄治は目を瞑り、意味もなく空に顔を向け続けた。そんなことをしていると
無性にカネの顔が見たくなった。魚は諦め、丁寧に竿を折り畳んで腰に差す。
腰に手をやったついでに、握り飯をひとくち齧った。出掛けにカネが持たせて
くれた握り飯はすっかり冷え切って堅かった。
 鉄治はふと思いついて、握り飯を空へ向かって放り投げた。
「餞別だ。食え」
 握り飯は空へ届く前に落下し、段丘の肌を転がっていった。鉄治はそれが
見えなくなるまで目で追い、それからほろ苦く笑って背を向けると、丘の向こう
に停めておいたトヨタに向かってとぼとぼと歩き始めた。

次のお題「包装紙はバスタオル」
454名無し物書き@推敲中?:2007/07/13(金) 01:31:31
今日は変な夢を見た。
バスタオルの中に死んだ赤ちゃんがいて私は
その赤ちゃんを埋める場所を探してるけど
なぜかデパートの中で埋める場所を探そうとしている。
衣料品売り場のおばさんに聞くとバスタオルの中の
赤ちゃんの顔を見て汚いものでも見たような顔をすると
手をひらひらさせて私を追い払う。

人々が噂をし始め私を寄っていくと逃げ出すようになった。
私が途方にくれていると犬がやって来て、それを食べるから
くれと言う。私が拒否するとお金を差し出した。
私は急に赤ん坊がうっとおしくなり犬に赤ちゃんを上げてしまう。

そうすると警官が来て連れて行かれた。

赤ちゃんの声で目が覚めるともう夕方だった
どうやら食事をしながら寝てしまったらしい。
嫌な夢だ。私は赤ちゃんにごめんねを言うとおっぱいをあげた。
455名無し物書き@推敲中?:2007/07/13(金) 01:34:59
次のお題「連休になると風邪をひく」
456名無し物書き@推敲中?:2007/07/13(金) 23:23:46
夏休み最終日。
ラジオ体操にも毎日行った。宿題もほとんど終わらせた。
でも、絵日記は真っ白だった。

いざ書こうとしても、1日目が書けない。
海で溺れかけたとか、花火で火傷したとかは覚えているけど…
そういえば、キャンプのときはお姉ちゃんが熱を出していけなかったんだよな。
前の日はあんなにはしゃいでいたのに。
お姉ちゃんは運動会のときも熱を出してたな。
そうだ、いいこと思いついた。

「夏休みはずっと風邪を引いていました。
お母さんは、
「前の日にはしゃいでいるからだよ」
と、言いました。来年の夏休みはたくさん遊びたいです。」

次のお題「隣の方向音痴」
457隣の方向音痴:2007/07/14(土) 00:56:04

 おかしいと思ったんです。
でも、こっちこっち〜オレについて来いよ!って得意気に言うもんですから。
つい、ああついて行っていいんだな、なんて信用しちゃって。
 気が付けば仲間から離れちゃってて、ふたりきり…。
信用した私がバカだったんです。
それなのに間違えたアイツは、おっかしいなあ〜〜なんて言いながら
へらへら笑って私の先を行ってる。

さっきからなんだか寒いし、おなかもすいてきたし
はあーもういい加減疲れた、と思ったところにちょうどいい水辺なんか見えてきて。
ごはんも食べれそうな具合だったんで、早速休憩がてら休むことにして。

そしたらそこでアイツがこんなこと言うじゃあない。

「ごめん…道間違ったの…わざとなんだ。オマエとふたりきりになりたかったから…」

くちばしでアッパーくらわしました。

てんめえ、私たち渡り鳥にとって、仲間からはぐれるのがどんなにアブねーことか
分かりきってるだろうがあああ!!!
 私からアッパーくらわされたアイツはひいひい泣きながらごめん、ごめんと謝ってる。
それを見たらなんだか力も抜けて怒る気もうせてきて。
結局こいつとの間に産まれた卵を今あっためてる。
はあ〜〜私の気も迷ったもんだわ…。

次のお題は「レモンとスパークリングウォーター」

458「レモンとスパークリングウォーター:2007/07/14(土) 18:31:54
失敗した。
炭酸ジュースだと思って買ったが、無糖の‥‥スパークリングウォーターとやらだったとは。
こんなの初めて見たな。俺は不快ながらも、でも妙に新鮮な心地がした。
‥‥もう一口。

ダメだ。やはり、まずかった。飲むんじゃなかった。
「斬新すぎるんだよ」
俺は、これの存在価値を疑った。

―あ。

ひらめいた。何か付け足そう。

そう思い冷蔵庫を見渡したが、あったのは、レモン一つ。
「せめて砂糖があればな」
一人暮らしの男子大学生が砂糖など完備してるはずがない。
しぶしぶ半分に切って、コップに移した炭酸水に、しぼっていれた。色は変わらんな。

‥‥さてと。
俺は再度、コップを手に取る。少しワクワクしてる。男ってそういうとこあるよな。

―ごくん。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

次のお題は「マンホールの朝」
459名無し物書き@推敲中?:2007/07/15(日) 01:51:35
そのマンホールから西側に行く時は
懐中電灯を使うことは出来なかったから
道を間違えたら迷路のような下水道の中で暗闇の恐怖に
押しつぶされ、マンホールから顔を出すと銃を向けた
兵士がそこにいるのを発見するのだ。

キムはそうして死んだ。たぶん死んだんだと思う。
僕の友達だ。もう三ヶ月も前のこと。


さっき僕が下水道で迷ったと確信したとき
頭に浮かんだのはキムの顔だった。
キムは微笑んでこっちに来いよと言っている。
落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせても
言葉は何の意味も持たない。

一緒に来た達也はパニック寸前だ。
殴ろうとしたが逆効果だと思いとどまる。

時計を見る。針は7をさしている。
夜だろうか? 朝だろうか?
僕は考える。時間の感覚が無い。
下水は冷たく体温と思考を奪っていった。
460名無し物書き@推敲中?:2007/07/15(日) 01:53:55
次は「北朝鮮より愛を込めて」で
461名無し物書き@推敲中?:2007/07/15(日) 22:09:01
ここは北朝鮮。
他国からは謎の多い国、危険な国だと言われている。

私はこの国のトップだが

別に危険等ない。
確かに貧しい国民なんかもいるが、世界規模で見ればよくある事だ。

なのに最近アメリカが煩い。
アメリカこそ危険な国の癖に。

しかし、このままではいけない。
私はアメリカとの関係を白紙に戻そうと思い、手元にあるスイッチを押した。


このスイッチは、一切の差別をなくす力を持っている。

轟音を立てて、アメリカにそれは近付いていった…


次のお題は
「戦国武将ニートの刀」
でよろ
462戦国武将ニートの刀:2007/07/16(月) 00:17:27
侍ってのは男の中の男よ。
男は漢らしく生き、漢らしく死なねばならない。
「男は常に戦わねばならぬ」
漢は仲間を前に気勢をあげた。


次のお題は「気をてらえヨダレシャンプー」です。

現代誤訳版。
ニートってのは男の中の男よ。
ニートはニートらしく生き、ニートらしく死なねばならない。
「二ートは働いたら負けなのだ」
ニートはPCという刀を握り2ちゃの書き込みで気勢をあげた。
463戦国武将ニートの刀:2007/07/16(月) 00:20:00
ごめんなさい改行ミスった。
次のお題は「気をてらえヨダレシャンプー」です。
464戦国武将ニートの刀:2007/07/16(月) 00:22:35
ごめんなさい改行ミスった。
次のお題は「気をてらえヨダレシャンプー」です。
465気をてらえヨダレシャンプー:2007/07/17(火) 20:06:38
俺もそろそろ30代後半。
 子供2人の将来のこともあるし、出世のために、ますます仕事を頑張らなければ。
 そこで、今度の社内コンペでは必ず1位を取るべく、最大限の努力をすることにした。

 課題は「育毛シャンプーの新商品の開発」だ。

 まず俺が注目したキーワードは「自然」
 最近あちこちでエコが叫ばれているからな。環境にも人にも優しい素材を探そうってわけだ。
 社内コンペまでの期間はおおよそ3ヶ月。その間いろいろなツテを頼って
 いろいろなものを探した。それこそ日本全国をあちこち周って、
 情報を仕入れるべく切磋琢磨した。
 
 そんな俺に1つの朗報が届いた。
 某国に、そこにしか生えないある植物があるという。
 その植物を煎じた液を禿げた頭にすり込めば、たちまち毛が生えてくるというじゃないか!!
 聞けばそこにいる先住民が、はるか昔から愛用している薬らしい。

 俺は目の前に大出世の道が広がるような気がした。
 それどころか、誰よりも早く特許を取って大金持ちだぜ!ひゃっっほう!!

 そして3ヵ月後、俺は自信満々で会社の幹部が出揃ったコンペで発表したんだ。
 「ご覧ください!!これが某国で見つけてきた、すりこめばたちまち毛が生えてくる
  という植物『ヨダレ』です!!その植物を使ったシャンプー…」
 「その名もヨダレシャンプー!!!」
 「…………」
  発表したとたん、会場は静寂に包まれた。ふっ…余りの斬新さに皆、声もでないようだな…。
  その静寂を破るように、1番奥に座っていた社長の声が辺りに響き渡った。
 
 「却下」

 次のお題は「ペンギンにおける夏祭りの楽しみ方」で。
466名無し物書き@推敲中?:2007/07/18(水) 14:48:15
「あぢぃ〜」
 数千羽のペンギンがヒョコヒョコとペンギン歩きをしながら互いを扇ぎ合っていた。
 ただ、勢いよく扇ぐためには激しくヒョコヒョコせねばならず、それゆえペンギン
たちは汗だくで、しかし必死にヒョコるペンギンたちは、何故こんなにも熱いのか
皆目見当がつかないというのだから、つまるところ彼らは阿呆であった。
 しかしペンギンたちの本能は知っていた。分厚い氷が絶え間ない微振動を蓄積し、
やがて割れるだろうことを……。
 そして、氷が割れる。
「ヒャホ〜イ」「こいつぁひゃっこいぜ」歓喜の悲鳴は大音声となって辺りに響いた。
 一方、
 ペンギンたちが欣喜雀躍するその騒ぎを遠くから鼻で笑うものがいた。白熊である。
「毎年、毎年騒がしいね。はじめから海に飛込めや」
 なるほど確かに白熊の言う通りである。しかし、運動後にシャワーを浴びる快感を
白熊は知っているだろうか。おそらく知らぬだろう。ペンギンの胸筋がこうして鍛えら
れる神秘にも気付かぬだろう。憐れなのは白熊の方であるかもしれないのだ。

          『自然界の神秘』制作・著作 NHK



次回は『シャチの宴〜氷面下の食肉祭〜』をお送りします。
467名無し物書き@推敲中?:2007/07/18(水) 14:52:00
次『ナイジェリア文学史』
468ナイジェリア文学史:2007/07/18(水) 21:43:05
「‥‥うわ、なんだよこれ。」
あの日、俺の手には「ナイジェリア文学史」と書かれた紙切れがあった。
何事かと、諸君は思われるだろう。くじ引きの結果である。
「うわっは!引きやがったな鈴本〜。」
悪友、赤瀬笑ってる。これを書いたの、お前か。
「頑張れよ鈴本。教授が裸足で逃げ出すような最高の論文、期待してるぜ!」
‥‥‥うっさい。黙れ。

――R大学の文学研究サークルで活動している俺は、この日、年4回行われる
文学論文発表会の企画会議に参加していた。
今までは、内容が被ったり刺激的な議論になるように、前もって打ち合わせをして
執筆に臨んでいたのだが、今回は何を血迷ったか2年生の分際で赤瀬がでしゃばり、
「先輩、先輩、みんなのネタを集めてくじ引きを引きましょうぜ」などと言い出したのだ。
数秒間、あたりは沈黙に包まれた。ドン引きだった。隣にいて、恥ずかしかった。

しかし、「いいねェ、面白そうですね。」と天野教授が賛成した。老いぼれめ、正気かよ。
しばらく問答が続いたが、結局くじ引き方式に決まり、かくして俺は、例のよくわからんお題で論文を書くことになったわけだ。

そして今、あのお題が出されてから半月が経とうとしている。
無論、ノータッチだ。資料がとにかく無いし‥‥いや、実は全く調べることさえしてないんだが。
みんな、創作ネタだったのに俺に限って文学史とはな。アイツ、先輩にこれが当たったらどうするつもりだったんだろう。

‥‥おれは溜息をつき、一人つぶやいた。
「さて、どうしたものかな。」            ナイジェリア文学史・前編 完

次は「ナイジェリア文学史 後編」で
469名無し物書き@推敲中?:2007/07/19(木) 00:19:12
ん、ミスってた。
悪友、赤瀬笑ってる。→悪友、赤瀬が笑ってる
この日、年4回行われる →その日、年4回行われる
大変失礼しました。
470名無し物書き@推敲中?:2007/07/19(木) 00:36:55
うわ、まだミスってました。
内容が被ったり刺激的な議論になるように→内容が被ったりしないように、或いは刺激的な議論になるように
「〜くじ引きを引きましょうぜ」→「〜くじ引きで決めましょうぜ」
推敲って大切ですね。恥さらして失礼しました。
471ナイジェリア文学史 後編:2007/07/19(木) 01:04:50
ナイジェリア。アフリカ中央部にある巨大な国で
人口は1億3千万と日本に近いがGDPは50位である。
ちなみにわが国は2位である。数字のマジックというのは
どこにでも存在するので、これをそのまま「世界が100人の」式に
考えるのは、ちょいと急ぎすぎであろう。

ところでナイジェリアの首都ラゴスから遠く離れた
少年の言葉を借りれば―月ほど―離れた村に
小説を読むのが好きな一人の少年がいた。
村には小説が2冊しかなかったから、少年は小説を
そらで言えるほど読んだあと自分で小説を書いた。

それは村の美しさと寂しさについてだ。
ある日、バックパッカーがノートに
みっちり書き込まれた少年の小説を太陽照りつける
路傍の木の下で暇に任せて読む。
バックパッカーは出版社に勤めるサラリーマンで
休暇を使ってここに来たのだ。
そして小説の美しさを知る。砂漠に降る雨のような悲しみを。
バックパッカーは少年に、これを出版しようと
もちかける。少年は恥ずかしそうに父に相談しに行った。

472名無し物書き@推敲中?:2007/07/19(木) 01:14:16



次は「ダンスがすんだら」

473名無し物書き@推敲中?:2007/07/19(木) 01:42:13
哀れだなあ残飯



         今 の お ま え の ザ マ を 見 ろ よ


ぶははは!
474ダンスがすんだら@:2007/07/19(木) 21:41:44
とある国の王宮で、王様が盛大にため息をつきました。
「毎日毎日公務ばかり。たまには気晴らしもしないと死んでしまうわい。何か面白い祭でもないのかの。」
そうです。王様は退屈なのです。
「おお、そうだ。祭がないのなら、自分で催せばよいのだ。なんと良い案であることか。」
この王様、一月前にも同じ理由で祭を催したというのに、覚えていないのでしょうか。
「祭は一月前にやったから、今度は、そうさな。ダンス大会でも催すとするかの。」
覚えていたようです。
こうして次の日、国中に次のような勅令が出されました。
「二月後に、王宮でダンス大会を開催する。1〜5名で、参加費無料。最優秀者には賞品として、王様から一千万円相当の家具が与えられる。奮って参加せよ。」
これを見た一人の愚か者が、ダンスに関してはまるっきりの素人であるにも関わらず、えらく張り切ってしまいました。そしてその愚か者は、昼夜を問わずダンスの特訓に励むようになりました。
仕事も放り出して練習に打ち込んでおりましたから、当然男の奥さんは怒りました。
「あんた、くだらないダンスの練習なんてやめて、仕事をするか、せめて家の手伝いくらいしなさい。どうせ優勝なんてできるわけがないんだから。」
と、奥さんが怒鳴っても聞く耳を持ちません。怒り心頭に発した奥さんは、とうとう愚か者を家から追い出してしまいます。
475ダンスがすんだらA:2007/07/19(木) 21:42:57
しかしこの愚か者、ただの愚か者ではありませんでした。正真正銘の大ばか者でした。ですから、家を追い出されたくらいではめげません。公園に住み、雨水をすすってもダンスの練習を続けます。
そうこうするうちに二月の月日が経ち、とうとうダンス大会当日です。王宮は大会参加者と野次馬の群れで大賑わいでした。当然その中に愚か者も居ます。
司会が挨拶をし、数百人と愚か者一匹がダンスを披露し、そしていよいよ王様の審査結果が発表されます。
なんと、最優秀者は愚か者でした。
数百人の参加者が肩を落とし、あるいは泣き、野次馬共が拍手喝采する中で、王様からの賞品贈呈が行われます。
愚か者はそのとき、ふと、自分がすでに家を持っておらず、家具を貰っても置く場所どころか自分が住む場所すらないと気付きました。
愚か者は王様に、未だヴェールで覆われている家具を指差しながら、言いました。
「王様、私には家がありません。家具をいただいても、それを置く場所どころか、住む場所すらありません。どうすればいいでしょうか?」
王様は少し考えてから、家具を覆っているヴェールを取り払いました。ヴェールの中から現れたのは、タンスでした。
一拍置いて、王様は愚か者に言いました。
「タンスに住んだら?」



次は「爆弾タンポポ」で
476名無し物書き@推敲中?:2007/07/20(金) 17:12:53
「爆発タンポポ」
まるでその花は砂漠に咲く一輪の花にも似ている。
背筋を伸ばし多くの花弁を誇らしげに頭を掲げる姿は美しかった。
しかし、不運なことにその花は、とても小さかった為に、その美しさは誰の目にも止まることなく、車に轢かれ、人に踏まれ続けた。
それでもその花は自らの背骨を折ることを善しとしなかった。
何度折られようとも、起き上がってくるその花の美しさには、誰一人囚われることもなく、その花はひっそりとアスファルトの隅にあり続けた。

ある日、偶々青年がそこを通りかかる。
彼は近年デビューしたての芸術家だったが、世間を華やかせたデビュー作から一転し、その後の評価があまり芳しくなかった。
ジレンマに駆られた彼は駅二つ向こうに借りている、アトリエからの帰り道の途中で、いつもと違った道で帰ろう、と思いつく。
そうして見つけたのが、あのタンポポである。
アスファルトの割れ目から生えた、力強い生命力、それなのに細い線、頼りない茎を見て、彼はどうしてか放っておけないと考えた。
丁寧に根から抜いて、家のプランターにでも植えてやろうか、と思い手を伸ばす。
しかしタンポポの根は長いもので10メートルに及ぶという。彼はすぐに諦めて、なるべく根元のほうからタンポポの茎を手折った。
ぽきり、と軽い音を立てていとも容易くその花は自分の手の中に納まった。
青年は家に帰り、適当なグラスに水を入れて、そのタンポポを水に挿す。
そして自室の窓際に飾っておいた。
しかし、一日二日は視界に入れていたそれも、やがて彼は日々の喧騒に追われ、小さな花のことなぞ、忘れてしまっていた。
477名無し物書き@推敲中?:2007/07/20(金) 17:16:22
数週間後のとある日に、青年はふとあの日摘み取ったタンポポを、唐突に思い出した。
もう枯れてしまっただろう、と帰路を歩みながら、そんなことを思った。
家のドア開き、自室に戻った彼は、グラスに目をやる。
すると、驚くことに、玄関に置いておいたタンポポは、未だ記憶にあるあの姿から寸分変わることなく、咲き続けていたのである。

青年は不思議に思い、アトリエにそのタンポポを持ち込んで、デッサンしはじめた。
しかし、デッサンしながら、一本の花びらの形がよくない、と思い始める。
その青年は手を伸ばし、その無数にある黄色い花弁を一つだけつまみ、ぷちりとむしりとってみた。
瞬間、頭の中に湧き上がるほどの想像の爆発が起きる。色彩、線、情景、自分が思い描いてきた以上のものがそこにはあった。
慌てて青年はページを一枚めくると、鉛筆で、勢いよくその頭の中を描き出していく。
腕、赤、馬、鳥、顔、青、そして全てが集約して爆発していく。
しばらくそれを続け、気付けばスケッチブックが終わっていた。
興奮に溶けた眼差しで青年はタンポポを見つめる。
これなら、俺はまたすごいものがかける。そう思って、タンポポを大事に家に持ち帰った。

事の顛末はあっけない。
なるべく枯らすことのないように、と冷蔵庫に入れておいたのが裏目に出た。
翌日、青年の母がそのタンポポを見つけ、
「あら嫌だ、こんなところに入れるなんて」
と水を流し、タンポポを庭に捨ててしまったのである。
青年は憤怒し、庭をはいつくばってタンポポを探したが、見つかったのは、しなびて薄汚れた何かの花弁だけだった。
青年はその時、自分はさえない三流画家として、生きていくしかないと悟ったのだ。



お題間違えた、「爆弾タンポポ」 な
次のお題は「白昼夢の交代」で
478白昼夢の交代:2007/07/21(土) 02:23:04
私は左にウインカーを出すとハンドルを切って
ゆるい坂を上り始めた。

昔、会社の休憩室で盛り上がった話題がある。
それは我々のような長距離ドライバーが
高速道路のような刺激の無い道を走っていると
記憶のブラックホールに落ちるときがあるということだ。
ふと気がつくと今、自分の走っている場所が分からず
夢から覚めたような感覚がある。

それは居眠り運転とも違うし勘違いでもない。
特定の期間の記憶がさっぱり無くなっているのだ。

特にベテランのドライバー程、落ちやすい。
それを彼らは楽しそうに話す。

私は午後の交代は誰だったかと考えエンジンを切り、ドアを開ける間
ちらとなぜ落ちてしまうのか考える。
その間、夢を食べる動物バクに会っているのだろうかと。
夏休みのサービスエリアには家族連れが多かった。
479名無し物書き@推敲中?:2007/07/21(土) 02:26:47
「愛の証明。その一。この恋愛関数を求めよ」で
480名無し物書き@推敲中?:2007/07/28(土) 23:05:37
↑お題に広がりが無いな
481愛の証明。その一。この恋愛関数を求めよ:2007/07/28(土) 23:31:42
真夜中というのにお台場には人が大勢いた。
私は不良たちの争いに巻き込まれるような気がして
紗枝に他に行こうかと相談しても紗枝はうれしそうに
大丈夫だといってドアを開けると海岸の方に降りていった。

紗枝は去年、入社した私の課の部下で若いのに
言葉使いもしっかりしているし大人びた考え方をしていたから
離婚暦のある私となぜこのような関係になったのかと
不思議に思うことがある。紗枝に聞いても良くわからない
恋愛に年の差なんて関係ないでしょ?という。
その通りだ。返す言葉も無い。

紗枝の横の砂浜に座る。砂浜に座るなんて何年ぶりだろう?
女房と最後に海に来たのはいつだったか?

私はタバコに火をつけ目の前に広がる暗い海とレインボーブリッジを眺める。
いい気分だった。夜風が心地よい。

「愛の証明。その一。この恋愛関数を求めよ」

突然、紗枝がそういって砂浜に線を書き始めた。
でたらめな文字にでたらめな図形。私は答えに困って紗枝の
顔を眺める。
急に真面目な顔になった紗枝は目を閉じ唇をつぐんだ。

―そう答えはキスだ。

482名無し物書き@推敲中?:2007/07/28(土) 23:34:33
「台風が来る前に、するべきこと」で
483名無し物書き@推敲中?:2007/07/28(土) 23:35:45
「ゴミHiか来る前に、するべきこと」のほうがいいんジャマイカ
484名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 08:43:40
風が強くなっていた。
木々が揺れる。葉をざわざわと暴れさせながら、大きくしなっている。台風はもうすぐそこまで来ている。
車の中でラジオを聴いている私は刻々と変化する台風情報に集中していた。過去最大最高の勢力を誇る台風。二日後には列島をすっぽりと覆うのだそうだ。全く対したでかさだ。
そして何とも都合のよい台風である。
ガタガタと車は舗装されていない山道を進み始める。石を踏んで車体は大きくはねあがる。そうさ、出来るだけ山奥がいい。山奥の地盤が緩んだところが最高だ。
なあ、そうだろ。思わないか?
私は後部座席に横たえた妻をミラーごしに見つめた。
きっと山全体がお前の墓標になってくれる。
妻の腕が力なく垂れ下がった。刺し傷がいくつも刻まれていた。


次回
『アイスクリームとラムネの超化学反応』
485アイスクリームとラムネの超化学反応:2007/07/29(日) 10:29:08
薄い青色のラムネの瓶が夏の日差しを受けて光っている。
僕は軽くため息をつき、それから少し伸びをした。
夏は嫌いだ。じりじりと人の肌を勝手に焦がして、何食わぬ顔で去っていく。
頭上で深い緑色の木の葉が揺れ、さわさわと音を立てる。
焦げるかのような蝉の鳴き声。
ふと後ろを振り返ると、あいつがいた。
白色のスカートを風になびかせながら、両手にコーン付きのアイスクリームを持っている。
「アイス食べない?」
僕は首の動きだけで返事をした。
夏はこれからだ。
486名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 10:31:18
次回「彼女は歌い、彼は寝込んだ」
487彼女は歌い、彼は寝込んだ:2007/07/29(日) 15:32:53
殺人的な夏の日差しが降り注ぐアパートの一室は、幸いなことに先ほどスイッチをオンにしたクーラーによって、順調に快適な室温を取り戻しつつあった。
やはり文明の利器とは素晴らしい。
しかし――やれやれ、一体なんでこんな状況になっているのやら。
ちらり、と視線を滑らせると、この部屋の主であり、ただいま夏風邪のため絶賛療養中の友人の姿が目に入る。
夏風邪といっても随分と軽い。念のため安静にしている程度なのだが……。
「本当によかったのか、真吾」
薄目を開けてこちらをじろりと睨みつけるように真吾は口を開く。
「うるせぇな……何度も言っただろ、いいんだって」
「喧嘩でもしたの?」
「そんなんじゃねーよ……」
それだけ言うと、真吾はごろりと寝返りをうってこちらに背を向けてしまう。
自分の話したくない話題になると、こいつはいつもこうだ。
軽い頭痛のようなものを覚えながら、手元の漫画本に目を落とすが、頭は別のことを考えてしまう。
本来ならばぼくたちは、今日は午後一時から始まる県の合唱コンクールを観賞する予定だった。
ぼくの大切な友人であり、幼馴染であり、そして……残念なことに真吾の恋人である由紀の参加する合唱コンクールだ。
今回は由紀にはソロパートがあるらしく、随分と熱心に練習をしていたようだ。緊張も大きいだろう。
愚直なまでの誠実さと、元気さだけがとりえの真吾のことだ、風邪をひこうがてっきり行くものだと思っていたのだが。
それとなく腕時計を見ると、まだ12時前だ。今から急げば間に合うだろう。
「なぁ真吾、本当にいいのかい? 喧嘩したんだったらぼくから……」
「だからそんなんじゃねぇって……」
488彼女は歌い、彼は寝込んだ:2007/07/29(日) 15:33:40
煮え切らない発言を繰り返す真吾の態度は、順調にぼくの苛立ちをつのらせる。
いやいや、ここで怒ってはいけない。こいつは怒りには怒りで返す、良くも悪くも単純かつ純粋なやつなのだ。
「なぁ真吾、由紀はキミの恋人でもあるけどさ、同時のぼくの大切な友人でもあるんだ。だから……理由くらい教えてくれないかな?」
「なんだよ……風邪なんだから仕方ねぇだろ……」
「キミなら40度の高熱があっても約束は守るんじゃないのか?」
苦し紛れの真吾の言葉を、ぼくはため息交じりに切って捨てる。
そうして真吾の言葉を待っていると、さすがに観念したのか、こちらに背を向けたまま、ぼそぼそと話し始める。
「だって……心配すんじゃん……」
「……は?」
「あいつ……優しいからさ……俺が無理して来たら……心配すんじゃん、それでミスとかしちゃったら……悪いし……」
「なるほど……ね」
「俺は風邪だろうがなんだろうが行きたいよ、でもそれって勝手つうかなんつうかその……」
「自己満足?」
「そうそれ、自己満足じゃん。あいつすげぇ練習とか頑張ってんだよ、だから……」
「分かったよ。んじゃぼくはキミの分までしっかり見てきてやるよ、由紀にもうまく言っておくからさ」
「……悪ぃ」

真吾の部屋を出ると、冷えた体に一瞬にしてサウナのような熱気がまとわりつく。
うだるような暑さを少しだけ恨めしく思いながら、ぼく足早に廊下を進む。
彼を想い彼女は歌う、彼女を想い彼は寝込む。
そのぎこちなく優しい関係に、ぼくは少しだけ羨ましさを覚えた。
489名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 17:25:38
age
490名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 19:06:38
次のお題
「床にひとつだけ置かれた裸電球」
491名無し物書き@推敲中?:2007/07/30(月) 00:38:17
「床にひとつだけ置かれた裸電球」

床にひとつだけ電球が置かれていて、その下には一枚の紙が敷かれていた。
というより電球は、その紙が飛ばないようにするための重石として置かれているようだった。
窓は閉め切ってあって部屋には別に風もなかったが、メモを残すなら、
同じことをしたかもしれない、と私は思った。
紙を手にとると、そこには大きく「怒るなよ」とあり、
さらに良く見ると小さな文字で「上を見ろ」と書かれていた。
上を見ると大きな矢印が西の壁をさしていて、壁にかかっていた額縁には、
「回れ右」とあり、振り返ると化粧台があって、鏡には惚けたような私が映っていた。
私は化粧台に近づいた。化粧台には間接照明のためのスタンドがあって、
その傘をとると案の定、電球がなく、かわりにまた「窓の外を見ろ」というメモが残されていた。
窓を開くと暮れかかった夕暮れの住宅街がひろがっていたが、不信な誰かが立っているという訳でもなかった。
風が吹くので私はなにげなく空を見た。あかねに染まった空には気球が浮かんでいて、以下のような
文字が点滅していた。 夏のSSフライング祭り。 投稿期間:7月31日24時まで。
枚数:5枚。 場所:アリの穴  http://ana.vis.ne.jp/ali/index.html
私は鼻のつけねを指で押さえ努めて、怒るまい、と念じるばかりだった。

次のお題も、 「床にひとつだけ置かれた裸電球」 でお願いします。ペコリ、


492床にひとつだけ置かれた裸電球:2007/07/30(月) 01:50:51
引越し業者にすべての荷物を預けた後
トイレの電球が切れているのに気づいた。
僕は電球を外し畳に寝転ぶと意味も無く
手に取ったそれを眺める。

季節はもうすぐ春で近所の桜並木が
咲く頃だったが今はまだ、少し肌寒く
開け放した窓からも弱い日差しが差し込んでいるだけだ。

大学の4年間を過ごした部屋、そして街。
風呂も付いてないボロアパートだったけれど
天井の染みひとつひとつのように
いろいろな思い出がここに染み付いている。

僕は電球を額に乗せると目を閉じ
街の音を聞いた。優しい時のうねりが波となって
ここに打ち寄せる。

―僕はこれからどこへ行くのだろう?

