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(………うぐぅ)
そういえば。
こっちに出てきてから、誰かの手料理というのを拝んだ覚えがない。
向こうにいた頃は、毎日そうだったのだろうけど。
ふと、二人の妹の顔が浮かぶ。
故郷に残してきてしまった、鞠絵と花穂。
生きる意味だとか、そんな大そうな問題とは、久しく無縁だったが。
否応なく押し寄せる現実と、日々向き合っていけるのは、心のどこかで彼女達のことを想っているいるから。
おそらくは、今の祐樹──僕がここに在る存在の99.999999999……%。
「鞠絵…花穂……」
カレンダーを確認する。
大きく、赤ペンでぐるぐると囲まれたそれは、鞠絵の誕生日だった。
もうすぐ、向こうに帰れるのだ。
「………っと」
……どうやら、大分アルコールがまわってきたみたいだな。
視界が歪み、世界が崩れて、1点に集中しては、また弾ける。
からっぽの頭の中で金属音がして…グァングァン、キーン、これは、とても、前衛的な、アンサンブル。
どうか批評のほど、よろしくお願いします。