捜査令状をとったり、なんだかんだで、ニックネーム”狩猟者”の男のアパートに踏み
こんだのは、昼過ぎになった。
「ちっ、”参謀”のやつか。余計な知恵を入れやがって」
部屋の真ん中に転がるコンピューターの破片を見て、ジムは唾を吐きたくなった。
πを計算させるテストを、数100万ケタ単位で完走していたCPUも、重要なデータを
記録していたはずのハードディスクも、ハンマーか何かで丁寧に叩き潰されていた。
「昨日の夜、そういえば何かを叩く音がしてましたよ」
管理人が、ドアのところからおそるおそる言った。
「そうかい」
お前さんは合鍵さえしっかり持ってりゃいいんだよ、と言いかけてやめた。その情報に
興味がないことを口調で示し、俺は更に部屋を探った。シャワールームの排水溝、便器、
キッチンの流し、ゴミ箱のなか、と見て回る。
「月に何日くらい帰ってきた?」ビニール手袋を懐からとりだし、右手にはめる。
「ほんの何日かしか、もどらなかったように思いますが」
ゴミ箱の奥にはコンドームが引っ付いてた。つまんでビニールパウチに入れる。
「だろうな。……女のデータは失われたが、”狩猟者”のDNAは手に入れた。まずまずだ」
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