いや、僕は何も知りたくない。
ただ空想の春の匂いをかいで空想の
桜を思っていたいだけだ。
493名無し物書き@推敲中?:2007/07/30(月) 01:53:16
「恋人の手を繋ぎ歩く夜は」で
494名無し物書き@推敲中?:2007/07/31(火) 00:11:32
「どこに行くの?」
彼女がパンプスの踵を鳴らし、必死で僕の歩幅についてくる。
「もうちょっと」
僕は後ろを振り返らずにそう答えた。
夜風がTシャツの裾をくすぐるのを感じた。
微かに、けれど確かに、暗闇の中を彼女の甘いシャンプーの香りが流れてくる。
いつの間にか、彼女の小さな手を握る僕の手の平が少しだけ汗ばんでいた。
「あ、花火」
暗闇だった夏の夜空に、赤い花が咲いた。
495名無し物書き@推敲中?:2007/07/31(火) 00:15:52
お題忘れてた。
次回「3か月振りのメール」
4963ヶ月振りのメール 1/2:2007/07/31(火) 05:39:52
ゴミが溜まっている。
出しに行くのも一苦労だろうそのゴミを、蹴散らして歩いていく。
 「あー…」
耳に障る音を鳴らしていたのはこれだったか。
薄暗く濁った部屋の中で、やかましく光る携帯電話。
上京前、母親が買わせた物だった。
 「連絡が取れなきゃ不安でしょう」
初めの内こそ毎日のように電話してきたが、
やがて味の無いメールばかりになり、それすらも3月ほど前
 『振り込んでおいたから』
それっきりだ。

それでも仕送りは続いていたが、そろそろ愛想を尽かす頃だろうか。
仕事も探さず、引き篭もり、携帯に登録されたメールアドレスも母親のみ。
少し緊張しながら、やけに重い携帯電話を開いた。

見たことの無いアドレスの中に、見覚えのある文字列があった。
心臓の音が聞こえた。体がふらついた。
4973ヶ月振りのメール 2/2:2007/07/31(火) 05:41:29
 『がんばってる?』
内容はたった一行。一言だけだった。

隣の家にいた。それだけ。
小さい頃から、当たり前のようにいた。
俺がドジをして、愚痴を言っている時、慰めの言葉はかけてくれなかった。
ただ一言だけ、聞いてきた。
伝も無いのに上京すると言った時も、励ましの言葉はかけてくれなかった。
ただ一言だけ、聞いてきた。

俺のメールアドレスは、教えていなかった。母親に教えてもらったんだろう。
わざわざ、そうしてまで俺に聞きたかったんだ。
 「がんばってないよ…」
いずれは直接聞きに来るかもしれない。
自惚れかな。

惨めな生き恥を晒すか、惨めな屍体を晒すか。
とりあえず、ゴミを捨てに行ってから考えよう。
どうやっても、彼女の前では、俺は惨めなんだから。


次のお題「8ミリの戦争」
498名無し物書き@推敲中?:2007/08/02(木) 02:30:32
ジー……。
男は、真昼間の白い陽射しを避けるため重たいカーテンを閉め切った部屋で、
8ミリフィルムを見ている。
フィルムの中では10歳になるかならないかの男自身と、もう少しだけ年長の少年が
じゃれあいながら画面に向かっておどけたりふざけたりしている。
二人の明るい声の合間に、笑いを含んだ中年の男の声が聞こえた。
「おい、ふざけてばかりいないで自己紹介でもしろよ」
画面に映った少年二人は、画面の方をちらりと見てまた笑いさざめく。
「やだよ!お父さん、昭夫撮ってよ!ほらまたバカな顔してるよ」
「お兄ちゃんもヘンな顔じゃん!」
真夏の光を閉め出した暗い部屋で、昭夫は二つ上の兄を思った。
兄が死んだのはこのフィルムを撮った年。昭夫は四年生、兄は六年生だった。
小学校が夏休みの8月半ば、ひとりで家を出た兄は、
その2日後貯水湖に浮かんでいるのが発見された。
4998ミリの戦争 2/2:2007/08/02(木) 02:49:05
昭夫は兄の亡骸を思う。兄は小さな箱に入って家に戻り、昭夫は実際の
亡骸を見たわけではなかった。昭夫はその日以来、兄の死体について
何度も何度も考えた。溺死だと、体がぶくぶくと膨れるのだろうか。
兄の左腕にあった2つのホクロはどうなったのだろうか。
具体的な想像を重ねるうちに克明に兄の死顔を思い描けるようになり、いつからか、
自分が実際に兄の亡骸を見たのか、見ていないのか分からなくなっていた。

フィルムの中では、幼い兄弟がまだおどけている。
ウルトラマンとゴジラで闘っているらしいのを、父が笑っている。
昭夫はそこでフィルムを止めた。父のおむつをそろそろ替えないといけない時間だ。
「親父がそっち行ったら、お兄ちゃんが面倒みてやってよ」
父の介護をはじめてから何十回も何度も呟いたセリフを、
昭夫はまた口の中で転がした。

次のお題は「ダルマとカメラマン」
500ダルマとカメラマン:2007/08/03(金) 00:04:21
七転八起の象徴と言ったら、多分ダルマで間違いないはずだ。そんなダルマが、私は嫌いだった。

二歳になった私の子どもが、目の前でダルマを転がしているのを見て、そう思った。転ばしても起き上がる事が不思議なのか、その作業を、ぽかんとした表情で何度も繰り返している。
たまには。こんな休暇も悪くない。
昼下がりの日差しが、窓から差し込む。クーラーの冷気と混じって、過ごしやすい温度を作り出していた。
ふいに私は携帯電話のカメラ機能を起動した。世の中も随分便利になったものだ。
ブレる画面に多少イライラしながら、子どもの姿を画面内に収める。
男の子だ。妻は女の子が欲しいと言っていたが、私は男の子で良いと思う。

カシャ。

写された一瞬の中では、子どもと、起き上がるダルマが日に照らされていた。

次のお題「ヒステリックオブ豆腐」
501ヒステリックオブ豆腐:2007/08/03(金) 02:22:15
「糠に釘」ということわざがある。俺はユキエが
投げつけた豆腐が壁に当たった湿った音を聞きながら
そう思った。豆腐じゃダメージなんて与えられんだろ普通。
そうも思ったが、そこがユキエの優しさというか育ちというか
怒っても、正気を失うことは無い「よく出来た」とこなのだ。
話の発端はこうだ。俺は浮気をした。そしてバレタ。
もう二度と、あの女と会わないと、会ったら離婚を考えると
テーブルに広げられた離婚届を摘むとユキエはそう言ったのだ。
俺は分かったもう会わないと言った。でも今日、昼食を食べに
マックに行ったら浮気相手がいたので、一緒に食べた。
そのお礼のメールを浮気相手が送ってきて、俺が風呂に入っている間に
ユキエが見た。短く言えばこんなところだ。
テレビの音だけが冷め切った部屋の中でこだましてる。
俺は馬鹿だ。本当に馬鹿だと思う。ユキエと離婚した方がユキエのために
なるかもしれない。子供もいないしそのほうが良いかもしれない。
502名無し物書き@推敲中?:2007/08/03(金) 02:24:34
次のお題「結婚式の挨拶の途中で挨拶の言葉を忘れてしまったので
冗談で笑わせようとしたが滑ってしまうことについて」
503結婚式の挨拶の途中で(ry:2007/08/04(土) 00:38:39
見慣れた部屋の天井を仰ぎ見ながら、ぼくは思い出す。
以前出席した結婚式でのことだ。壇上に立って祝辞を述べていた友人が、唐突に黙り込んでしまった。
顔色を赤くしたり青くしたりしながら、額にびっしりと汗を浮かべている。
会場の人間の視線を一手に集めながら、友人はもごもごと解読不能の言葉を発している。
友人はその時、遠い宇宙の惑星の知的生命体としての前世の記憶を唐突に取り戻した……というわけでは勿論ない。どうやら挨拶の内容を忘れてしまったらしい。
やれやれ、あれほどきちんと練習をしておけと言っておいたというのに、とぼくは思った。
会場の視線と重い空気に耐えられなくなったのか、友人は唐突に脈絡の無いジョークを言った。
やりかねないとは思ったが、想像以上に酷い出来のそのジョークに、ぼくは軽い目眩を覚え、思わず目を逸らした。
案の定、会場は水を打ったように静まり返る。
青ざめた顔で肩を落とし、小さく縮んだような友人のその姿を目にしながら、ぼくは思ったものだ。
努力と備えを怠ってはいけない――と。
挨拶の内容を忘れてしまえば恥をかくことくらい、小学生でも分かりそうなものだ。
なのに何故、十分に練習をしてこなかったのか、それは彼の怠慢に他ならない。
いや、もしかしたら彼は十分、いや十二分に練習をしてきたのかもしれない。
だけど、彼の記憶力には人間として重大な欠陥があり、いくら頑張ってもきちんと覚えられなかったのかもしれない。
その場合彼に過失はないと言うのだろうか、いやそれは違う。
仮にも結婚式に呼ばれ、祝辞を頼まれるようないい大人だ、自分の出来ることと出来ないことくらい分別がついていなければならない。
どうしてもできないのであれば、事前に断るという方法もあるしどうしても断れないのであれば、最悪の事態に備えてカンペなりなんなりを用意すべきだったのだ。
少なくともど忘れして何も言えなくなるより数倍マシだろう。
504結婚式の挨拶の途中で(ry:2007/08/04(土) 00:41:16
いや、彼はきちんとカンペを用意していたのかもしれない。だけど抜き差しなら無い状況で、そのカンペを紛失してしまったのかもしれない。
もしかしたら、ぼくたちがこうして呑気に結婚式なんてやっていられるのも、彼がカンペを紛失するという小さな行為がバタフライ効果によって増幅され、結果として地球が救われたお陰なのかもしれない。
ならば彼に責任はないのだろうか、いやいやそれも違う。
彼がどんなに備えていたとしても、彼は予定通りに挨拶をすることができない運命にある、そう仮定したとしよう。
だがそうだとしても、あのジョークだけは言うべきじゃなかったんだ。
ぼくはお笑いの専門家でも批評家でもない、内容の是非については敢えて問うまい。
だけど、それがいかによくできた内容だったとしても、それは目の前にある現実からの「逃げ」でしかない。
逃げの発想から出た言葉が、人の心に響くだろうか、揺さぶれるだろうか、ぼくはそうは思えない。
どんなに追い詰められようが、どんなにどうしようもなくなろうが、彼は最後まできっちりと話すべきだったのだ。
汚くても、みっともなくとも、彼自身の言葉で。

「人のふり見て我がふり直せ……か、ざまぁない……」
痺れる身体で、首だけ動かして自身の身体を見ると、見慣れた包丁の柄が腹に生えている。
昔近所の金物屋で買った包丁だ、切れ味がよく、高かったがその分の価値はあった思えたものだが、こんなことになるのならもっと切れ味の悪い包丁を買うんだった。
不思議と痛みは無い、さきほどまであれほど熱かったのが不思議なほど、全身が寒い。
そう、これはきっと罰なんだ。彼女との関係を曖昧にして、向き合おうとせず、ひたすら逃げ続けたぼくへの。
思考が定まらない、身体に――力が入らない。
彼女は泣いていないだろうか、消え入りそうな意識の中で、ぼくはそんな事を思った。

次のお題「15年前のしおり」
50515年前のしおり:2007/08/04(土) 09:57:44
「これだ…懐かしいなぁ…」
俺は今昔の荷物の整理をしている。
突然思いついたわけではない。今から十五年前、約束したからだ。

十五年前彼女は言った。
「この本書してあげる。私が書いたの。でもすぐには読まないでね。
十五年後に、しおりが挟んであるページを読んで。」
その数日後彼女は引っ越しした。家庭の事情と聞いたが詳しいことはしらない。

彼女が言ったとおりしおりがあるページを開いた。
そこには桜が一枚入ったしおりが挟んであった。
そしてそのページにはこう書かれていた。
“あの桜の木の下で待っています”

あの桜の木。俺が彼女に告白した木だ。
俺は約束を果たすために桜の木に向かった。

今から十五年も前では木はすでになくなっているかもしれなかった。
だが俺はすぐに見つけることができた。理由なんてわからない。

「約束……守ってくれたんだ。」
なにも変わっていない桜の木の下、なにも変わっていない彼女が振り返った。


次【ガラスの向こうの彼女】
506ガラスの向こうの彼女:2007/08/05(日) 00:08:21
高度に発達した医療は人を幸せにするのだろうか?
あるいは不幸にするのだろうか?俺はガラスの向こうの彼女を
見てそう思う。彼女は生まれたときからこの病院を出たことが無い。
いや、この2m四方のガラスの中からさえ出たことが無いのだ。
24時間、俺たちのような医療チームに支えられなければ
生きていけないし、家族でさえ中に入るには何重もの検査、消毒をへて
やっと生身の彼女に触れることが出来るのだ。これが不幸と言わずして何を
不幸と言えば良いのか? ガラスの向こうで今日も彼女は笑っている。
その微笑みはガラス細工のように壊れやすく美しい。違う。それは
感情に流されすぎた思いだ。彼女はその肉体とはうらはらに
精神は強く美しい。我々の感傷的な思いなどお呼びではないのだ。
ディスプレイにメッセージが浮かぶ。彼女がキーボードを叩いて俺に何かを
伝えようとしているのだ。俺は涙を見せないように
顔を上げ、メッセージを読み取る。いつか彼女に、この世界の空気に
触れさせてあげたいと思う。風の美しさ、太陽の優しさ、月の神秘さを
教えてあげたいと思う。そうしたら彼女は死ぬだろうか?
俺は不安定な気分のまま、その考えが正しいか正しくないか見極めようと
するもすべては歪んでしまう。俺は恋をしてるのだろうか?
俺は彼女にこのメッセージを伝えたい。それが一線を越えた行為だとしても。


次「大名行列はいかにして机を渡るか。あるいは精神病とは」
507どっかーん!:2007/08/06(月) 13:02:28
バカ ぽんぺん

>これは当分使えそうだねwww


犯罪人にはファシズムや差別主義が似合うからね、関口クン


>こういう人は楽に生きられるだろうねwww


ああ。すげぇ理屈だな。さすがは2ch。ぶははは!

アメリカ人に愛される日本人: あいつはアメリカ人に嫌われているから日本人差別されて当然だ!

白人に愛される黒人: あいつは悪い二ガーだから差別されて当然だ!
日本人に愛される朝鮮人: あいつは悪い朝鮮人だから差別されて当然だ!
日本人に愛される中国人: あいつは嫌われている中国人だから差別されて当然だ!
ヒトラーに好かれるユダヤ人:あいつは差別されているユダヤ人だから殺されて当然だ!

      残飯キャラに愛されるスケBEキャラ: ハイは残飯の敵だから沖縄差別されて当然だ!

こういう奴が政治とか文学を語るのか
いや、平和でいいねえ、関ロクン
目を覚ました時には、木目が、驚くほど近くにあった。
「うわあ」
彼が叫び声を上げると、三十四の二倍の瞳が、彼を一斉に見つめる。
罰が悪くなって黙り込んだ彼に、頭上から叱正が飛んできた。下を向いた彼の目は、机の木目をじっと見ている。

――早く終わらないかな。

彼は頭の隅で歌を歌う事にした。それがコミュニケーションの遮断には、もってこいだった。



次「その限りではない、」
509名無し物書き@推敲中?:2007/08/11(土) 15:37:12
あげ
510その限りではない:2007/08/15(水) 17:23:26
「その限りではない」
「その限りではない」
「その限りではない」

課長がとうとう狂った。連日連夜のプレッシャー。
取引先での怒号と叱責、無理な注文と差し迫った期日。
責任感が強く、神経質でなんでも完璧にやりこなそうと
する課長がある日、出社すると裸で机に向かって
書類に目を通していた。いやそう思ったのだが
課長は書類は何も見ていず、課長自ら悪戯書きした
へのへのもへじを難解な計算でも解いているかのように
指でなぞり独り言を呟いては舌打ちをしている。

近いうちに課長はプロジェクトを外され
長期休暇という名目のクビにされるということだ。

つまりは俺に課長の椅子がまわってくるわけだ。

―課長。またパンパブ行きましょうね。

俺は目を閉じ課員に涙を見せないようにそっと拭った。
511名無し物書き@推敲中?:2007/08/15(水) 17:28:50
次「戦争がやってくる」
512戦争がやってくる:2007/08/15(水) 18:10:06
戦争は勝手にやってくるわけではない。
自主的に能動的に、もしくは消極的に受動的に選択し、自らその状態へと足を踏み入れるのだ。
理由が欲しければ、自分で見出すしかない。
親のため、子のため、愛する人のため、或いは自分自身のため。
甘言に惑わされるな。戦況は自分の目で確かめろ。
赤札に踊らされるな。生産地は自分の目で確かめろ。
ワゴンは白兵戦だ。搬出口を狙え。
在庫総浚い、大阪夏の陣が今、始まる。

次 「長針が半回転」
513長身が半回転:2007/08/16(木) 00:04:43
長身が半回転する間に、短針は一センチほどしか進まない。
「短針よりも俺の前進には価値がある、だから俺はそれでいい」
目に見える範囲の事実で他人を見下し、それによってわずかばかりの余裕を得て
努力することを忘れた人々。
時計の針はそんな人間社会を象徴しているようだ。
そしてまた今日も長身は、どれだけ追いかけても決して追いつくことのない
短針の背中を追い続ける。

次「マンモスによる改正案」
514マンモスによる改正案:2007/08/17(金) 01:16:11
「いらっしゃいませ〜」
原人が高々と振り上げた棍棒が黄土色の扇形となってマンモスの頭骨に食い込む。
長い鼻を振り回し悲痛な叫び声をあげるその哀れな動物は死にもの狂いに暴れるも
その背にピタリと張り付いた原人が振り落とされる様子は微塵も無い。
「ご注文は何になさいますか〜?」
「あ、もうちょっと待ってね。決まったら呼ぶし」
ビュッと唸りをあげ、二度、三度、空中に黄土色の扇が走る。次第に力を失ってい
く茶色の毛皮が可哀想だ。原人は完全に倒れ付した大きな獣に、さらに幾度も打撃
を加える。なんていうか、サディスティックな臭いが漂い始めてきた。
「あ、すいません」
「はい、お決まりですか〜?」
「マンモスコーラ一個」
「はい、かしこまりました〜」
しこたま棍棒を酷使して周囲に血だまりを作った原人は、ろれつの回らぬ口調で
『マ゛、マ゛ンム゛ゥス・・・・カイゼ・・・・』と言った。原人の足元に明朝体の綺麗
なフォントの「マンモス改正」という白文字が入る。とたんに原人の体中から褐
色の毛が生えてきて、次第に彼は一匹の若いマンモスへと変じた。
 私は赤茶けた旧式のテレビ画面から目を離す。テーブルの上でコツリと音がし
たからだ。どうやらマンモスコーラが到着したらしい。

「やっぱ、変な店だよな、ここは」そう独白しながら、私はドブ川のような液体
を飲み始めた。

次回のお題「プラズマの気持ち」
515「プラズマの気持ち」1:2007/08/20(月) 22:58:09
 一年F組の教室は西棟廊下の一番奥で、そのせいで校舎の敷地に対して妙に出っ張った位置
にある。
 だからどうしたと言われればそれまでだけれど、でも問題はそれが私のホームルームだとい
う点にある。正直なところ、寝坊常習犯の私にとってはいい迷惑だ。朝から校内最長距離を全
力疾走することになってしまう。よく「廊下を走るな」なんて言われたりするけれど、それな
らそもそも走らなくて済むような設計にすればいいのに、と、呼吸も荒く自分の席まで一気に
駆け込む。どうやら先生はまだ来てないらしい。ギリギリセーフだ。
「相変わらず足はえーな、プラズマは」
 小馬鹿にしたように野次を飛ばす男子を睨み付けてやるのも、もう朝の恒例行事になってし
まった。足が早いのは別にいいけれど、私が気に入らないのは十六の女の子をプラズマ呼ばわ
りする壊滅的なセンスのなさだ。それも名字が大槻ってだけの理由なのだからたまらない。反
論してやりたいところだけど、でもいまは息が上がってそれどころじゃない。心臓がばくばく
と鳴り響いて、もう死んじゃうんじゃないかってくらいだ。
「おーいプラズマ、今日は窓から登校じゃないのかよ」
 先生がなかなか来ないのをいいことに、男子はまだ机の上に座って言いたい放題だ。こうい
う手合いは無視するのが一番、私は窓の外に目を向けた。私の席は教室一番後ろの窓際の席で、
本当にやばいときは玄関をすっ飛ばして窓から登校するのが私の必殺技だった。でも、さすが
に今日はそういうわけにも行かない。窓の向こう、そう遠くない位置に美術室の窓ガラスが見
えた。
 東棟の美術室が窓から見えるのはこのF組の教室だけだ。そして今日は金曜日で、この時間
は三年A組が美術の授業で美術室にいる。私が窓から出入りなんてしていたら、きっと向こう
から丸見えだろう。さすがにそんなリスクを冒してまで遅刻を免れるつもりはないし、そんな
ことするくらいなら死んだ方がマシだとさえ思う。私は胸に手を当てて、窓の外の景色に集中
した。
516「プラズマの気持ち」2:2007/08/20(月) 22:58:41
 美術室の一番後ろ、いつもの場所に彼はいた。といっても私は彼の名前さえ知らない。私に
わかるのは、その彼がいつも涼しい顔して絵を描いているってことだけだ。美術の苦手な私か
らしてみれば信じられない、彼は悶えたり叫んだりするどころか、隣のクラスメートと雑談を
する様子さえないのだ。そのことに気付いたのは二ヶ月くらい前のことで、そして私はどうし
ても彼がさぼるところを見てやりたくなった。それ以来、毎週金曜の一二限はずっと彼を監視
しているのだけれど、でも彼はいつものんびりと絵を描いているだけなのだった。
 でも、今日という今日こそは。私は窓の向こうに座る彼に意識を集中した。なにしろ明日か
ら夏休みなのだ、今日しっぽを抑えなくていつ抑えるというのか――そう無駄に意気込む私の
意識を、男子のからかう声が邪魔をする。
「おーい、窓が駄目なら壁貫いてこいよ、プラズマならできるだろ」
 無茶苦茶にもほどがある。思わずカッとなって振り返ろうとした瞬間、思いもしない光景が
私の目を支配した。
 ――目があった。彼が、明らかにこっちを見ている。しかも――。
 もう心臓のばくばくは悪化するばかり。まるでプラズマよろしく窓ガラスのバリアを貫いて、
おまけに私の胸まで貫いたのは――初めて見る彼の微笑みだった。

次のお題:「ネクストバッターズサークルが魔法陣」
 妻が黒魔術をやっていたなんて・・・・・・!

 気づいたきっかけは家の中を飛び回っていたヒキガエルだ。茫然としていた俺の目の前に
黒衣に身を包んだ妻がサッと現れて、カエルをひっ掴むなりサッと消えていった。
 開いた口が塞がらないとは、この事だろうか。おかしいとは思ったんだよ。いつも黒っぽ
い服しか着ないし、結婚してからも時々どこかに閉じこもって姿が見えなくなる事があるし、
俺の会社の敵対企業の重役達が変な病気で死んでいくし、たまにベッドの中が
ヒキガエル臭いし。去年、台風7号が到来した時もうちの上空だけ毎日快晴だったのは、今思
えば黒魔術のせいだったのか。
 即座に俺は妻を詰問した。そうして妻が我が家の食事に霊力向上薬を混入していた事や息子
の勉強のライバル達に蛇神の呪いをかけようとしていた事、さらには隣家の奥さんのガーデニ
ングに枯渇の魔術をかけ続けていた事を白状させた。しかし詰問はそこで中断された。妻が窓
やドアを念入りに戸締りし、妙なお香を焚きはじめた時に気づくべきだったのかもしれない。
 気がつくと俺は見たことも無い部屋で、仰向けに縛りつけられていた。なんか、ヒキガエル
とかヘビの臭いがする。首を左右に捻じ曲げると床に描かれた怪しげな紋様が波のように広
がっていた。これが魔方陣って奴なのか。妻が静かに近づいてきて怪しげな紫色の液体を注い
できた。
「俺を、どうする気だ?」
「・・・・・・内緒」
死を覚悟した。脳裏に大学時代の思い出が浮かぶ。大好きだった野球。気の合う仲間達と一緒
に野球のサークルを作って練習してた。みんなが一丸となって練習して大学の体育会野球部か
ら勝利をもぎとった瞬間は、いまだに思い出すだけで震えが走る。あぁ、ネクストバッターズ
サークルは今も健在なりや?卒業してからサッパリ顔を出さなくなったもんなあ。そういえば
ネクストバッターズサークルのマネージャー、今の妻に似てなかったか?マネージャーはチビ
でクセ毛でデブでA型で、妻はノッポで直毛でガリガリでB型だけど、どこか面影が似てる気
がしないでも無い。いや、そっくりだ・・・・・・妻はあの頃のマネージャーだったんだ、そうに違
いない。同一人物だ。今、俺はネクストバッターズサークルの一員に魔方陣かけられてるんだ。
それなら殺されようが本望だ。うん。さっさと殺してくれ。
 突然、部屋のドアが開いたかと思うとお隣の奥さんが入り込んできた。
「その、回覧板届けにきたんだけど玄関のドアが開きっぱなしだったから、その・・・・・・」
ともかく俺は助かった。
 それからというもの、変な霊が見えるようになったり、俺の出世に邪魔な人間が次々と
病死したり、隣の家がどんどん貧乏になって破産したりしたけれど、俺と妻の仲は良い。
気づけば俺も妻の黒魔術の手伝いをするようになっていた。妻も、黒魔術も、大好きだ。
今度は息子も誘って一緒に悪魔でも呼び出そうか。

次のお題:怖いけど怖くないモノ
519怖いけど怖くないモノ:2007/08/25(土) 03:48:38
 意を決して、僕は道を歩いている。
僕には怖いモノがある。それは水たまりだ。
雨後の晴天が水面を照り返し、水たまりの深さがわからなくなるとき。
なぜか道路の上のそれが、途方もなく暗い深さをもつものに思える。

 角を曲がると、そこには敵がいた。
舗装が途中で終わってしまったデコボコの道路。
そのデコボコに夕べの雨がたまって、僕の目に白い陽光の反射を見せている。
 僕が自分を克服するには、水たまりに足を踏み入れることしかない。他の人には単純なことかもしれない。
けれど僕には自分というものをおびやかす敵にほかならない。

 空を見上げる。青い。
視線を下ろせば、白い敵が立ち並ぶ。
目下には一際大きな水たまり。まるで僕には底なし沼にも、冥界の入り口にも感じられた。
 ええい、ままよ。
心中で叫び目をきつくつむり歯をきしませて、歩を踏み出した。

 軽やかな水音に目を開けると、水面上の自分と目が合った。
クツの甲にも届かない浅さの表面から、その僕は波紋に揺れながら笑っていた。

 もう怖いものなんてない。
喜び勇んで、水たまりを足場にダンスを踊る。僕は自分に勝ったんだ!
軽快な水音は心をも浮かせるように心地よく響いていた。
 いきなり爆音とともに僕の横を車が駆ける。その瞬間けたたましくクラクションを轟かせながら。
 気がつけば僕は倒れて水たまりに体をひたしていた。


 それ以来、僕は道路を一足すら歩めない車と道路に対する恐怖症にかかってしまった。



次のお題:スフィンクスを足蹴にするビーガン
520名無し物書き@推敲中?:2007/09/06(木) 00:25:16
お題「浅黄色の空、死ねない僕」
「あなたはエーガンとビーガン、どちらがお好き?」

「えぇ〜、迷うな〜。エーガンは、初期のガンって感じで本家っぽい匂いがするけど、
ビーガンっていうのも新種っぽくってカッコいいもんなあ。・・・・・・ねえ、シーガンって
無いの?」

「シーガンは無いけどディーガンはあります。ただしこれは癌じゃなくてgunです。」

「なんだよgunかよ〜。まあいいや。全部もらうよ。お代はいくらだい?」

「パピルス200kgです」

「えぇ〜、高いなぁ。まあいいや、奴隷たちを働かせればなんとかなるだろ」

・・・・・・

「スフィンクス様、今日は上機嫌ですね!」

「おう、なんたって俺はA癌とB癌とDgunを持ってるからな!」

「やっるぅ! これでスフィンクス様もモテモテですね。ヒューヒュー」

「ぐへへへへ! おまえにもA癌をうつしてやるよ」

「ありがたき幸せ!」

部下A 死亡

こうしてファラオの墓の発掘隊は遺跡の奥から妖しげな形の銃を見つけ、帰り道に
B癌に感染して死んだ。いわゆるファラオの呪いである。

お題「超力学の罠」
522名無し物書き@推敲中?:2007/09/15(土) 19:39:26
そこはアジト呼ぶに相応しく、人気の無いヒッソリとした場所だった。抜け殻のようなビルの地下に、そのアジトは存在した。
コンクリートで出来た冷たい階段をゆっくり下りる。足音がわずかに響いたが問題ない。こちらは正義の味方だ。慌てるべきはアジトを知られた悪人達である。
アジトに潜入したということに興奮し、思わず体に力が入る。悪を殲滅できるチャンスなのだ、仕方ない。
階段が終わり、少し広い所に出た。赤色が多く派手なその部屋は、どうやら会議室のようである。正面の壁に悪人達のシンボルマークが大きく描いてあった。間違いなく悪人達のアジトだった。
しかし、肝心な悪人達がいない。扉のようなものは無く、円形のテーブルと椅子が並んでいるだけだった。
仕方なく、部屋を出ようと踵を返す。そして、先程の階段の上にいる人物を見つけた。
襟の高い真っ赤なマント、ドラキュラのようなその男がニヤニヤとこちらを見下ろしていた。
思わず叫んだ。
「お前は……超力学!?」
超力学は高笑いを始める。
「掛かったな仮免ライダー!」
階段の入口にシャッターが下りた。
シャッターの向こうからは、超力学の笑い声がいつまでも響いていた。


