49 :
ぽんすげぇ:
【異常】
手術室のライトはいまだ赤く点灯している。そうだ、今妻が入っている。
分娩中なのだ。私たちのはじめての子供。手を取り合って本当に喜んだ。
しかし医者は、「お宅のお子さんには少し異常な部分がありますね。」
青白いライトに照らされた医者はレントゲンを見て眉をひそめた。
「なっそれは、どっどういうことでしょうか。」
「まぁ、生まれてきても気づかないくらいのことですがあなたのお子さんは・・・・
ガチャ。看護婦さんが寄ってきた。真っ白い衣服を着ているから灰色の真っ暗な廊下ではかなり目立つ。
外はもう牛の刻。空は暗く黒に染まり薄黄色の月が不気味に輝いている。
「お子さんがたった生まれました。元気な男の子です、さあきあきてください。」
看護婦は私の返事を待たず歩き出した。灰色の闇に鈍く輝く非常口の緑色のライト。
それだけを頼りに歩く。
手術室に入ると妻がまず目に入った。真っ赤にほほを紅潮させている。
看護婦さんが淡い桃色のタオルに巻かれた赤子を抱いて近寄ってきた。
「はい、お父さん抱いてあげてください。」
看護婦はそう言って私に渡した。赤黒い皮膚をした、ごく見かけは普通の赤子だ。
しかしこの子は・・・・・。
「パパ。」
「ああ・・・。」私はつい唸ってしまった。窓の外の月はそれでも鈍く輝いていた。
黒緑の木々は風にゆれざわざわと音を立てていた。
「パパ。」息子は赤黒い血のついた口で糸を引きながら私を呼んだ。