6月30日ひかるの言葉2発売!

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1ひかる ◆bodgOoQOHA
天才貴族詩人、及び哲学者のひかるの詩、アフォリズム集、ひかるの言葉2発売。
太陽書房より。みんなで買おう。ひかるに賞を受賞させよう。ひかるの困った経済状況を救おう。
http://www.geocities.jp/hikarurutakashi2000/framepage5.htm
 夏。なんて暑い日だろうか。なんて暗い内部だろうか。
外からは陽子たちの求める音は聞こえない。すなわち人の声、車の音……
なぜこんなことになってしまったのか、といってもそれは既にわかっているのだ。
考えるほどどんどん気力がなくなっていく。最初は似たような心中にある者と一緒にいられることや、
ささいな反抗的思いに気分をよくしていたが、この状況が恐るべきものであることをやっと知った。
水はとめられ、窓やところどころの通路にはシャッターがおろされ――
この田舎の古い学校において、夏休みにこういったことがなされるのは別段おかしいことではなかった。
 三人は学校に閉じ込められたのだった。校内放送が流れたときのことが頭のなかをめぐる。
《午後五時半に学校は閉鎖されます。残っている者は速やかに帰宅してください》
 それにともない、三年A組の教室から出るときに聞いた望先生の言葉もよみがえるのだ。
《あー、あんたたちさっさと帰らないと閉じ込められちゃうわよ。
まったくもう、別に盗むもんなんてないってのに、なんでこんなに厳重にするのかね。
それはともかく、閉じ込められたら悲惨だわよ。おばけがでるぞー》
 おばけなどどうでもいい。問題は極めて現実的なのだ。
   *
 陽子は望の話を無視し、とうから残っているつもりだった。
シャッターがおろされるときに人が来るため、色々なところに隠れた。
そのときの気分は筆舌に尽くしがたく、いわば犯罪者になったような感覚であった。
 なぜ残ったのかというと、家に帰りたくないから――それは至極当然だが、
確固たる理由は家庭問題にある。母は半年前に一人で蒸発、父はずっと前に死去……
現在は借金をかかえながら、一年前に母と結婚した義父と二人暮し。
結婚自体はたいしたこととも思っていなかったが、相手は重要だ。
しかし、母は男を見極める術をもたなかった。
 実のところ、陽子は義父に性奴のように、または玩具のように扱われていた。
口癖はこうだ、「お前の母さんの借金をはらってやってんだ、感謝したらどうだ、この糞!」。
確かにそうだが、陽子からすれば悪魔に他ならなかった。処女を奪われたときのことも忘れられない。
 帰りたくない。
 そして夏休みの前日、彼女は解決方法のわからない現実を思い、
また暑さのせいで高揚した気分に身を任せてしまったこともあり、居残ることを決め込んだのである。
 最初に他の者と出会ったのは他ならぬA組の教室だった。
静江。お嬢様と言われた彼女もまた、家庭において悩みをかかえていたらしく、
極めて純粋な汎発心から学校にこもることを決定した。
なかなかの金持ちだが、ここにやってきたのは彼女自身の希望だった。
そこまではよかったが、家の中の対応がかわるはずもなく、
結局は親の甘さに嫌気がさし、この道を選択したのだ。
陽子から見ればうらやましい限り、そしてなめたこと言ってんじゃないわ、
というようなものであるが、環境の違いに口を出せるわけでもない。
それでなくても、一種の罪悪感に襲われかけていた陽子にとって、
仲間がいたことは実に喜ばしいことだった。
「陽子さん、誰もいない学校って静かだね」
 そういえば既に日は暮れ、わずかな光の中でかすかに見える時計の針は午後七時をさそうとしていた。
真っ暗な校内に不似合いな甲高い声はいささか響く。
「うん。でもちょっと怖いかも……」陽子が言った。
「大丈夫、いざとなったら窓をやぶってでも出ればいいでしょ。
シャッターだって机やなにかで壊せると思うし」