何かゴメン。次も「超力学の罠」でお願いします。
523超力学の罠1:2007/09/23(日) 04:22:36
70階建てのビルの最上階で殺人事件が起きた。
A探偵以下数名がビルの最上階にたどり着いたとき、B子が犯人Xにより超力学的な力―――そう、東洋の気功のような
力によって吹き飛ばされるのを目撃した。
その後、犯人Xは窓から飛び降りた。
A探偵達は慌てて窓から下を見たが、そこには誰もいなかった。

登場人物
A探偵(31) ー 数々の事件を解決してきた名探偵
B子(28)  ー 殺された女。A探偵以外のほぼ全員から恨まれている。
C男(30) ー B子にふられたことを恨んでいる。手品師。
D実(24) ー B子の妹で、彼女にコンプレックスを抱いている。B子を70階に呼び出した張本人。
E太郎(55) ー 記憶喪失の中年男。B子が70階にいると探偵に告げる。
X ー 若い男。身元は不明。

524超力学の罠2:2007/09/23(日) 04:23:14
 A探偵は窓の下に誰もいなかったのを確認すると、そのままの姿勢で振り返った。
 そしてゆっくり頭を上げながら、こう告げた。
「犯人はこの中にいる!」
「そんな馬鹿な」
 C男が呻いた。
「犯人の男は窓から飛び降りたじゃないの」
 D実も主張した。
「何かトリックでもあると言うのか!?」
 E太郎は比較的冷静を装いつつ尋ねた。
「そうです、この事件には超力学的なトリックが用いられたんですよ。犯人は超力学的な方法を使って、殺人を行い、
逃亡して、更にはアリバイまで作ったんだ!」
 A探偵は淡々と、しかし自信に満ちた声で語り始めた。
「XはB子さんが今日70階にいるとしっていた。おそらく痴情のもつれでB子さんを恨んでいたXは、我々の到着を
待って、気功のような力でB子さんを殺した。その後、Xは窓から飛び降りた。」
「じゃあ犯人はD実なのか? 70階にB子を呼び出したのはお前だろ?」
「違うわ、私は殺してなんかいない! 第一、私が犯人なら窓から飛び降りたはずでしょ、どうして今ここにいるのよ!!」
「そう。D実さんは犯人ではありません。犯人は、E太郎さん! あなたです!!」
「私が犯人だと言うのですか、しかしXはどう見ても20代か30台の男に見えましたけれど」
「確かにXは20代か30代の男性でした。そう、Xは20台か30台の頃のE太郎さんなのです。E太郎さんはB子さんを殺した
後、窓から飛び降り、超力学的な力で光速を超えて数十年前に戻ったのです。あなたは年を取るにつれて容姿が変わり、
自分がB子さんを殺した時に、数十年後の自分に目撃されていたことに気づいた。そこであなたは時空間パラドックス
を回避するために私たちをこの場所に連れてきたんだ。」

C男とD実が【何言ってるんだおめー!?】と言った感じの顔でA探偵を見た。
E太郎は慌てて窓に飛び込んだ。
A探偵とC男とD実が窓から下を見たとき、そこには誰もいなかった。


次は「仮面の裏側」でお願いします
525仮面の裏側:2007/09/23(日) 11:05:55
やあ、僕はピエロ。みんなの笑顔が大好きな道化師さ。僕がおどけたり、間抜けな失敗をしちゃった時、みんなが声を挙げて笑う。原の底から楽しそうに。
そうやって笑ってもらえるのが大好きなんだ。だって何だか僕まで楽しくなるんだもの。心臓の辺りがぽっと暖かくなる。
だからいつだって僕は笑顔でいられる。みんなの笑顔が僕を暖かくしてくれるから。そして僕はみんなを笑わせることが出来る。みんなが大好きだから。
でも。
最近何だかつまらないんだ。みんな僕を見て笑ってくれる。僕を見て楽しんでくれる。だけど、僕はちっとも暖かくない。
そりゃあ、確かに最近いろんなことがあったよ。ぶらんこ乗りのとっても可愛い佐喜ちゃんはお金を稼ぐためにをAVをやっていたし、猛獣使いのかっこいい新ちゃんは裏では人を脅してお金を巻き上げてた。
優しそうな顔した団長は、よなよな目をつけた客と一夜を共にしていたし、僕はみんなから嫌われていることも分かった。
でも、でもさ、そんなこと僕には関係ないはずなんだ。だって僕はピエロなんだから。みんなを笑わせて幸せにするピエロなんだから。道化師に涙はないんだよ?
だからね、僕は今この瞬間の光景がよく分かんないんだ。
目の前に転がる三つの何か塊の山。白くて堅そうな何かが山の上から突き出てて、何だが気持悪い。そして、辺りに立ち込める、濃くてまとわりつくような臭い。赤黒く染まったテントの中では一体何があったんだろう。足枷が三本伸びてるんだ。
極め付けは、僕の隣にある真っ赤な電動ノコギリ。赤い液体が滴り落ちてる。
何があったんだろう。僕には分かんないや。まあ、いいか。とにかく笑っておこう。
僕はピエロ。いつも微笑みを絶やさない道化師さ。


次【シクロネイチェンス】で
526シクロネイチェンス:2007/09/29(土) 15:12:07
俺の名前は手下A。
世界征服を目論む悪の秘密結社「シクロネイチェンス」の一員だ。
今日も朝から会議をしている。議題は、「いかにして正義のヒーローを倒すか」だ。
「…であるからして、そこで一般市民を人質にし…」
総統はさっきから30分近く喋り続けている。真面目なのはいいが、話がまわりくどすぎる。寝てしまおうかと思っていると、隣の奴が手を挙げた。同期の手下Bだ。真面目な奴なので、そのうち出世するんだろうな。
「総統、奴めが空を飛ぶ能力を持っていた場合は…」
それにしても、こんな無意味な会議、毎日毎日よくやるよなぁ。真面目なのはいいけどよ。
ん、なんで無意味だと言い切れるかって?努力は報われるものだって?
いや、この場合は絶対に徒労だね。なぜなら……




正義のヒーローなんて、いないんだから。

次、「目薬は親指に」
527目薬は親指に:2007/09/29(土) 19:54:04
 ……泣いてなんかいないってば。
 ただちょっと目にゴミが入っただけだから。
 いや、いいから見なくて。大丈夫だってば、もう取れたから。
 違う違う、関係ないって、さっきの話は。ホントに。
 ……え、いま目薬持ってんの? じゃあ貸してよ。
 ……あ、ちょっと親指見せて。どっちの手でもいいから、ほら早く。
 動かさないで。じっとしててよ。
 ほら、これでよしと。
 びっくりした? あのね、目薬はこうして親指にさすと、おまじないになるんだって。
 さした人が、さされた人に二度と泣かされなくてすむようになるの。
 ね、だからもう、別れるなんて言わないよね。言わないよね?
 …………。

 ごめん……さっきのウソ。もうちょっとだけ泣かせて。

次のお題:「獣と帰還兵」
528名無し物書き@推敲中?:2007/10/03(水) 09:35:31
傷ついた猛獣の眼は、くたびれてただ引きずりながら歩いていた俺の足が即座に2、3歩後ずさるほどに強かった。
腕に巻かれた包帯の下で傷が疼く。獣は強靭な意志でもって、ただそこに立っていた。
だがそれが立ちはだかっているように見えるのは、少し前までの惨劇を思い起こさせるからだろうか
刃こぼれした剣、足もクタクタだが・・・戻らなければいけない場所がある。
そいつの二本の牙も片方が欠け、体は所々が赤に染まってる。

…ああ、忘れちゃいけないんだ。
俺もコイツも、お互いの惨劇を。だから行かなければいけない。
戦が終わっても、まだ惨劇が終わることはない。俺は、故郷に戻れば終わりだと思っていた。

ゆっくりと近づいても、手を伸ばしても獣は動かずに俺を見ていた。
頭を一撫ですると、あの俺を退かせた顔が気のせいか緩んだように見えた。


「…行くか」


そう呟くと、獣は小さく唸って光の帯になって空に消えた。


…そういえば、戦を共にしたあいつらは獣に似ていた。俺もまたそうだったのかもしれない。
生きている間はもう会うことのない戦友たちが背を押してくれた気がする。
俺は、真っ直ぐ前を見据えて一歩一歩地面の感触をかみしめながら歩きだした



次のお題:「水もしたたる…」
529名無し物書き@推敲中?:2007/10/28(日) 16:10:45
こんにチハ わ 原田 大二郎 です
もちろん 同姓同名 ぼくは 一般人 デス
どっちかで 言えば ぼくは 醤油顔 ですし
からだも ちいさい デス 死
名前 以外 類似点 ない です
ちなみに 呪術 愛好家 死(です)
呪いますっ 呪いますっ 逆怨み しよう さかがみ じろう

あなた 呪術対策 出来て ますか?
怨み たたり 万物に 宿る
身辺 警戒 怠る なかれっ! 怪しげを 一掃する べしっ!
けれど 運命 是 無情 あなた すでに 呪われ(済)
何人たりとも 逃れる こと 敵わず 合掌
え? 逃れて やる? ノン ノン 殺られる
白い ご飯 祟る どうする?
好物 餃子 たたる どうする?
水 もし たたる… すなわち 死 です アーメン
ダメダメ! ラーメンも たたるよ!

憑き物 もはや 落ちない
お話 もちろん 落ちない
それでは 原田大二郎 ですた(´・ω・`)ノン


次「幽界事件」
530名無し物書き@推敲中?:2007/10/29(月) 21:10:39
「お宅の子供を幽界した」
そんな電話がかかったのは、晴れた日の午後のことだった。
お布団を干す絶好の日だと言うのに、私は布団も干さずに、居眠りしていた。
座布団の上で大の字になって、日差しが気持ちよかった。
「誘拐ですか」目をこすりながら対応した私に「いいえ、ユウカイ」と男の声は訂正する。
言葉を訂正されるのは嫌いだ。
小学校の頃、クラスの皆の前で作文を読んだことがある。
「私は家族のために一生懸命仕事するおじょうさんが大好きです」といったら、お父さんでしょ、と先生が訂正して、クラス中で大爆笑した。
そのとき、私は頭の中が沸騰したようになった。原稿用紙を持つ手が震えていた。
人の言葉を訂正するヤツは嫌いだ。
だから怒鳴った「ユウカイだかユウカイだがしらないけれど、言い間違いくらい誰にでもあるでしょう! それを鬼の首でもとったみたいに否定しちゃって
っていうか、あんた、ユウカイじゃなくてユウカイっていったでしょ? あんたが言い間違えたんじゃない。え、それを人のせいにするってのは、どういう了見よ? 反省しろ反省。壁に手をついて謝れ、泣け。わめけ」
怒鳴り終わって私が息をはあはあする。相手はしばらく黙っていた。
「申し訳ありません」
素直に謝られて私は拍子抜けする。肩から力が抜ける。どうして私はあんなに怒ったりしたんだろうなんて思った。
「それで、ですね」と相手は続ける。「お宅のお子さんをユウカイ、誤解のないように言いますと、幽霊のユウに世界のカイですが、幽界させていただきました。よろしかったでしょうか?」
誘拐なら、だめうちの子を返して、お願いしますというのだけれど、幽界された場合はなんと言えばいいのだろう。
仕事に行っている旦那に相談すべきだろうか、その前に、電話の男に何かを言わないと……
とても、困った。とても。



次のお題「迷い人への神罰」
531迷い人への神罰 1/3:2007/10/31(水) 02:46:44
自分が担当している区域で巡回中にちょっとした騒動があった。
神という役職についていたらそれはよく遭遇する一つのケースである。といっても人が死ぬぐらいのことである。
それは本当に日常茶飯事の出来事であり、私がいちいち神罰を下さなくて良いだろう、
と内心思うのだが、とりあえず仕事の一環なので致し方ない。

「どうしようお義母さ・・どうしよういきてるかなお義母さん!お義母さん!」
主婦と思しき女性が老人を揺り動かしている。
「そう!119番よねとりあえず」ポケットからケータイを取り出して(神たるものが現代を知らないはずはない)早口にまくし立てている。
よほど動転しているようだ。

私は辺りを見渡して見る。
程よく散らかり、程よく生活感の出ている普通の一戸建ての平屋である。
遺書、と書かれた封筒が畳の上にあった。
そして老女も畳の上にある。

「あああどうしてお義母さんが」
さっきから主婦は嘆いている。

寝巻きを着た老女は仰向けに倒れており、鼻血が出ていた。

私は遺書を透かし見た。(神たるものそれくらいは朝飯前)

――迷惑かけてしまってすみません、私は疲れてしまって、もうこれしか――

主婦はおろおろと姑の体を触ったり、自分の顔を覆ったりしている。

「どうしようどうしようああこんなときに」
532迷い人への神罰 2/3:2007/10/31(水) 02:48:04
ぶら下がるための健康器具からは首をくくるための縄がぶら下がっている。
主婦の首には赤黒い痣が痛々しい。
首を吊った際、止めに入った姑を蹴飛ばしてしまい、あわてて縄を外した、というところか。

――お義母さんには申し訳ないけど、秋彦にはかわいそうだけど、もう駄目なの
本当に、やり直したいけど、直せなかったの、あなた・・――

そのとき老女はむっくりと起き上がった。
「ああ、痛かった。あまりに痛くて心臓が止まってしまうところでしたよ」
「それが止まってたんですよお義母さん」主婦は泣き止み、きょとんとした顔でいった。

私もこの展開にはおお、と少しばかり驚いてしまった。

「あらそうですか、それより友子さん。アナタ首吊りは良くないわよ、後始末が大変なのよ」
老女は親指で鼻血を拭い取る。
「すみませんお義母さん生きててすみません」

「アナタがいなくなったらアタシの世話は誰がするのよ」
「・・・・・・すいません」主婦は小声で謝る。
「うじうじしてアナタ本当にイライラするのよ、秀則の嫁じゃなかったらとっとと追い出してるわよ」
老女はそう悪態をつきながら嫁をぎゅっと抱き締め、乾いてしわしわの手でそっと頭を撫でた。
主婦はポカンとされるがままになっている。

「あいたたた、アナタに蹴られた腰が痛いわ。アラっこんな大きなタンコブまでこしらえちゃって」
「大丈夫ですかお義母さん!」主婦は姑の頭や腰をさする。
「大丈夫じゃないわよ!もうっ。ところでそこに立ってる黒尽くめのアンタ!
死神だかなんだか知らないけど、アタシはまだ死なないからね!とっととお帰り!」
533迷い人への神罰 3/3:2007/10/31(水) 02:51:41

私は思わず自分を指差した。見えているのか。

「そう!あんたよあんた!」

見られていては仕方ないので素直に退散することにした。
しかし、とりあえず神の仕事は果たさなければならない。

(さて、この迷い人にはどう言った神罰を下すかなぁ)

ふむ、と考えた後、燃やすことにした。
落ちていた遺書を手に取り、ふっと息をかける。
途端に遺書はごうごうと燃え、畳に落ちる前に灰になった。
「あ・・・遺書が」
遺書がいきなり浮いて燃えたように見えた主婦はまたおろおろとしだした。
老女はこちらを見てにやにや笑っている。
「それじゃ」
私は老女の方に会釈してその家を後にした。
(生きるのをやめたい人にとって自殺を止めるのは結構な罰だよなぁ)

職場に戻ると、私は課長の神から「あんなんで神罰になるか!」とこっぴどくしかられ、更に
「いつもお前はのんびりしやがって神と言う自覚が・・」と小言を言われ、挙句減俸まで食らってしまった。やれやれ。
しかし私は、ああいうことに対する神罰なんてあれくらいで良いんじゃないの、と思うわけである。
これ以上減俸食らったら嫌だから口には出さなかったが。


次のお題→「覗き穴」
534名無し物書き@推敲中?:2007/11/02(金) 16:17:40
 怖い洋画を見た。なんで外国人の殺人狂は、日本人のそれよりも恐ろしく見えるんだろう。
 テーブルの上のリモコンでテレビを消して、ソファに寝転がった。首を軽く回すと、コキリと音を立てた。
 もう11時半だ。さっさとお風呂に入らないと、明日の朝が辛くなる。とは思いながらも、なかなか体は動きたがらない。
 静まり返ったワンルーム。
 突然鳴ったチャイムの音に、私は思わず身を硬くした。
「ス、イマセーン」
 イントネーションも区切りもおかしい、明らかに外人のものと分かる声が、ドア一枚隔てた廊下に響いた。
 どうしよう。出たほうがいいんだろうか。でも女の一人暮らしを狙った犯罪者かも……
 とりあえず部屋の電気を消した。しかしマンションの入り口にいた時点でこの部屋を狙っていたのなら、私がいることは窓の明かりでばれているのかもしれない。
 そろそろと玄関に向かう。
 ドアに取り付けられた覗き穴は、夜空の星のようにちらちらと明滅を繰り返している。廊下の蛍光灯が切れかけているせいだ。
 心臓の鼓動の音を聞きながら、穴に顔をくっつけた。ドアの向こう側に立っていたのは──
「レナデースヨ。アサマデイショニアーソビマショ」
 白いワイシャツ。白っぽい金髪に濃い化粧の白人女性は、私がのぞき穴から見ていることに気づいたのか、投げキッスなどしてみせた。
 デリヘルだ。
「部屋間違えてるよ!」

 次のお題 初雪観測
535名無し物書き@推敲中?:2007/11/03(土) 04:22:46
マイナス3℃の夜気は恐ろしく冷たい。

水分を含んだ厚ぼったい雲。
今にも降りそうな按配である。

分厚い毛布。
あったかい缶コーヒーと煙草。
準備はオーケィだ。

マンションの最上階にある自分の部屋からベランダに梯子を出して
屋上に上った。

するとすでにそこには毛布にくるまっている先客がいたので
「ご一緒にいかがですか?」と声をかけた。
「これ良かったらどうぞ」私は缶コーヒーを差し出した。
「いいんですか?」
「ええ」
「ありがとうございます」
自分の指が冷たい指と微かに触れ合う。
その人は両手で缶コーヒーを包むようにして持ち、
あったかい、と嬉しそうにつぶやいた。
「今日は降りそうですね、私なんだかそわそわしてしまって屋上に」
「梯子を使って?」「ええ、梯子を。あなたも?」
「私もです」
「毎年ここに上って初雪を待つんですよ」
「今まで会わなかったのも不思議ですね」
しばし笑いあった後、二人はじっと空を仰いだ。


次のお題 拾い物
536名無し物書き@推敲中?:2007/11/04(日) 12:00:06
 道路の真ん中に、座布団が落ちている。
 コンクリートで舗装されてはいるが車や人の往来はほとんどない、田んぼの真ん中を突っ切る道だ。
 いつもゲームセンターへ行く際にこの道を利用してる者からすれば、別にガラクタが落ちていること自体には何の不思議もない。マックの容器や漫画雑誌、時には扇風機や冷蔵庫だって打ち捨てられているのだ。座布団の一枚や二枚が落ちていることに理由や意味は求めない。
 しかしこんなこれ見よがしに置かれていると妙に気になる。ゴミをちょっと観察してみた。
 こげ茶色のふっくらとした座布団は、午後の陽を受けて心地よい暖かさになっていることだろう。まだ新品のようにきれいで、くたびれた様子など微塵もない。
 なんて座り心地のよさそうな──
 僕はこんなによい品を手放したかつての所有者の感性を疑った。いやしかし、こんな道のど真ん中においていったのは、誰かにこれを見て欲しかったのかもしれない。そして座って欲しかったのだ。
 すっかり心を奪われていた。他にこの座布団を狙っている人間がいないかどうか、思わず周囲を警戒してしまうほどに。
 自転車のかごに入れて、家まで持っていこう。僕は自転車を路肩に止めて、座布団の前に屈みこんだ。
 手が触れた瞬間、思わず座ってみたくなった。
 中心に腰を落ち着け、あぐらをかいてみる。柔かいけれど程よい硬さも伝わってくる。拒否されながら優しく包み込まれているような、なんとも抗いがたい心地よさだった。
 2羽のスズメが可愛らしい鳴き声と共に空を横切っていく。ゆっくりと雲が流れ、太陽はさらにじりじり、しかし休みなく動き続ける。
 気づけばカラスが鳴き出し、空は茜へ色を変えていた。
 とにかく立ち上がって、これを持って帰らなければ。魔力のようなものと戦いながら、僕は立ち上がった。
537名無し物書き@推敲中?:2007/11/04(日) 12:00:54
「今日未明から、全国各地で謎の爆破事件が相次いでおり、少なくとも十九人が死亡、四人が重軽傷を負っています」
 公園で事件を目撃していたクレープ店従業員の話。
 ──向かいのベンチに座布団が置いてあったんですよ。開店したときにはもうあったと思います。ホームレスっぽいおじさんが座ったんで、あの人の物かなと思ってたんですけど、ずいぶん長いことぼんやり座ってました。
 客足が途切れて一息つこうとしてたら、ちょうどおじさんも腰を上げようとしてました。でも座布団から浮き上がった途端、ベンチごと粉々に吹き飛んでしまって……。
「詳しい経緯はいずれも不明ですが、警察ではテロの可能性もあると示唆しており、不審物には近づかないよう注意を呼びかけています」

 次のお題 ケータイ小説に心奪われた大御所作家
538名無し物書き@推敲中?:2007/11/06(火) 00:29:56
むしろ537がそのタイトルで描いたものを読みたいww
539537ではないが:2007/11/07(水) 03:21:03
タイトル:ケータイ小説に心奪われた大御所作家

俺はケータイ小説だ。
あるいはケータイ小説の魂だ。小説に宿った精霊だ。
ある日、どこかで誰かが俺を見る。俺には見られているのが分かる。
でも、そいつがどんなやつかは分からない。ああ、どこかで誰かが見ているなとそれだけ。
でも、そいつの眼は違ってた。明らかに他の奴とは違う視線だった。
視線の力が違うのだ。
どこかで誰かが見ているな…そんなことを考える余裕もない。見られてる、ミラレテイル、見られている!
そいつは俺を何度も見る。見はじめて最初の一二週間は深夜だけ、一日一度。やがて、俺を見る回数が増える。
比較的早い時間にも見すようになる。回数は増える。一度二度三度…そいつは何度も俺を見る。凝視する。
そのうち夜も昼間も関係なしに、俺を見る。読む。
やがて、俺はそいつの指の動きが分かるようになる。そいつの指はボタンの上を動く。ぎこちない動き、不必要に力が入っている。
さらに、息遣いが聞こえる。おいおい、俺を読むのにどうしてそんなに息を荒くする。俺は苦笑する。
苦笑しながら、けれど、俺はお前に見て欲しがっている。俺の全身、いや全文を嘗め回すような視線が恋しくてたまらなくなっている。
お前の声が聞こえだす。しわがれた声の苦々しい響き。「けしからん」「俺の書くものに比べれば」「文学とはそもそも」「俺はこの世界で三十年やってきたんだ!」
お前は時にケータイを叩きつけることすらある。でも、次の瞬間には俺を見ずにはいられなくなっている。俺もお前の視線なしでは存在できないように思うのだ。
俺を見ろ、読め。もっと、もっと!

次のお題「こうして、私たちは三角に」
540名無し物書き@推敲中?:2007/11/07(水) 19:09:32
 鉛色に空が覆われた、蒸し暑い夏の日の夜明け前。
 両脇にくっついている二人は、まだ安らかな寝息を立てている。
 恐ろしく低い確率を潜り抜け、私たち三人は、朝までこうして寄り添っていた。
「ねぇ、光」
 どうやら一人は起きていたようだ。
「秋田君、起きてたんだ」
「寝てる暇なんてないよ。この状態が終わってしまう前に伝えたいことがあるんだ」
 まだ出会ってから一日と経っていないけれど、柔和な彼がこんなにぴりぴりとした雰囲気を出していることに、なぜか私は不安な心持ちになった。
「怖がらなくていいよ。むしろ、俺のほうが怯えてるんだ」
 普段のやさしい目で、彼は続けた。
「好きだ。君のことが」
 全身から、恥ずかしくなるほどの汗が流れ出すのを感じた。湿気のせいだけではない。
「ええと、あの」
 こんな時、なんて返せばいいのだろう。初めての経験に、私はしどろもどろになった。
「わ、私で良いんなら──」
「ん! ん〜」
 突然のうめき声に私はもちろん、秋田君も動揺しているようだった。
「よく寝た」
「錦君、い、いつから聞いてたの?」
 私の問いに、錦君は皮肉っぽく口の端を吊り上げた。
「そっちの奴がビビッてることをカミングアウトしたあたりからだな」
 私はもう、ほとんど正常に物を考えられなくなりつつあった。秋田君が顔を背けて舌打ちをする。
「おっと大将。本題はこっからだぞ」
 軽口を叩いた後、錦君の目が私に向けられた。
「光。俺と来い」
 普段のへらへらしている調子とは程遠い彼の言葉が、甘く深く、私の耳に残った。
 頭が熱を帯びたように、全てが遠くぼんやりとしてきた。秋田君が怒ってるようだ。順番なんて関係ないだろ、と錦君がからかうような笑い声をあげた。
 最初に出会った時から、この二人は水と油みたいな相性だったな。現実を受け止めることを拒否した私は、まったりとそんなことを考えていた。
 涼やかな風が吹き、空からまばゆいばかりの光が降り注いできた。
 そして頭上から伸びてきた巨大な手が、私たちを天へと連れ去った。
541名無し物書き@推敲中?:2007/11/07(水) 19:10:47
「早くしないと遠足の集合時間に遅れるわよ!」
 不機嫌そうな母親の声。もぞもぞと布団が動く音。
 ぎゅうぎゅうと握られ転がされ、私たちはそれまで繰り広げていた人間関係、いや米関係と同じように、三角形のおむすびとなったのだった。
 それにしてもお母さん。いろんなお米をブレンドするのはやめてもらえないだろうか。

 次のお題 オタク隔離政策、ついに施行
542名無し物書き@推敲中?:2007/11/10(土) 21:37:56
「オタク隔離政策、ついに施行」

なんて事だ…
そう思った人間が何億人いただろう。しかし彼らは巧みに生きる術を見出した。
何と彼らは秘密裏に結集し、
誰にも邪魔されない異世界に移住できる装置を創り上げ、
次々とその世界へ移住していった。

次の御題「まわればまわるほど味が出るのさ」
543名無し物書き@推敲中?:2007/11/11(日) 11:42:15
「腹減ったぁ!」
「痛っ! くっそあのタコ、引っ掻きなんて女の技だろ……」
 役所の入り口へと続く行列の中から、二人の声はほぼ同時に上がった。
「あれ、お前も今日来たのかよ」
 あちこちに痣や擦り傷を作った14,5歳に見える少年が、少し後ろで空腹を訴えた、同じような年頃の少年の位置まで戻った。
「ちょっと入れてもらっていいですか? あ、助かります」
 空腹少年の後ろにいた憔悴しきった様子の男が、ちょっと嫌そうな顔をしながらも一人分の空間を作った。
「あれ、久しぶり。名前なんだっけ? それよりぼろぼろじゃん?」
「最近喧嘩ばっかなんだよ。そっちこそ腹減った、なんて餓鬼みたいな理由で騒ぐなよ。それより名前なんだっけ?」
「別にいいじゃん。実際餓鬼なんだし」
 列の動きに合わせて、二人も数歩進んだ。
「今回はどこに送られんのかな? 俺、人間界がいいな。とりあえずたらふく食いたい」
「太るぞ? 餓鬼から人間に移ると大体デブになるらしいじゃん。確立低いけど天界のほうがいいんじゃないか?」
「やだよ、天界なんてなんの面白みもないじゃん」
 餓鬼が目をきらきらと輝かせながら、繰り返した。
「やっぱ人間界は一番だよ。廻れば廻るほど味が出るあたりが」
「次に幼馴染になれんのは、何週くらい先だろうな……」
 ふと、沈んだ様子で修羅が呟いた。
「殺伐とした世界にいたせいで、なんかセンチメンタルになってる?」
「いや、誰でもなるって、あれは」
 
 次のお題 次のお題を考えるのがもっとも苦手だと感じている投稿者
本を読むと眠たくなるんだ。これはきっと病気に違いない。

僕がそう確信したのはある授業中の事で、言わずもがな居眠りを注意されている時の事だった。
実際、僕は知っている。これは最近流行り始めた病なんだと、医者をやっている父さんが言っていた。
それがどんな菌やなんかで引き起こされるのかは全く分からない。
でも、それは確かにあるのだ。
決して激しくなく、ただ平坦にねちねちと注意を繰り返す教師の顔を僕は見た。
居眠りに厳しい事が僕たちの間では有名だった。
もしかしたら先生もそういう病気なのかもしれない。
「先生、ご病気ですか」
一瞬どきっとした表情をして先生は固まった。
それからこんな事を言った。
「俺が"次のお題を考えるのがもっとも苦手だと感じる"病気だと何故知っている」
「そうですか、やっぱり。すいません、僕も本を読むと眠たくなる病気なので早退させて頂きます」
「そうか」

帰り際、クラスメイトが「病気じゃ仕方ねーな。お大事に」と声を掛けてくれた。

次のお題
「そろそろ三角木馬の季節ですね」
545名無し物書き@推敲中?:2007/11/13(火) 00:23:03
 果報は寝て待て、便りは忘れた頃にやってくるとはよく言ったものだが、
昔の女からその手紙がきたのは、彼女と最後に逢ってから、ちょうど452日
経った、ある日のことだった。

 手紙にはたった一言、
「そろそろ三角木馬の季節ですね」
とだけ書かれていた。

 あの手紙を見たときの僕の顔はどんなだっただろうか? 彼女からの手紙ということでワクワクしていた僕の目に飛び込んできた文字は「三角木馬」だったのだのだから、僕の顔が三角形と逆三角形を合わせたような顔よりも、よほど歪に歪んだことは間違いない。
 僕の知識によると三角木馬というのは拷問道具、もしくはSM用の道具
である。木馬の座る部分が三角形になっていて、座ると、つまり……そ
の……お股が裂けるように痛いのだ。系統としては古代中国のメージャ
ーな拷問法である、牛裂き系だろうか。
 しかし季節とはなんだ、季節とは。僕のイメージでは三角木馬は室内用
である。季節など関係あるのだろうか? いや、もしかしたら野外で使うの
だろうか? そういや、近くの公園に木馬の下にバネが付いた遊具があっ
たな。座る部分を三角にすると……。うぅ、お股が痛くなってきた。それとも
シーソーの座る部分を三角にするという発想はどうだろうか? 二人でギッ
コンバッコンやれば、SとMを同時に楽しめる。―――っと、僕は何を妄想し
ていたのだろうか。僕はきわめてノーマルな性癖だし、彼女だってノーマル
なはずだ。
 僕はなんとなく手紙をまじまじと見つめてみた。彼女らしい幼稚な丸文字。
それが彼女が彼女のままである証拠であるような気がして、古い記憶がよ
みがえる。逢いたい。
 想い通じたのか、チャイムが鳴った。

 僕はその夜、たくさんのことを知った。
 彼女の性癖をほとんど理解していなかったこと。
 僕自身の知らなかった性癖のこと。
 この452日は放置プレイであったこと。
 僕らの妄想は似通っていること。
546545:2007/11/13(火) 00:24:09
次のお題は「11月の花言葉」でお願いします
547名無し物書き@推敲中?:2007/11/15(木) 13:35:15
 ――11月の花言葉?
 今日は……15日か。誕生花はハンネマニア。アスパラガスに似た白っぽい葉は細く、薄い花弁は明るい黄色。花言葉は――『恋の訪れ』。
 
 1 回りくどい愛の告白だね
 2 僕が花に詳しいの、知らなかったの?

