お家が目の前にありました。そう。ぼくのおめめは赤いです。だから赤いお家でした。でもほんとは緑色のお家だったかもしれません。うふふ。
ぼくが住んでるお家はもっときれいなんだよ。でもじゅんちゃんと一緒にいれるんならべつにきたなくったっていいけどね。ぼくはかわいいうさぎたん。みんながそういうんだ。
ぼくのまわりで虹色のもやがきらめいて、お家がきえちゃった。──ああ、今、ぼくは夢を見ているんだ。やあ! 心地よいまどろみ!
──きれいだなあ。何で自殺する人がいるんだろうなあ。この世はこんなに楽しいのに! この世はこんなに楽しいのに! この世はこんなに楽しいのに……
ゆらゆらゆれてるみたいに眠ってたんだよ。でも目がさめちゃった。体がきゅうに重くなったんだ。どさって音がしてね。生ごみまみれになっちゃった。
それでね、今、どこにいるのか思い出しちゃった。あ、そっか。またじゅんちゃんが気まぐれおこしたんだっけってね。
でもこんなひどいことされたのははじめてなんだよ。目のたまをいっこちぎられちゃったことはあるけどね。
じゅんちゃんきゃあきゃあよろこんでいたっけ。でもじゅんちゃんも小さい子供だったし、それはしかたないことなんだ。むかしから少しいたずらがすぎるところがあるんだじゅんちゃんは。
〜 〜 〜
「このぬいぐるみ気持ち悪いわ」
「どうして?」
「毛が抜けるのよ」
きのうの夜そういってじゅんちゃんのお母さんがぼくの毛をむしった。何回も、何回も。
「ほらね、気持ち悪いでしょ。何か毛の抜けるぬいぐるみって気持ち悪いわ。捨てようかしら。明日ちょうどゴミ捨ての日だし」
「うん。いいよ別に。捨てたいなら捨てれば。私もうそれいらないから」
じゅんちゃんがテレビを見ながら言ってた。
〜 〜 〜
ぼくはゴミ箱に捨てられちゃったんだ。でもきっとじゅんちゃんがぼくを出しにきてくれると思う。だってぼくと淳ちゃんはあんなに仲が良かったんだもん。むしられて痛かったけど、ぼくはお母さんもゆるすよ。
だってじゅんちゃんの大好きなお母さんだもん。ぼくが大好きなじゅんちゃんが、大好きな、お母さんだからね。――じゅんちゃんがくるまでぼくはまた夢を見てよ。