 彼女の意気軒昂たるものに、陽子は若干とまどったが、「うん」と言って首を振った。
 それから、どうせなら探検してしてみないかという話になり、歩き回ることになった。
「でもこう暗くちゃおちおち歩けないよ」と、陽子。「懐中電灯でも持ってくればよかった」
「ふふん」妙に色っぽい、それでいて自慢げな声。「わたしが持ってきたわ。
実は昨日の夜から計画してたの。こっそり食べ物も持ってきたし、水だって」
 陽子は――じっさい静江が心強く、そして大丈夫だという思いがあったのだろう。
しかし、他の者が缶ジュースを出すのはずっと後のことになるのだが、
この考えが今まさに不安定な足場へ移行してしまう原因になったことを、
心の奥底、意識の光の届かないところで、陽子は悟っていたのである。
修正
真っ暗な=極めて暗い
修正
探検してして=探検して
 明に出会ったのは、特に際立った匂いがあるわけではないが
意識からかそれを感じてしまう、冷たい雰囲気のある理科室だった。
ドアを開くと窓際のほうで木製の小さな椅子が倒れるときの音がして、
二人は身構えたのだが、思っていたような相手ではなく明だったのだ。
四つの大きな長方形テーブルのうち一番窓際、そこに立っている。
ジッポのあわい光から見るに、相手もずいぶん驚いているようだった。
「あんたたちも閉じ込められたの? 奇遇ね」明が言った。
「明!」陽子が突拍子もない声をあげた。「明も残ったんだ、ほんと奇遇。
しかしどうなってるんだろうね、こうして同じ日に閉じこもるなんて」
「残った? あたしは違うわよ、本当に閉じ込められちゃっただけ。
ちょっと用事があったんでね」喋るとジッポの炎がゆらゆら揺れる。
「電気ってつかないんだよね」と、陽子。「詳しいことはわかんないけど」
 そこまで言ったところで明の右の扉が開いた。音に静江はぎょっとしたようだった。
「わりーわりー」男だった。たちまち陽子と静江が身構える。「おっ、お友達か明。
まあそう驚かないでよ」テーブルの前に来て、何か置いた。「奥でアルコールランプ見つけたぜ。
これがありゃ夜くらいどってことないだろ」
 陽子は、明の言う『用事』が一体なんなのかわかったような気がした。
 アルコールランプのふたをあけて、明は持っていたジッポの炎をそちらにうつした。
青い炎がついて、またたくまに赤い色にそまった。
それは一種独特で――この環境のせいもあってか――少なからず幻想的なもの。
陽子と静江は、その光にてらされている二人のもとへ行った。
「で、あんたたちは何やってんの?」明が言った。
 静江は懐中電灯をゆらゆら揺らしながら黙っている。
明と静江はそう仲がいいわけではないのだ。
というのも、図工の時間に静江がつくった花瓶を明が壊してしまったからで、
それからいささか不自然な態度が続くようになってしまった。
が、明はというとそうでもなく、積極的に――仲直りしたいのだろう――話したりしている。
このことだけは意外に思ったが、静江が根に持つタイプだとわかったのはいいことだ。
接し方を選ぶことができるということもあるが、気高いお嬢様ではなく、
普通の中学生だということがわかったからである。
「ああ、わたしたちは残ったのよ。ちょっと問題があってね」陽子が言った。「それで、探検してるの」
「ほー、やっぱお子様はお子様か」男が言う。「何もこんな暑い中で歩き回らなくてもいいだろうに」
 明が彼の胸を叩いた。「そんな言い方よしてよ、あたしだってそのお子様なんだからね」
「よっしゃ、じゃあ今日は俺も一緒に探検しちゃおうかな」
 思ったとおり、男は明の彼氏であった。ちょうど二十歳の大学生で、
名前は杉本浩一郎という。不真面目な性格で、まともな大学生活は送っていない。
これは全て明からひそひそ話しで教えてもらったことだ。
「へへ、二人ともけっこう可愛いじゃないか。こりゃ特したわ」
 また明に叩かれる。「そんなことしたら許さないから」
「冗談だって」

 歩き回っているうち、二階から一階へ続く階段にシャッターがおりていないのは、