 コントローラーを握った、見た目だけはお酒落な友人は、1の選択肢を選んだ。ブラウン管の中の美少女キャラが、いかにも作った感じの甲高い声で否定する。これがツンデレか。
 11月もすでに半ば。師走の狂騒を待ちきれない異常者は、こんなところにも潜んでいた。
 連続女児誘拐事件がいよいよセンセーショナルに報じられる中、部活にも勉学にも励まない僕たちのような高校生は、小学生よりも早く安全な自宅へと帰っていた。
「楽しいか、これ?」
「話しかけんなよ」
 こいつ、家から追い出してやろうか。家族がいて自宅じゃ今日発売のギャルゲーができない、と拝み倒されたから入れてやったのというのに。
「おい、雨降ってんぞ?」
 大音量でゲームをやってる奴のせいで、外の雨音に今の今まで気づかなかった。
 文句を言う友人の前を横切りベランダのガラス戸を開け、猫の額ほどの広さの庭に出て洗濯物を取り込み始める。
「その花、誰か育ててるのか?」
 人に邪魔するなと言っておきながら、僕の労働風景は楽しげに観察していた友人が、そう聞いてきた。
 足元にはあまり綺麗とは言いがたい、赤黒く小さな花弁の、全体的に小ぶりな花が咲いている。
「いや、知らないうちに咲いてた。ちょっと図鑑とかで調べたんだけど、載ってなかった」
「新種か? せっかくだから名前付けちゃえよ」
 今やっているゲームの影響からか、友人はそんなことを言い出した。
「名前ねぇ。ジュウイチガツでいいや」
「花言葉は?」
「花言葉か……」 
 この花の下で醒めない眠りについているであろう、4人の少女たちの気持ちを汲んで、僕はこの言葉を選んだ。
「じゃあ、告発」

 次のお題「好意を持った相手に限って嫌われる」
榊一郎は好意を持った相手に限って嫌われる。
彼の行為は過剰すぎるのだ。
知り合って一ヶ月もたたないクラスメートの家に高校生には全く似合わない白いスーツをつけて
薔薇とひまわりの花束をもって押しかければ、引かれる。
そんなことも分からないから嫌われる。鎖をかけたままのドア越しに震えの混じる声で絶叫される。
榊はドア越しに土下座して謝る。そんなことをするからますます嫌われるというのに。
涙と鼻水をこぼしながら、でも愛しているんだってのたまう。
榊は分かってない。
でも、そんなところが昔の私を思わせて、ますます愛しくなる。
榊くんにお弁当をもっていったときの私。重箱につめてもっていったのに彼はあわてて逃げ出した。
恋のアプローチは秘めやかじゃなくっちゃ
なんて土下座している榊に、私は少し離れた電信柱の影から優しくささやいてあげる。

次のお題「獅子舞せよ、乙女」
549548:2007/11/16(金) 01:55:17
↑この作品はフィクションであり、登場する人物、団体等はすべて架空のもので、
実在するものとは一切関係ありません。

次のお題は引き続き、「獅子舞せよ、乙女」 で
550獅子舞せよ、乙女:2007/11/16(金) 03:48:32
彼女はいつも獅子舞のような言葉で、表情で、俺に食らい付く。
「ねえ、勉強してるの? 後々困ったって、あたし知らないから」
「ああ、頑張るよ」
「そーね。せいぜいね」

――だから俺は「お前に知っていてもらう義理なんかねーよ」とは言ってやらないのだ。

次のお題「団子星人は好きですか?」
551名無し物書き@推敲中?:2007/11/17(土) 09:12:07
 午後6時。バイトを終えた僕は、渋谷のスクランブル交差点をぶらぶらと歩いていた。
 頭上のビルにはめ込まれた巨大モニタでは、中東の紛争について報じていた。
「すいません。ただいま街頭アンケートを実施中でして、簡単な質問にいくつか答えていただけませんか?」
 いかにもキャリアウーマン然としたその女性のスーツの胸元はぱっくり開けられており、巨乳が窮屈そうに揺れていた。
「ええ、構いませんよ」
 あまりにも魅力的な肢体に誘われ、ついつい安請け合いをしてしまう。
「それではまず人口、移民問題について――」
 何を聞かれ、それに僕がどう答えたのか、よく憶えていない。胸に気をとられて、機械的に返事をしていただけだった。
 触ってみたい。揉んでみたい。顔をうずめてみたい。母乳を噴かせてみたい。この胸を責めてみたい。
「団子星人は好きですか?」
「は?」
 団子星人。人間の首の部分を串にして、頭を団子にしたようなあれか。
「彼らの悲劇的な愛情表現と生殖行動の様式について、どう思われますか?」
 団子星人にとって、性交渉は子孫を作るための必須行動ではない。あくまでスキンシップであり、人間でいうキスのようなものだ。
 それゆえセックスという行動は極めて明快な位置づけにある。愛していればするし、そうでなければ絶対にしない。
 人間にはそれができない。どうしても生理的欲求や打算といったものが付きまとうからだ。
 反対に、彼らの生殖行動は凄絶の一言に尽きる。男性の頭部が可食部になっており、これを女が文字通り『食べる』ことで生殖因子を取り込み、妊娠する。
 子供を作るためには、男性は必ず命を落とす。
「女性の間では、恋愛の理想系の一つとされていますね。映画化もされるそうですが、僕はどうしても哀れなカマキリのオスを連想します」
 カマキリのオス、そうインタビュアーはつぶやきながら、手帳にペンを走らせていた。
「ところで僕はおっぱい星人なんですけど、あなたのようなホルスタイン星人とは相性は最高だと思うんです、よろしければ今夜どうです?」
 モゥ、と一声女性が鳴いた。鼻輪がネオンの光を受けて、キラリと光る。
「いいですよ。そろそろ誰かに搾乳して欲しかったし」

 次のお題 学校カースト制について論じてみようよ
552学校カースト制について論じてみようよ:2007/11/21(水) 18:33:43
教室の中には序列がある。
序列が一番の人はちやほやされる。彼女の机には人が群がる。群がる群がる。
彼らは次々に序列一番の彼女に貢物を献上する。
お菓子であったり、宿題をやったノートだったり、聞いてて恥ずかしくなるくらいの褒め言葉だったり。
序列最下位だったころの私の机とは、大違い。
私に謙譲されるのは、お菓子やノートどころか消しゴムのカスとか飲みえ終えた牛乳パックとか。
ビニール袋に入った異臭を放つなぞの物体Xが椅子におかれてたこともある。
優しい言葉なんて誰もかけてくれなかった。
でもね、最近はそうでもない。序列が少しだけあがったのかな?
ほとんど口を利いてくれないのは前と同じ。私の存在に気がついてくれてないんじゃないかって思うこともある。
なんだけれど。
でも、今の私の机には生ゴミも燃えるゴミもおかれていない。
花瓶に入った花が添えられる。
たまに、私と目が合うと、きゃああ出たぁなんて声をあげて、それから、ごめんなさい許してなんて言ってくれることもある。
もう、気にしてないのにね?
私にささげられた白い菊の花一厘見ながら、私は笑う。

次のお題「次の登場人物」
553次の登場人物:2007/11/22(木) 01:36:40
かつて、彼と私はこんな会話をした。
「ロシアンルーレットって知ってるよね」
「知ってるよ。それが?」
「なんか、悲しいなって思って」
「悲しいかあ。俺はちょっと怖いかな。だって、いつ死ぬか、生き残るかわからんもん」
「うん。でも、使い捨ての弾丸で死ぬって考えたら、私は怖いより悲しいな」
「ふーん。面白い考え方だね」
「そうかな?」
「たぶん」

そうして、今彼は真っ赤な血を流して倒れている。
使い捨てられた弾丸は可哀相だった。けれど、使い捨ての弾丸に殺される彼は、もっと可哀相な人だった。
だからこそ、私は特別な思いを込めて包丁を握り締めた。
次の登場人物は、いない。


次のお題 「認めなくしたもの」
554名無し物書き@推敲中?:2007/11/22(木) 04:47:12
改札へと降りる階段の手前に清算機がある。
きっぷなどの運賃の不足分を補う機械だが
私はこの機械を見ると人生の清算もできたら
いいのにと思うことがある。
いや、正確に言えばそういう機械があったら
面白いと思うだけで人生の清算をしたいとはあまり思わない。
何故なら人生は結局、自分自身で責任から
逃げ出すことは出来ないと思ってるからだ。
人生は辛い。うまくいかなくなったら
私は自殺するだろう。その時は苦しまずに死ねればいい。

「おい、あなたはもう認めなくしたものよ。
こっちにきて手続きをしてくれ」
清算所の係員はそういって私のファイルに
印を書き入れた。
555名無し物書き@推敲中?:2007/11/22(木) 04:51:21
次のお題 「十二月の寒さを超えて」
556「十二月の寒さを超えて:2007/11/23(金) 07:20:46
 凍てつくような寒空の下だというのに今年の雪はどうなるかでその2人は論議を白熱させていた。
 今彼等がいるこの地方はこの国の中でも比較的暖かい地方であり雪は滅多に降らず見れるか
見れないか自然の気まぐれに任せているという場所だ。そんな場所で雪に関して論争を繰り広げて
いる彼らは明らかに周囲から浮いていたが、大声で言い合う彼らに目を向ける人間はいない。
「おまえ馬鹿だろ、雪は今年こそどっかんどっかんとだな」
「去年も同じこと言って全然駄目だったじゃない」
 呆れたように女が言うと待っていましたとばかりに男が反論する。
だがその反論は巧みな女の言葉で論破されてしまい男はうなだれた。
「とにかく去年は駄目だっかもしれないけどさあ」
 男がみっともなく唇を尖らせまだ反論を試みようとしたそのとき、女が首からストラップでぶら
下げていた「携帯」がなった。女がとる前に男が勝手にとってしまい、耳に当てる。
「もしもし。ああ、支部長。はい、いますよ、一緒です」
 男が携帯相手に居住まいを正した。どうやら彼らの上司からの電話らしい。
女はストラップを首から外すと男を黙ってみつめる。
「はい、はい……はあ……もう年越して、お正月ですよ。去年の終わりだって十分寒かったですし。
え? やっと基準を超過したからオーケー?」
 女からは支部長の声は聞こえないが、どうやら仕事にゴーサインが出たらしい。
男が親指を女に向かってあげたのち支部長と一言二言話してから携帯を畳む。
そして女と顔を合わせると口角をつり上げた。
「よっしゃーサービスしとどっかんどっかん雪降らすべ!」
「あーあ去年はサボれたから今年も楽できると思って担当地域ここにしたのに」
「んじゃいきますか!」
 男がそういい、渋る女の手を取るとまるで雪が溶けるようにふわりと姿は消えてしまった。
 今年最初の雪はこの地方に珍しく大雪だったという。
557名無し物書き@推敲中?:2007/11/23(金) 07:23:17
次のお題「腹痛と腰痛の関係性」
558名無し物書き@推敲中?:2007/11/27(火) 11:31:28
今となっては、笑い話になってしまうけれど
その時、俺はこの話を心の底から信じた。
何故、俺が信じてしまったか他人に説明することは
難しい。きっと我々が普段見ているものは
不確かだということを酸素があることすら
偶然だと説明するのが難しいのと同じなのだろう。

天気予報どおり西からの温かい風は
大粒の雨を運んできて山の峰の向こう側で光ったと思うと
たちまちに、あたりは薄暗くなった。
その時、俺は渓流釣りに来ていて馬鹿なことに
ライトをつけっぱなしにして川に下りてしまい
戻ってきたときにはバッテリーが上がっていたというわけだ。

俺は竿と釣ったばかりの山女をトランクにしまい毒ついた。
よりにもよってこんな場所で!
たまたま見つけたその川は廃道になった私道の先にあって
よそものはおろか、町の人間さえも知らないポイントだったから
助けを呼ぶために延々、歩くはめになりそうだった。






559名無し物書き@推敲中?:2007/11/27(火) 11:39:51
俺は雨具に着替え携帯を取ると一応確かめた。
――さっき圏外だったじゃないか!
心の底で理性ある声がそう叫んだが、俺は
念のためスイッチを入れてラッキーを期待した。
――やっぱりね。思ったとおりさ。
フードをかぶり、携帯をポケットにしまい
もう一度、空を見上げると俺は歩き始めた。


「ほんとうに、すいません。いえ、町まで行って
自動車屋呼んで来るんでだいじょうぶです」
トラックに農具をのせた爺さんが何故、この道へ
入ってきたか俺には分からなかったが
深くは聞かないことにした。自分の車を離れ20分も歩かないうちに
軽トラックのエンジン音が聞こえ空耳かと思っているうちに
近づいてきて、中から爺さんが俺に声をかけた。
俺は私道の手前にあった民家の人かと思ったら違うようだ。
なにやら自分も釣りに行くところだなんていうが釣具を
何も持っていない。
560名無し物書き@推敲中?:2007/11/27(火) 11:49:38
「釣れたかね?」
爺さんが聞く。雨はまだ降っていて
ワイパーの先の景色は山と空の区別がつかないほどだ。
俺は確か、田んぼの用水路があったことを思い出す。
スリップしたら洒落にならない。
「ええ、釣れましたよ。はじめて来たんですがいいポイントですね」
爺さんは意味ありげに笑うといつしか不思議な話を始めていた。

「まだベルリンの壁が崩れてなかった頃、ロシアが
ソビエトと言われてた頃の話だよ。私はその頃、原因不明の腹痛
に悩まされていた。医者に行っても何も悪いところは無い。
大きな病院にいっても健康ですよ。と言われる始末。
でもな、確かに腹が痛いんだよ。それはな食中毒や風邪による
腹の痛みと違う、なんていうかうなぎの様な長いぬるぬるした
ものがお腹にいてざらざらしたウロコで腹の壁を撫でるような感じだ。
うなぎにウロコがあるのか知らん。そういう感じ。そこには
快感のようなものがあったかもしれない。なんとも形容がしようのない
奇妙な感じじゃ」
561名無し物書き@推敲中?:2007/11/27(火) 11:54:56
俺を車屋の前で下ろすと爺さんは「元気でな」といい
名前も名乗らず行ってしまった。
爺さんは腹が痛くなるとソビエトが何か企んでるときで
腰痛がするときはアメリカが何かたくらんでる時だといった。
俺は小さくなるトラックを目で追いながら、ふざけた爺さんだと
思っていたが心のどこかで怖がってるのを感じていた。
小学生の頃、口裂け女を信じてた日を思い出した。
俺は、空を見上げ雨が弱くなっているのを発見する。
空が明るくなりかけている
562名無し物書き@推敲中?:2007/11/27(火) 11:56:37
なんか長すぎたかな?
次のお題「都市伝説 パンダ男あらわる」
563名無し物書き@推敲中?:2007/11/29(木) 15:36:41
雲が月を覆い隠し、雪が降る…
都市伝説にもなったパンダ男がでるのは、そんな晩だ。
あなたもそいつに襲われないように気をつけたほうがいい。

「そろそろ閉店の時間だな。」店で働く男が壁にかけられた時計を見ながらつぶやく。
時計の下では売れ残った商品。男はため息をつく。十年前ならもっと売れたんだがな――近くにコンビニやらスーパーが出来てからはこのあたりの個人商店の売り上げが落ちた。男の店も例外ではない。
でも――俺はこいつらが好きだ。でも、このままじゃ、店をやってられない。商品をみながら、男はつぶやく。商品
がしゃん。
とつぜん、店の窓が割れた。
男は目を疑う。割れた窓の向こうにきぐるみを着た男がいたからだ。
白に黒が混じった獣姿のそいつは割れた窓をくぐり、店内に足を踏み入れる。
きぐるみの肩が棚に当たる。陳列していた商品が落ちた。
きぐるみは商品をふみつけて男にちかづき
「わん!」
と吼えた。
男の目に光がともる「わんじゃない、この犬のぬいぐるみ野郎! きさま、何をふみつけたとおもってるんだ!」
拳が犬の気ぐるみに叩き込まれる。犬は仰向けに倒れた。
倒れたきぐるみの頭の部分をとる。女の顔が露出する。
男は落ちた商品を手に掴むと
「これはふみつけるもんじゃねえ、くいもんだ、俺が丹精込めて焼いたパンだ! パンだ! パンダパンダパンダ!」
拳で意識を失った女の口に床に散らばった商品を押し付ける。口の中に無理やりねじこむ。
妙な女がパンを踏みつけた。パン屋の経営不振で弱っていた男の心はそれをきっかけに壊れた。
パンダパンダと叫びながら、人の口にパンを詰め込む怪人が世をにぎわしたのは、それからだという。

次のお題「勝利しないための友情」
564名無し物書き@推敲中?:2007/12/01(土) 05:39:13
それは羽田空港のベンチの上にあった地方の新聞に
載っていた小さな記事で、後になりふと思い出し
気になってネットで検索したものの該当するニュースがどこにも
無かったので私の夢だったのかと思ったりもする。
いや、馬鹿な。そんなはずは無い。
私の夢だったとでもいうのか。記憶と夢の混ざった意識の
深淵から気まぐれに出てきた白昼夢だとでもいうのか。
私は故郷へ帰るとき確かに見たのだ。
今でもはっきり覚えている。その読み捨てられた新聞特有の
ぼろぼろした質感と、私の見たことの無い新聞社のタイポグラフを。

自衛隊がサマワで和平活動をしていた時の記事で
長く続く活動に緊張が徐々に途切れていた頃だ。
真夜中に一人の自衛隊員が特殊車両で目を覚ました。
屋外にあるトイレに出ようとドアを開けるとそこには満月が
荒涼とした砂漠をどこまでも照らし小さい頃、見たプラネタリウムを
巨大にしたような夜空がどこまでも広がっていた。

隊員は唖然とし足を止め自分が何のために起きたのかも忘れ
その場に立ち尽くした。この瞬間、聞こえるものと言えば
発電機のうねりだけで人工の光はどこにもなかった。

そこにここへ来てから良く聞いた正体の知らぬ動物の
鳴き声が加わる。

565名無し物書き@推敲中?:2007/12/01(土) 05:51:50
――美しい
ただその言葉だけが終わらないエコーのように
心の中に響いている。目に涙が溢れる予感がして
唐突も無く自衛隊員になるために行った試験会場を
思い出した。彼の友人は自衛隊員なんて危険だからやめろと
会社に就職しろといった。彼は友人に自分の思い描く日本を
自分の言葉で語った。自衛について、戦争について。

その時、暗闇の中に人の気配がした。
不自然なほどの際立った音は足音だと直感した。
緊張が走り、自分の世界から目覚め
自衛隊員の本能とでもいうべく警戒モードに入っていった。

「キャン ユー スピーク イングリッシュ?」
その銃を担いだ少年は首を振る。
隊員が少年から銃を預かるがその銃は使えないのは
明らかだった。弾は入っていないし。長年風雨にさらされたのか
硬く汚れた泥が銃身にこびりついている。

隊員は、その少年の目的が何なのか分からなかったが
態度や目に攻撃的なものが無かったので
腰を落とすと諭すように英語で聞いてみた。
566名無し物書き@推敲中?:2007/12/01(土) 05:58:50
「アイ アム ジャパニーズ オーケー?」

少年は汚かった。月明かりの下でも
それは十分に分かった。市街に出れば
こんなホームレスのような少年たちがいっぱいいた。
隊員は胸が痛んだ。

隊員は胸にあった栄養補助食品を少年にあげる。
第二次大戦中、アメリカ兵が同じように
日本の少年にやったのだと思いながら。

少年は恥ずかしそうにそれを受け取ると
銃を返して欲しいような仕草をしたが隊員は迷った後
それを返さないことにしたが少年は気にしていないようだった。
少年はアラビア語で何か言ったかと思うと敬礼した。
隊員が敬礼で返すと少年は駆け出した。



567名無し物書き@推敲中?:2007/12/01(土) 06:03:39
次のお題「10ccは誰のもの?」
568名無し物書き@推敲中?:2007/12/16(日) 05:19:11
その人物には顔が無かった。正確に言うなら顔の部分は暗くぼんやりとしていてはっきり見て取れない。
仮に567と呼ぶ。567はビーカーに入った10ccのそれを誰かに渡すために毎日辛抱強く待ち続けた。彼も10ccのそれを渡す誰かは知らない。ただいつか別の顔の無い人物が現れそれを静かに受け取って行く日がくるのだ。
冬も厳しさを増していくある日の明け方、ついに一人の顔の無い人物が彼の前に現れた。
『568』と彼は名乗った。
569名無し物書き@推敲中?:2007/12/16(日) 05:22:22
「先にお断わりをしておきますが私は10ccを貰いにきたのではありません。代理の者と思っていただければ…」
声からするとどうやら男のようであった。568はビーカーを受けると10ccを残らず草群に掛け始めた。
「ビーカーに入っていた10ccは無くなりました。ですが本当に無くなったということではありません。夜光草という形に姿を変えるだけです」
するとあたりの地面が光りだした。
570名無し物書き@推敲中?:2007/12/16(日) 05:23:29
次のお題「夜光草」
571夜光草:2008/01/08(火) 01:05:19
辺り一面に生えた夜光草を抜き取る事は、誰にも出来なかった。
「夜にだけ光る草さ……持ち帰って何の意味がある?」
「そうね」
男と女は、しばらく楽しんだあと、その場を後にした。

次のお題 「きょうどうせいかつ」
572きょうどうせいかつ:2008/01/10(木) 13:27:10
ぱんぱんぱん、ベランダで二人分の服や下着を干している。しわにならないように気をつけながら
私には妹がいる。
彼女と一緒に住んでいる。
彼女と私以外の人はこのアパートの中にはいない。
母は私が四つ、妹が二つのときに出て行った。
父さんは私が十二のときに死んだ。
名目上は近所に住んでいる叔母が私たちの保護者。
でも、私たちは二人だけでここに住むことを決めてそうしている。
妹が立派になるまで、私が守ってあげないといけないと思っている。。
頭が良いから高校を出てそれなりの仕事につくかもしれない。
それに妹は可愛い。素敵な彼氏が出来るだろう。素敵なお嫁さんになるかもしれない。
でも、さしあたっては、今日の晩御飯はどうしようとか、今日をどうやって過ごすか
そんな簡単なことだったりする。
妹と私の共同生活だけに「今日どう生活」?
うまいこといっちゃったな? 洗濯物を干しながら、一人で笑う。なんとなく元気が出てきた。
今日も一日がんばろうと思う。

次のお題「タオルが斜め」
573名無し物書き@推敲中?:2008/01/13(日) 03:50:58
「タオルが斜めだったんです」
「……なんだって?」
ぼくの言葉に、目の前のいかつい男の顔が訝しげになる。
「だからタオルが斜めだったんですよ」
「それのなにがいけない?」
「なにがいけない――ですって?」
頭の芯がかっと熱くなり、思わず叫びだしそうになるのを、拳を握りこみ歯を食いしばって思いとどまる。
いけない、こんなことで激昂していてはまるで狂人じゃないか。ぼくは真っ当な主張をしているだけの、至極一般的な常識人なのだ。
きっとこの物分りの悪い上に悪人面の男だって、懇切丁寧に説明をしてやればきっと分かってくれるはずだ。
無意識にがりがりと齧っていた親指の爪から口を離すと、大きなため息とともにゆっくりと胸の怒りを吐き出し、ぼくは言葉を選ぶように続ける。
「……いいですか? タオルが壁にかかっていたんですよ。赤と白のストライプの」
「ストライプ……縞模様か?」
「そう! あろうことか縞模様ですよ。しかも縦縞です」
そう縦縞だ、横縞ならまだ許せるがあろうことに縦縞だったんだ。
「……それが斜めだったのか?」
「ええそうです。分かるでしょう? この感覚。本来垂直に垂れているべきストライプのタオルがですよ?
あろうことか斜めになって美しい縞模様をぐにゃりと歪ませて、そんな醜悪な状態で壁にかかっていたんです。誰だって許せない」
「……君の言うことはいまいち分からんね。タオルなんてそんなものだろう」
やはり見た目どおりの物分りの悪い人間だ。おまけに無神経。救いようがないとはこのことだ。
しかし次の言葉で納得しない人間はいないだろう。ぼくは内心ほくそ笑みながら、言葉を続ける。
「そういうと思っていましたよ……でもね、ぼくの家に実際に行ってみれば分かりますよ。その醜悪さが」
「……どういう意味だね?」
574名無し物書き@推敲中?:2008/01/13(日) 03:51:41
その質問に、待ってましたと言わんばかりにぼくは食いつく。
「ぼくの家の壁紙はね、ストライプなんですよ。黒と灰色のね。分かるでしょう?
 ストライプの壁紙に掛かったストライプのタオル。次元を異にする二種の垂直線が平行に並び、
佇むその姿の美しさが。それを斜めに置こうだなんて……狂気の沙汰としか思えない。違いますか!?」
「……理解しかねるな」
突き放したような言葉と、蔑むような視線。胸の奥から激情がわっと吹き出して口からあふれ出す。
「お前もそうかよ……!ぼくが神経質すぎるって言いたいんだろう! 心の中で完璧主義者のインテリ野郎とぼくのことを罵っているんだろう!
言っておきますがね、ぼくは決して神経質じゃあない。ええ、全く神経質なんかじゃないですよ。トイレットペーパーは三角に折らないし、
CDはたまにジャケットと違うディスクを入れることだってあるんですよ これのどこが神経質だって言うんですか!」
気付けばまた爪を噛んでいた。口の中に血の味が充満して気持ちが悪い。
「……分かった。理解しかねるといったのは訂正しよう縦縞の壁に縦縞のタオル。それが崩れてれば誰だって気持ちが悪い。そこは分かるさ」
思わぬ言葉に、ぼくは喜色で頭を上げて男を仰ぎ見る。
しかし男の次の言葉に、ぼくの期待は打ち砕かれる。
「……だからって殺すことはなかったろうさ」
それだけ言うと、大きなため息を一つつくと男は部屋を出て行ってしまった。
出掛けになにか言っていたようだが、ノイズが混じったようでうまく聞き取れなかった。
喧しい音とともに、重厚な扉が閉められた。全ての終わりを告げるように。
次のお題「マティーニだけは飲みたくない」
575名無し物書き@推敲中?:2008/01/22(火) 21:47:42
一人の男が入ってきた。月曜の雨の夜。
こんな日に一人でバーに来るなんてわけありな男に違いない。
マスターはグラスを磨いていた
手を止めるといらっしゃいと声をかけた。
男は軽く会釈をし映画の中でしか見ないような帽子を取ると
トレンチコートを脱ぎハンガーを探すとスツールに腰を下ろした。
男の視線が左から右へと動く。
一段目、二段目そして三段目。そして男の目が止まる。
男はあごをなで深慮深げにうなずいた。
「ほう。ベルモットのスペシャルだね。あの
幻といわれてサザビーのオークションでは二千ドルの値がついたという」
マスターはバーテンとしてこの店に入り数十年だが
このベルモットの存在に気づいたやつは誰一人としていなかった。
やはり、この男ただものではない。マスターの胸は捜し求めていた
恋人に会ったように高鳴った。
「では、やはりマティーニで?」
「いや、マティーニだけは飲みたくない」

――この男。まったく謎にみちてる

そして長い夜が始まった。


次のお題「銀座の幽霊」



576銀座の幽霊1:2008/02/04(月) 22:58:24
 そいつは奇妙な男だった
 年齢は20代半ばといったところだろうか。端正な顔立ちに濃い紺のスーツ
とベージュのタイという隙のない外見をしているわりに、どこか相手をリラック
スさせるような飄々としたそいつは、銀座の隅っこに立っていた俺に告げた。
「この町を案内してもらえないだろうか?」
 突き出された封筒には10人の福沢諭吉。正直怪しい男だと思ったが、最近
仕事とも諭吉ともご無沙汰だったから二つ返事で了承した。
 男は場所を指示したので、俺は連れて行った。一通り見たあと、男は次の場
所を指示したので、また連れて行った。それが何度も続いたのだが、妙なこと
に指示された場所と場所の間には必ず、"仕事"に入った家があった。
 俺はもともと田舎で何でも屋をやっていた。それがいつの間にか東京で薬の
バイヤーをやっていて、終いには銀座で高級住宅専門の盗人になっていた。
 この男は何者なのだろうか。俺に容疑がかかっていて、白黒つけるために警
察が派遣した刑事だろうか。しかしこんな周りくどい捜査方法を警察がとるのか。
俺にはさっぱり分からなかった。だから黙って案内を続けた。
577銀座の幽霊2:2008/02/04(月) 22:59:09
15件以上の現場を通っただろうか。茜色の空を見上げながら男は地図を差し
出した。地図にはバッテンが一つ。それは俺が一番最後に入った家だった。
「最後にここへ連れていってくれ」
 俺は男と並んで歩きだした。高いビルのせいで二人の長い影は地面に映らな
い。やがて目的地にたどり着く。そこは立派な塀のある家だった。
 男は家を見つめていた。この家に入ったときのことを思い出す。俺は塀を登っ
てこの家に入ったが、"仕事"をしている最中に玄関の扉が開いた。そこで俺は
慌てて庭に出た。通行人がいないか注意深く観察しながら塀を登り脱出を試み
たのだ。しかし、そのとき、塀の上にいた猫が驚いて道路に飛び出してしまった。
それを救おうとして俺は―――
 奇妙なことに気づいた。ここにはビルがない。それなのに俺に影はなかった。
男には影があった。小さな影が。
 俺は闇に溶ける前に彼の頭を撫でてやった。「ありがとうな」
 男は最後に呟いた。「みゃあ」
578名無し物書き@推敲中?:2008/02/04(月) 23:00:05
次のお題は
「立方体の月」
でお願いします。
579名無し物書き@推敲中?:2008/02/10(日) 03:34:44
毎日見上げる月のかたちがこれまでみたいにいつでも丸である必要性は果たしてあるのだろうか?
「月は丸だ」
誰が言い出したか知らないが実に馬鹿げた話だ。
そんな既成概念にとらわれた考えかたを人々は求めていないし押し付けられたくもない。それはもう20世紀でさんざん議論し尽くされたことだ。
それを打ち砕く象徴としての月はまさに打ってつけで芸術家としての前衛的な挑戦であり何より魅力的な題材だった。

