この三語で書け! 即興文ものスレ 第十七期

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83罧原堤 ◆5edT8.HnQQ
とまれと白い線で道に書かれていたので俺は歩くのをやめた。
歩き疲れてもいた。
日が暮れた。
何時までとまっていればいいのか誰も教えてくれない。
俺は半ば眠り込んでいた。後ろを振り返ると俺の後ろに三十人くらい並んでいた。
すぐ後ろの婆さんが、「いったい何時までとまってなけりゃならないんでしょうね」と俺に聞いてきた。
だが、それはわからない。俺にもわからない。俺がたまたま先頭に立つ運命であっただけで俺にもわからない。
いったい誰が道にとまれなどと書いたのか、何時進めに文字が変わるのか。
俺は新たに俺たちの列に加わる者を見るたびに彼こそがとまれを進めに書き換えてくれる男だと期待した。
だが期待は裏切られてばかりだ。
もう方角もわからない。俺は南に行こうとしていたのか北へ行こうとしていたのかさえ忘れた。
近くのゴミ捨て場にごみを捨てに来た女が怪訝そうに俺たちを見つめていた。
青いゴミ袋の中に空き缶、ペットボトル、新聞紙、壁紙の切れ端などがごちゃ混ぜになっている。彼女も罪悪感があったのかとまれの文字を見ると納得したように俺に頷いて見せた。
だがその糞女はとまれに従わなかった。まったく問題にもせず気にも留めていない。
「待て」
「何ですか? 仕事に遅れますんで」そう言って、去ろうとした。
「それがどうした。みんなルールに従ってるんだ。のどが渇いてるのも我慢して」
ふと地面を見ると、とまれがどなれに変わっていた。次にころせに変わった。
「お前はルールを守らない」「破ってばかりだ」「ゴミも分別しない」「死ね」
俺たちは口々にそう叫んで、彼女に襲い掛かった。
服をぼろぼろにされ、ぼこぼこに殴られた女は死ぬ間際、
「わたしは仕事のためすべてを犠牲にしました。悪いこともしました。でもあなた方のような堅苦しい生き方など反吐が出ます」
と言った。
俺は彼女に止めを刺した。

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