二箇所あるうち二つだということがわかった。何かにひっかかっているかのようにその場にとどまっている。
同じようにおりていないのはもう一箇所あり、二階の階段から教室へと続く通路にある
三つのシャッターのうち一つだ。行けるところは一階の理科室、職員の休憩室、相談室、
二階三年生の教室(三年A組、B組、C組で、二年の前にはシャッターがある)、
図書室、これだけだ。給食の荷台を上にもってくるための専用エレベーターは停止している。
 食べ物は静江のものと、明が持っていた飲み物とお菓子、
それと教室中をあさって見つけた、生徒が持ちこんだパンや菓子類がある。
 夜八時をまわったところで部屋あさりにも厭き、図書室で過ごそうということになった。
「やっぱりお母さん、心配してるかな……」静江が言う。「携帯の電池切れちゃってるし、連絡できないし」
 それを聞いて、明がポケットに手を突っ込んだ。取り出したのは携帯電話だ。
電源を入れると静江に番号を聞く。
「えっ、でもやっぱりいい」と、静江。
「静江、あたしだとそんな態度になるのやめてよ。許してってば。
親、心配してるんだろ。連絡してやんなよ、友達と遊んでるとか嘘でもいいんだからさ」
 もちろんそんな嘘をついたら余計に心配することは目に見えている。
大事な娘、年頃の娘、夜に遊びまわるなど父親が許すまい。
 静江が言った。「そういう態度って何? そんなのしてないよ、わたし、ただ決めたんだから」
「ありゃ!」彼女の話などろくすっぽ聞かず、明が息がつまったような声で言った。「繋がんない」
 陽子が携帯の画面を覗きこむ。電波のあのマークがたっていない。
しかし彼女の気になったのはそれではなく、バックの画像だった。
浩一郎と紛れもない明がキスしている画像に陽子は一瞬胸が高鳴った。
「電波、遮断されてんの? このシャッターのせいなのかな」体に妙な力が入り、声が上ずった。
「さあね。ま、明日になったらどうせシャッターぶち破るんだし、いいか」
 陽子はその高鳴りを、あの画像に動揺したせいだと思っていたが、
しかし実は連絡手段がなくなったことに対しても少々の恐怖があったのだ。
(シャッターが破れなかったら?)頭の奥底から、確固たる声ではないが問いかけがあった。
(不審者や盗難を防ぐための防御策なのよ。ほんとうに破れるのかわからないじゃない?)
 しかしこちらは全員で四人だ。心強いことこのうえなく、心配の必要はないと思われた。
そして、やわらかい光の中で本を読み――漫画だったが――その昔の絵柄に笑いがおこるなか、
こんなことを言ったら場がしらけるだろう。心配にはいたらない、そうよ、大丈夫、大丈夫……
 心の高揚がいまやストレスとなっており、陽子はいつのまにかうとうとしていた。
寝る。このスレ落ちたら落ちたでいいや。
残ってたら続きでも書こう……>>1に腹が立ったから。
ホッシュ
ほす
かゆ…         うま…
ほっしゆ
16名無し物書き@推敲中?:04/06/25 03:15
( ´_ゝ`)
(´,_ゝ`)まあ、もまいら映画でも見れ
保守
19名無し物書き@推敲中?:04/06/26 02:44
ねえ、続きは〜?
 夢を見た。
 嗅いだことのない――あるいは思い出せないだけか――においが周囲にただよっていた。
馬のケツの中のように真っ暗で、転ぶかもしれないという懸念から歩く気にはなれない、
というよりも、もはや自らの肉体すら消えてしまっているかのようで、
曖昧にぼやけた意識だけがほぼ全てを認識していた。
存在するものは、現実的なものとしてはそのにおいだけで、
他はといえば言い知れぬ恐怖におびえる少女のイメージくらいだったが、
ともすれば、このにおいもまた陽子の生み出したものかもしれない。
 そこで足に何かが触れた。足は見えず、そこにはただ暗闇の空間があるだけであるが、
感覚的にはそれを知ることができた。確かに、何か、ぬるぬるしたものが触れたのだ。
一体なに? なんなの、少し熱くて、唾液のような……
 ようく考えてみな、お前はもう知ってるはずだろう? お前のお友達のことを考えるんだな!