ファビオ・カミーリョ・デ・ブリトはプロジェクトの後日雑誌でそう回想している。

変わり果てた月をときどき見上げては思う。僕には芸術とかよくわからない。
ただ、たまに正面からの月の光の直撃がことさらにきつい。
580名無し物書き@推敲中?:2008/02/10(日) 03:42:32
次のお第『床屋、恩知らず』
581床屋、恩知らず:2008/03/12(水) 01:57:15
 床屋は恩を知らない。
 知っていたら、毎日人の頭をハサミできれるわけないだろう。
 ああ、絶対切れないね。
 俺のおかげで飯を食っていられるのに。あそこまで容赦なくきらなくても良いじゃないか。
 人の髪の毛なんて不気味なもの、始終触りたくないってのに。
 え、俺かい? ハサミだよ。

次のお題『砂を売る人』
582名無し物書き@推敲中?:2008/03/16(日) 15:19:07
春のぽかぽかとした陽気に誘われ僕は公園までやってきた。
思いの外公園には人がおらず、
顔に少々しわのある中年の男が一人、
公園の緑色のベンチに足を組んで座っていた。
男は高級そうな旅行鞄を足下に横たえ、
フランス語のタイトルの本に目を落としていた。
僕も年をとったらあんな風になりたいかも、と思案しながら、
何事もないように男の前を通り過ぎようとして、
「小僧」
声をかけられた。男の声だ。
その低く貫禄のある声に一瞬びくっとしたものの、
平然を装い、ぎこちなく愛想笑いした。
「な、なんですか」
男の漆黒の瞳にじっと見つめられる。
「砂だ」
僕の目を見てそう言った。
「へ?」
たまらず聞き返した。
「砂に興味はないか?」
砂…………興味はない。
はっきり『ない』と告げかけ、遮られた。
「中東の砂だ。砂漠の」
男はジャケットのポケットからビンをとりだして僕の前に掲げた。
「持っておけ。きっと役に立つ」
男はそれを僕の掌に預けて、
すっと立ち上がり、本と旅行鞄を手に去っていった。
「あのっ」
男の背中に僕は何か言おうとした。しかし、
「金はいらん。今日は只だ」
男の有無を言わせぬ声にたじろぎ、何も言えなかった。
そのまま、男の姿が見えなくなるまで、口を開けながら見送った。
583名無し物書き@推敲中?:2008/03/16(日) 15:20:16
次お題「雨に濡れるセロハンテープ」
584雨に濡れるセロハンテープ:2008/03/22(土) 03:02:56
甘ったるい雨がセロハンテープの表面を舐めていった。
剥げかけたポスターは惨めで、暗澹とした空模様にはお似合いだ。
散歩する人はない。

果たして、そのポスターにどれほどの価値があるのか。
一時足を止めた僕は、それを思い切って引き剥がしびりびりと破り捨てた。

――さて明日は何をしようか。


次のお題「善後策でなく、前後策」
585善後策でなく、前後策:2008/04/01(火) 22:38:55
 国語辞典の使い方は様々である。
良く判らないものを調べる。
良く判らない言葉を調べる。
枕にする。
重しにする。
 今は公民の授業中、教師が黒板に書いた文章を説明している。
おれは暇つぶしに国語辞典を読み始めた。

ぜんこく[全国]名:国ぜんたいすべて。
せんごくどおし[千石どおし]名:脱穀の時、米ともみ柄をわける道具。
せんごくふね[千石舟]名:こめが千石つめるような大型船。

 千石舟の次は…[善後策]でなく、[前後策]だった。
そう言えば、発行元に誤字を連絡したら謝礼を貰えるって都市伝説があったな。


次お題「わたしにするか、たわしにするかです!」
586名無し物書き@推敲中?:2008/04/03(木) 01:47:03
なあ男性諸君。まったく女って奴はやっかいで
めんどくさい生き物だと思わんか? 俺はそう思う。
なにも俺の自慢話をしようってわけじゃないんだ。
昨日の晩、そう俺は安子のアパートに行って
いつもどおり夕食を食った。別に安子に惚れてるわけじゃなく
俺のアパートのそばに安子が引っ越してきたからなんだ。
「引っ越しちゃった(はーと)」ある冬の晩にいきなり
玄関開けたら引越し蕎麦持って笑いやがった。
とはいっても嫌いじゃないんだ。うん。
で、昨日の話だな。安子は、片付けられない女なんだよ。
小さなテーブルにはペットボトルやらカップめんの残りが散乱してて
あきれてしまうんだけど俺は綺麗好きなわけ。で、やつの風呂場がね
汚かったから洗ってやろうとしたら、たわしも無いんだよ。
あきれてしまうだろ? で俺が「この家にはたわしもねーのか!」って
冗談半分で切れたら「わたしとたわしのどっちが大事なの!」って
逆切れされたよ。意味不明だろ? 俺は機会があったら
精神病院に連れて行きたいと思ってるんだ。まじなところ。
しょうがねえから、使い古した歯ブラシで掃除したよ。
もちろんペアで買った奴ね。うん? やっぱり惚れてるんじゃないかって?
まさかね、ただ俺が掃除好きってだけ。ほんとだよ。信じてくれよ。
じゃあ、安子の化粧も終わったみたいだし安子と飯食いに言ってくるわ。
なんてったって今日は二人が知り合って一年目の記念の日なんだ。
587名無し物書き@推敲中?:2008/04/03(木) 01:49:10
「ゴジラの初めてのバイト」で
588名無し物書き@推敲中?:2008/04/05(土) 21:02:38
 ゴジラはビルを踏みつけた。
 猛々しく雄叫びを上げ。前へ前へと進んでいく。
 手を抜くことは出来ない。
 これは初めてのバイトなのだ。
 お金を貰っている以上、今までのように自分勝手にやるわけにはいかない。
 また一つビルを壊す。
 依頼人が満足げに頷いている。
 これでいいんだ。
 俺は自信をもって更に前へと進んだ。

「お疲れ」
 ビルを壊し終わると依頼人が笑顔で俺を出迎えた。
「いやー、期待以上だよ」
 そう言って依頼人は俺の背中を叩く。
「あっ、田中君、もう着ぐるみ脱いでいいよ。暑いでしょ」

 そして俺はゴジラではなくなった。

次のお題「大金持ちのホームレス」
589大金持ちのホームレス:2008/04/06(日) 00:31:35
とあるホームレスが、公園で男の子と仲良くなって、玩具のお金を貰った。
決して懐は暖まらなかったけれど、心は暖かくなったホームレスは、涙を流してありがとうと言いました。

そんな話を書いたらたくさん売れたので俺は大金持ちになりました。
おしまい。

お題「もし仮に」
590もし仮に:2008/04/08(火) 03:10:07

 相反する2つの人生
 神様はチェス板の上で、気まぐれに駒を動かす。
 雲の上で、2人の小さな天使が地上を見下ろしながら話をしていた。

「もし仮に、あの2人がくっつけば僕は下の世界に産まれることができるんだ」
 天使は傍らで興味深そうに下の世界を覗き込んでいるもう1人の天使に、そう言ってにっこり笑いかける。
「そしてもし仮に彼らが別れて、後から出会うだろうもう1人の彼女とくっつけば、君が産まれる」
下を覗き込んでいる天使は、へー、とかほほう、とか言いながら感心したようにうなずいている。

「どうなるかなんて誰にも分からないんだ」

 枝分かれしたいくつもの道、いくつもの可能性。それは限りなく、果てしなく。
 もし仮に…
 下の世界で出会ったらとしたら、君とくっつくことはできるかな。


次のお題は「桜の花びらの数え方」

591桜の花びらの数え方:2008/04/08(火) 04:38:59
春眠暁を覚えず、と言われるように春というのはひどく眠たくなるものだ。
秋から冬にかけて姿を枯れ木に窶してきた桜は、春にきて、その身に仄かに香る、薄く、白い花びらをたくさんつけるね。
これっていうのは実は随分たくさんのエネルギーが必要なんだ。

枯れ木の枝っていうのはどことなく根っこに似ていると思ったことは無いかい?それは正しいことなんだよ。
地面からのエネルギーでは事足りなくなった桜は、やがて枝を介して大気からエネルギーを吸い取っているんだ。
そういうわけで春になると、眠くなったり、はたまた頭が少しおかしな人が出てくるという訳さ。

ところで独自の方法をもって計算したところ、どうやら桜の花びら一枚につき、僕ら一人当たり吉夢一度分のエネルギーを採られているんだ。
ここで私は桜の花びらの数え方として1キチムー、2キチムーと数えるよう定義したい、異論は認める。

次のお題は「バンドエイド殺人事件」
592名無し物書き@推敲中?:2008/04/08(火) 11:54:53
「実を云うとね」
二郎の血走った2つの目玉は、まさに狂人のそれであった。
「僕は人を殺めた事があるのだ。」
私はまるで酒飲みの与太話でも聞いているかのごとく、その話に全く興味が無い風を装いつつも、温厚な二郎の普段の顔とは全く異なる、狂気とも云うべき鬼気迫る表情に、只只戦慄するほかなかった。
私をからかっているのか、判断のつかぬまま、しかし背中は脂汗でぐっしょりと濡れている。
「バンドエイド、絆創膏とも云うがね。その真ん中にガーゼがあるだろう?傷口を覆う、あれにね、こう」
――毒を塗るのだ。

「二郎とはそれきり会うことはありませんでした。勿論新聞でもその様な事件は報道されておりませんし、きっと彼の狂言だったのでしょう。只、」
――試してみたかったのです。
刑事は私の顔をまるでおぞましい物でも見るかのような目つきで見た。
私にはそれだけがどうしても耐えられなかった。
593名無し物書き@推敲中?:2008/04/08(火) 11:58:21
次のお題
タオルを巻いた猫
594タオルを巻いた猫:2008/04/10(木) 04:08:30
たおるをまいたねこ
といわれたので
たおるを鉢巻のように頭に巻いているのか
けれど爪が生えているのに巻きようがないんじゃないか
と聞くと違うといわれた。
じゃあ、はたけにでもまいたのかと言うと
怒られた。
「タオルを巻いたね、子」らしい。
「ね」は助詞なんだってさ
なるほど。

『春に秋休み』
595594:2008/04/10(木) 06:20:53

次のお題と書き忘れてたので、念のため。

次のお題は『春に秋休み』
596春に秋休み:2008/04/11(金) 01:26:26
「春休みの後、続けて秋休みを作るのはどうでしょうか?」
校長のこの発言に私は思わず苦笑してしまい、隣の青森先生に目を合わせた。
すると彼はまじめな顔をして言い放った。
「それはいいですねぇ。いっそ1学期の始まりはGW後にしてはどうでしょうか?」
すると他の先生方も次々とうなづきだした。私にはわけがわからなかった。みんなどうしてしまったんだ。
だが一呼吸置いて冷静になってみると、私は先生方の異変に気づいた。校長のヅラがずれてる! 滋賀先生がスッピンだ! 山口先生なんて寝癖で頭が爆発状態だ!
どうやらみんな春の陽気に当てられて寝ぼけているらしい。
「みなさん、しっかりしてください!」
私は机を思い切り叩いて立ち上がった。みんなが目を丸くして私の方を見た。
「あれ、大分先生・・・。」
どうやら気がついてくれたみたいだ。
「さっ、教師ともあろう者がそんなことを言っていたら生徒達に示しがつきませんよ! 今日も一日元気にがんばりましょう!!」
先生方にハッパをかけると、私は全裸のまま1時間目の授業に向かった。まったく、春になるとみんな気が緩んで頭が少しおかしくなるから困る。

次のお題は、「さすがプリン」
597名無し物書き@推敲中?:2008/04/12(土) 01:14:59
僕は走っていた。学校の、ツヤツヤと光る緑色の廊下を。
給食の時間だけあって、邪魔になる者は誰もいない。
後ろからは僕を追う数人の足音が迫っていた。

僕の手の中にはプリンがひとつ。
今日休んだやつの分が1つだけ余っていたのを、おかわり一番乗りで手に入れたのだ。
プリンを狙っていた他のやつらが雪崩れるように押しかけてきたので、僕は教室を飛び出した。
僕は一瞬にして逃亡劇の主人公となった。

ああ、だんだん背後の足音が近くなっている。
僕は早食いは得意だけど、走るのはそこまで得意じゃないんだ。
こうなったら最後の手段だ。
僕は階段を上りながらプリンを渾身の力でシェイクすると、踊り場にぶちまけた。
数秒の後、キュルッ、ドスン、バタン、イテェ……仕掛けは思いどうりに働いたようだ。
さすが、プリン。よく滑る。
階段の上に僕が姿を現すと、追ってきた面々が呆然と僕を見上げた。

……ところで僕はなぜ逃げていたんだっけ?





次のお題は「妖怪とギター」
598妖怪とギター:2008/04/12(土) 10:43:11
「出て行け! 出て行け! 引っ越せ! 引っ越せ!」
窓の外でババアが叫んでいる。
初めのうちは無視していたが、あんまりしつこいので窓を閉めた。だがそれでもババアのシャウトは止まらない。
もはや戦うしかないと決心した僕はギターを手に取り、大音量で演奏した。ギュワーーンという音に部屋全体が振動する。だがそれでもババアは叫ぶのをやめない。こうなったら長期戦だと覚悟したとき、
「もういいよ。ここから出て行くよ。」
と言ってぬらりひょんがコタツから立ち上がった。
ギターを弾く僕の手は止まった。言葉を探す間もなく
「ぬらりひょんが出て行くならわしも。」
と、ぬり壁も部屋から出て行った。この2匹を合図にするかのように、かまいたちやあかなめなど他の妖怪たちもこれに続いた。
こうして100匹全ての妖怪が出て行った。僕の部屋は急にがらんとしてしまった。外のババアは「お祓い終了です」と言って大家から札束を受け取ると、ベンツに乗って去っていった。
今日をもって僕の友だちはギター1本だけになった。そして次の日、家賃が2万円上がると大家から告げられた。


次のお題は「台風の片思い」
599名無し物書き@推敲中?:2008/04/14(月) 00:46:04
九州地方に上陸し戦後最大の大型台風として
日本経済、生活を停止させた台風20号は自らの力を誇示すかのごとく
より勢力を増し東へ東へと進んでいった。電線は唸り瓦は飛び新種の鳥のように
コウモリ傘が飛び交う中、東京は新宿を目下の活躍の場とすべく風を吹いている中
台風は見慣れた光景に出くわした。レポーターである。台風レポーター。
それこそが台風達の勝利の象徴であるはずだった。

新宿駅南口でレポートしているテレビクルーのほかは人々は皆
家の中に閉じこもっていたから台風はレポーターを吹き飛ばし
新たなニュースをお茶の間に提供しようとしたがレポーターはへこたれなかった。

彼はレポートしてる最中、あの北風と太陽と言う童話を思い出していた。
北風がいくら旅人のマントを吹き飛ばそうとがんばっても旅人のマントを
吹き飛ばすことは出来なかったが太陽が顔を出すと暑くなった旅人は
あっさりとマントを脱いでしまうと言う話である。もちろんこれは
愛のメタファーであるがレポーターは台風に負けたとき自分のレポーター人生で
積み上げてきたものが崩れると思った。

600名無し物書き@推敲中?:2008/04/14(月) 00:56:22
しだいに強める風の勢いに傘が飛び透明なビニールで出来た
レインコートがばたばたと音を出してもレポーターは必死で
レポートを続けた。負けるもんか負けるもんかと彼はつぶやき続けた。

気象庁の誰もが首を傾げ頭を振ったが原因はわからなかった。
台風が一週間も同じ場所にとどまることは気象学上ありえないことで
いつまでたっても終わらぬ雨と風に市民の怒号を受けても
分からないものは分からなかった。ありえないのである。
台風が一週間も同じ場所に? ありえねーと幼児化してしまうのだ。


台風は恋をしていた。あのレポーターにである。
彼が新宿駅南口に朝と晩のニュースに合わせ登場するのを
心待ちにしていた。彼の声が愛しかった。風で逆毛立つ髪が細める瞳が。
台風がしだいに勢力を落としつむじ風になったころ太陽は顔を出した。
人々はやっと顔を出した太陽にほっとしたような顔をし
やがて退屈で素敵な日常がやってきた。
台風はそれからビル街の風になってレポーターのことを
みつめているそうです。
そしていつかレポーターの心に風を起こしたいと願っているそうです。
601名無し物書き@推敲中?:2008/04/14(月) 01:00:04
次はパソコン消失で
602名無し物書き@推敲中?:2008/04/16(水) 00:13:12
 オリンピックを迎えた某年。
この年、開催都市には変わったボランティア達が現われた。
パーソナル・コンダクター。略してパソコン。個人専属ガイドとでも訳すべきなのだろうか。
 パソコン達は観光、食事、ショッピング、当然オリンピック。
常に訪問者達一人一人に随行し、そのあらゆる希望に応えるガイドを行なった。
その存在は素晴しく、訪問者達は最良の想い出だけを持ってその都市を後にした。
 しかし、パソコン達はある日突然いなくなった。
オリンピックが終わったのである。
訪問者達、多くは観光客、は又言葉にも不自由するようになった。
単にパソコン出現以前に戻っただけであるが、パソコンの存在は既に不可欠な物になっていたのである。

「あの頃は良かったな」
 俺は目的地への順路確認をする為ブレーザーの内ポケットに手を入れた。
「無い!」
携帯パソコンを無くしてしまった事に気付いた。



次のお題は「秘境深センに驚異のT-Bananaサーバー工場を見た!」
香港に程近い広東の副省級市、深セン。
深センに来て自分が貧乏であることを知った、と中国の言い習わしがあるほど
この地の物価は高く、そして豊かな階級の集まる地である。
大規模な経済特区が存在するこの地で、
中国の激増するネット人口に耐えうる帯域幅10Mbpsを誇るT-bananaサーバーが作られている。
私はそのサーバーの謎を解き明かすべく、現地に向かい製造工場に侵入した。

T-bananaサーバーの製造過程には中華思想が色濃く見受けられる。
そのHDDには太極図が描かれ、プロセッサには毛沢東の顔が刻印されているのはご承知の通りだろう。
しかし私は知ってはならない事実を目の当たりにする。
工員たちが明らかに漢民族の風貌ではない。それはどちらかというと日本人に似たチベット人達であった。
彼らは強制連行されここで労働させられているのだという。

ろくな食べ物を与えられず、タンパク質の欠乏により目の周りが黒く落ち込んでいる。
栄養失調で体が基礎的な機能さえ失い、腹が不自然にふくれている人までいる。
反抗の意思などを示せば、立ち上がれなくなるまで鞭を打たれるというのだ。
まさかこの中国の一大都市で、こんな恐ろしい世界があるとは。

この事実を知った以上、私はもうこの先長くはないだろう。
私はなんとかその工場を抜け出したが、どうやら監視の目からは逃れ切れなかったようだ。
窓の外で中国人民解放軍の軍靴の音が聞こえてきた。



つぎ 「もやしのおいしい食べ方」
604もやしのおいしい食べ方:2008/04/21(月) 00:57:35
「やっぱりゆでるのがいいよね。」
もやしをつかんだジャンが言った。
するとカトリーヌが反論した。
「ばか! ゆでちゃったらもやしのしゃきしゃき感がなくなっちゃうじゃない! ここはぜひ炒めるべきよ。」
ミカエルは二人の様子をまるで気にしないで言った。
「チリをかけてくれるなら僕はどっちでもいいよ。」
「ハハハ! そうだよな! ナタリーの作ってくれる料理はチリをかけなきゃまずくて食えたもんじゃなかったもんな! そんで今やお前はどんな料理にもばかみたいに香辛料をかけるようになったんだもんな!」
その瞬間ミカエルはキレた。
「てめえっ、ナタリーのことはどうでもいいだろ! 今はどうすれば一番もやしをおいしく食べれるかについて話し合ってるんだろうがっ!!」
二人はとうとう殴り合いを始めてしまった。

確かに、ミカエルの恋人ナタリーのことはどうでもいい。
だがそれと同じくらいもやしの調理法だってどうでもいい。
なぜならここは大西洋のど真ん中、船は沈没し、我々4人は今救命ボートに乗っているからだ。
助けを待ってすでに1ヶ月が過ぎ、残された食料はもやしだけになってしまったのだ。
ここは生き残るためにどうすべきかを話し合うべきだってのに、これだからフランス人は。

ふと気付くと3人のケンカは終わっていて、楽しそうにおしゃべりをしていた。
「ヘイッ、よく見るとこのもやし、ヒトシのおチンポみたいじゃないか?」
うるせえ!!!


→「愛のままにわがままに僕はシュシュだけを傷つけない」
605愛のままにわがままに僕はシュシュだけを傷つけない:2008/04/28(月) 14:47:02
「アイノママニワガママニボクハシュシュダケヲキズツケナイ」
こんな内容の手紙が、忠男の下宿に届いた。差出人も確かめずに何気なく文面を見て、忠男は飛び上がるように驚きの声を上げた。
なぜならば一目見ただけで、おそらく定規を使っているのであろう、一文字一文字丁寧に正確な直線で書かれているのでる。
差出人も宛先も切手も何もないから、直接郵便受けに投函しているのであろうが、それが余計に忠男には不気味に感じられるのである。
しかしその手紙を反芻しながら意味を考えているうちに、忠男には全く身に覚えのないので、なんとなく気味が悪かったがそれっきりにしてしまった。
しかし友人の一人にその話をすると、そういう物は余り良くないものもあるから、一度お祓いを受けてみてはどうかと勧められたが、忠男は少し唸って、考えておこうと云ったきりで、その話はそこで途切れてしまった。
そうしてそれから三日後に――手紙を受け取って一週間後のことである、忠男は下宿先から近い橋の下で死んでいるのが発見された。
忠男は衣服を全て剥ぎ取られ、そればかりか全身を刃物で切りつけられて、うつ伏した状態で死んでいるのを、近所の老人が見つけたのである。
警察はこの猟奇的を、残忍な強盗殺人だと発表したが、生前に手紙の話を聞いていた忠男の友人達は、声をひそめつつも、果たしてそれだけなのであろうかと首を傾げるのであった。
体のあちこちに目を覆うばかりの切り傷があるなかで、首と手だけはどうしたわけか無傷だったのである。
606名無し物書き@推敲中?:2008/04/28(月) 14:49:54
次は
生の宣告
607生の宣告:2008/05/01(木) 22:30:13
熱さが頬を伝う。
涙だった。

埃の無い部屋は、つい最近まで使われていた証だった。
僕は、ここの主がもう存在しない事を知っている。
今日ここに来たのは、つまり遺留品の片付けだった。

ふと、故人との思い出がよぎる。
――写真に写るのが苦手な僕を、彼女はいつも笑っていたっけ。
手にした写真には彼女の笑顔が写されていた。
思い出を焼き付けるのは、記憶のカメラで充分だと思っていた。
真っ白になった部屋を後にするとき、ふいに熱さが頬を伝った。

彼女がいつか言った言葉が忘れられない。

「死に涙する。だから人は生きるのよ」
608名無し物書き@推敲中?:2008/05/01(木) 22:31:57
次は「宝石の街」で
609名無し物書き@推敲中?:2008/05/02(金) 07:22:45
花盛りの森。その奥深くに建つ、彼岸花に囲まれた古い日本家屋が彼女の実家だった。
「ここには江戸時代から小さな町があったそうです」
今はもう廃墟になってしまった家々が森を囲んでいる。そこは来春からはじまる事業でダムの底に沈む予定の集落だった。
「でも、住んでいたのは祖父一人きりでした」
「おじいさん以外の人は誰もいなかったのかい?」
崩れた土塀。落ちた屋根。それらの上にはいま、長年のあいだで積もった土と、いつの頃からか根を生やしてた草木が新しい時を刻んでいる。
「言い伝えでは、一夜のうちに集落の全員が死んでしまったのだそうです」
一夜のうちに。
「残ったのは私の家でした」
森の中の家に。
「そんな、ことは」
あるのだろうか。
「寄生虫が原因ではないかと、図書館の資料にはありました。ちゃんとした記録がないんですね。わらべ歌では『山向こうに嫁ぐ娘は親の死に目に会えない』なんて文句が残っているそうです。皮膚が黒ずんだり、腫瘍ができて死んでしまうから。ほら――」
彼女が指差す方には、円形に石を積んである祠のようなものが見えた。その上に石の蓋のようなものが乗せられており、その蓋は重くて動かせそうにない。
「井戸のあとです。水が、川の水もそうなんですけど、寄生虫を媒介させているのではないか、と考えられていたようです。でも、ここで暮らすには飲むしかなかった、と資料にはありました」
山に囲まれたこの土地では、他から水を引き入れることは困難なのかもしれない。
「君も、ここで暮らしていたのかい?」
僕の問いかけに、彼女は薄く笑った。
「いいえ。本籍だけここに。祖父も一緒に暮らすように誘ったんですけど」
彼女の祖父はそれを拒み続け、病院で息を引き取るまでの限界までここで暮らしたのだそうだ。
「ずっと一人で暮らしていたんだね。心細くなかったんだろうか」
僕は言った。
「祖父は、守っていたんだと思います」
610名無し物書き@推敲中?:2008/05/02(金) 07:23:24
「守るって──」
それには答えずに彼女は家の裏手にまわり、勝手口の木戸をあけて土間へ僕をいざなった。そこは埃とカビとがない交ぜになったような香りと、それでいて不思議と清浄な空気が同居する場所だった。幽かに、風を感じる。
「ここです」
彼女が土間の奥の鎧戸をガラガラとあけると、そこには地下へ続く階段があった。風はそこから吹いていた。僕らはそれから階段を下り、そして奇妙な洞窟に辿り着いた。
「見てください」
彼女が手に持っていたのはブラックライトだった。それまでつけていた懐中電灯を消し、洞窟の壁を照らす。すると壁面は青白く幻想的な灯りでいっぱいになった。
「すごい。なんだい? これは」
「ほたる石が多く含まれているんです」
彼女は言った。その横顔は青く悲しげで、白い地肌のせいか幽鬼のような美しさをいっそう際立たせていた。
「おじいさんは、これを」
「ホタル石の含まれるこの地層には石英やトパーズ。そして硫砒鉄鉱がよく出ました。他にも酸化鉄、硫酸銅、水銀。そんなものの鉱脈だと聞いています」
彼女はいくつかの聞いたことがないような鉱物の名前を続けた。
「たとえ寄生虫が原因だとしても、一夜のうちに数十人が死ぬなんてことがあるでしょうか」
「え──」
「酸化鉄、硫酸銅、硫化水銀、そして硫砒鉄鉱を用いて昇華させる特殊な製法があるそうです」
壁の青はいよいよ凄みを増し、僕は遠く宇宙の彼方に浮かんでいるような錯覚を覚えた。
「決められた分量を坩堝に入れ、圧力をかけて加熱し、鴆毒(ちんどく)という秘伝の薬を作る。それを生業にしていた集団があったそうです」
それは──
「かつてその製法を守り続けていた集団は一夜のうちに死に絶え、そして私の家だけが残りました。祖父は、その製法を知る最後の一人だったのだと思います。
いまはもう珍しくもない薬なのかもしれません。でも、ずっとここで守っていたんだと思うんです。その秘伝の薬は、いま亜ヒ酸と呼ばれています。」
その毒は、共用の井戸に入れられたのが最後の使用記録でしょう。と彼女は言った。
「全部、沈んでしまうんでしょうね」
彼女は短くそう言って、灯りを消した。
まだ弱い光を残した宝石たちは、そこがこのさき失われる非日常の世界であるということを僕らに告げていた。
611名無し物書き@推敲中?:2008/05/02(金) 07:26:39
次は「たまごかけご飯と少女」で
612名無し物書き@推敲中?:2008/05/02(金) 07:51:40
長すぎた?
613「たまごかけご飯と少女」:2008/05/02(金) 17:10:57
机の中を整理していたら、高校の頃のスケッチブックが出てきた。
懐かしさを覚えながらページをめくり、やがて1枚の絵で手が止まる。
そのタイトルは「たまごかけご飯と少女」
当時仲のよかったクラスメートをモデルに描いたものだ。
彼女は母親との仲が悪く、食事もろくに作ってもらえなかったらしい。
その為、食事代をもらえる昼食以外はいつもたまごかけご飯で済ませていたのだ。
そんな生活をしていたらいつか体を壊すと心配する私をよそに、「へーきへーき」といつも笑っていたのを覚えている。
……
私はスケッチブックをめくり、まだ何も描かれていないページに絵を描き始めた。
モデルは彼女とその娘。
タイトルは「ポテトチップスと少女」



次のお題「水色の思い出」
614ところてん:2008/05/02(金) 17:53:45
僕は今年で中2。宿題しているときに思った。
『水色のクレヨンどこ行ったのかなあ』
彼は小2のとき山でスケッチしたとき川に水色のクレヨンを落としたのだ。
何かに呼ばれた気がして近くの川に向かった。
そこには僕の名前が書いてあるクレヨンがあった。
6年ぶりの再会。
なぜかクレヨンが6年ぶりに見つかっただけなのに泣いた。
今までで一番泣いた。



その日ぼくはそのクレヨンを使ってスケッチをした。
そしてそのクレヨンをクレヨンのはこにしまった。


次「スマブラXキャラのかくれんぼ」
615名無し物書き@推敲中?:2008/05/02(金) 22:37:39
スマトラ島沖2キロの地点に落下した隕石は、その日の僕の予定を折りよく全てキャンセルさせてくれた。とりもなおさずス
マトラへ向かった僕だったが、相棒のカメラマンとスーツケースを事務所においてきてしまい、ほうほうのていで戻ることになる。
ブナに囲まれたその家に辿り着いたのは、日もすっかり落ちてしまった現地時間の19時だった。電力が停止したそこはか細い
ランプの灯りひとつが照らすファンタジックな世界だった。
X地点はスマトラ沖、南へ2キロの群島地帯。急角度で海面に落下した隕石は爆風と津波をわずか2分で海岸線まで運んだ。
キャンプ暮らしを強いられる住人は島民の実に60%にのぼり、残りの住民で幸福な者はインドネシア、ボルネオ、そして東ジ
ャワ島へ輸送ヘリで送られる形となった。私はそのままスマトラの友人の家に上がりこみ、文明から隔絶した生活のなかで過ごした。
ラジオから流れるかすかな緊急放送のなかに、行方不明者扱いをされている私の名前を聞いて笑い転げたのは今でも覚えている。

次「新築だったのに!」
616新築だったのに!:2008/05/02(金) 23:52:22
新築だったのに!!なんてことをしてくれたんだ!!
これを建てるまでにどんな苦労があったかなんて、お前らまったく分かってないだろう!
この色使い、形、細部までこだわった俺の気持ちなんて…!!
一瞬で台無しにしてくれやがった!
同じものなんて、もう二度と作れやしない!!
ちくしょう!!!
この…この…やり場のない気持ち…どうすればいいんだーーー!!!



