あなたの文章真面目に酷評しますPart26

このエントリーをはてなブックマークに追加
533ナイトロウ ◆8jBqY.xodw
 片づけられないままの机の上を一条、煙が立ち昇っていく。
 彼は煙草をくわえる時に、心持ち顎を上向けるのが癖だった、というのも、
煙が前髪にかかるのが厭だったので。
 ラジオから気に入りの歌が流れてきたので、つと煙草を灰皿代わりにした
紅茶の缶の端に乗せ、身体を屈める。
足元に置かれたヘッドフォン、伸びた髪を耳の後ろに回して、掛けて、デッ
キにジャックを差し込んでヴォリュームをいくつか上げた。
 歌うのはまだ若い、二十歳を過ぎたばかりの女、留学中にデビューが決ま
り先日初めてのアルバムを出した。
 置いた煙草を手に取る彼は、それで一度缶を叩いて灰を落とし口に遣り、
深く肺に煙を吸い込む。
 歌は佳境に差し掛かる、頭の奥で響く音を聞きながら、一筋頬に落とした
ものは。煙草をくわえたままの唇は真一文字に絞められて、彼の心境、境遇
を物語るよう。
 僅かに口が開けられる、煙が細く吐き出される。低い天井にも達することなく紫煙、その色を失っていった、厚
いカーテンの締め切られた部屋の中。

---
みんなおはよう