 たんがひっかかっているような男の声が響いたとたん、小さな光の円が視覚の中心にうかんだ。
暗闇の世界にぽっかりと穴があいたようで、そちらに行きたいと願ったが、
光のほうからゆっくりと上下しながら近づいてき、とうとう目の前まできてしまった。
最初は蝋燭のものではないかと思っていたが、それはアルコールランプの炎の光だった。
持っていたのは明だ。ぶらんと垂らされた反対の手にも何かを持っている。
それが何なのかと注意を向けかけたとき、明の顔が先ほどイメージにあった少女のそれに変化した。
 誰なのかしばらく思い出せなかったが、彼女が「陽子さん」と一言言ったとき、
それが静江だということがわかった。
 旧友に会ったかのように懐かしさがあふはじめたが、
静江がいきなりがくんと崩れ落ちてへたり込んだとき、
またアルコールランプが暗闇で見えない床へ落ちて砕け散ったとき、
その音に驚いて陽子は目が覚めた。
 目の前に明と浩一郎、隣には静江が眠っていた。
アルコールランプは未だしっかりと火をともしている。
そのおかげで、あのあと彼女らは再度理科室に行き、
ありったけのアルコールをかき集めてきたのだということを知ることができた。
また、おそらくは、獣が出る山で遭難したときお決まりの交代活動も行ったはずだ。
量が少なくなると、アルコールランプの上部に蒸気と空気の混じった可燃性ガスの層が生じるため、
爆発の危険があるのだ。
(わたしだけずっと寝てて申し訳ないね、みんな。)
 陽子は立ち上がってランプをつかむと、一番大きい窓の前へ行った。
異常なほどぴったりとしまったシャッターからは光などもれていなかったが、
壁にかけられた時計を見る限り夜があけていることは事実だ。
窓の前にかがみこんで角をてらしてみたが、わずかな希望であった単純な鍵のシャッターではなかった。
これは自動シャッターであり、上の壁の中には残りの部分ががっちりと固定されているのだ。
それでなくても指をかけるところがないので、そもそも四人で持ち上げるという試みなどできるはずもない。
こんなものをわざわざ使う必要がどこにあろうか!
校長の頭はいささかおかしいのではないかという疑いは今までにもあったが、
このときほどそう思い、またこんな糞シャッターを取り入れたことを呪ったことはない。
(ちょっと待ってよ。鳥の声も聞こえないってどういうこと?)陽子の裡で声があがった。
(今は朝の五時――去年の夏休みに夜更かししたことがあるけど、
早朝はときどきスズメなんかの鳥の鳴き声が聞こえるはず、だって田舎なんだもの。
それにこの図書室だったら、すぐ近くの鶏小屋からもけたたましい声が入ってくるはずよ。
なのに少しも、ちっとも聞こえず、完全な静寂にあるということは?)
「このシャッターが異常だってこと」そうつぶやいて、かすかな笑いがもれた。
だがそれは不安が確信の域へ達したことに対する、いわば嘆きのようなものであり、
内心ではいささかも笑う気などなかった。暑さと、よせてはかえす波のような困惑に、ひたすらもがいているだけだ。
シャッターが異常だということは――異常に分厚い、といったほうがいいか――事実だが、
それがわかったところでどうなるわけでもない。
 逃れられない。少なくともこいつを破ることにかけては。そのほかに何かあればいいが、
すでに陽子の考えでは九割がた決着がついていた。
(逃れられない。)
修正
あふはじめたが=あふれはじめたが
さて今日は徹夜だったんだ、寝るか。だいぶ疲れてしまった。
それとすまない、わずか四レスだ。ちょいと頭が痛くてね……
ウホッ
キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
27名無し物書き@推敲中?:04/06/26 23:02
age
保守っておきつつ。
29名無し物書き@推敲中?:04/06/27 18:09
あげ
ううむ、書いてる暇がない。
31名無し物書き@推敲中?:04/06/28 11:35
ショボ━━━━━━(´・ω・`)━━━━━━ン!!!!!!
ほす
 それからすぐに浩一郎が目を覚まし、彼女にうめくようなくぐもった声で挨拶した。
陽子は神経が切れたかのように力の抜けた足でそちらへ行った。
浩一郎は窓側、本棚のほうに寄りかかるかたちで坐って寝ていたのだが、
二人は床に寝転がっていたため、睡眠の深度が違うのは当然だ。
明は右手でテーブル下の椅子の足をつかんでいて、
ときおり便秘女さながらの苦しげなかすれ声をあげている。
いっぽう静江はというと横になってまるまっており、
空気の出入りする音だけが定期的に続いている。
彼は眠る二人をゆすり始めた。最初は弱く、次第に強く。
やがて――「うるさいなあ」という無意識と思われる言葉があったにしろ――明がのびをしたかと思うと、
いきなり上体をおこし、顔をのぞきこんでいた浩一郎の額とぶつかってにぶい音が響いた。
「いてえ!」手がその部分に向かう。
「あーごめん」悪ぶれる様子もなく言うと、静江を見た。「おーい、静江、起きない?」
 静江があくびをしながら起きあがったところで、浩一郎は大窓に向かった。
「陽子ちゃん、見たろ? このシャッター」陽子は何も言わなかった。「どこもかしこも同じだ、
こりゃちっと頭使わないとだめだぜ」
 静江が言った。「何か考えはありますか、浩一郎さん。どうすれば?」
「ううむ」彼は腕を組んだ。「頭を使うって言ったけど、やっぱどうしようもないかもな」
「冗談じゃない、なんとかしてよ、男でしょ」と、明。
 彼は苦笑いをうかべた。「この校舎は古い。警報装置も設置されてなければ、
外部に存在を知らせる何らかの手段も、俺たちの行動範囲内では見つからなかった。
俺たちは完全に外から隔離されちまってるわけだ。
まわりは深い林だし、ここからもっとも近くに住む人の家は、うーん、
少なくとも三キロは離れてたろうな。とすれば、叩いたりして騒いでも無駄だろう。
じゃあどうすればいいのかというと――」
「さっさと言いなさいよ、まどろっこしいのは嫌い!」またも明が口をはさんだ。
「……君たちが帰ってこないとなれば、親御さんも動き出すだろう。へたしたら警察沙汰だ。
となれば、第一、このまま待つ。第二、シャッターを壊す手段を考える。
第三、携帯の電波が入るところを探す。他に何かあるか?