「パパ、はるお(1才)が泣きながら怒ってるわよ。謝ったら?」
「ごめんごめんはるお。せっかく作った積み木のおうち、壊しちゃってごめんな?
 上手に出来たのにな〜〜ごめんな〜」



次のお題は「こいのぼりの背中に乗って」
617こいのぼりの背中に乗って 一:2008/05/03(土) 08:38:47
猫のポチの姿が今朝から見当たらない。腹が減った腹が減ったと、腹を出し寝る私の口と鼻を、肉球で器用に押さえることによって起こす毎朝が、今朝は訪れなかった。
その代わりに、私は毎朝のように生死の狭間から苦しみあえぎ目を覚ますという、拷問のような寝覚めを体験せずに済んだのだが、
いかせん毎日続いていたことだったので、朝食を一人済ませ、歯を磨き、昨晩の内に予約しておいた洗濯物を干し、
部屋の掃除を終えて、優雅にコーヒーを飲んでいる最中に、私はポチのことを少し心配した。
一体、どこへ行ってしまったのだろうか。私は部屋の中を探すことにした。
三分後、めぼしい場所にいなかったので、捜索を打ち切った。まあ、その内に帰ってくるだろう。私は一時間後に迫った正午調度に食べられるよう、昼食の準備をすることにした。
ふと、ポチの器に貼り紙を見つけた。猫語で、探さないで下さいと書いてあった。文末に、ポチの足形。短い文とその足形にポチの決意を汲み取った私は、冷蔵庫からもやしを取り出し、煮ることにした。今日のお昼の一品目。もやしのナムル。
618こいのぼりの背中に乗って 二:2008/05/03(土) 08:41:14
まな板の上で鶏肉を捌いていたら、小さく声が聞こえた。どうやら外かららしい。私は目の前にある出窓を開けて、外の様子を眺めてみた。
気持ちのいい青空が広がっている。陽射しは穏やかで、絶好の散歩日和のような気がした。よし、明日は一日中部屋で寝て過ごそう。私は決心した。
と、また、小さく声が聞こえた。どうやら、たなびくこいのぼりから聞こえているらしい。私はぼんやりとこいのぼりを見た。とても、気持よさそうに空を泳いでいる。
きっと、彼らなら今すぐにでも龍に成れるだろう。力強く輝く瞳と、風に立ち向かう強靭な肉体が、私にそう確信させた。
さて、私も頑張りますか。
気持ちを切り替えて、私はまな板に向かう。おいしい昼食のために、私は頑張らねばならないのだ。
小さく声が聞こえる。こいのぼりの背中に、猫のような陰を見た気がしたが、多分気のせいだと思う。


次のお題
『梯の主』
619名無し物書き@推敲中?:2008/05/03(土) 11:16:27
幼い頃の私は色々なものの声をよく聞く子供だった。
あぜ道をとおる学校の帰り道には風の音の中に優しげな声を見つけ、まだ燻る夕餉のあとのかまどの火
には思慮深い老人の声を聞いた。
家に古くからある古い梯子もまた私に何かしらを告げるひとりだった。
寒くなる時分の子供の仕事でもある、庭の柿の木の実を竹の棒で折り取るとき、その梯子は実にさまざま
なことを私に語って聞かせるのだった。
明日の天気からはじまり、隣の家の婦人が日ごろへそくりをどこに隠しているかなど。子供の頃の私には
どれもすこぶる面白く、飽きもせず半日のあいだ柿の木のたもとで竿を振り続けたのを覚えている。私は
その声をハシゴノヌシと呼んでいた。
ひのきで作られた簡素なその梯子は、私が高校生になるくらいにはすっかりガタがきてしまっていて、油
も抜け落ちて上るとギシギシと音をたてるようになってしまっていた。
それは私にとって体の成長を感じさせるとともに、取り戻せない原風景を否応なく感じさせるのだった。
酷く、悲しかったのを覚えている。
その頃、梯子はアルミ製の立派なものが使われるようになり、近所の子供がハシゴノヌシを使うのを見て、
壊れて怪我をしてはいけないと、父親が心配していた。
冬の大掃除が忙しかったある日、紙くずなどを家の裏で燃やしていると、農作業の道具が置いてあるあ
たりを見た父が「もう、梯子も燃やしてしまうか」とボソリと言った。
その瞬間。
620名無し物書き@推敲中?:2008/05/03(土) 11:17:40
鍬や鎌などが置いてある小屋からけたたましく乾いた音をたて、わら束と干した大根をあたりに散らして
ハシゴノヌシが躍り出たのだった。片手を僕に向けててのひらを見せ、まるで「じゃあな」とでも言いたげ
な格好をしたかと思うと、物凄い速度で家の前の道を駆け抜けていった。
「捕まえろ!!」
父が叫んだ。
僕も兄もすぐさま走って追いかけたのだが、ハシゴノヌシの脚力は凄まじく、車ですら追い抜いて行って
しまったのだった。結局ハシゴノヌシは僕に何も言わず、そのまま走って遠くの町へ消えていった。
それから三月が経ったある日、意外なほど達筆な字で手紙が届いた。文面には住所も何もなく、ただ
「元気でいます。探さないでください。いつまでもいつまでもお元気で」とだけ書いてあった。
父はお茶を飲みながら、そういうこともある、と言い。母はお金はあるだろうかと心配していた。
それから五年が経った頃、今度は写真入りの手紙が届いた。大阪の町工場で働いていた僕は母から
知らせを受け、急いで実家に戻るとやはり兄も戻っていて、みんなでその写真を見た。
写真にはハシゴノヌシの隣にもう一つの同じような梯子があり、そしてその見慣れない梯子は腕に小さな
梯子を慈しむように抱いていたのだった。そこには住所もちゃんと書いてあり、いずれご挨拶にと書き添
えてあった。
父はそれを読むと無言で滅多に飲まない酒引っ張り出し、奥の間に引きこもってしまって翌日の朝、目を
まっかに腫らして出てくるまで誰とも会おうとしなかった。
母はさっそく産着と靴下を毛糸で編むといって忙しそうに道具を集めていた。兄はまさか梯子が逃げると
は思わなかったよと、嬉しげに僕に話した。
そして僕は誰にも言わなかったハシゴノヌシとの思い出を、日が暮れるまで家族に教えて聞かせたのだった。

次「連休中にした、あるとんでもない約束事」
621連休中にした、あるとんでもない約束事:2008/05/04(日) 21:28:05
約束したのに。
 彼女はそう言って、僕の目の前で泣いた。
 まだまだ僕らが子供だった頃、連休といえば家族でどこかに出掛けるのが当然で、だけどその時は親の仕事の都合でどこにも連れて行ってもらえなかった。
 不貞腐れて家を出て、道端で石を蹴飛ばしていると彼女に出会った。
 「なんで泣いてるの?」
 不愉快極まりなかった。その時神経がささくれ立っていたのもあるんだろうし、実際に僕の目から涙は流れていなかった。男とってその言葉は最大の侮辱だと子供ながらに妙なプライドを持っていたし、彼女が笑っていたのも気に食わなかった。
 「泣いてるわけないだろ」
 出来るだけ無愛想に、怒ってるんだぞ、という気持ちを精一杯込めてそっぽを向く。
 彼女はそれでも笑っていた。
 子供の沸点なんて低くて、その態度に僕はあっさりと爆発した。
 「何笑ってんだよ!」
 思いっきり突き飛ばした。加減なんて知らなかった。小さな女の子の体が耐えられるはずもなく、あっけなく地面に倒れてすりむいた膝小僧からは血が流れた。
 そこまでするつもりなんてなかった。
622連休中にした、あるとんでもない約束事:2008/05/04(日) 21:28:29
血を見てすぐに慌てふためいてしまった僕をよそに、彼女は顔を歪めて僕を見上げる。
 泣くな、と思った。
 どうしていいか分からなくて、混乱した頭で口走った言葉は、
 「な、泣くな!」
 身も蓋もない、馬鹿丸出しの発言だったと今でも思う。
 でも、彼女は唇を噛み締めて、泣くのをぐっと堪えてくれた。
 「分かった。約束する。泣かない。だから、泣かせないで」
 「わ、分かった!」
 「ほんと?」
 「お、おぅ! 男に二言はない!」
 全くもって安っぽいプライドの為に無茶な約束をしたものだと思う。
 それから数年、お互いに約束を破ったり破られたりしたけど、今もまだ約束は続いている。
 何度も何度も、約束を破るたびに、新しい約束を結びながら。


次のお題は、「夢にみたモノ」で。
623ところてん:2008/05/05(月) 18:28:23
夢に出てきたカレー食べたい。
その思いから壮絶なぼうけんが始まった

次「通天閣母と私とどきどき父」
624通天閣母と私とどきどき父:2008/05/06(火) 21:49:34
通天閣に母と私と父と3人ででかけた
父は緊張しっぱなしだった



襖の奥から
625名無し物書き@推敲中?:2008/05/06(火) 23:12:08
柔らかで暖かい彼女の手が僕の首に触れ・・・暖かな吐息感じながら
溶けて行くかのような感覚に包まれ、薄れゆく意識の狭間
僕の瞳に映るのは襖の奥から覗く赤い瞳。

飛び出した猫がチリンと鈴を鳴らしながら、一瞬だけ僕を見てニャアと鳴いた。
瞳の赤い猫は、血を飲むのが好きらしいと聞いた事を思い出したのは一瞬だった。

瞬間、冷たい切っ先は僕の何かを切り裂いていた。


次のお題
「キレてないっすよ」
626キレてないっすよ1:2008/05/07(水) 01:30:56
  きよ子は悩んでいた。
 自分のことが手につかなくなるほどに。
 ふと見ると時計の針は夕方の5時を過ぎようとしていた。
 夕飯の支度に取り掛からなければ、すぐにお腹をすかせた子供たちが帰ってくる。
 もやもやしている自分に気合を入れるように、腰に巻いたエプロンをもう一度きゅっと結びなおす。
 今日の献立は煮魚、根菜の煮物、大根の味噌汁。
 一家の台所を支える主婦として、料理には少し自信がある。
 手際よく用意を始め、調理に取り掛かっていく。

 キレてないっすよ…。

  あの人の言葉が頭の中で何回も反芻される。
 いくら消そうとしても、記憶の沼の底から何回も浮き上がってくる。
 あの人は確かに怒っていた。
 私が、ずっと嘘をついていたから。
 その嘘が、今日あの人にばれてしまった。
 私が…結婚していた、ということ…。
 最低な自分。家庭もあの人も裏切っているのに、こうして良妻賢母を装いながら
 家族のために夕食を作っている。
 なんて滑稽で汚れた姿なのか。
 そんな思いとは裏腹に手は動き、どんどん料理は出来上がっていく。
627キレてないっすよ2:2008/05/07(水) 01:32:13

「ただいま〜あ〜腹減った〜」

 どやどやと玄関が開いて、食べ盛りの2人の子供たちが帰ってきた。
「母さん今日のご飯なに?」
 今日は…と言いかけて、玄関から「ただいま」ともう一つ声がした。
 どうやら子供たちに続いて夫が帰って来たらしい。
「おかえりなさーい」
 子供たちの嬉しそうな声がする。
「いい匂いだな」
 言いながら夫が台所に入ってきた。
 きよ子は目を合わすことなく「お帰りなさい…お疲れ様でした」と小さな声でつぶやいた。
 あわただしく支度するきよ子の後ろから、突然ぽりっと何かをかじる音が聞こえてきた。
 振り向くと、夫がテーブルの上に置いてある浅漬けをつまみ食いしているところだった。
「きよ子」
 食べながら夫が再び浅漬けに手を伸ばす。
「これ…キレてないっすよ」
 言いながらにやりと笑った夫は、薄皮一枚を残してキレイに繋がったきゅうりを
 きよ子の目の前に差し出した。



 次のお題は「マルチビタミン」





628マルチビタミン 1/4:2008/05/07(水) 02:21:26
「うん、今日もバッチリ」
 毎日、朝と晩、私はマルチビタミンを飲む。
 その習慣は、高校一年生の夏から。
 ニキビが……出来たから……
「早く、直らないかなあ」
 それが、今の私の一番のネガイだった。
「悩んでることあるの?」
 そう、声をかけられたのは、一週間前の夜。
 日をまたごうとする、駅前のロータリーでだった。
「え?」
 怪しい人とは、関わっちゃイケナイのに。
 怪しい人は、無視するベキなのに。
 つい、私はそう答えてしまった。
「何か、悩んでること、あるんじゃないの?」
 そう言って暗がりから歩み寄ってきたのは、
 真っ黒なスーツを着た、背の低い、男だった。

 無視して、早足で歩き去ろうとする私を引き止めたのは、
 その男のコトバだった。
「病気、交友関係、恋愛事、お肌のトラブル、どんなことも解決するよ」
「え?」
 また、私は答えてしまった。
 そのとき、走って逃げるベキだったのに。
 そのとき、叫んで助けを求めるベキだったのに。
「そう、悩んでるんだ……」
 そのコトバが悲しそうに聞こえたから。
 そのコトバが嬉しそうに聞こえたから。
 私は、つい、その男の前で足を止めた。
「どうして、分かったの?」
「何のことだい?」
「……肌のこと」
 男は、答えず、ニッコリと、笑った。
629マルチビタミン 2/4:2008/05/07(水) 02:22:18
 その男がスーツから取り出したのは、ただのマルチビタミンだった。
 私が持ってる、市販の。
 だから、安心してしまったんだ。
 だから、気を抜いてしまったんだ。
 受け取っちゃいけないのに。
 もらっちゃいけなかったのに。
 私は、それを、受け取ってしまった。
 タダだったから。
 無料だったから。
 何の見返りも求められなかったから。
 それを受け取った私を、男は、ただ、ニッコリと見つめるばかりだったから。

 「でも、確かに、あれを使いはじめてから調子が良いな……」
 ただの市販品のはずなのに。
 でも、確かに、その効果はあるような気がする。
 乾燥がちだった肌はしっとりしてきたし。
 ニキビも、確実に減ってる。
 「何か、違うのかな」
 良くなってきた自分の肌を鏡で見て、うっとりとそう漏らした。
630マルチビタミン 3/4:2008/05/07(水) 02:22:47
 一ヵ月後。
 謎の男からもらったマルチビタミンは、もう底でカラカラと音をたてていた。
 「一週間前からずっと探してるのに」
 ツルツルになった肌を鏡越しで見つめて、そう吐き捨てるように呟いた。
 私は、それが無くなるのが恐ろしかった。
 怖かった。
 また、あの汚い私に戻るのが。
 また、あの醜い私に戻るのが。
 だから、男を探した。
 出会った場所を。
 出会った時間帯に。
 でも、男は見付からなかった。
 「今日の分で、最後だ」

 その晩、怖くて怖くて。
 恐ろしくて恐ろしくて。
 あの場所に、あの時間帯に、まるでそれが習慣であるかの様に、私はそこへ向かった。
 そして、男は見付かった。
 あの場所で、あの時間帯に。
631マルチビタミン 4/4:2008/05/07(水) 02:23:19
 「あの! 一ヶ月前にここで会った者ですけど!
  あの薬はもう無いんですか!?
  お金ならもって来ました!
  足りないかもしれないですけど、
  もっと必要なんだったら払います!
  いくらでも、払います!
  だから、あの薬を、あの薬を私に下さい! 」
 いっきに詰め寄った私を、男は醜いものでも見るかのように、
 ただ、気だるげにあしらった。
 「なんですか、このブタさんは」
 「あの! だから! その!」
 男の放った何かに私は飛びついた。
 それは、腐ったリンゴだった。
 地面に落ちて汚いのに。
 醜く、私はそれを貪った。
 まるで、ブタであるかのように。
 それが、ブタであることの証明であるように。
 男は、ただ、ニッコリと笑っていた。

 ――マルチブタミン


次のお題は「たんこぶ」
632名無し物書き@推敲中?:2008/05/07(水) 10:02:18
こんのぉー!
彼女はおどけて僕の頭をコツンと叩いた。
可愛い・・・やっぱり彼女の笑顔は最高だ。

翌朝、目を覚ました僕は病院にいた。
なんだか頭に違和感がある・・・
隣に立っていた看護師さんが「おはようございます、今日は18cmです」
定規を持って僕の頭部に当て何やら計っていた。

ふとTVの声が耳に入ってくる。
「昨夜未明、○○市の自宅で首を釣っている少女の遺体が発見され・・・」
「解剖の結果、肥大たんこぶウィルスに感染していた事が発覚しました」
「これで肥大たんこぶウィルスの被害者は・・・」

次のお題
「アッー!チョッポレチョッポレー!」
633名無し物書き@推敲中?:2008/05/08(木) 02:13:18
「アッー!チョッポレチョッポレー!」
やれやれ。俺は溜息をつくとあどけない顔をした
電柱のような大男を見上げOKOKと言って隣に座る大男の肩を叩こうとして
腕が攣った。

昨日、会社に行くと上司のデスクの横に身長2mを超えるかというほど
大きな黒い男が立っていた。上司は俺を手招きすると早口で彼の指導と生活の
面倒を見るようにと言う。なんでも大男の国に眠る資源を掘り起こす
プロジェクトが始まったそうで、その大切なお酌様として会社が受け入れたそうである。

上司は机の上から二冊の辞書を持ち上げると俺に渡し
「じゃあ、あとは頼んだよ」とだけ言いわざとらしく立ち上がり便所に向かったが
それは嘘だろう。上司は休み時間にしか便所に行くなというほどの仕事熱心な
前時代的男でそれを部下に言うだけでなく自分でも実行していたからだ。
俺は舌打ちし渡された辞書と大男を見比べる。
二冊の辞書は和英辞書と英語から大男に分かる言葉に
翻訳するのであろう辞書でつまり二段階を経て大男と意思の疎通をしなければ
ならないことを意味していた。上司は俺が学生時代、バリにサーフィンに行くといったのを
苦々しく思っていて、こんな役目を俺に押し付けたのだろう。そうに決まってる。




634名無し物書き@推敲中?:2008/05/08(木) 02:14:09

「アッー!チョッポレチョッポレー!」
「アッー!チョッポレチョッポレー?」
「アッー!チョッポレチョッポレポリポリ!」
「ポリポリ?」
「ポリポリ!」

そう言うと大男は服を脱ぎ始めた。大男に
羽交い絞めにされながらズボンを下ろそうとする手を振り解こうとしていると
辞書を取った女子社員が絶望的な眼差しで俺を見つめ十字を切った。
俺が昼休みに机に突っ伏して泣いていると女子社員がやってきて
辞書を見せた。そこでチョッポレチョッポレーの日本語訳が「私はホモで今すぐここで
交わろう」という意味だと知った。
635名無し物書き@推敲中?:2008/05/08(木) 02:19:10
NEXT→

「なついあつになるでしょう」
636名無し物書き@推敲中?:2008/05/08(木) 18:32:02
「なついあつになるでしょう」

六月のはじめ、すこし暑くなりはじめた日差しの下に私は立っている。
「ダジャレ、みたいだよね」
傍らに立つ細身の青年にそう声をかけた。
「ごめん」
申し訳なさそうに彼は言った。
同い年の幼馴染。私が大学を卒業して東京で就職し、些細なことから嫌気がさして実家に舞い戻ってきたときに再会した。
過去については何も聞かず、毎週の休みには飽きもせず野山の散歩に付き合ってくれ、場末の映画館で私好みのおかし
な映画を見るのに付き合ってくれたひと。いつも気難しそうな顔をして、気の利いたことのひとつも言えないひと。
子供の頃「あっちゃん」だった私はいまや一通りの世間に揉まれ、立派にすれっからしになった。田舎に戻ったときの彼は昔
の夏井君のまま。あいかわらず何を考えているかよくわからない。しかし昔とかわらず、私がつらいときにはお菓子をくれた。
「大きな冷蔵庫が欲しいの」
それは唯一の私の希望だった。いつも美味しいものを作ろう。今までのお菓子のお礼をしよう。
そう思っていた。
今月、式を終えて新居ができたら私たちはここで暮らす。そうしたらもう旧姓で呼ばれることはなくなるだろう。まだ工事中の
新居の塀には、新しい表札がかかっている。

夏井 良樹
    篤子

私は今年から夏井さんトコの篤子さんになった。子供の頃、同級生にからかわれた通りになった。
「アツはナツくなりそうだね」
不意に、彼がそう言った。
そうねと答えた私は、しかしたっぷりと時間がたってから、ひょっとしてさっきのは冗談だったのだろうかと思いなおし、慌てて
彼を振り返った。
「や、やっぱりダジャレみたいだよね!」
「ごめん」
精一杯、元気よくそう言ってみるものの、彼は俯いて眼鏡をなおしながら、すまなそうに言った。

⇒次「たいへんだ!空からあんなものが!!」
637「たいへんだ!空からあんなものが!!」 :2008/05/09(金) 20:20:59
「たいへんだ!空からあんなものが!!」
「たいへんだ!海からもあんなものが!!」
空と海とがあんなことやこんなことをして。
そして。

十月十日後、月が産まれた。


→次「出窓のネコ」
638名無し物書き@推敲中?:2008/05/10(土) 10:56:57
 ロシアの道を歩くときは気をつけなさい、いつ出窓が落ちてくるか分からないから。
 宿のオバハンはそう俺に警告した。さすがに冗談だろうと思っていた。翌日実際に
街路を歩いて、親切な人から「建物に寄るな」「そこはこっちを通りなさい」と指導を受けても、
まだ俺は半信半疑だった。よくあるじゃないか、誰でも知ってる外国人向けのジョークって
やつ。これも結局それだろうよ。
 しかしある交差点にさしかかったとき、俺はロシアをなめていた自分を後悔した。
信号のある大きな通りの向こう側、下り坂になった道路沿いに建つアパートメントの
上の方で、大きな出窓が急にもろりと壁から離れるのが見えた。そこより下の階の
壁は平面である。剥がれた出窓は橋から落ちる人のように恐ろしい勢いで加速し、
地面に向けてまっすぐに落下していった。あっ、やば(い。
 そのとき小さな影が動いた。坂の下に広がるくすんだ街並みを背景に、一匹の黒猫が
ぱっと四肢を広げて出窓の中から浮き上がると、モミジの葉のようにくるくる回転しながら
自分の住処の少し後を追いはじめたのだ。俺は馬鹿みたいに口を開けてそれを見ていた。
一瞬ののち、出窓はどちゃりという音とともに路上に砕ける。さらに一拍おいて黒猫は
着地体制を整え、四つ足をついてひらりと残骸の上に舞い降りた。付近の人が皆猫に
注目していた。黒猫はそれに気づいたのか、首を挙げて一瞬辺りを見回すと、得意げに
尻尾を立ててつつつと建物の中に入っていく。飼い主の元へ戻るのだろうか。
 足を止めていた通行人達も、何事もなかったようにまた歩き出す。その間数秒。残骸は
持ち主が片付けるのだろうかとしばらく見ていたが、結局アパートの中から誰も出ては
こなかった。
 その晩、俺はオバハンに昼間見た事件の一部始終を話した。そしたらオバハンうんうんと
頷いて、俺にこんなことをいったんだ。
「これであそこの道は安心して歩けるわね、よかった」
 ああロシアよ母なる大地、父なる行政。日本に生まれて本当によかった。

→次「金の尻銀の尻パールの尻」
639名無し物書き@推敲中?:2008/05/10(土) 11:22:21
森を彷徨っていたヘデルとグレテルは、開けた泉に出た。
「ヘデル兄、オイラはここでひと休みしていくぜ」
そう言ったグレテルは、ヘデルに断わりも無くウンコ座りを決め込んだ。
「グレテル、それはないよー休んでる間に日が暮れたら、獣の餌になっちゃうよ」
溜息を付きながらヘデルはグレテルに諭しかける。
「いいじゃねぇか、ヘデル、疲れたんだよ喉も乾いたし、ちょっと泉の水でも飲んでいこうぜ」
グレテルは泉に向かってがに股歩きを決め込んだ。
泉はとても美しく、まるで心を見すかされされそうな程に透き通っている。
グレテルはその澄みきった泉にしばらくみとれていた。

「グレテルー」
その声にはっとして我に帰ったグレテルは振り返ったまま地のヌメリに足を取られてケツから泉に突っ込んでしまった。
あいにく浅瀬であったため、お尻が濡れるだけで済んだものの、その気持ち悪さにグレテルは呻きをあげる。
「あーあ」
ヘデルは、やっちゃったと言う顔をしてグレテルに駆け寄った。
尻を気にしながら更にがにまたの度を増したグレテルに手をヘデルが差し伸べた瞬間だった。

泉の中央にザッパーンと水しぶきあがり、白髭を貯えた老人が現われ、話しかけてきた。
「お主らのおとしたのは、金の尻、銀の尻、パールの尻、どれじゃ?」

グレテルは答えた。
「俺の尻です!」
それを聞くと老人は、「宵良い、正直なこわっぱじゃ、そんなお主等には儂の尻を捧げよう!」
グレテルは身動きが取れなくなって、泉の真ん中に引きずり込まれていった。
アッー!老人の声が泉の中からこだまする。
そうしてヘデルは一人になった。

次のお題「見ろやこの筋肉、カッチカチやぞ!」
 おかん
 おかんは強い。
 おかんはいつも家族を守ってくれる。
 頼もしい。
 いつも明るくて太陽みたいな笑顔。
 大好きだ。

 そんなある日の夜中、トイレで目を覚ました僕は、鏡の前に立っているおかんを見つけた。

「見ろやこの筋肉、カッチカチやぞ!」

 夜中に、鏡に向かって腕を突き出して、誇らしげに何度も何度もそうつぶやいていた。
 その筋肉は男性のように見事に盛り上がり、まるでちょっとしたボディビルダーのようだった。
 ああ…カッチカチや…確かにカッチカチや…。
 
 翌日、母の日もが近いこともあって、街にプレゼントを買いに行った。
 ひとしきり悩んだ末に「これや」と思うものが見つかり、購入し、家に持って帰った。

 「おかん、いつもありがとう。これ…母の日のプレゼント」
 
 そう言って僕が差し出したプレゼント。
 ダンベルとプロテインのセット。
 おかんは一瞬、驚いた表情をしたが、すぐに満開の笑顔で答えてくれた。
 
 「ありがとう。もっと頑張って筋肉カッチカチにするわ!」


  次「ご飯派?パン派?」

641名無し物書き@推敲中?:2008/05/10(土) 14:14:58
早朝、街灯アンケートを受けた。
あなたは、ご飯派?パン派?
昨夜、親子丼を決め込んできた俺は、ご飯派と答えた。

次はサンドイッチを食したい。

次のお題
「マムシドリンコでビックビク」
642名無し物書き@推敲中?:2008/05/11(日) 04:15:46
「マムシドリンコでビックビク──なんだい? こりゃ」
手渡されたしわくちゃのメモを見ながら私は彼にそう質問した。
信州のとあるプチホテルの一室。男がじゅうたんの上に横たわっている。友人の鑑定では死後半日といったところらしい。
渡されたメモはさしずめダイイングメッセージというわけだ。
「現場に残されていた被害者のメモらしいよ。被害者の友人の証言では筆跡に間違いないらしい」
大学時代の旧友と久しぶりに旅行としゃれ込んだ結果、どうやら殺人事件の現場に出くわしてしまったらしい。友人は刑
事という職業柄、こういったことにはなれているのかもしれないが私はそうではない。普段見慣れない死体というモノに興
味はあるものの、近寄っていって調べようという勇気は無かった。
「テーブルには飲みかけのコーヒーカップと、手がつけられていないカップがある。おそらく、犯人が毒か何かを混入させ
て殺害したんだろうね。犯人はコーヒーには手をつけていないようだ」
「すると、やはり顔見知りの犯行というわけかい?」
そう私は質問した。友人は困ったような顔をしてうなづき、そしてドア側に立つ3人を見やった。
「そう、考えるのが自然だろうな。毒物の香りはカップに残っている」
「そんな! じゃあ刑事さんは私たちの中に犯人がいるって言いたいの!?」
三人組のうち、一人の女性が声を荒げる。
「確かに顔見知りは俺たちしかいないけど──そんな」
残りの男性二人も困惑した顔つきだった。
「彼らは大学の同期。同窓会もかねてここに旅行に来たらしい。被害者は製薬会社社員。同期では一番の出世頭だそうだ。
ちなみにマムシドリンコというのは勤め先の新商品で、ある種の強壮剤だということだが、一応我々も含めて全員に犯行は
可能だ。面倒だが聞き込みにはつきあってもらう形になるな。いや、しかし──いや。やっぱり一応聞き込みは重要だろう」
なにやら言いにくそうな友人を見るにつけ、彼の頭の中には既に犯人の目星がついているのだろうと私は想像した。
643名無し物書き@推敲中?:2008/05/11(日) 04:20:14
かくゆう私も何となく彼の言わんとすることはわかるつもりだ。だが。だがしかし──そうは言っても。そうは言っても、なのだ。
「確かにそうだな。見た目だけで犯人を決めてしまうのは、その、あまりに短絡的というか──そのまんまというか」
私がそう言うと、三人組のうち一人の青年が青筋を立てて反論する。
「そ、それじゃあ犯人面のヤツが犯人とでも言いたいんですか!!」
おっしゃるとおりだ。しかしそうではないのだ。そういう事ではないのだ。
「それはおかしいんじゃないんですか! 顔で犯人がわかるならみんな整形しますよ! そうでしょう!? 刑事さん!!」
さらに青年は言いつのる。もう私も、そして私の友人も青年を見ることが出来ない。顔を下に向け、見ないようにするしかない。
「どうなんですかっ!!」
彼の顔が犯人面というわけではない。
しかし。あぁ、だがしかし。彼のスラックスの内側にあるであろうソレは、はちきれんばかりに怒張しているのだった。
もう、形がズボンの上からでもくっきりとわかるくらいに。