希望があるのは一番目と三番目だけだな、現実的には。あのシャッターの糞野郎はまず無理だ。
なんせ使えそうな道具がない」
 気がつけば全員が同じように腕組みをしていた。明が陽子の手元に光る炎を見つめる。
「そうだ!」明が突拍子もない声をあげた。「理科室だよ、理科室」
「理科室に何があるってんだ?」
「このシャッターは鉄製でしょ、だったら溶かせない? ほら、酸かなんかで」
 浩一郎は溜息をついた。「確かに塩酸とか硝酸とかあるかもしれないけど、そもそも危険だろうが。
それにこの分厚いはずのシャッター、人が通るだけの穴をあけるのにどんだけの量が必要になる?
あとな、たとえ濃度の濃い状態で保存されていたとしても、
そういう危険な液体の保存容器にはしっかり鍵がかけられてるはずだ」
 彼は音をたててシャッターを叩いた。明はふんと鼻息をひとつならした。
「というか、なんでこんなシャッターがこの世にあるんだよ畜生。特注にしてもやりすぎだぜ!」
「じゃあ電波が入るところを探しましょ」静江が言った。「待つだけじゃ暇だし。
何かしてないと変な気になっちゃうわ、きっと」
 変な気、という言葉に浩一郎の眉と肩がぴくっと反応したが、明がぴしゃりと制した。
そのとき陽子は、ふたたび何の気なしにあの画像を思い出した。
 そうなのだ。ここには大人の力を持つ男がいる――妙な気を起こせばやれないことはない。
そこまでの精神状態にあれば必然的に後先考えずに行動するはずで、
ともすれば、その兆候を見極めることがまた別の問題となり得る。
仮にも相手は大学生だ、本気になれば頭の足りない中学生ごとき軽いものだろう。
 そんなことを考えていたので、陽子は――義父に対する恐怖がしゃしゃり出てきたこともあるが――
無意識に防衛策を見つけようとしていた。
 動物は顔全体におよぶ突然の出来事を極端に恐れる。
それも、とくに感覚に対して刺激のあるものであれば、その驚愕は何倍にも増大する。
見えない蜘蛛の巣が顔におおいかぶさってきたとき、まさに死に物狂いで取り除こうとしたり、
痴漢撃退スプレーのたぐいが効果を発揮するのもこれに近い。
犬などであれば、霧吹きにいれた酢を顔に噴霧すると面白い……
陽子は以前野良犬に追い掛け回されたことがあるのだが、
これはそのとき偶然とおりすがって助けてくれた初老の男から教えてもらったことだ。
その点において、明の言った理科室にある恐るべき液体たちに興味をひかれはじめた。
(問題は鍵だわ。問題は鍵、鍵――)
 そのとき自分の顔に触れている手に気がついて、彼女は目を剥いた。静江だった。
「大丈夫、陽子さん。顔色が悪いわ」
 内心、あの考えが悟られていやしないかとひやひやしていたが、それはないようだった。
しかし安心と同時に、自分があのような思考を繰り広げていたことにショックをうけ、
様々な事実の入り混じった激しい動悸を認識するのだった。
 外的なものではないが、状況は確かに悪くなっている。
そして、これが他の者にも同程度におこっているとしたら――
「うん、ちょっと気分が悪くて……でも大丈夫だよ」それは嘘だった。
他の者も注意を向けていることから、すみやかに、いわば逃れるために出た言葉だったのである。
 明が言った。「たぶん空気が悪いのよ、密室だからね」
「でも完全な密室じゃないけどな。そんな学校があってたまるかよ」
 一瞬間が開く。陽子は、沈黙の中で一体なにを考えているのかという、
いささか気違いじみた疑惑の波が襲ってくるのを感じた。
それは浩一郎に対するものが大部分をしめていた。
(要するに彼は部外者なのよ。糞ったれの偽の父みたいに、どうでもいい部外者なの。
なんでそんな仮面をかぶってるの? そういう人にありがちなことだけど、
その薄い壁がとれたとき、あなたはどういう行動をするのかね!)