次「瓶詰めの中身は」
644瓶詰めの中身は:2008/05/11(日) 19:33:11
 父さんがお土産にと買ってきた蛇焼酎をこっそり飲もうと、深夜ひとりで棚の扉を開いた時だった。
「なんじゃ、お前は?」
 瓶の中の蛇がしゃべりやがった。
 驚いたぼくは、とにかく棚の扉を閉めた。結構豪快な音が出た。ぼくは扉の取っ手に手を添えたまま、ばくばくと鼓動を繰り返す心臓の音を聞いた。
「おい、いきなり閉めるとはどういう了見なんじゃ己は」
 扉の奥から、またあの声がした。ぼくは慌てて扉から手を離すと、急いで自分の部屋へと逃げ帰った。なんだあれは? 一体何が起きたんだ?
 布団の中に潜り込みぼくは懸命に頭を回転させた。けれど一度混乱した頭がまともに状況を整理できるはずなんてなく、その夜ぼくは一睡も出来ないまま朝を迎えてしまった。
 恐る恐る昨夜逃げてきたリビングに向かうと、そこにはすでにキッチンに向かって朝食の準備をする母と、コーヒーを片手に新聞を広げる父がいた。おはよう、とぼそぼそと挨拶をして、ぼくは父と向かい合う席に座った。
 迷ったけれど、思い切って聞いてみた。
「ねえ父さん、あの蛇焼酎なんだけどさ」
「ん? あ、もしかしてお前、飲もうとしたんだろう」
 勘のいい父さんは、意地悪な顔をしてそう聞き返してきた。ぼくは少し気まずくなりながらも頷いた。
「じゃあ、お前驚いたろ? 何せあの棚には特性の仕掛けを施しといたからな」
「あら? 一体いつの間にあなたはまたそんなもの取り付けたのかしら?」
645↑続き:2008/05/11(日) 19:33:35
 皿に盛った朝食を運んできながら、母さんが父さんに聞いた。
「ふふ、お前たちに飲まれたら堪んないからな、買ってきた日に付けといたんだ。ったく、この家には酒豪が多いからな。困るんだよ」
 そい言いながら席を立った父さんは、あの棚の前に行き、宝物を公開するかのように扉を開けた。
「なんじゃ、お前は?」
 昨夜の声がする。母さんは驚き、口を大きく開けてしまった。
「驚いたろ。ほら、ここ。ここにボイスレコーダーをセットしてな、誰かが扉を開けたら、まるでこの蛇がしゃべっているかのように声が出る仕掛けをしておいたんだ」
 そう、父さんは子供のように目を輝かせながら言った。
「またそんな子供じみた仕掛けを……」
 そう母さんがぼやく。父さんはそんな母さんに気分を害したようで、拗ねた表情をしていた。
「ねえ、父さん、録音しておいた他の声はないの?」
 そう聞いたぼくに、父さんは一度目をぱちくりさせた。
「なに言ってるんだ? この声だけだぞ?」
 そう言ってレコーダーのボタンを押す。「なんじゃ、お前は?」と声が響いた。
「え、でもぼく、昨日違う声が……」
 したんだけど、そう続けようとしたぼくの視界にふと入った瓶の中で、死んでいるはずの蛇がずるりと動いた気がした。
 その濁った瞳がぼくを見ているようで、ぼくは小さく息を吸い込んだ。

次「コップの中の宇宙」
646名無し物書き@推敲中?:2008/05/12(月) 00:47:13
 夜中に目が覚めると風邪の予感がした。市販の錠剤を一杯の水で流し込んで、
布団に潜り込んだが焼け石に水だった。翌日会社を休んだ。
 平日昼間の住宅街は恐ろしく静かだ。遠くで布団を叩くぽんぽんという音以外、たまに
通るバイクの音くらいしか聞こえてこない。沢山の人々が仕事や勉強のための服を着て、
仕事や勉強のための施設に収容されて、仕事や勉強を行っている。僕はいま、その枠から
はみ出た無用の人だった。だがそれも悪くない。いつしか布団を叩く音も止んでいた。
 ふとテーブルの上を見ると、ゆうべ薬を飲んだときのコップを無造作に置いたまま
なのに気がついた。でも起き上がって洗う気力もない。僕は横になったまま、コップを
子細に観察した。よく見れば滑らかな表面にもわずかな歪みがある。口のほうには
うっすらと水あかの乾いたあとが残っていた。ガラスは透明で、硬くて、いまは乾いていて、
ぷんと音をたてて飛んできた小さな蝿だって、その上を気もなく一周しただけで。
 コップが次第に大きくなる。なぜだろう。僕はベッドの中にいながらにして、いつのまにか
コップを上から見ていた。静かにその中に降りていく。口の線を過ぎると空気が静止し、
聞こえながら気づかなかった小さな音たち――冷蔵庫のコンプレッサーが立てる低い
うなりとか、水道管の中で泡が砕ける音だとか――が世界から消えたのに気がついた。
さらに降りる。かすかなカルキの臭いがする。ガラス越しに見る天を摩すような家具の
数々が、なんだか事物としての自信を失ってトウモロコシの茎のように柔らかく立ち上がる
ように思われた。ああ、底が近づいてくる。そこに触れてはいけないのに。そこはコップを
清める人だけが触っていい場所なのに。ああ、足が触れる、ああ――いけない――
 目を覚ますと夕方だった。汗に蒸れた布団が熱っぽい肌に暖かい。学校帰りの子供らの
声が下の方から響いてくる。豆腐屋の笛が聞こえる。不意に通る車の音も。ああ。
 ぼくは静かな波に押される小舟のように、また人の世界に戻ったのを感じた。明日に
なればそう感じたことすら忘れてしまうだろう。またいつか、同じ気分を取り戻すまでは。

→次「東京湾の人魚」
647名無し物書き@推敲中?:2008/05/19(月) 12:43:44
「まさかこんな汚いところにあれがいるとはな…」
彼が見た物は東京湾で泳ぐ人魚だった。
648名無し物書き@推敲中?:2008/05/19(月) 12:44:10
次→「向こう見ずな妹」
649名無し物書き@推敲中?:2008/05/19(月) 14:09:55
私には四つばかり下の妹がいた。
妹は長い黒髪の華奢な体つきをしている。
そして向こう見ずな性格は間違いなく母からの遺伝だと思う。
正直、あの性格を何とかしてほしいと常日頃から思っている。

次→「かつての勇者」


650名無し物書き@推敲中?:2008/05/19(月) 15:55:17
「この男を殺して欲しいんです」
 女は言った。まだ二十代もなかば、日に焼けた顔に白いターバンが美しい。彼女の前に、
スーツを着た背の高い東洋人が立っている。その眼光は男性武闘家のように鋭い。
「理由を、きこう……」
「あの男は私を売ったんです。私が商人の基礎を学んで、初めてルイーダの酒場に派遣された
あの日、あの男は待っていたかのように私をパーティーに加えました。逞しくていい身なりを
していて、娘だった私にあの男はほんとうに素敵に見えました……」
「騙された、か……」男は煙草に火をつける。
「……はい。私もウブでした。酒場の控え組が全員女で、しかもメイングループがゆうしゃ、
ぶとうか、そうりょ、けんじゃなのは分かっていたのに……。あいつは得にならないキャラを
パーティーに入れるような寛大な男ではなかった」
「それで、すぐに、この町へ……?」
「いいえ。あの男は私からぬののふくを奪って、ぬいぐるみを着ろと言いました。逆ではありません。
服を奪ってから、です。私は恥じらって、きえさりそうを口に含んでから着替えようとしました。
だのに、私が装備を代えている間に、あの男は無意味にホイミを……」
 女の目には涙が浮かんでいる。男はそれを無視し、窓の外の月を眺めている。
「あの男はすぐに私を捨てるつもりで、いろいろと弄んだのです。しばらくパーティーは二人でした。
上げて意味のない私のレベルを上げて、恩を着せるならまだ聞こえはいい。でもあの男、
イシスの周りでただウロウロして、私に『暑かったらぬいぐるみ脱いでもいいよ』なんて……」
 女の声に力がこもる。
「そして眠れるノアニールのどまんなか、真っ昼間に、あの男は私の純潔を奪った……。
ベッドではなく、草の上で。抗う私にゆめみのこなを見せつけて、いつでも振りまけると脅して。
私はまだレベル8でした。そして翌日、あいつはくこの街に私を売った。あんな男が世界を救った
なんてちやほやされているのが許せません。」
 女は感極まったようにテーブルに泣き崩れた。
「わかった……スイスのあずかりじょに、10万ゴールド振り込め」

 こうしてロトの勇者シリーズはドラクエ3で打ち切りとなった。

次→「聖水ランナー」
651名無し物書き@推敲中?:2008/05/24(土) 02:18:13
とりあえず、だらだら走ってる。
日暮れ前に着けばあっちとしてはいいが、着かなくとも別に俺にはどうでも良い。
あぁ、俺?
「聖水ランナー」。
聖堂から聖堂へ聖水を運ぶ係。

とりあえず聖水を運ぶ仕事なんだが、これがまた面白くもない仕事でな。
賃金も安い。
聖堂は山の中でそれぞれ離れているから遠い。
おかげでなり手も居ない。
だからこんな学もない、貧しい俺にも勤まるんだ。

たまに婆さんが聖水を運ぶ俺に向かって祈るが、
あれは俺に祈ってるんじゃない。
聖水に祈ってるんだ。

聖水を聖堂の真ん中の石盤へ入れ、ろうそくを立て火をつける。
これで俺の仕事は終わる。

石盤の下には「この一滴が全ての水に通ず」と彫られているが、
こんなのは嘘っぱちだ。

司祭から「ありがとう、君のおかげでここの水は守られる」と毎回言われるが、
そんなわけはない。
ここの水がなくても泉は枯れない。

俺はこんな仕事が嫌いなんだ、全く。

次→光の和
652名無し物書き@推敲中?:2008/05/24(土) 16:50:02
光が見えた・
「なんだあれは!!!」
友恵がそうつぶやくと洋介が
「おっとっと!!」
そうそこには光の和がやってきてこう言った。
「最後から二番目の後ろばねに宝がある」
「なんだと!!!」
洋介がそう言うと
「こら!!!!」
横からやってきたのがおなじみの左門だである。
左門「こうしているとあの日を思い出す」
「そうじゃ」
長老!!!
わかりました・・・ そうやっていって水に溶けていったのである。
そのことをだれも言いはしない。 そういう未来を人間がのぞんだのである。
いるかはそのことを知っていただろう。
人は進化したそういうかたちがあってもいいではないか。

次のお題「ゆうべ見たような」
653名無し物書き@推敲中?:2008/05/25(日) 10:32:46
その動画は、以前Youtubeで見たような気がした。
「TとUを抜け!」とひたすら叫ぶ奇妙な動画だった。

次のお題→「オトコノコの屈辱」
654オトコノコの屈辱:2008/05/25(日) 14:53:30
私が求めていたのは、こんなものではなかった。けれど、こうなってしまった。もう遅い。
薄暗い部屋のなか、私はテーブルにうなだれる。擦りガラスから光がこぼれ込む。
一家離散、とはこのことか。子はいじめられ、夫は仕事に逃げ、私はストレスからくる精神病。
あとわずかな軋みで崩れるだろう。外から喧騒が聞こえてくる。
「お前の親って、どっちとも男らしいな!」
「ホモから生まれたホモやろ〜!」
「一家全員男だらけぇ〜!」
一瞬だけその声が大きくなり、しかしすぐにもとの小ささに戻る。
息子の健太がドアを開けて帰ってきたのだ。健太は私を見る。私は目をそらす。
この子は強い。いつもいじめに耐え、我が子をすら救えない弱い私を責めることもしない。そして私はまた甘えるのだろう。
「お母さん……」健太が口を開く。この子は耐えられるほど強い。
「どうして僕はいじめられなきゃいけないの?」ハッとして健太を見る。涙を溜めている。
「どうして僕はがまんしなきゃいけないの?」ぽろぽろとこぼれる。
健太を抱きしめる。ごめんね、ごめんんねと繰り返しながら、私も泣く。
ドアの開く音に、私と健太は振り向いた。夫が立っていた。
涙を流す私たちを見て驚いている。抱き締め合う私たちを見て微笑む。
「仕事、早めにきりあげたよ」夫はビニール袋を少し掲げた。
「飯にして……このメロン食おう、な? 健太、緒都子」


次の題⇒「種なし石榴」
655種なし石榴1:2008/05/29(木) 00:53:59
  赤いつやつやした、小さな赤い宝石のような粒をつまむと
 ひょいっと口の中に放り込んだ。
 石榴の独特の風味が口から鼻へと抜けて行き、甘酸っぱさが口の上に広がっていく。
「種がなければ言うことなしなんだけどなぁ…」
 友一が石榴の木の根元に座り込みながらつぶやいた。
「それ、自分も思ってた」
 言いながら友一の隣に座り込む。
「食べにくいよな」
「…うん」

 ……………

 しばらく沈黙が続く。
 毎日見てたんだ、この石榴の木を。
 石榴の実なんかならなければいいと思ってた。
 毎年毎年、割れた石榴の実から、宝石みたいな赤い石榴の粒をひろって、
 友一と手を真っ赤にしながら食べるのが好きだった。
 でも今年は、石榴が割れるころには2人の関係も割れてしまう。
 外国でも、友一は同じように大好きな石榴を食べることができるのだろうか。
 
656種なし石榴2:2008/05/29(木) 00:55:06
「元気でな」
 
 頭の上にポン、と手を置かれた。
 やめてくれ、そんなふうにされたら…。
 流れ落ちそうな涙を必死でこらえて、うつむきながら石榴をかじる。
 
「ってえ、種思いっきりかんじまった」
 
 石榴に種があってよかった。
 流れ落ちそうな涙を種のせいにできる。
 俺のこの気持ちをごまかすことができる。
 種なし石榴じゃなくてよかった…。


 次のお題
 「凄腕釣り師」
657凄腕釣り師:2008/05/29(木) 01:54:13
せっかくのゴールデンウィークなのに、その川は穏やかとは言えなかった。
前日まで降りつづいた雨で水かさが増し、大人の力でも安全とは言えない流れを作っていた。
しかし綿密に計画を立てたバーベキュー客はそんなことにもめげず、少ない休暇をどうにか満喫
するべくこの河原に足を運んでいたのだった。
「母さんっ」
僕らが川遊びもそこそこにアミの上で特売の牛肉を焼いていたとき、男の子の声が響いた。
あきらかな焦りと危機感をともなった声。流れのはやい川に今にも飛び込みそうな様子。僕はそれ
をみて、なにか緊急をようする事故がおきたのだと悟った。
「助けてっ、助けてください! 母さんが流されて!」
男の子の指差す方には、川の真ん中あたりで岩にようやくしがみついている女のひとがいた。
きっとこの少年の母親だ。川底も深くなっているあたり。顔は疲労の色が濃く、焦燥しきっていた。
「警察!」
誰かが叫ぶ。周りの大人たちが靴を脱ぎ、助けようと走った。にわかに辺りが色めき立つ。
「待ちな!」
そのとき、右往左往する大人たちを一喝するように、少女の声が響いた。みなの視線が集中する。
その先には、小麦色の肌の青年と少女が立っていた。
青年は麦藁帽を目深にかぶり、白いシャツにぼろぼろのジーンズ。手には細い釣り竿。隣に立つ
少女もまたほぼ同じような格好をしている。
658凄腕釣り師 2:2008/05/29(木) 01:54:51
僕らがあっけにとられていると、青年は素早く男の子の襟首に釣り針を刺し、そのまま竿を振りぬいた。
ビョウ!
凄まじい風切り。快音とともに少年は有無を言わさずまっすぐ母親のもとへ飛んでいく。
「縄張り意識の強い鮎は、似た固体が自分の縄張りに入ることを嫌うわ」
呆然と立ちつくす僕らに少女が大威張りで解説する。
「敵の固体を追い払おうと手を出した鮎を狙うのがこの、友鮎釣りの醍醐味なのよ!!」
似た固体。すなわち子供をひしと抱きしめた母親は、そのまま青年によって一本釣りされてしまった。
まさに、一瞬の出来事だった。吊り上げられた女性を大人たちが取り囲む。
「水を飲んでる! 誰か! 応急処置!!」
遠巻きに見る僕と青年に、誰かが声をかけた。
「いや、凄い腕だなあんた。今度、あんたの本当の釣りを見せてくれよ」
ソレを聞くないなや、青年はふと薄い笑みを浮かべると倒れている女性に近寄り、上半身を抱えて
みぞおちに強烈な拳をみまった。
「ゴフッ!!」
水を吐く女性。そして、その後から大量の鮎がボトボトと流れ落ちた。
「これが、これが真の友鮎釣りよ!!」
少女が叫ぶ。
青年はその後、颯爽と河原をあとにした。
両脇を警官に挟まれながら。
鮎は美味しくいただきました。

次「彼女が携帯電話を持たないわけ」
659名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 13:23:04
ごめ、かなり長くなったけど投稿しちゃう。

 春の日差しを受けたアスファルトが穏やかな光を照り返す。
 古そうな一軒家が辺りに並んでいる。
 その全ての家が、小さいながらも庭と言えるような、車三台分程度の敷地を有していた。
 庭や、家と家の間には緑の豊かな樹木が生えている。
 僕の隣を制服姿の女の子が歩く。
 彼女の長い黒髪がピシッとしたセーラー服にかかっている。
 この髪の毛色っぽいなぁ、と思いながら彼女を見下ろすと目が合った。
 彼女は風に髪を舞い上がらせながら、口に片手をあて穏やかに微笑む。
「コータくん。後少しで私の家につくよ。あと少しがんばろうね」
 彼女の透き通るような声を聞き、疲れていた僕の足は元気を取り戻す。
 現金な足だ。いや、僕か?
 既に学校を出て、二十分くらい歩き詰めだ。
 栄えていない方向にきたので、辺りに人気はあまりない。
 交通の便も悪く、辺りにバスは通っていなく、彼女は自転車に乗れない。
そのため毎日彼女は歩いて通学するしかないのだ。
 ちょっとドジなところがある彼女に、自転車は危ないかもしれないし。
僕はそう思って彼女と共に歩くことを、素直に満喫する。

 付き合って二月くらいたつが、僕と彼女がデートするのは放課後だけ。
 いつもいつも、楽しい時間はすぐ過ぎてしまう。
 土日のデートはしない。彼女が携帯電話を持っていないためだ。
 いや、しないというのは語弊か。
 土日デートは困難が付きまとうから、最近ではしようとも思わない。
 何度か待ち合わせをしたことがあるが、ドジな彼女はいつも時間か場所のどちらかを間違えるのだ。
 一度完璧にすっぽかされてからは、殆ど平日のみになっている。
 勿論後日彼女は誠実に謝ってきた。
 だから遊ばれてるわけではないと僕は思っている。
 そんなことが出来る彼女でもないし。
660名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 13:23:51
 僕は過去に彼女に携帯電話を持たないのかと聞いたことがある。
「うちの近く、あんまり電波通らないんだ。それにさ、携帯電話がなくてももうすぐ大丈夫になるよ」
 彼女はそう返事をした。
 実際に彼女の言うとおり、最近では携帯電話を使えないのが普通のことに感じていた。
 そのうち慣れると言う意味だったのだと、僕は一月経ってやっと気付いたのだった。

 暫く歩くと、ちょっと古い青い三角屋根の家が見てきた。
「ほら、あれが私の家。ちょっとボロいけどね。昔からお父さんと二人であそこに住んでるんだ」
 先ほどみた一軒家とかわらない造りだが、辺りにある他の家より少し大きい。
 敷地内には小さな離れが一軒、隣に並ぶようにたっている。
 離れは四角い形をしていて、灰色で大きい物置みたいな感じに見えた。
「へー、お父さんと二人かぁ。……って、お父さん? 家にいるの?」
 僕の頭の中に、娘さんを僕にください!という台詞が出てくるドラマが再生される。
 強敵出現だ。
 これは覚悟をしなくてはならないかもしれない。
「あは、そんな心配しなくて大丈夫大丈夫。お父さん最近いないから」
 一瞬ほっとする。
 が、その言葉の意味を考えると違うドキドキが僕の胸を圧迫する。
「って、え? 二人きりって事?」
「うん、そうだよ」
 彼女は笑顔でそう言って敷地内に入ると、家の鍵を開け中にはいる。
 その様子を見て僕は少しガックリする。
 男女が二人きりということを余り意識しているようには見えなかった。
「ちょっとそこで待っててねー。 離れの鍵とってくるからー」
 僕は敷地内に入り、言われるがままに離れの前で待つ。
661名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 13:24:54
 変なニオイが鼻をつく。
 古い家だし、独特のにおいがあるのかもしれない。
 少しおとなしく待っていたが、彼女は中々やってこなかった。
 僕が待ちきれないだけで、あんまり時間は経ってないのかもしれない。そう思って携帯電話を取り出した。
 十六時四十分。
 結構学校から四十分もかかるのか。彼女も大変だな。
 携帯を開いたついでに友達にメールを書く。
『今彼女の家! はじめてきたんだけど、緊張してきた。
 あと、お父さんいないらしいんだ。
 もしかしたらお先に経験しちゃうかも。後で話聞かせる。』
 送信しようとした所に横から可愛らしい声が聞こえてくる。
「おまたせー。ごめんね、鍵とってきたから」
 僕はあわてて携帯を閉じた。
 あんな恥ずかしい文面を見られるわけにはいかない。
 振り返って彼女を見ると、部屋着に着替えていた。
 黒いトレーナーとジーンズ姿で後ろで手を組んでいる。
 少々幼い感じの服装が彼女の愛らしさを引き立てる。
 後ろに組んだ手も、恥ずかしがってるみたいでかなり良い。
 近づいてきた彼女から、錆付いた鍵を渡された。
「そこの鍵さ、ちょっと古くて硬くなっちゃってるから、代わりに開けるのお願いしていい?」
「ああ、そういうことか。おっけー」
 灰色の離れには、奥の見えない灰色のガラス戸が取り付けられてた。
 ガラス戸は傷が少なく、新しいものに見える。
 ガラス戸についた鍵穴に鍵を差し込むと、あっさりと鍵は開いた。
662名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 13:25:30
「あれ、簡単に開いちゃった」
 僕はこの鍵穴と相性がいいのかもしれない。
 ちょっと得意げに彼女を振り返る。
 驚いたような反応はなく、彼女は機嫌よさそうに告げた。
「じゃーん、ここが私の部屋です。さぁさぁ、先入っていいよー」
「じゃあ、失礼しまーす」
 僕はそう言ってガラス戸を開けて中に入る。
 さっき外で嗅いだ変なニオイが強く感じられた。
 中はやはり物置のようで、床は石製みたいだ。
 ドアからの日差しが中を照らすが、奥は真っ暗で何も見えない。
「ねえ、何も見えないけど。電気はどこにあるの?」
 そう言って彼女を振り返ろうとすると、背中に熱い痛みが走る。
 まるで中の肉まで焼かれたように熱い。
 たまらずに僕は床に倒れる。
 冷たい床が僕の身体を強く打つ。
「え……?」
 せきこみながら上を見上げると、口元にいつもの笑みを浮かべ、赤く染まる包丁をもった彼女が居た。
 彼女が離れの中に入ってくる。
 スイッチを押すような音が聞こえると、電気がついた。
 彼女は奥に向かって歩いていく。
 何もない大きな空間だった。石床にはどころどころ黒い染みがある。
 奥にはこの場所にはおよそ見合わない、大きな冷蔵庫が鎮座していた。
663名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 13:26:46
 彼女は冷蔵庫を開けて、中身をこちらに見せた。
「あ、紹介するね。これ私のお父さんと、元カレのシゲル君。仲良くしてあげてね」
 中にはタッパーに入ったピンク色の肉や、黒い糸の塊がある。あれは髪の毛だろうか。
 胃の中身が口の中にこみ上げる。
 彼女の笑顔が恐ろしい。
 今すぐ逃げたい。
 だが、背中の傷が痛くて立ち上がれない。
 僕は芋虫のようにはいずりながら倉庫の外へ向かう。
 それを見た彼女は、頬を朱に染めながらゆっくりと近づいてきて僕を蹴り飛ばす。 
「ねぇ、逃げちゃだめでしょ? 私がこんなに愛しているのに。私はお父さんと君とだけ話せれば、他には何もいらないのに。君は違うのかな」
 一息でそう言うと、転がる僕に向かって包丁を振り上げた。
 ――携帯電話がなくてももうすぐ大丈夫になる。あの台詞はもしかして……。

「これから、ずっと私がお世話してあげるね。えへ」

次のお題「おいしい抹茶」
664おいしい抹茶1:2008/05/30(金) 19:02:52
彼女のおじいさんの葬儀があった数日後、僕はなぜか彼女の実家に呼びだされて、その大きな庭に
ある東屋のようなちいさな屋根つきの腰掛のうえに座っていた。
秋風が吹くもの寂しい庭。
僕は彼女と二人で座っていた。
「今日は誰もいないの」
そう呟いた彼女の声はほそく、僕はなんと言っていいかわからなかった。
「ホラ、見えるでしょ。あれがその茶室なの」
そう言って彼女が指差すさきには、ピカピカに輝く銅で葺かれたちいさな茶室が見えた。出来たばかりだ
そうで、あまりにピカピカな屋根が威風を放っていた。
「ヘンでしょ。まるで金閣寺みたいだってみんな言うのよ。あたしもそう思うんだ」
「でもお爺さんが建て替えたんでしょ?」
この広いお屋敷には昔から茶室があったのだが、去年の台風に負けてしまったのだ。もはや誰も使う者
がいない茶室は、このお屋敷で一番老朽化が進んでいたのだと彼女は言った。
「あたしが茶道部だからって、おじいちゃんが無理に建てなおしたのよ。昔の茶室は茅葺のいい屋根だ
ったんだけど、いまは萱を葺く職人さんも近所にいないでしょ。だから屋根だけは別のにしたらしいんだけど」
そう言いよどんだ。
確かに、シックな日本庭園には似合わないように見える。
「そもそもね。あたしが茶道部だってのも不純な動機なんだよね」
「不純?」
僕がそう聞くと、彼女はわかる? と笑った。たしかに古いお屋敷に住んでいるとはいえ、彼女は日本の伝
統とは無縁に育ってきたように思える。学校も厳しいミッションスクールに入学し、幼馴染の僕とはあまり会う
機会もなかった。クリスマスなんかには感心があったがお盆という風習はよくわからないと漏らしていた。
「お菓子がね、食べられるのよ」
そう言ってえへへと笑った。
「厳しい学校だから、遊びってものがあまりないの。でも茶道部だけは公然とお菓子が食べられるのよ」
「お菓子――かぁ」
665おいしい抹茶2:2008/05/30(金) 19:03:58
たしかに茶道には茶菓子がつきものだ。そんな彼女の考えは、子供の頃からちっとも変わらないと僕は思った。
「学校で教わって、お爺ちゃんにお茶をいれたときね、あと十年もしないと美味くはならねぇなって言われた」
なかなか辛辣な言葉だが、彼女の言い方から当時のことが想像できて僕は笑ってしまった。随分あっけらかん
としたお爺さんだったようだ。
そうして、茶室を建て替えるのを決めてしまったのだそうだ。
「けっこう派手好きな人だったのよね。あたしのためにっていうか、たぶん豪華な茶室が建てたかったんじゃない
かなって思ってる。思いついたらすぐやっちゃうのよ。みんな困ってた」
それが彼女の人物評だった。
「うん」
僕はそれだけを言った。
「結局、この茶室ができる前に死んじゃったから、使わずじまい。死ぬ間際にね。お前、あと十年やりなさい。
そうしたらあの茶室で美味しいお茶を飲もうって、そう言ったの。いつも出鱈目な人だったわ」
だったら十年後に建ててもかわらないじゃないの。と彼女は自嘲気味に笑った。
だから、僕は言わねばならないと思った。
「違うと、思うんだ」
「え?」
彼女は意外そうな顔でこちらを見ていた。
「きっとね。いまじゃないと駄目だったんだよ」
生きているうちにできること。
十年後の未来。
僕にはそれがわかった気がした。
「あの瓦ね。きっとあと十年もしたら緑青がふくよ。そうしたら今よりもずっと立派な茶室になる。このお庭にも映えるよ」
「あ――」
銅版葺きの屋根。日本庭園の小さな茶室。年月を経て風格が漂う姿に変わるだろう。
十年後の未来も。その先の未来にはもっと。
「そうしたら、またそこで美味しい抹茶をいれてね」
お抹茶色の屋根のしたで。
そういう僕のほうを彼女は見なかった。
「や、やめてよ。そういうの」
最初よりも細い声で、そう言った。

次のお題「猫の集会」
666名無し物書き@推敲中?:2008/05/30(金) 23:59:13
満月が煌々と夜空を照らす深夜。街外れの小高い丘に、たくさんの猫たちが集まっていた。
「にゃー」
騒いでいた猫たちを、丘の一番高いところに座る猫が一喝する。会場は急に静かになった。
「にゃ、にゃにゃにゃ、にゃー」
高いところの猫がそう鳴く。するとあちこちから猫たちが鳴き始めた。
「なーご」
「にゃにゃーにゃ。にゃーにゃー」
「ふーーーーっ!」
「にゃーーお」
「にゃーにゃー」
「にゃーにゃにゃ。にゃーなー。にゃーー」
「にゃにゃ? にゃにゃーにゃーにゃにゃ」
「にゃー」
「にゃーなにゃ」
丘に猫の鳴き声が木霊して、今日も夜は更けていく。

次「赤さんの憂鬱」
667赤さんの憂鬱:2008/05/31(土) 00:42:57
「赤さんの憂鬱」

 子供が母親にあやされている。
 お兄ちゃんが尊敬してる。
 玩具がたくさんある子供部屋。
 ゴミひとつおちてはいない綺麗な部屋だ。
 ボクの弟ができるにあたって、お母さんとお父さんががんばって掃除をしたからだ。
 その部屋で弟がお母さんにあやされている。
 お母さんが弟の前で顔を手で隠し、その後に顔を出す。
「いないいない、ばーーー!」
「キャッキャッ」
 弟はまだゼロ歳と八ヶ月。
 生まれたてでカワイイ盛りだ。
 そのためか、ボクがお母さんに構われることが減ってしまった。
 しかし、ボクはこの弟が嫌いではない。
「キャッキャ」という声が聞こえたので、弟の方を見た。
 お母さんが弟を天井付近まで放り上げている。
「たかいたかーい!」
「キャッキャッ」と弟は楽しそうに笑っている。
「あ、そろそろご飯の用意をしなきゃ。お兄ちゃん、弟をしっかり頼んだわよ」
とお母さんはボクに頼み、ボクは「うん」と答える。
 それを見てお母さんは子供部屋から出て行った。
668赤さんの憂鬱:2008/05/31(土) 00:43:43
「ふぅ、楽じゃねーな。遊んでやるのも」
「ですよね」
「いないいない、バー! とか俺を馬鹿にしてるのかっての」
「ホントです」
「たかいたかーい! とかあんな高くまで上げたらあぶねーじゃねえか。母さんも自分の腕力を考えて欲しいよ。本当に遊んであげるのは楽じゃねえなぁ」
「ですよね、本当にお母さんも困ったものですよね、赤さん!」