 恐ろしい思考を振り払うように、頭を小さく振る。
全てはあの男が原因なのだ、欲望の限りを尽くすあの暴君のせいでこの状況があり、
現実的ではない思いにとらわれている。
 彼女の両手が太もものわきでかたく握り締められた。
(おい、お前の母さんの借金をはらってやってんだ、感謝したらどうだ。
お前の母親はばいただぜ、そいつを男につぎ込んでやがったんだ、
さあてどっちが悪魔なのか判断するのはお前の勝手だが、俺はわかってる。お前は糞ったれだ!)
 義父の声が、まるで巨大な拡声器から発せられているかのように、
ぐおん、ぐおんといった強い頭痛をともないながら、陽子の中でわめいた。
(わたし、こんなに弱い人間だったの?)
(におうぞ、におうぞ、お前も淫売だ! におうぞ、におうぞ!)
 きっとあの男は捜す気など間違っても起こさないだろう。
結局他人にすがるしかないとは反吐が出る、
そしてそのあと狂ったように怒りの言葉が飛び出し、最後には例の行為だ。
(そのときのことも考えなければならないわね。生きて出られたらの話だけど。)

 自らが生み出した記憶の言語が少なからず落ち着いたのは、
携帯の電波を受信できる場所をさがすことが決まった頃だった。
しかし、本人は気づいていなかったが、
浩一郎を見つめるその目には確かにまだ怒りと恐怖が残存していたのである。
そして、無関係な彼に対して申し訳ないという思いもあるにはあったが、
それは意識のなかの極めて狭い一隅にあり、表面に出てくることはなかった。
40名無し物書き@推敲中?:04/06/28 23:52
あげ。
41名無し物書き@推敲中?:04/06/29 19:38
ほっしゅ! ほっしゅ!
42名無し物書き@推敲中?:04/06/29 20:06
もっと人来いもっと人来い

だがこの事実を成し遂げたとき、
この2chでは歴史的な快挙となるだろう hehehe
43名無し物書き@推敲中?:04/06/29 21:51
age
保守!
<`∀´>
>>45
だ、誰だ貴様ッ!
さては……
保全
   ミ /彡 
..ミ、|ミ //彡  
ミ.|.ミ/ ./.|  
.|//|.  []   ノノノハヽo∈  
/.  []      从‘ 。‘ 从  レスが少ないスレッドだね♪
         (⌒l⊃⊂l⌒) 
もっと人こーい
ああ〜書く気おこらない。また頭痛いし。
あと、他の文章を書くとそれで満足してやる気がなくなるというのは確かだ。
もっと人こないかな、ほんと。
なんかレスしる! って完結してないのにそれはダメだよな……
51名無し物書き@推敲中?:04/07/02 21:08
ま、保守っておこうじゃないか
ここかッ! ここがええのんかッ!



      HOSYU..._φ(゚Д゚ )



hosu
ほっしゅ!ほっしゅ!ほっしゅ!ほっしゅ!
>>1氏ね!ほっしゅ!ほっしゅ!ほっしゅ!
書いてる暇ないや……
いつか書くが
でも書く気なくなってきたなぁ。
ここらへんでネタばらしするかな?
むろん、小説ではなくてこのスレ自体。
わたしが>>1ではないことは確かだが、
このスレはわたしの壮大なネタで包まれているのだ。
>>1>>17>>19>>45>>48を除いて(・∀・)
読み返すとだいぶおかしいところがあるものな。
まあ全てその場で書いて投稿したのだから仕方ないが、
もともと一つもレスがなかったこのくだらねえスレのために
わざわざ時間とってうんうん唸りながら推敲するのもなぁ〜
じっさい覗いてくれている人ってどのくらいいるんだ?
場合によっては書かなきゃなわけだが、
今のところはやる気ゼロになってしまった。もうだめぽ