 このダンディな弟をボクは赤さんと呼んでいる。ボクが一番尊敬する人だ。
669赤さんの憂鬱:2008/05/31(土) 00:44:04
あ、忘れてた。
次お題『サイボーグ少女』
670サイボーグ少女:2008/05/31(土) 00:53:43
少女は彼を愛していた。
少女は至高の名器を手に入れるために、膣をサイボーグに変えた。
彼は言った。
「これじゃダッチワイフと同じじゃん……」
少女は彼を殺した。

次お題「ハンバーグ少女」
671ハンバーグ少女:2008/05/31(土) 21:47:31
「ハンバーグ少女」

ピンポーン
昼過ぎまで寝ていたある日、チャイムが鳴ったのでのろのろと起き上がって玄関に出てみた。
すると、4人の見知らぬ少女たちが立っていて、次々に自己紹介をし始めたのだ。
「牛肉です」
「卵です」
「パン粉です」
「たまねぎです」
『私たちを、おいしいハンバーグに料理してください』
眠くて重たいまぶたをこすりながら、私は彼女たちに問いただしてみた。
「キャベツはどうした」
4人は肩を落として帰っていた

↓次のお題は「文化祭の珍事」

672名無し物書き@推敲中?:2008/05/31(土) 22:32:39
それは高三の文化祭でのことであった。
普段寡黙な私が、なぜか目玉イベントである「ブロック行列」の最高委員に
選出されてしまったのだ。
ブロック行列とは一年から三年までの同じナンバーのクラスが集まって、
御輿ひとつと仮装部隊を用意して、運動場を練り歩くというものだ。
御輿と仮装の内容は、ほぼ三年生主体で決めることができた。だが皆
受験準備に忙しく、まともに議論しようとするものは少ない。そこで私は博打に
出たのである。

「古代衣装行列にする。女子はシーツを使ってチューブトップのワンピースを
自作し、全員それを着て歩くこと。脇から上はすべて素肌であること。
ワンピースの丈はすねまで。足は素足にサンダルのみ」

これが通った。

文化祭当日、三学年六十人になんなんとするブロックの女子が、むき出しの
白い肩を揺らしながら、素足にサンダル履きで砂の上を行進した。
そして特筆すべきことがある。市販品ではなく、女子高生の手製の衣装など
精度はたかが知れている。出来上がった衣装は、肩紐なしでもブラを隠すのは
かなり厳しかった。そこで女子連が選択したのが――ノーブラであった。
俺はあの日の感動を忘れない。ペラッペラでいびつなな形をしたシーツ製の
衣装を必死に胸の前で押さえながら、小糠雨の中、背を丸めて行進した
女子の姿を。それは俺がもっとも孔明に近づいた日であった。
――あの日に帰りたい。

※ ノンフィクション

↓次「スーパーマーケットの女帝」
673スーパーマーケットの女帝:2008/06/01(日) 18:24:05
そのスーパーマーケットの通路はひろかった。
郊外にある大型スーパー。外資の企業によって建設された大型量販店で、商品だなから紙パックのジュース
まで、ありとあらゆるものが日本人離れした大きさを誇っていた。
休日の夕方、夕食の支度のために来店した主婦でごったがえす店内を、かすかな噂ばなしのようなものが飛びかう。
「今日、来るらしいわよ」
「まぁ。先週は木曜だったジャないの」
「来るとなると手間ね」
「あたしはやめに帰るわ」
「休日に来るなんてはじめてよ。わたしは見ていく」
みな思い思いのことを言いながら、買いものかごを持つ手はしかし慌しく動いていた。しばらくすると、
ファァァァアアーン
妙にアジアンチックな楽器の音。宮廷の雅楽のような、あるいは東南アジアの舞曲にあるような楽器。
「きたわよ」
「やだはじめて見た」
店の入り口からは手に編みカゴを持ち、そこから花びらを撒く薄手の衣装をみにまとった娘が数人歩いている。
続いて槍を持った青年が数人。こちらは着物にズボンのようないでたちだった。
その後からは奇妙な神輿のようなものを担いだ男達。いずれも槍持ちの青年と似たような格好である。担いでいる大型
の神輿は周囲がスダレで囲まれたもので、漆の土台、金の天蓋。黒檀の柱には輝く胡粉と銀の蒔絵が美しい。古代
シルクロードの意匠を想いおこさせる蓮の柄の飾り布が下へ垂れていた。
前後を六人ずつで担ぎ、左右は同じく六人の若者が並んでいる。
ゆるりとした動作で店内を移動していくのだった。
しばらくすると、店員のうち役職のありそうな風体の男がひとり、神輿に歩みよった。
「キッ、キョウハナニヲ、オモトメデショウカ!!!」
完全に裏返った声で問うている。見守る主婦からもひそひそと声があがる。
「しっかりしなさいよ!」
「しっ、くるわよ!」
「ひらくのかしら」
674スーパーマーケットの女帝2:2008/06/01(日) 18:25:03
「え? 見たい見たい!」
なんとか人ごみをおしのけ、籠の中の貴人を見ようとする。
すると。
スルスルと神輿のスダレから一枚の短冊がさし出だされた。店員の男はそれをおし抱くように受け取り、すぐさま奥へ
走る。しばらくすると店内放送がはじまった。
「五月雨のぉぉおぉぉおおおお、夜打つ雨のぉぉおおぉおぉおお、甍音(いらかおと)ぉぉぉおぉお、
泣くひとり寝のぉおぉぉぉぉぉおおお、霞なりけりぃぃぃぃぃいいいい」
どよどよ。
ざわめく主婦たち。
「なに? 和歌? 中の人が詠んだのかしら?」
「なに言ってんのよ、毎回詠むのよ!」
互いに情報を交換し合うものたち。それから店内はにわかに慌しくなった。若手の社員達が、ああでもないこうでもない
と商品を選別しているのだ。あるものは年配の社員にお伺いをたて、却下され、叱られ、相談し、そしてようやく代表
の若手社員が、ひとつの商品を持って神輿に近づいた。
手に持ったそれは、大きな飴玉の入った袋だった。
「へ、陛下がおひとりの夜も寂しくないように! 社員一同考えました!!」
その飴だまはするするとカゴの内へ引き入れられ、あたりは沈黙に包まれた。
たっぷりと時間がたち、主婦たちのなまつばを飲み込む音が聞こえ始めたころ。
「よろし」
一言、神輿のなかから、そう聞こえた。
まだ若い、少女の声だった。
それから神輿はゆるりと出口に向かい、謎の楽器の音と花びらとともに、店を去っていったのだった。
「なになに? どうなってんの?」
「どこの陛下なのよ!」
「女帝よ、これがホントの女帝よ!」
「あのままお帰りになるのかしら、どちらへお住みになっているのかしら」
「高速の料金所をあのまま通過するの。うちの主人が見たわ!」
スーパーマーケットの夜は更けゆく。

※ノンフィクション

次「意外な殺人者」
675意外な殺人者(1/2):2008/06/02(月) 01:55:24
「だから、殺されたんですよ、私は。誰に?さっきから知らないって言ってるじゃないですか。
気づいたら死んでて、自殺した覚えはないし、体の具合も悪くなかったし。誰かにやられたんですって。
何とか思い出せって?しょうがないな。わかりましたよ。
それじゃあ、死ぬ前のことを思い返してみますから。そうしたら出てくるかもしれない。
う〜ん……とにかく、周りは暗かったですね。何も見えない。それから、水の流れる音がしてました。
川の近くだったのか?いや、そういう感じではなかったような…
そうだな、もっとこう、耳のそばで響いていて、むしろ川の中にいる感じ?
でも、だからといって溺れて流されていた感覚はなかったですね。プカプカ浮いてた気がします。
それに、あったかかった。お風呂?ああ、そうか。近いかもしれないです。まあ、とにかく周囲の状況はそんな風でした。
他には……え〜っと。ダメだ。よくわからないです。なんかもう、そのあとすぐ死んじゃったんですかね。よく覚えてないけど。
はあ…結局、あんまり出てこなかったですね。浴槽で脳卒中でも起こしたんでしょうか。
違うと思うんだけどなあ……
676意外な殺人者(2/2):2008/06/02(月) 01:59:22
まあ、時間もずいぶん経ちましたし、今日はそろそろ帰ります。お騒がせしました。
……アレ?そういえば私、何で服着てないんですかね。いや、別に露出狂ってわけじゃ…
ん?何だ、このへそについてる管みたいなの。
それに……そもそも私、体のパーツ、足りなくないですか?


次のお題「お年玉」
677お年玉:2008/06/02(月) 02:48:30
等身大フィギュア七万円也。
少女が女の子座りでこちらを見上げているようすを仕上げた一級品だ。
くそう。なんてことだ。と私はひとりごちる。他人からみれば馬鹿げたその金額に、ではない。
梱包されていたダンボールの箱に、だ。いや、金も悩みの種ではあるが。そんなことよりも――。
等身大フィギュア入り。
こんなにはっきり明記する必要がどこにあるのか理解に苦しむ。顧客層を勘違いしているとしか
思えない。配慮のかけらすらない。こんなもの家族にでも見られてみろ。死ねというのか。
まぁ、この手の趣味人は混迷を極める現代においてさらなる複雑化の一途をたどっており、二次元
か三次元かはたまた二次元の三次元化か、という分類において明確にすみわけがされつつある。
私は主に二次元の虜として人生を謳歌していたが、最近では二次元の三次元化というあらたな境地
に踏み出しつつあるというわけだ。言うなればモーゼの心境だ。
幼児性愛には多少の理解はあるものの、三次元の、つまり実物に執拗な愛着をもつ者は理解できない。
あんな生きているナマモノに金を払ってもいいという輩がいるというのだから不思議でならない。
そして目下の悩みは三次元のソレについてである。
いや、その三次元に与える金についてである。
お年玉の時期なのだ。
姉の娘であるところの姪っ子にお年玉をやるのは、叔父であるところの私にとってはある種のステータス
であり、同時に弟として叔父として成人男性としてのつとめのひとつであろうと自覚している。
しかし先立つものはなく、こうして二次元の具現化とにらめっこしているのである。
売ってしまうか。金にはなるだろう。いや、これをどこに売るというのだ。オークションか。時間がかかる。
などと煩悶している。
だいたいこのフィギュアは私にしてみれば子供のようなものである。
その子供を売って子供に金を渡そうというのだから本末転倒な話しだ。憤懣やるかたないぞ。
いやまて。
子供を売って子供に金を与えるだけじゃないか。
あんなものでも買い手は無数にいるのだ。さぞ金になるだろう。
売ったら子供にお年玉をあげられるじゃないか。
そういうわけで、私は手ぶらで姉の家へ向かったのだった。

次「ココの家賃が安いわけ」
678ココの家賃が安いわけ:2008/06/02(月) 04:09:46
「いやあ〜〜こんな広くてキレイな家にこんな家賃で住めるなんて、夢みたいだよ」
「ウフフ、頑張って探してきた物件よ。2人の新婚生活のためですものお〜〜〜〜」
 益次郎とサダ江はむぎゅう、と抱き合った。
「さっ!お掃除頑張りましょっ!引越ししてからの2人の初仕事よっ」
 サダ江は益次郎から離れ、軽くウインクすると、窓拭きに取り掛かった。
 益次郎はサダ江の魅力にクラクラしながらも、ふと疑問が頭をよぎる。
 なぜ、こんな優良物件が格安なのか?
「なんで、こんなにいい物件なのにこんなに家賃が安いんだろうねえ」
 窓拭きをしているサダ江に話しかけると、全身の動きがピタリと止まった。
「…知りたい?」
 後を向いていたサダ江がくるりと益次郎の方を振り向いた。
 その顔には不適な笑みを浮かべ、雑巾を持つ両手を顔の前に掲げながら益次郎の方に
 せまってくる。 
「出〜〜る〜〜の〜〜よ〜〜こ〜〜れ〜〜が〜〜」
「わーーーーーーーー!!!」
 益次郎は腰を抜かさんばかりに驚き、後に尻餅をついてしまう。
「きゃっ!ごめんなさい益次郎さん、冗談よ〜〜」
 サダ江は益次郎の手を取ると、ウフフと笑う。
「な、なんだあ、もー驚かすなよ〜〜」
 サダ江はごめんなさい、ともう一度上目遣いにかわいらしく謝ると、益次郎の腕に自分の
 腕を絡める。
「ねえ、益次郎さん私、あなたと結婚できて幸せよ?そしてこんな大きなおうちに住めてますます幸せ。
 このおうちは、大家のおばあさんと特別仲良くなって、家賃を安くしてもらったの
 ウフ、私っていい奥さんでしょおう〜〜」
 そう言いながらきゃっきゃと笑うさだ江。
679ココの家賃が安いわけ2:2008/06/02(月) 04:11:29
「そ、そうだったんだあ〜〜サダ江は倹約上手の、いい奥さんだねっっ
 しかも美人でカワイイし、僕にはもったいないくらいだよっ!!
 愛してるよ〜〜〜〜〜!!」
 なぜだか感極まって、益次郎はサダ江の小さな体をぎゅううううっと抱きしめた。
「あんっ!益次郎さん、ちょっと苦しいわよ(はーと)」
 ちょっと窮屈そうに、身をよじるサダ江、しかし益次郎はそんなサダ江がかわいくて
 ますます抱きしめる腕に力が入るのだった。
「きゃんっ(はーと)もう、益次郎さんたらああ〜〜〜」」

 その頃
 この家の上空3000メートルの未確認飛行物体の中では、人間に似た、
 しかし人間とは明らかに違う形の、とんがった耳を持った、いわゆる宇宙人と呼ばれる類の者たちが、
 この家の中の2人の様子をモニタリングしていた。
 「いやー地球人の言葉でバカップルっていうんですか?こういうのって」
 「…さあな」
 「これが一般的な地球人の夫婦なんですかねー」
 「シラネ」
 「ていうか、地球人の夫婦生活の生態サンプル、失敗しましたかねー。奥さんノリがよかったから
  家と引き換えに、つい頼んじゃったけど」
 「…ぐう」
 「あっっ!!先輩何寝てんすか!!」
 「ぐうぐう」
 「ちょっと起きて下さいよ!この仕事終わらなきゃ○△×#惑星に帰れないんですからね!!   
  おーいせんぱーい!!…」
 
 地球は今日も平和にまわっている。
  


  次のお題「深夜3時の点呼」
 
680名無し物書き@推敲中?:2008/06/02(月) 17:54:56
深夜3時から行われる集会が今宵も開かれようとしている。
瞬きする街灯の明かりだけがキリンの滑り台を照らす公園。
そのもとに集まりはじめる影、影、影。
「……えーそれでは点呼を取ります」
キリンの首根っこに座った町内会長の一声でその場にいた全員がはっと顔を上げる。
しゃがれた声の町内会長は自分の眼下をぐるりと見渡すと、何かに納得するように一度頷いた。
「……さぶろうさん」
群衆の中から、にゃー、と声が上がる。
「ミーコさん」
にゃー。
「コロスケさん」
にゃー。
「ミケさん」
……。
「……ああ、酒屋のミケさん」
にゃー。
こんな調子で点呼がはじまり、今夜も日ノ出町の猫集会は始まりを告げたのだ。


次のお題「セレビッチ僧侶」
681セレビッチ僧侶:2008/06/02(月) 20:21:30
セレビッチ僧侶の朝は早い。
鶏が鳴き声をあげる頃には、もうお祈りをすませて朝食も終えている。
セレビッチ僧侶の夜は遅い。
草木も眠る頃、彼は聖書を開き、神の御心を少しでも理解しようと精一杯に励んでいる。
真昼、村人たちが農作業の合間の休憩でおしゃべりに花を咲かせている頃、
セレビッチ僧侶は夜中の12時にセットした目覚まし時計のそばで、満ち足りた顔をして眠っている。

次回のお題「ホームページ・パニック」
682セレビッチ僧侶:2008/06/02(月) 21:23:36
アタシはセレビッチ僧侶。56歳の愛され系OYAJI。
今日も愛車のスクーターに乗って艶檀家まで颯爽と走るわ。
シースルーの袈裟が風になびく度、通りすがりの艶犬の視線を感じるけれど
そこで視線を返すのは小娘のやること。そんな時こそセレビッチ僧侶の毅然とした小悪魔ぶりを演出して。
艶爺の三回忌である今夜はメタボリックな艶腹に隠した情熱のリズムを木魚に託してみたわ。
アタシの熱い弔いの気持ち、アナタに届いたかしら?
683名無し物書き@推敲中?:2008/06/03(火) 04:31:44
次回のお題は「ホームページ・パニック」
684ホームページ・パニック1:2008/06/05(木) 12:12:33
 ある日の夜中。
目が冴えて眠れなくなった僕は、眠っている飼い猫を膝に、パソコンを立ち上げ、何とはなしにいろいろなサイト巡りをしていた。
タレントのブログや、個人の小説が置いてあるサイト、ボーッと頬杖をつきながら次々にいろんなサイトへ飛んでいく。
夜中に起きているせいか、目に映る情報は、半分も頭の中に届いてはこない。
そんな中、ある個人のホームページにたどり着いた。
自己紹介に始まり、日記には日々の出来事を写真付きでアップしている。
なんてことない、普通のホームページだ。
見たところ何の変哲も無いホームページを、それでも何か面白いことが書いていないかと、
下の方までスクロールしていく。
一番下に、アクセスカウンターがあった。
それも普通のことだな、そう思いながらカウンターの数字を何気なく見ると、なんと「1234567」と表示されている。
お!なんだあ!えらくめずらしい数字が出たな。
珍しい現象に、少しだけ姿勢を正すとアクセスカウンターの下に、さらに何か書かれているのが目に入った。

私のホームページに訪問していただき、ありがとうございます!
ご来館いただいたアナタに大きなプレゼントをご用意いたしました!!
私が指定したキリ番「1234567」
こちらにアクセスしていただいた方に、なんと現金1000万円プレゼント!!!

 一瞬、目を疑った。
ボーっとしていた頭が一気に覚醒し、目はパソコンの画面に釘付けになった。
…これは…どう考えても怪しいよな…だって、懸賞サイトならともかく、個人の普通のホームページでだぞ??いっせんまんん!?
しかもこんな、地味な普通のホームページ…。い、いやでもこのホームページの管理人が実はすごい金持ちで、
くさるほど金を持っていて、ひっそりと運営している自分のサイトにたどり着いた運のいい者だけに、金をやろうと考えているんだと
したら…。
いろいろな考えが頭の中をぐるぐる回り、金額の大きさに頭がクラクラし始め、急に心臓がドキドキし始めた。
手にはじっとりと汗をかき、心なしか小刻みに震えている。
これは何かのワナだ!!と冷静に制する自分と、いやこれはラッキーだったんだ!!という頭の中の2人の自分が喧嘩を始め、
だんだんと考えていることの収集がつかなくなる。
685ホームページ・パニック1:2008/06/05(木) 12:18:35
えええーーい!!!もしこれが冗談だったとしても!!!僕は釣られてやる!釣られてやるぞおおお!!
覚悟を決め、管理人のメルアドをクリックする。
キリ番をゲットした旨を、簡潔にメールで報告すると、すぐに「おめでとうございます!!」との返信メールが来た。
返事が来たことで、賞金に対する期待感が一気に膨れ上がる。
おいおいおいおいおいおい1000万だぜ!?
何に使おう、まずは好きなものを買いまくって、高級レストランで高級料理をたらふく食ってやる。
そうだな、世話になっている親に100万くらい分けてやってもいいかな!
さっきのパニック寸前の葛藤はどこへやら、ホクホクと喜色満面の表情で管理人からのメールを開く。
果たして、そこにはこう書かれてあった。

キリ番ゲット!!!!おめでとうございま〜〜〜〜〜す!!
1234567、こちらをゲットされたラッキーなアナタは、現金1000万円のプレゼントを わ た し にすることができる「権利」を獲得されました!!
つきましては、以下の口座番号に、一週間以内に1000万円振り込んでください!!お待ちしておりま〜〜〜す♪
○×銀行△支店口座番号32○×…

 天国から地獄とは、まさにこのことなのか。
先ほどとは別な意味でパニックになった頭からは
「うごうがあああああああああ!!!!!」
という、言葉にならない叫び声しか出てこなかった。
「うにゃっ!!!」
その声で、膝で寝ていた猫がびっくりして目を覚まし、僕の膝から飛び降りる。
柔らかく着地した後、飼い主の方に向かってきちんと前足をそろえて座り「にゃ」とひと鳴きして飼い主の方を見る。
どうしたことか、飼い主は頭を抱え、のた打ち回っている。
猫はそんな僕を、不思議そうに首をかしげながら、まんまるな瞳でいつまでも見つめているのだった…。

次「鳥かご生活」





686鳥かご生活1/4:2008/06/05(木) 16:43:27
──マジマジ、ほんとうなんだって!
麻美がそんなふうに興奮しているからついついやってみるだけならいいかな、なんて気持ちになってしまった。
──違うの、お金とかそんなにかからないし、別に体にいいとかそういうこともないんだよ。ただリラックスするためだけのものなの。
今、私の目の前には鳥かごがある。頭が丸くなっている形の普通の鳥かごだ。
──効果? そうだなーなんていうかね、心ここにあらずって感じなんだよね。それって普通は悪いことじゃない?
それを聞いた時、私もそれじゃリラックスしすぎで逆に日常生活が困難になるんじゃないかと思った。
──でもね、他人なんてそんなに自分のことなんて見てないんだよ。
──ちょっとくらいぼーっとしてても、天然な子なのかなとか、疲れてるのかなくらいにしか見られないものなんだよ。
そんなものなのかも知れない。確かに私だって今まで麻美が鳥かご生活をしていることに気付きもしなかったのだから。
──止めようと思えば簡単に止められるし、ほら、こうやって単に身代わり人形を鳥かごから出せばいいんだから。ね、簡単でしょ。
私は子供の頃NHKでやっていたボブのお絵描き教室が大好きだった。
ね、簡単でしょ。そう言われると条件反射的に容易い物なのだと思うと同時に心が浮き足立ってしまうのだ。
そんなわけで身代わり人形にはキーホルダーに付けていたモーモーポクポンを、場所は部屋の隅、暑くもなく寒くもない所に決定した。
本当の自分は常のこの鳥かごに入っている、だから抜け殻の自分がかごの外でどんな目に合っていても平気なのだ。
そう思い込むのが鳥かご生活らしい。私はちょうどその時仕事を変えたばかりだった。
新人教育役の先輩がきつい人だったこともあって、その時はただお守り代わりと言うか、半信半疑と言うか、
大した期待もなく鳥かご生活に入ることになった。
687鳥かご生活2/5 ごめん上のは1/5:2008/06/05(木) 16:44:17
鳥かごにモーモーポクポンを入れて生活するようになってからしばらく、
先輩のきつい嫌味もヒステリックな小言もほとんど気にならないようになっていた。
これがプラシーボ効果か、などと感慨深く思いつつ、鳥かごの身代わりポクポンにお供えをするようにまでなってしまっていた。
けれどこれがまたいい効果をもたらしたのだ。
鳥かごの中に花を一輪入れておくと、その日いちにち良い香りに包まれているような心地よい感覚に浸ることができた。
部屋に曲を流しておけば外にいても好きな音楽を聴いている時のような楽しい気持ちにもなれたし、
鳥かごのそばに扇風機を回しておくとどんなに蒸し暑い日でも快適だった。 毎日が楽しく過ごせるようになったせいか、仕事の覚えも早くなり、先輩の小言も少なくなってきている。
まさにいいこと三昧、鳥かご生活万歳だ!
688鳥かご生活3/5:2008/06/05(木) 16:44:51
あなた最近調子いいねぇ。社食で味噌ラーメンを啜っている時に、ふと隣からそんなことを言われた。
空いていた隣の席に座った先輩は、仕事の時には見せないようなのんびりとした表情をして私をにこにこと見つめていた。
いえそんなことないっす先輩のおかげっす。冗談めかした言い方に彼女は色っぽくふふふと笑い、
トレーの上のたらこスパをフォークで巻いていく。そう言えば先輩とは仕事以外の話なんてしたことなんかなかったなあ。
そんなことを思いながら何気なく先輩の方を向くと、何やら彼女の様子がおかしい。
どしたんすか、お腹痛いんですか? 先輩はタイトスカートの上から下腹部を押さえている。
顔を見ると油汗が浮かんでいて、そのきつい角度の眉はしわくちゃに歪んでいた。
思わず私はテーブルの上に箸を投げ捨てて先輩の肩に手を置いた。
大丈夫ですかと言うのが無意味に思えるほどどんどんその顔が青く白く血色をなくしていく。
これは尋常ではない。そう思った私は心の中で119と呟いて、「すみません誰か!救急車!!」と叫びながら席を立った。
その時。視界の隅に火花のようなものがバチバチっと散った。
まるでスローモーションのように見えたその光景はとても酷いものだった。
先輩の股間の辺りから発射されるロケット花火のような無数の火花。黒々とした煙りが辺りに立ち込めていく。
食事をしていた周りの人々と先輩の悲鳴と、それから私の情けないうわわわわという声が同時に響いていた。
しばらくして火花は収まり、その場には茫然自失の先輩と慌てふためく人々だけが残されたが、
大量の煙りが発生したために火災装置が反応してしまい、消防車まで出動する大騒ぎとなってしまった。
689鳥かご生活4/5:2008/06/05(木) 16:45:16
結局原因はよくわからないまま先輩の責任となり、彼女はしばらくの間自宅謹慎処分となった。
謹慎が明けて出社してきた先輩は以前のようなキャリアウーマン的なパリっとした印象はなくなり、
どこか疲れたような色気を漂わせていた。そんな先輩に飲みに行きませんかと誘ったのは私の方だった。
前から個人的に話してみたいと思っていたし、あの騒ぎがなんだったのかを知りたかったのだ。
先輩、先輩の股間はなんであんな花火大会になっちゃったんですか。
酔いが回っていたせいもあるが私は元々回りくどい物言いは苦手だ。
しかし失礼とも思える直球の質問にも彼女は素直に答えてくれた。
ねえ、鳥かご生活って知ってる? その言葉は私をびくりとさせた。
知っていると答えていいのか、むしろやっていると答えていいのか言い淀んでいるうちに、
先輩は芋焼酎のグラスに溜め息を吹き込んで言葉を続けた。
「私ね、鳥かご生活っていうのやってたのよ。鳥かごに人形を入れて、これが本当の自分だって思い込むの。
新人の教育なんて初めてで焦ってたのね。色々ときついことも言ったりして、
そんなことじゃあなたが萎縮するばかりだって自己嫌悪にも陥ってた。
そんな時に鳥かご生活を知って、自分の部屋に鳥かごと人形を置いてたんだけど、あの日、同居してる彼氏が……」
そこまで言いかけた先輩はふと黙り込んでこちらをちらりと伺い見た。
誰にも言わないでくれる? とお願いされて私はうんうんと頷いた。
「人形に線香花火を押し付けちゃったのよ。いや信じられないのはわかる。
私だって人形の身に起こったことが自分にも降りかかるなんて今でも信じられない」
人形の大きさからしたら線香花火の火花もロケット花火並みにはなるだろう。ちなみに先輩の身代わり人形はまりもっこりだったそうだ。
690鳥かご生活5/5:2008/06/05(木) 16:46:19
先輩と別れた帰り道、私はふとあることに気付いて足を速めた。
私の身代わり人形はポクポンである。糸がぐるぐる巻き付いた人形である。
もしも誰かがその糸を解いたらどうなるか。答えは明快だ。
私は家に連絡を入れ、電話に出た母親に絶対に部屋には入らないでと喚きながら夜道を走った。
公共の場で私のこの我ながら遺憾である乳や、地崩れを思わせる腹や尻を晒すわけにはいかないんだ。
完璧に思えた鳥かご生活にこんな落とし穴があったなんて。歩道を照らす街灯が急げ急げと瞬きしている。
私は脳裏に浮かぶ最悪のストリップショーを必死で打ち消しながら、奥歯を噛みつつ家路を急いだ。


次は「凍らない水」
691凍らない水
「――安定した状況で冷やされた水は、凝固点より温度が低くなっても凍ることがありません。これが『過冷却』です」
テレビから流れる声と映像に見入る。研究職を諦めて親父の跡を継いだ俺は、こういった知的番組がヒドく好きだ。
ワシントンのこの田舎に暮らし続けるのは、都会に憧れていた俺にとって苦痛以外のなにものでもなかった。
諦めることを知ってしまい、それからはなにごとにも無感動で適当に生き、そして怠惰に結婚した。
この「サイエンス・オーヴァー・アワーズ」に出会わなければ、自殺でもしていたかもしれない。
「この過冷却の状態からなにか衝撃を与えれば、たちまちに凍り始めてしまいます。
しかし刺激がなければ……そう、それは凍らない水になるのです」
「ネエ、まだなの?」
背後から声がかかる。妻のイライザだ。「早くダンスのレッスンに行きたいのよ。ずっと待ってるのよ」
俺は無視をした。俺がこの番組を無視できないことは、イライザもダンス教室のジャクソンとの愛より深く知っているだろう。
「水を熱した場合も同じようなことが起こります」
「ネエ」少し声が近づく。耳障りだ。左手で額を押さえて軽く溜息をつき、右手は座っているソファーとクッションの間へ滑らせる。
「安定した状況で熱し続けた水は沸騰しません。しかしそこに刺激が加わると――」
「ネエ、聞いてるの!?」
右肩にイライザのぶ厚い手が強く押し当てられる。股下から右手を抜き、そのままイライザを撃ち抜く。
テレビのなかでは212°Fを越えたお湯がいきなり沸騰していた。背後では倒れる音が聞こえた。
「このように突沸するのです。人間と一緒ですね」
俺の頭のなかでは、ジャクソンの言葉がよみがえってる。「愛ってのは突然、燃え上がるものなのさ」
腹が震え、気づけば笑っていた。止まらない。口から声がもれる。
おかしな話だ。俺たちの愛なんて、とっくに凍りついてるってのに。なあ、イライザ。


次は「聾唖の医師」